JR横浜駅からほんのちょっとの距離だというのにもう、今年もまた歩いているうちに汗が噴き出してきました。おそるべき猛暑の8月7日(金)午前、第22回AIDS文化フォーラムin横浜が、かながわ県民センター(横浜駅西口徒歩5分)で開幕しました。9日(日)まで開かれています。
1994年の第10回国際エイズ会議が横浜で開催された際、高額の会議参加料を支払えない、あるいは支払う気にはとてもなれないという人たちを対象にして、会期にあわせて開かれたのが最初のAIDS文化フォーラムでした。以来、毎年夏が来れば横浜です。この持続力は素晴らしい。頭が下がります。
実は私は、1996年まで産経新聞のニューヨーク支局勤務でしたので、草創期の様子は見ていません。後で南定四郎さんのお話などを詳しくうかがって、知識としてはある程度、分かったつもりでいますが、現場にはいませんでした。しかし、その点では、今年の文化フォーラムに参加した方の大多数は、そんな昔のことは知らないという方でしょうね。それでもAIDS文化フォーラムのコンセプトは継承されています。継承どころか、増殖しています。最近は横浜だけでなく、京都や陸前高田や佐賀にもAIDS文化フォーラムが生まれているのです。もう一回、書くけど、この持続力(と伝播力)は素晴らしい。
ということで、オープニングセッションに参加しました。金曜日の午前では仕事の都合で参加できない人もいるのでしょうが、それでも会場には100人くらい集まっていました。キャリーバックをころころと転がしながら途中で入って来る人もいます。全国から参加される人が集まってくるのですね。オープニングセッションのテーマは「今こそ、ともに生きる」。第1回からずっと関わっている岩室紳也医師の総合司会で、日本HIV陽性者ネットワークJaNP+の高久陽介さん、学校と連携したセクシュアリティ教育を実践するSHIPの星野慎二さん、福祉施設でのHIV陽性者受け入れに取り組む社会法人武蔵野会の山内哲也さんがお話をされました。岩室さんのインタビュー術の冴えもあり、3人のお話はそれぞれ興味深い内容でした。とてもその魅力あるセッションの全貌は紹介しきれませんが、いくつか印象に残ったことを紹介してみましょう(私なりの解釈なので誤解して受け取っている可能性もあります)。
予防活動の際の「こんな恐い病気になったら大変だという脅しのメッセージ」に対する違和感。そんなやばい病気になったら大変だと思ってメッセージを受けた人は逆に検査に行かなくなるのではないか。むしろ、HIV陽性者は特別な人ではなく、普通の人がHIVを持っていること、そしてそうした人がいかに生活し、その中でどんな悩みがあるのかを伝える必要がある。
2007年から教育委員会を通じて学校へのアプローチを始めたが最初はうまくいかなかった。2010年に人権課につながってからうまくいくようになった。性的マイノリティ全般の人の命として生きる権利を強調することで、エイズとは別の切り口から共感が得られるようになった。
知識を伝えるだけでは福祉施設などでの受け入れは進まない。基本的な知識を伝える以前に、人権を尊重する、困っている人を助けるといった意識の指向性を高める必要がある。その意味で、当事者に接する、声を聞くということが大切だ。知識だけだと受け入れない理由の方に意識が進む恐れもある。
しつこいようですが、最近は寄る年波か、すぐに聞き逃したり、聞き忘れたりするので、正確に発言を伝えられているかどうか自信がありません。誤解があったらごめんなさい。
午後は岩室さんの『「予防」と「リスク軽減の違い」を理解していますか』というセッションを聞きました。午前のオープニングで3人のゲストがお話ししていたことを裏付け、理論化するようなかたちの素晴らしいお話でしたが、次々に繰り出されるパワーポイントのスライドに目を奪われ、さて、何を聞いたんだっけと振り返ると、なかなかまとめられません。お話の中で「パワーポイントは見て理解したつもりになるけど、頭に入らない」という秀逸なフレイズがありました。まさしくその通りといいますか、そのフレイズだけが記憶に残って、後は全部、忘れちゃったか。セッションで使用された膨大なパワーポイント資料は1週間ほどウエブサイトに公開されるということなので、お話に興味がある方は、岩室さんのサイトか、文化フォーラムのサイトかで確かめてみて下さい。
最後になりますが、オープニングセッションでは、安倍昭恵首相夫人とMTVステイング・アライブ財団のコラボレーションで制作されたエイズ予防啓発ビデオ「黙っていないで、エイズについて話そう!」を開始前とセッションの最後に流していただきました。写真は最後の時の様子です。ビデオは30秒の公共広告スポットで、年内はイベントなどで使用ご希望の方にDVDの貸し出しも行っています。詳しくはコミュニティアクションの公式サイトの「黙っていないで、エイズについて話そう」の特設ページをご覧下さい。
http://www.ca-aids.jp/etc/wakamono.html