『HIV自己検査のマーケットが拡大』UNITAID-WHO報告

 UNITAID(ユニットエイド)は、医薬品の購入などを通じて途上国の感染症対策を支援する国際機関です。

エイズ結核マラリアという感染症で苦しむ途上国の人々のため、それらの国々の現状では手に入れることが困難な高品質の医薬品・診断技術の価格を下げて、広く供給が行き届くようにすること」(UNITAID憲章)を目的としています。

 そのUNITAID世界保健機関WHO)とともに出している『HIV自己検査のマーケットと技術の動向に関する報告書』の第4版が726日に発表されました。

HIV治療の普及にはまず、HIVに感染している人が自らの感染を知るためにHIV検査を受ける必要があります。

しかし、様々な事情から、なかなか検査を受けることができない人も一定程度、存在しています。

だから、これまでの検査のやり方はダメというわけではありません。むしろ、これまで機能していたものを存続させていく条件は確保しつつ、同時に現状からさらに効果を高めていけるような新しい手法の導入もまた急務です。

その手法としてWHOUNITAIDが数年前から注目しているのが、自己検査です。

報告書とともに発表されたUNITAIDのプレスリリースは自己検査キットについて『HIV感染のリスクが高いのに受検率が低い集団に対し、検査普及を促す潜在的な可能性がとくに大きい。特別なトレーニングを受けなくてもプライベート(個人的)に検査を行い、HIVケアと予防への入り口となる機能を果たせるからだ』としています。

検査のあり方については、日本国内でも様々な可能性が検討され、一部は試みられてもいます。国による条件はそれぞれ異なりますが、今回の報告書の内容も一定程度、国内の検討課題の参考にできるかもしれません。

レポート全文の翻訳は量的に荷が重いので、例によってプレスリリースの方を日本語に訳しました。あくまで私的な日本語仮訳なので、誤訳もあるかもしれません。引用などをされる際には英語の原文で確認していただくようお願いします。

  

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HIV自己検査のマーケットが拡大 UNITAID-WHOランドスケープレポート(動向報告書)

   (UNITAIDプレスリリース)

 

ジュネーブ 2018726日- 2020年までにHIV陽性者の90%が自らの感染を知るという国連合同エイズ計画(UNAIDS)の目標を達成するには、これまでの検査方法を超え、自己検査などの新たな検査手法に投資を行う必要がある。

 HIV自己検査のマーケットと技術の動向に関するUNITAID(ユニットエイド)- WHO報告書第4版が本日、発行された。自己検査導入国が相次ぎ、利用可能な自己検査用品も増加していると報告書は指摘している。2018年現在で政策としてHIV自己検査を取り入れている国は59カ国にのぼり、2015年の6カ国から大きく増加している。また、実際に自己検査の実施に踏み切っている国も28カ国に達し、2017年と比べるとほぼ倍増している。

 自己検査キットは、HIV感染のリスクが高いのに受検率が低い集団に対し、検査普及を促す潜在的な可能性がとくに大きい。特別なトレーニングを受けなくてもプライベート(個人的)に検査を行い、HIVケアと予防への入り口となる機能を果たせるからだ。

 2017年現在、世界のHIV陽性者のうち自らの感染を知らないでいる人は940万人と推計されている。女性セックスワーカー、受刑者、男性とセックスをする男性、およびHIV陽性者のパートナーや南部アフリカの若者など、HIV感染の高いリスクに曝されている人たちがその多くを占めている。

 「HIV自己検査のマーケットは成長を続けており、さらに拡大します」とユニットエイドのレリオ・マルモア事務局長はいう。「HIV自己検査は、サービスが届いてない人たちに必要なサービスを届けるための重要な戦略であり、報告が示すように、私たちユニットエイドやパートナー機関による投資がその触媒となります」

 今年の報告書で注目されるのは、HIV自己検査の包括的なマーケット予測である。

 その予測によると、2020年には世界全体のHIV自己検査件数は1640万件となり、2017年の100万件から大幅に拡大する。また、2020年の自己検査件数のうち910万件は公的機関からの調達になると報告書は推定している。

 この予測によると、増加は公的、民間の両部門で見込まれている。2019年以降の拡大は、低・中所得国および上位中所得国におけるHIV自己検査の導入と規模拡大に大きく支えられることになるという。

 報告書はまた、自己検査用品の概要説明も行っている。このうち8点はドナー(資金提供者)の調達基準を満たし、1点は世界保健機関WHO)の事前資格審査を通ったものだ。現在は開発過程にある少なくとも6点も紹介されている。こうした幅広い製品や供給元の存在は大いに期待がもてるものだ。ただし、予想されるマーケットの成長を支えるには、さらに多くの製品がWHOの事前資格審査を通る必要がある。WHOの事前資格審査は治療薬や他の保健医療用品の品質を保証するものとして、広く国際的に認められているからだ。

 HIV自己検査のマーケットの見通しは良好ではあるものの、報告書はさらに、自己検査に関する啓発および需要拡大など、すべての関係者による6つの優先行動分野について勧告を行っている。

 

 

 

 

 

HIV self-testing market is gathering pace -- Unitaid landscape report

 

Geneva, 26 July 2018 – To meet the UNAIDS target–that 90 percent of people living with HIV know their status by 2020–we must move beyond conventional testing and invest in strategies such as self-testing.

The fourth edition of the Unitaid-WHO market and technology landscape for HIV self-testing, published today, shows more and more countries introducing self-testing, and more self-testing products becoming available. Countries with HIV self-testing policies numbered 59 in 2018, up from six in 2015, and 28 countries were implementing self-testing in 2018, almost doubling from 2017.

Self-test kits are showing special potential for reaching into groups where HIV risk is high, but HIV testing has been low. Self-testing can be done in private, requires no special training, and serves as a entry point to HIV care and prevention.

An estimated 9.4 million people remained undiagnosed globally in 2017, many of whom belong to groups at high risk of contracting HIV, such as female sex workers, prisoners and men who have sex with men, as well as partners of people with HIV and young people in southern Africa.

The HIV self-testing market has continued to grow and is poised to expand further,” said Unitaid Executive Director Lelio Marmora. “HIV self-testing is an important strategy in reaching underserved populations, and this report shows our investments, and those of our partners, have catalyzed the progress in this direction.”

A highlight of this year’s report is the comprehensive HIV self-testing market forecast.

The forecast projects that 16.4 million HIV self-tests will be procured globally in 2020, a significant increase from just one million self-tests in 2017. The report also estimates that public sector procurement will contribute 9.1 million self-tests in 2020.

The forecast shows growth in both public and private sectors. Beyond 2019, these increases are expected to be largely driven by low-, middle- and upper-middle-income countries implementing and scaling up HIV self-testing.

The report also presents an overview of self-testing products, including eight that are eligible for donor procurement, and one that has been prequalified by the World Health Organization (WHO).  At least six other products that are in development are described. The diverse range of products and suppliers is encouraging. However, prequalification of additional products by WHO is needed to support the expected market growth. WHO prequalification is an internationally recognised assurance of quality for medicines and other health products.

Although the market outlook for HIV self-testing is good, the report recommends six priority areas for action by all stakeholders,including raising awareness of self-testing, and increasing demand for it.

 

 

 

MenStar Coalition(メンスター連合)発足 ハリー王子とエルトン・ジョン卿が発表 エイズと社会ウェブ版341

 アムステルダムで開催中の第22回国際エイズ会議(AIDS2018)で7月24日、新たなHIV感染予防プロジェクトとしてMenStar Coalition(メンスター連合)が発足したことが明らかにされました。
 英国のハリー王子(日本国内ではヘンリー王子と呼ばれることもあります)とロック歌手のエルトン・ジョン卿が24日朝のプレナリーセッション(全体会議)『Breaking Barriers of Inequity in the HIV response』で発表しています。

AIDS 2018 > Get Involved > Join us virtually > AIDS 2018 Live

 AIDS2018の公式サイトの動画を見ると、24日のプレナリーの最後にお二人のスペシャルプレゼンテーションが行われ、そこで発表したようですね。この日のプレナリーのライブ動画は1時間45分もあり、それぞれに興味深い発表が続いているので、お時間に余裕がある方は全部見られた方がいいと思いますが、なかなかそれも大変でしょうね。ここでこっそりお教えしておくと、1時間19分あたりからハリー王子、その後でエルトン・ジョン卿のスピーチがあり、さらにプロジェクト参加団体のそうそうたるメンバーが壇上に並んで記念撮影みたいなお披露目もあります。

 

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(写真はUNITAIDのFacebookから)


 ・・・ということで、例によって、それにしても英語なのでつらいなあ・・・と思っていたら、ユニットエイド(UNITAID)国内広報の担当者から『ユニットエイドよりアムステルダム開催の国際エイズ会議で発表された新たなパートナーシップ結成のお知らせです』というプレスリリースの日本語訳が送られてきました。参考までに英文リリースはこちら

 『グローバルパートナーらがメンスター連合(MenStar Coalition)立ち上げ。当初の予算12億ドルを約束』という見出しです。これは助かります。
 『立ち上げメンバーは、エルトン・ジョンエイズ基金、米国大統領緊急エイズ救援計画(PEPFAR)、ユニットエイド、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)、チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団(CIFF)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ギリアド・サイエンシズ』ということで『男性対象のHIV診断・治療拡大のためとして、初期の投入資金は12億ドル超を予定』しているそうです。
 『HIV感染サイクルを断ち切るため鍵となる男性、地域的にはサブサハラ・アフリカ、に力を入れて対処』し、公衆衛生上の脅威としてのエイズの流行終結を目指しています。
 スペシャルプレゼンテーションでは、エルトン・ジョン卿も米国のデボラ・バークス大使(地球規模エイズ調整官)から聞いた話として同趣旨のことを語っていましたが、サハラ以南のアフリカの流行国のデータを見ると、『24歳から35歳を中心とする男性のHIV検査・治療を受ける割合が低く、彼ら自身の健康が危ぶまれるだけでなく、少女や若い女性たちの間にHIV感染が広がっています』とリリースは指摘しています。
 したがって、アフリカの流行国でよく指摘される感染のサイクル(年長の男性から若い女性への性感染→HIVに感染した若い女性が10年ぐらい経過した後で同年代の男性との間で成立する性感染→年長の男性から若い女性への性感染)を断ち切るには男性への支援に力を入れる必要がある。男性がHIV検査を受けやすくなる環境を整え、HIV治療につなげる革新的な手法を工夫していこうというのがプロジェクトの趣旨のようです。

 じゃあ、どうしたらいいのということで、プレスリリースには次のように書かれています。
 『具体的には、男性に特化してのデータ分析とより適切な人間中心デザイン、細かい問題点に配慮した需要創出、ターゲットマーケティングHIV自己検査などの革新、サプライソリューション…といったアプローチが盛り込まれています。また主要HIV関連商品・サービスが増加する消費者需要に追いつくよう、十分な供給を確保します』
 プレナリーのスペシャルプレゼンテーションではハリー王子とエルトン・ジョン卿のお二人のスピーチのあとで、プロモーション動画も紹介されているので、よかったらそちらもご覧ください。
 せっかくだから、もうちょっとユニットエイドのリリースを紹介しておきましょう。
 『メンスターは、パブリックセクターのHIVサービス供与キャパシティとプライベートセクターによる消費者動向に基づいたマーケティング的視点を一つにまとめ、HIV検査と治療をできるだけ多くの男性に受けさせる努力をバックアップします。メンスターの最初のイニシアティブとしては、ケニアの広告代理店等と提携し、エルトン・ジョンエイズ基金、CIFF、ユニットエイドの後援による若い男性対象のHIV自己検査キャンペーンを2019年に実施する予定です。また、現存する診療所に男性専用コーナーの設置、診療時間の延長、コミュニティレベルでもっと男性対策に力を入れるなど、男性対象のHIVサービス提供に限定した戦略をサポートしていきます』
 UNAIDSの最新報告書も指摘しているようにHIV予防はいま極めて困難な状況にありますが、そうした中でいろいろな人がいろいろな場所で動いてもいます。アフリカでもそうなのでしょうし、やや文脈から飛躍して言えば、日本でもそうです。希望を失う必要はありません。
 ハリー王子とエルトン・ジョン卿は2年前にダーバンで開かれた第21回国際エイズ会議で若者とのセッションに参加し、それ以来、いま何が求められているのか、いろいろな人との会話を重ね、若い男性を巻き込むプログラムが必要だと考えるようになったそうです。エルトン・ジョン卿は『状況の半分に対応しないままで解決策を見出すことはできない。流行を終結に導くには男性がその解決策のパーツになる必要がある』とプレナリーで語っています。
 著名人による華々しい打ち上げ花火は、それはそれで必要だと思いますが、そこに至る継続性をこそ重視したい。その意味でもスペシャルなプレゼンテーションだったのでしょうね。

 

『第22回国際エイズ会議がアムステルダムで開幕』 UNAIDSサイトから

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトにも第22回国際エイズ会議開幕の記事が掲載されました。会議のテーマ『障壁を破り、橋を架けよう』については『HIV対策のプログラム策定にはキーポピュレーションへの配慮が十分なされていないというUNAIDSの最新報告書『Miles to go』のメッセージのひとつとも呼応するものだ』としています。開会式におけるシディベ事務局長の演説については『不平等と多様性に対する不寛容が広がり、HIV予防が危機に追い込まれていることに事務局長は警鐘を鳴らした』と伝えていますが、セクハラ疑惑をめぐる抗議で演説が一時、中断を余儀なくされたことには触れていません。ま、触れたくない話題なんでしょうね。

 以下日本語仮訳です。

 

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www.unaids.org

 

22回国際エイズ会議がアムステルダムで開幕

   2018714

 

 第22回国際エイズ会議が723日、オランダのアムステルダムで開幕した。「障壁を破り、橋を架けよう」をテーマにしたこの会議は、キーポピュレーションのより効果的な参加が実現できるよう人権に基づくアプローチを重視している。

 今回のテーマは、HIV対策のプログラム策定にはキーポピュレーションへの配慮が十分なされていないというUNAIDSの最新報告書『Miles to go』のメッセージのひとつとも呼応するものだ。キーポピュレーションとその性パートナーは世界のHIV新規感染の47%を占め、3分の1が注射薬物使用者の感染である東欧・中央アジアでは新規感染の97%に達している。

 23日から27日まで開かれる国際エイズ会議は、グローバルヘルス分野では世界最大の会議であり、科学、アドボカシー、人権について分野を超えて議論を交わす場となっている。参加者は15000人を超え、HIV/エイズの流行に対してエビデンスを踏まえた政策と対策の強化をはかる機会でもある。

 会議はオランダのメイベル・ファン・オラニエ王女、国際エイズ学会のリンダ-ゲイル・ベッカー理事長、UNAIDSのミシェル・シディベ事務局長、世界保健機関WHO)のテドロス・アダノム事務局長、2014ユーロビジョン・ソング・コンテスト受賞者のコンチータ・ブルストさんが開会を宣言した。

 シディベ事務局長は開会式の演説で対策の進展状況は2020年ターゲットの達成ペースになっていないことを強調した。不平等と多様性に対する不寛容が広がり、HIV予防が危機に追い込まれていることに事務局長は警鐘を鳴らした。また、人びとの権利を奪う障壁を打破する必要があることを指摘した。

 事務局長はさらに、ギャップを埋めること、とりわけ資金ギャップの解消が必要なことを強調した。「皆さんと同じように、私も資金ギャップが心配です。必要額と実際に使える額の間には20%のギャップがずっとあります。少額のカットでも重大な結果につながることを私たちは知っています。エイズ対策に十分な額を確保することに交渉の余地はありません」とシディベ事務局長は述べた。

 会議は人権を基本に据え、エビデンスを踏まえたHIV対策促進の必要性を強調している。社会的に弱い立場のコミュニティのニーズにあわせ、各国政府、ドナー、民間企業、市民社会が政治的な約束と説明責任を果たし、ギャップの解消に取り組み、HIV予防の役割を重視する対策の促進である。

 会期中は、全体会議や成果発表、シンポジウム、スキルスビルディングワークショップ、グローバルビレッジ、その他数多くのイベントを通じて知識と発想、成功事例を共有することになる。

 

 

 

The 22nd International AIDS Conference opens in Amsterdam

24 July 2018

The 22nd International AIDS Conference opened on 23 July in Amsterdam, Netherlands. Under the theme “Breaking barriers, building bridges”, the conference will draw attention to the need of rights-based approaches to more effectively reach key populations.

This year’s theme echoes one of the messages in UNAIDS’ latest report, Miles to go—that key populations are not being considered enough in HIV programming. Key populations and their sexual partners account for 47% of new HIV infections worldwide and 97% of new HIV infections in eastern Europe and central Asia, where one third of new HIV infections are among people who inject drugs.

The International AIDS Conference, which will run from 23 to 27 July, is the largest conference on any global health issue in the world and provides a unique forum for the intersection of science, advocacy and human rights. Bringing more than 15 000 participants together, the conference is an opportunity to strengthen policies and programmes that ensure an evidence-informed response to the epidemic.

The conference was officially opened by Princess Mabel van Oranje, the International AIDS Conference Chair, Linda-Gail Bekker, the UNAIDS Executive Director, Michel Sidibé, the Director-General of the World Health Organization, Tedros Adhanom Gebreheyesus, and artist and winner of the Eurovision Song Contest in 2014, Conchita Wurst.

Speaking at the opening ceremony, Mr Sidibé stressed that the pace of progress is not fast enough to meet the 2020 targets. He sounded the alarm on the growing inequalities and intolerance for diversity that are resulting in an HIV prevention crisis. He noted the need to break barriers that exclude people from their rights.

He also highlighted the need to close the gaps, specially the funding gap. “Like you, I worry about the funding gap. There is a persistent 20% gap between what is needed and what is available. We know small cuts can have big consequences. A fully funded AIDS response is non-negotiable,” said Mr Sidibé.

The conference is set to emphasize the need to promote human rights-based and evidence-informed HIV responses that are tailored to the needs of vulnerable communities, activate and galvanize political commitment and accountability among governments, donors, the private sector and civil society and address gaps in and highlight the critical role of HIV prevention.

During the coming days there will be opportunities for sharing knowledge, ideas and good practices through plenary discussions, abstract presentations, symposia, skills-building workshops, attendance at the Global Village community space and numerous independent events.

 

レガシーも波乱も満載 アムステルダムでAIDS2018開幕 エイズと社会ウェブ版340

 一日遅れになってしまいましたが、723日(月)、オランダのアムステルダムで第22回国際エイズ会議(AIDS2018)が開幕しました。27日(金)まで5日間の会議です。公式サイトを見ると、開会式やプレナリー(全体会議)など主要プログラムはYou tubeの動画で見ることができるようになっています。

 http://www.aids2018.org/Live

 

  わざわざ会場に行かなくても、ある程度の様子はつかめる。これは大いに助かりますね。

 ただし、動画はすべて英語で、しかも日本語字幕が付いているわけではなく(当たり前か)、ものぐさのおじさんとしては、だいたいこんなことを言っているようだぞといったくらいにしか理解(というか推測)できないのがちょっとつらいところ。ま、会場にいても同じことではあるのだけど。

 とりあえずOpening & closing sessions ところをクリックして開会式の中継を見てみよう・・・と思ったら、何と2時間1651秒もありますね。それでも開会式としては短い方かな。

 全部観るだけの根気がないので、かなり大幅に飛ばし飛ばし、つまみ食いして観ました。アムステルダムの国際エイズ会議は1992年の第8回に続いて2回目です。開会式はその第8回会議の映像から始まります。

 前回は実はボストンで開催される予定だったのですが、米国のブッシュ政権(父親の方)がHIV陽性者の入国規制を撤廃しなかったので、会議の組織委員長だったジョナサン・マン博士が会議直前になって急遽、「米国では開けない」と会場をアムステルダムに変更しています。

 映像では前回会議におけるそのジョナサン・マン博士の姿が映し出され、エリザベス・テイラーさんのスピーチも流されました。お二人とももう亡くなられていますが、アムステルダムで開く会議の、そしてHIV/エイズとの闘いの、レガシーとして敬意を表したのでしょうね。当時のメモリアルキルトの展示やACT UPのデモの様子も流されています。さまざまなかたちのアクティビズムがあった(し、いまもある)。そのことに対する敬意もまた示されました。

 ああ、行きたかったなあ、でもお金がないしなあ・・・愚痴はさておき。今回の開会式では、エリザベス・テイラーのお孫さん3人が登壇し、エリザベス・テイラー人権賞の受賞者を発表しました。参考までに紹介しておくと、開会式の司会はオマー・シャリフJr.です。名優オマー・シャリフのお孫さんであり、自らも俳優で、著名なゲイアクティビストということです。

 2時間を超える開会式では、さまざまな立場の方のスピーチやパフォーマンスがありましたが、すいません、それは省略します。最後のスピーチを行ったのは国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長でした。

 なんだか、しっくりこない構成です。これはきっと最後に回さなければならない事情があるのだろうなあと思ったら、案の定、スピーチの途中で客席から女性グループの強烈な抗議の声があがりました。UNAIDSの幹部によるセクハラ疑惑への対応がおかしい、もみ消しをはかったのではないかということで、事務局長の退任を求める内容ですね。かなり長い抗議であり、しかも壇上のスクリーンにはこの間、『 私たちはAIDS2018におけるアクティビズムを歓迎する。HIVエイズに対する闘いの不可欠の原則として表現の自由を支持する』といった文字が映し出されてもいました。

 シディベ事務局長は壇上でじっと黙ったままその抗議を聞き、女性グループが立ち去ると再び演説を続けました。HIV/エイズへの対応はいま極めて困難な事態に直面しており、分裂している時ではないといった内容です。

 これは私のまったくの想像ですが、動画を見た限りでは、シディベ氏の演説中に抗議を行うことは認めましょう。シディベさんもその間は黙って聞いていてください・・・みたいな話が組織委員会も含め、開会式の前にあったのではないかと思います。繰り返しますが単なる想像です。今回もまた、アムステルダムは波乱含みの会議なのかもしれませんね。

 

Undetectable = untransmittable(検出限界以下なら感染はしない) UNAIDSが説明書

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が「Undetectable = untransmittable(検出限界以下なら感染はしない)」について、簡潔に説明したExplainer(説明書)を作成しました。公式サイトに掲載されています。日本でも昨年11月のエイズ学会ぐらいから『U=Uキャンペーン』が展開されているので、いいタイミングかもしれません。

説明書そのもののそれほど長いものではありませんが、訳すとなると少し時間がかかりそうです。とりあえずUNAIDSの公式サイトで見つけた(さらに短い)紹介記事の日本語仮訳を作成しました。

 UNAIDS Explainerは新しい解説シリーズのようで、これから他のテーマでも時々、登場するかもしれませんね。

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Undetectable = untransmittable(検出限界以下なら感染はしない)

  UNAIDS 2018720日 紹介記事www.unaids.org

 

  国連合同エイズ計画(UNAIDS)が「Undetectable = untransmittable」についての説明書を作成しました。20年におよぶエビデンスの蓄積により、HIV感染を減らすうえでもHIV治療の効果は高いことが示されています。体内のウイルス量が検出限界以下にまで下がれば、HIV陽性者から他の人にHIVが性感染することはないというエビデンスはいまや明白です。

 一人がHIV陽性でもう一人は陰性のカップルを対象にしたHIV性感染に関する3つの大規模研究が、2007年から2016年までの間に数千人規模で行われました。これらの研究では、ウイルス量が抑制されているHIV陽性者から陰性のパートナーに性行為で感染した事例は1件もありません。ただし、ウイルス量検査を受けなければ、体内のウイルス量が抑制されているかどうかは分かりません。説明書はこのことにも注意を促しています。

 多数のHIV陽性者にとって、セックスをしてもHIVが相手に感染しないというニュースは人生を一変させるものです。コンドームなしでのセックスを選択できることに加え、ウイルス量が抑制されているHIV陽性者の多くにとっては、HIVというウイルスを抱えて生きることに伴うスティグマからの解放感も得られるのです。性行為によって自分から他の人にHIVが感染することはもはやないと認識することは、新たな関係が生まれたり、これまでの関係を維持したりする際に、HIV陽性者が自ら感染を予防しているという意識をしっかりと持てるようにもなります。

 UNAIDSの新たな解説シリーズは、エイズ対策上の重要事項や新たな課題について、分かりやすく情報を伝えることを目指しています。プログラムの担当者に向けた勧告や各国の対策へのアドバイスを盛り込み、短くてもエイズ対策分野の最新知識が分かりやすく得られるスナップショットになっています。

 

 

Undetectable = untransmittable

UNAIDS Feature Story 20 July 2018

Undetectable = untransmittable is the message of a new UNAIDS Explainer. With 20 years of evidence demonstrating that HIV treatment is highly effective in reducing the transmission of HIV, the evidence is now clear that people living with HIV with an undetectable viral load cannot transmit HIV sexually.

Three large studies of sexual HIV transmission among thousands of couples, one partner of which was living with HIV and the other was not, were undertaken between 2007 and 2016. In those studies, there was not a single case of sexual transmission of HIV from a virally suppressed person living with HIV to their HIV-negative partner. The Explainer cautions, however, that a person can only know whether he or she is virally suppressed by taking a viral load test.

For many people living with HIV, the news that they can no longer transmit HIV sexually is life-changing. In addition to being able to choose to have sex without a condom, many people living with HIV who are virally suppressed feel liberated from the stigma associated with living with the virus. The awareness that they can no longer transmit HIV sexually can provide people living with HIV with a strong sense of being agents of prevention in their approach to new or existing relationships.

The new UNAIDS Explainer series aims to inform readers about key or emerging issues in the AIDS response. With recommendations for programme managers and advice for national responses, they are short but informative snapshots of the current knowledge about an area of the AIDS response.

 

The Amsterdam Affirmation: People, Politics, Power(アムステルダム宣言:人、政治、力)

  第22回国際エイズ会議(AIDS2018)が7月23日から5日間、オランダのアムステルダムで開催されます。会議の公式サイトにはそれに先立ち、The Amsterdam Affirmation: People, Politics, Power(アムステルダム宣言:人、政治、力)という文書が公表され、賛同者の署名を募っています。会議が始まれば、その成果文書として位置付けられ、賛同者署名は会議終了後も受け付けられるのではないかと思います。

 署名を検討する際の参考にしていただけるのではないかと考え、日本語仮訳を作成しました。「 Affirmation」には「確約」といった訳語がありますが、そこには強い声明ないしは宣言といった意味合いがあるので、今回はよりなじみやすい訳語として「アムステルダム宣言」を採用しました。

 あくまで翻訳者が個人的に作成した非公式な仮訳であり、文脈を考えて要旨のようなかたちで処理した部分もあります。誤訳もあるかもしれません。引用などをされる際には、正確性を期すためAIDS2018公式サイトの原文(英文)をご確認いただき、原文に基づいてご判断いただくようお願いします。 

 

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アムステルダム宣言:人、政治、力

http://www.aids2018.org/Get-Involved/Take-part/The-Amsterdam-Affirmation

 

 世界のHIVコミュニティが前回、ダーバンで2016年の国際エイズ会議を開催してからたくさんの変化がありました。科学の進歩により、体内のHIV量が検出限界以下なら感染しないということが広く受け入れられ、曝露前予防(PrEP)や治療提供の革新的な方法の普及が進み、治癒やワクチンの研究にも期待できる成果が上がっています。しかし、そうしたサクセスストーリーの一方で、予防対策の歩みは遅く、キーポピュレーションや若い女性・少女の新規HIV感染はいまなお増加しているのです。こうした人たちは依然として構造的なスティグマと暴力の大きな被害を受けています。ポピュリズムの台頭や疑わしい政策とリーダーシップ、財政難などにより、HIV対策は極めて危うい環境のもとにあるのです。エイズの流行は人と政治と力に大きく左右されます。私たちが合意している目標を達成し、ユニバーサルヘルスカバレッジを実現するには、それらの相互作用が極めて重要な意味を持つのです。

 

 

持続可能性を支える

 

グローバルヘルスの課題を伝える

 性感染症(STIs)、結核、ウイルス性肝炎といった重感染症や併存症に対応できるサービスの提供は依然として大きな課題です。いまは活用できていない機会を生かして人間中心の統合的アプローチへの道を切り開き、ユニバーサルヘルスカバレッジの枠組みの中で何百万という人の健康状態を高めていくには、この壁を打ち破る必要があります。同時にこうした流行を終結に導くには、すべての人に良質で手ごろな価格の必須医薬品、診断薬、ワクチンを提供できるようにすることが大切になります。糖尿病や高血圧といった非感染症にも相乗効果が得られるような対策が必要です。

 

エビデンスを踏まえたプログラムを広げる

 グローバル・ギャグ・ルールを含む「反科学主義」の拡大に直面しているとはいえ、科学は依然、中心的な役割を担い続けています。プログラムは実用本位で、人が生きている現実に対応し、質の高いデータをもとにしてそれぞれの地域の実情を把握したものでなければなりません。国、地域、コミュニティの各レベルに焦点を当てた予防プログラムが不可欠です。ハームリダクション(被害軽減策)や包括的性教育、曝露前予防(PrEP)や曝露後予防(PEP)含む性と生殖に関する健康プログラムは、すべての人が共有できるようにしなければなりません。

 

政治の関与を促す

 政治がより積極的に関与し、資金および人的資源を確保することが、予防ワクチンの開発戦略や注射による長期持続型PrEP、HIV完治に向けた科学研究を進めるための鍵になります。また、しっかりとした医薬品安全監視システムを確立するうえでもそれが大切です。さらに、予防と治療のための国内資金を増やすためには政治的な意思と関与が重要であり、取締り中心の薬物政策から支援を重視する環境に変え、ハームリダクションへのアクセスを確保するうえでも必要になります。

 

 

排除に終止符を打つ

 

キーポピュレーションに焦点を当てる

 ゲイ男性など男性とセックスをする男性、薬物使用者、受刑者など拘束状態に置かれている人たち、セックスワーカートランスジェンダーの人たちは、依然としてHIVの影響を極端に大きく受けています。肯定的に力を伸ばしていく教育、就労、社会保障プログラムを通じて、可能性を切り開いていける環境を生み出す必要があります。GIPA原則を進めること、キーポピュレーションの存在を犯罪視し、スティグマと排除、差別を継続させるような法律や政策、法執行を撤廃することなどが、そうした対応に含まれます。

 

ジェンダーの不平等を解消し、性の権利をまもる

 ジェンダーの不平等により、若い女性・少女はとりわけHIV感染に脆弱な立場に置かれています。様々な立場の女性がジェンダーの公平を実現できるようにするためのジェンダー変革的なアプローチが必要です。HIV対策を性と生殖に関する健康と権利のプログラムと統合すること、威圧的な態度やジェンダーに基づく暴力に対応し、男性・少年を巻き込みつつジェンダー平等を進める革新的な方法をとることが、社会レベルでの影響をもたらすアプローチとなります。

 

移住者や先住民など優先的に対応すべき人口集団のニーズを把握する

 保健医療サービスへのアクセスが欠けていること、社会保障上の制限や社会的な排除があることがHIV感染への脆弱性を高める要因になります。このことは、移民や難民、先住民、少数民族といった人たちが実際に経験してきました。とりわけ保守的な状況のもとでは、国境を越えた保健医療サービスの提供計画や遠隔地住民への移動クリニック、「医療ツーリズム」の思い切ったとらえ方などを通じ、HIV関連サービスに対する構造的な障壁を取り除く努力が必要になります。

 

 

政策提言機能の強化

 

最前線の保健医療従事者に投資する

 採用時および就労前、就労中の研修を含め、保健医療従事者が患者本位で質の高いケア、とりわけ若者に対するケアを提供できるようにするための投資を拡大する必要があります。最前線の現場、とりわけコミュニティで働く保健医療従事者は、HIVと他の保健サービスへの包括的なアクセスをすべての人に保障するため、ユニバーサルヘルスカバレッジと保健システム強化を支える動きの先頭に立ち、中心的役割を担うべき立場にあるのです。

 

コミュニティの対応能力の強化

 アクティビストや政策提言者、サービス提供者がないがしろにされている場合には、政治の指導者に責任ある説明を求める存在として、こうした人たちの地位を再確認しなければなりません。すべての国において、サービス提供の場としてのコミュニティスペースには、適切な資金の確保と持続的な運営が可能になるよう支援を行う必要があります。とりわけ、政府にサービスの提供能力が欠けていたり、提供する気がなかったり、市民社会がないがしろにされていたりするところではそれが大切です。

 

人権の擁護にあたる人たちを支援する

 研究者、次世代を担うヤングリーダー、政策提言者を含むHIVコミュニティは、例えば性的な暴力廃絶キャンペーンなど社会変革を求める多くの分野と共通の活動基盤を確保し、協力し合える場を生み出すことがますます必要になっています。他の運動との交流は、HIV陽性者やHIVに影響を受けている人たちが直面するスティグマや差別を解消していくうえで、その背景となる文化的な規範や認識、慣行の変化を促す道を大きく開くことになるでしょう。

 

 

 ここに署名を行った私たちは、HIV対策において最も脆弱性が高く、排除されがちな人たちが取り残されることのないよう、持続可能で相乗効果の高いプログラムの策定を支え、包摂性を重視し、科学者、研究者、市民社会など幅広い政策提言者の声をより大きく伝えていくという約束を再確認します。資金の確保や計画の実施を大きく妨げる保守的なイデオロギーがはびこる中で、アムステルダムを躍動的で包摂性が高く、多分野にまたがる対策に向けた機会としなければなりません。HIVへの対応を通し私たちは人間性に関する根本的な認識を深めてきました。そして、これまでの成果を生かす機会とその成果を失うリスクとの大きな分岐点において、私たちはこの貴重な教訓を忘れてはならないのです。

 私たちは言論の圧迫に屈することはできません。いまこそ人と政治、そして力が一つになり、より公正で包摂性の高い対策を進めていく必要があるのです。

 

 

 

 

The Amsterdam Affirmation: People, Politics, Power

Much has changed since the global HIV community convened at the previous International AIDS Conference in Durban in 2016. Advances in science have been significant, including widespread acceptance that HIV is untransmittable with an undetectable viral load, increased PrEP rollout, innovative treatment delivery methods and promising developments in cure and vaccine research. But while there have been success stories, prevention efforts continue to lag and new HIV infections are still on the rise among key populations and young women and girls. These groups continue to experience high levels of structural violence and stigma. Coupled with a rising tide of populism, questionable political commitment and leadership and declining financial resources, the HIV response is operating in a fragile environment. People, politics and power lie at the heart of the AIDS epidemic. How these intersect will continue to be critically important in achieving the agreed global targets and universal health coverage.

 

 

Supporting sustainability

 

Inform the global health agenda:

Silos in service delivery for co-infections, including STIs, TB and viral hepatitis, and co-morbidities remain. Breaking these down opens up under-utilized opportunities to improve health outcomes and scale up integrated, people-centred approaches within the framework of universal health coverage that could strengthen health outcomes for millions more. But to end these epidemics, access to quality and affordable essential medicines, diagnostics and vaccines for all will be critical. Non-communicable diseases like diabetes and hypertension will also require synergistic responses.

 

Scale up evidence-informed programming:

In the face of a growing “anti-science” agenda, including the expansion of the global gag rule, the role of science continues to be central. Programmes must be pragmatic, responding to individuals’ lived realities and addressing the local epidemic informed by quality data. Prevention programmes that are targeted at the national, regional and community levels will be essential. Common to all must be harm reduction, comprehensive sex education and sexual and reproductive health programmes that include PrEP and PEP.

 

Increase political commitment:

Strengthening political commitment and securing financial and human resources will be key to accelerating scientific research towards preventative vaccine strategies, long-acting and injectable PrEP and HIV cure research, as well as ensuring that solid pharmacovigilance systems are in place. Moreover, political will and commitment is necessary to scale up domestic resources for prevention and treatment and to change prohibitive drug policies into enabling environments that ensure access to harm reduction.

 

 

Ending exclusion

 

Focus on key populations:

Gay men and other men who have sex with men, people who inject drugs, people in prisons and other closed settings, sex workers and transgender people continue to be disproportionately affected by HIV. Enabling environments must be created through affirmative and empowering education, workplace and social protection programmes, including promotion of the GIPA principle and the removal of laws, policies and practices that criminalize and continue to stigmatize, marginalize and discriminate against key populations.

 

Promote gender justice and sexual rights:

Gender inequalities make young women and girls especially vulnerable to HIV. Efforts to achieve gender justice for women in all their diversity must include gender-transformative approaches that have impact at societal levels, integrating HIV and sexual and reproductive health and rights into programmes, addressing coercion and gender-based violence, and engaging men and boys in innovative ways to advance gender equality.

 

Address needs of priority populations, including migrants and indigenous people:

A lack of access to healthcare services, limited social protection and increased social exclusion are just some of the factors that contribute to the heightened vulnerability to HIV experienced by migrants, refugees, indigenous people and racial minorities. Structural barriers to HIV-related services must be addressed, including through effective cross-border health services initiatives, bringing mobile clinics into remote communities and challenging perceptions of “health tourism”, particularly in conservative settings.

 

 

Amplifying advocates

 

Invest in front-line healthcare workers:

Increased investments must be made in healthcare workers, including their hiring and pre- and in-service training, to ensure that they can provide quality and client-centred care, especially to adolescents and young people. Front-line and community healthcare workers, in particular, should also be front and centre in advocating for universal health coverage and health systems strengthening to increase access to comprehensive HIV and other health services for all.

 

Strengthen community responses:

Where activists, advocates and service providers are being sidelined, their place in holding political leaders to account must be reaffirmed. The community space in delivering services must be adequately resourced, supported and sustained in all country contexts, particularly where governments are not able or willing to provide services or where civil society is sidelined.

 

 

Support human rights defenders:

Increasingly, the HIV community, including researchers and the next generation of young leaders and advocates, needs to find common ground with, and mobilize in support of, other coalitions that inspire broader societal change, such as campaigns calling for an end to sexual violence. Standing together with other movements will be a way to change and challenge cultural norms, perceptions and practices to overcome the pervasive stigmatization and discrimination that people living with and affected by HIV face.

 

We, the undersigned, reaffirm our commitment to supporting sustainable and synergistic programming, promoting inclusion and amplifying the voices of a wide range of advocates, including scientists, researchers and civil society, to ensure that the most vulnerable and marginalized are not left behind in the HIV response. Despite prevailing conservative ideologies that bring significant funding and implementation challenges, we must seize the opportunity in Amsterdam to build bridges towards a more dynamic, inclusive and multi-sectoral response. HIV has taught us fundamental lessons about humanity, and we must not forget these lessons at this critical crossroads in the HIV epidemic where we have the opportunity to build on progress to date or risk losing the gains we have made.

We must not be gagged. Now, more than ever, we need people, politics and power to come together to deliver a more just and inclusive response.

 

 

 

 

『MILES TO GO』(道はまだ遠い) エイズと社会ウェブ版339

 ♪君の行く道は~とか、♪ 遠い 遠い はるかな道は~とか、♪帰り道は遠かった~とか・・・ここでなけなしの知識を振り絞って戦後歌謡史を顧みるまでもなく、道は常に遠いものと決まっていました。ま、日本の歌謡曲を知らなくても、国際的にその認識は共通しています(たぶん)。

したがって718日に『MILES TO GO』という新たな報告書を発表した国連合同エイズ計画(UNAIDS)も『あっ、またか』と思われるのを避けたかったのでしょうね。プレスリリースでは冒頭に『stark wake-up call正真正銘、掛け値なしの警報)』を発令したと強調しています。もう少しくだいて説明すると「今回はマジだからね。ほんとにヤバイよ」という感じかなあ。

 

f:id:miyatak:20180720130403p:plain

繰り返しますがUNAIDSが718日、報告書『Miles to go—closing gaps, breaking barriers, righting injustices,(道はまだ遠い 格差を解消し、障壁を打破し、不公正をただす)』を発表しました。パリでPLUS連合(Coalition PLUS)と共催の発表イベントを開き、イベントにおけるミシェル・シディベ事務局長らのコメントを含めたプレスリリースも報告書とあわせ、公式サイトに掲載されています。

そのプレスリリースの日本語仮訳を作成したので、参考までにご覧ください(ずっと下の方に載っています)。見出しにも「時間はもうない」と掲げているように、世界的なHIV/エイズ対策の停滞に強い危機感を表明するリリースになっています。

あくまで仮訳であり、要旨のようなかたちで処理した部分もあります。引用などをされる際には、UNAIDSサイトの原文(英文)をご確認いただくようお願いします。

 

リリースの主見出しは『2020HIVターゲット達成に向けた歩みは遅く、時間はもうない』です。そしてサブ見出は以下の通り。

『約50カ国で新規HIV感染が増加し、エイズ関連の死亡も減少の速度は十分でなく、資金の頭打ち状況が成功を危うくしている。新規感染の半数はキーポピュレーションとそのパートナーであり、この人たちはいまなお必要なサービスを受けられずにいる』

あれ、もう本文に入っちゃったの?と錯覚するほど長いですね。ほめられた見出しの付け方ではありませんが、もうあれも言いたい、これも入れたいということで、ついつい長くなっちゃったのでしょうか。

90-90-90ターゲットは2014年にUNAIDSが提唱し、2016年には国連総会のエイズ終結に関するハイレベ会合で採択された政治宣言にも盛り込まれました。持続可能な開発目標(SDGs)の中でも、国際社会の共通ターゲットの一部として位置付けられています。

90-90-90の達成目標年は2020年なので、2014年を起点とすると昨年が中間の年、2016年からなら今年が中間年になります。したがって、昨年も今年も報告書は90-90-90ターゲットの中間報告的な内容です。

頭の中はもう90でいっぱいというところでしょうか。今年の報告書そのものは読んでいませんが、プレスリリースも通常よりかなり長めなので、感じはつかめそうです。比べてみると、冒頭でも紹介したように今年はより危機感が強まっています。だんだん締め切りが近づいてきたので、そのせいかもしれません。

加えてUNAIDS自身がセクハラ問題への対応に追われているという内部事情もあるのかもしれませんね。ミシェル・シディベ事務局長にとっては2期目の任期をまっとうできるか、それとも任期半ばでの退任を余儀なくされるのか、その正念場ではないかといったことも噂レベルではありますが、少し聞こえてきます。詳しいことは分かりません。どうなんでしょうね。

オランダのアムステルダムでは今月23日から27日まで、第22回国際エイズ会議(AIDS2018)が開かれます。日本から会議に参加する人もいらっしゃるでしょうから、何らかの雰囲気や感触がつかめるかもしれません。戻ってこられたらお聞きするようにしましょう。

ま、そうした話は別にしても、2030年の大目標であるエイズ終結、そしてその前提となる2020年までの90-90-90ターゲットに向けた高速対応といった大きな枠組みの軌道修正は避けがたいのではないでしょうか。

野心的な目標を掲げ、その実現にまい進する。それは21世紀に入ってからの世界のHIV/エイズ対策を成功に導く大きな要因でもありましたが、それでもまだ「道半ば」ではあります。どこまでやれたかを踏まえ、そのうえでどこかに大きく考え違いをしていた部分があるとすればそれは何か、そしてこれまでに足りなかったものは何か、といったことを考えつつ、現実をとらえ直す時期なんでしょうね。

例によって前置きが長くなりました。申し訳ない。以下、プレスリリースの日本語仮訳です。

    ◇

 

2020HIVターゲット達成に向けた歩みは遅く、時間はもうない  UNAIDSが警告

 約50カ国で新規HIV感染が増加し、エイズ関連の死亡も減少の速度は十分でなく、資金の頭打ち状況が成功を危うくしている。新規感染の半数はキーポピュレーションとそのパートナーであり、この人たちはいまなお必要なサービスを受けられずにいる

 http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2018/july/miles-to-go

 

ジュネーブ 2018718日 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は各国に対し、掛け値なしの警報を発している。フランスのパリで本日、新たな報告書の発表イベントをPLUS連合と共催し、その席で世界のHIV対策が極めて危うい状況に追い込まれていることを警告した。2020ターゲットの中間地点で発表された報告書『道はまだ遠い 格差を解消し、障壁を打破し、不公正をただす』は、世界の対策が野心的目標を実現するペースに追いついていないことを警告している。また、2020ターゲットという重大目標を達成軌道に乗せるため、直ちに行動しなければならないと各国に呼びかけている。

 「警報です」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はいう。「すべての領域で後れを取っています。子供の感染についてはこれまでに大きな成果を上げていますが、それも持続可能とはいえません。女性は依然として甚大な影響を受けています。政治の約束を果たせるだけの資金はいまなお確保できていません。そして、キーポピュレーションは無視され続けています。そのすべてが、成果を損なう要因であり、緊急に真正面から対応しなければならないのです」

 

HIV予防の危機

 世界の新規HIV感染は、2010年の220万人から2017年の180万人へと過去7年で18%減少してきた。最も多かった1996年(340万人)と比べると、ほぼ半減しているものの、それでもこのままの減少速度では、2020年までに年間の新規感染者数を50万人以下に抑えるというターゲットは達成できない。

 HIVに最も大きな打撃を受けてきた地域である東部・南部アフリカでは新規HIV感染が最も顕著に減少している。2010年と比べると2017年の新規HIV感染件数は30%減だった。しかし、その一方で世界の約50カ国では新規感染が増加しているという現実もある。過去20年で東欧・中央アジアでは、年間の新規HIV感染数が倍増し、中東・北アフリカ25%の増加となっている。

 

治療の規模拡大が今後も続くとは限らない

 抗レトロウイルス治療の普及により、エイズ関連の死者数は2016年に100万人以下となり、2017年(94万人)は今世紀に入って最も少ない。それでも現在の減少ペースでは、年間のエイズ関連死者数を50万人以下に減らすという2020ターゲットは実現できない。

 この1年の間に230万人が新たに医療を受けられるようになった。年間の治療拡大はこれまでで最も大きく、治療を受けている人の数は全体で2170万人に達している。2017年現在、世界のHIV陽性者3690万人のほぼ60%が治療を受けていることになる。極めて重要な成果ではあるが、3000万人が治療を受けられるようにするという目標を達成するには、これから年間で280万人ずつ増やしていかなければならない。しかし、現状ではむしろ治療普及の拡大ペースは落ちてきている。

 

西部・中部アフリカが後れを取っている

 西部・中部アフリカで2017年に治療を受けているHIV陽性者の割合は子供で26%、成人で41%にとどまっている。東部・南部アフリカの子供59%、成人66%と比べると大きな開きがある。西部・中部アフリカのエイズ関連死者数の減少率は2010年当時と比べ24%にとどまっている。東部・南部アフリカでは42%だった。

 ナイジェリアはこの地域のHIV陽性者の半数以上(51%)を抱えており、ここ数年の新規感染の減少に関してもわずかな成果しかあがっていない。この7年で(年間の新規感染は179000人だったのが17万人となり)減少率はわずか5%9000人)にとどまている。HIV治療は最近の2年間で24%拡大したものの、治療を受けている人はHIV陽性者全体の3人に1人(33%)という状態だ。

 

小児対策の成果にも陰りが出ている

 報告書によると、子供の対策で得られた成果も持続可能なわけではない。子供の新規HIV感染の減少率はこの2年間で8%にとどまっている。2017年には、HIV陽性の子供のうち治療を受けているのは半数(52%)であり、年間11万人がエイズ関連の疾病で死亡している。HIV陽性の妊婦80%が母子感染予防の抗レトロウイルス治療を受けているのに、それでも2017年には18万人の子供が出産や母乳保育によってHIVに感染している。2018年末までに4万人以下に減らすというターゲットにははるかに及ばない状態だ。

 「HIVに感染する子供あるいはエイズで亡くなる子供は一人いるだけでも、それは多すぎます」とシディベ事務局長はいう。「エイズ流行終結は最初から決まっているものではなく、世界はこの警報を受け止め、目標達成に向けた再始動計画に取り組む必要があります」

 

世界の新規HIV感染のほぼ半数はキーポピュレーションで占められている

 報告書はまた、HIVプログラム策定に際し、キーポピュレーションへの配慮が十分になされていないことも指摘している。世界全体のHIV新規感染の47%がキーポピュレーションおよびその性パートナーの間での感染であり、新規HIV感染の3分の1が注射薬物使用者で占められている東欧・中央アジアでは97%に達している。

 「すべての人に健康の権利を保障する。この点に交渉の余地はありません」とシディベ事務局長は語る。「セックスワーカーやゲイ男性など男性とセックスをする男性、受刑者、移住者、難民、トランセジェンダーの人たちはHIVによる影響を大きく受けているのに、HIVプログラムから外されています。こうしたキーポピュレーションにサービスが届くようにする予算がもっと必要です」

 エスワティニ、レソト、マラウィ、南アフリカジンバブエセックスワーカー全体の半数がHIVに感染している。HIV感染のリスクは、女性セックスワーカー13倍、男性とセックスをする男性で27倍、注射薬物使用者で23倍、トランスジェンダー女性で12倍も高くなっている。

 「各コミュニティはUNAIDSの呼びかけに応えようとしています」とPLUS連合のヴァンサン・ペルティエ事務局長は話す。「私たちは適切な予防サービスへのユニバーサルアクセスと差別対策を必要としています。ドナー国、プログラム実施国の両方の指導者たちに約束を守り、資金を確保するよう求めています」

 

スティグマと差別は根強く存在している

 保健医療従事者、法執行者、教師、雇用主、両親、宗教指導者、そしてコミュニティのメンバーらよる差別は、若者やHIV陽性者、キーポピュレーションの人たちがHIVの予防や治療、および他の性と生殖に関する保健サービスを利用することを妨げている。

 調査の対象となった19カ国では、HIV陽性者の5人に1人が保健医療機関の利用を拒否され、同じく5人に1人がHIV感染に関連するスティグマや差別を受けるのを恐れて保健医療施設を避けていると回答している。データが利用できる13カ国のうち5カ国で、40%以上の人が、HIV陽性の子供は学校でHIV陰性の子供と一緒に学ぶべきではないと考えている。

 

女性に対する暴力を止めることが新たな課題となっている

 2017年には、15歳以上の成人の新規HIV感染のうち約58%が女性であり、1524歳の若い女性6600人が毎週、感染している計算になる。HIV感染に対する脆弱性の拡大は、暴力とつながっている。世界全体で3人に1人を超える女性が身体的または性的暴力を受けた経験があり、その経験が親しいパートナーからの暴力であることもしばしばある。

 「不平等、自立できない状態、女性に対する暴力は、女性の人権を侵害するものであり、新規HIV感染の増加に拍車をかけています」とシディベ事務局長はいう。「家庭内でもコミュニティや職場でも、ハラスメント(嫌がらせ)、虐待、暴力を根絶するための努力をやめてはなりません」

 

90-90-90の達成は可能だし、達成しなければならない

 90-90-90に向けて成果は上がっている。HIV陽性者の4分の375%)が自らの感染を知り;2017年には感染を知っている人の79%が治療にアクセスしている。そして、治療につながった人の81%はウイルス量が大きく抑えられている。

 ボツワナカンボジアデンマークエスワティニ、ナミビア、オランダの6カ国はすでに90-90-90ターゲットに到達し、さらに7か国が達成軌道に乗っている。最もギャップが大きいのは最初の90であり;例えば西部・中部アフリカではHIV陽性者の48%しか自らの感染を知らない。

 

結核対策にとって重要な年

 結核TB)患者のHIV治療と診断に大きな成果があがっている。結核患者でHIV感染症の診断を受けた人の10人中9人が治療につながっている。それでも、結核は依然としてHIV陽性者の最大の死亡原因であり、HIV治療を開始した人の5人中3人は、結核の検査や治療を受けていない。20189月に開かれる国連結核ハイレベル会合は、結核/HIVターゲットの達成に勢いをつける機会となる。

 

活動停滞のコスト

 2017年にエイズ対策に使われた資金は約206000万ドルで、2016年より8%増加し、国連総会が設定した2020ターゲットの年間資金の80%に相当している。しかし、多額の資金確保につながる新たな約束はなく、結果として単年度の資金増加が今後も続くことは見込めそうもない。ドナー国からの資金と国内資金がともに増えない限り、2020年ターゲットの達成は望めないだろう。

 

今後の展開

 南アフリカのタウンシップからアマゾン流域の遠隔の村やアジアの巨大都市まで、この報告書に紹介された多数のイノベーションは、保健システムと個々のコミュニティとの協力こそがスティグマと差別を減らし、最もサービスを必要としている人たちの多くにそのサービスを届けることを可能にする事例を示している。

 こうした創意工夫に満ちたアプローチが、今後も2020ターゲット達成に必要な解決策を生みだす力になる。コンビネーションHIV予防 コンドームと自発的男性器包皮切除を含む が大規模に展開されれば、新規HIV感染は人口レベルで減らすことができる。経口薬による曝露前治療(PrEP)は、とりわけキーポピュレーションの感染予防に影響力がある。HIV感染と診断された人の家族や性パートナーにHIV検査とカウンセリングを提供することは、検査へのアクセスを大きく改善してきた。

 東部・南部アフリカの経験は、国内資金および国際援助資金の投資をともに拡大することが、強い政治の意思やコミュニティの関与と相まって、2020ターゲット達成に向けた大きな成果を生み出すことを示してきた。

 「課題にはすべて解決策があります」とシディベ事務局長はいう。「世界規模での革新を進めていくために必要な投資資金を確保し、法的、政策的な環境を整えることは政治指導者と各国政府、国際コミュニティが果たすべき責任です。それができれば、2020年までにターゲットを達成する勢いが生まれることになります」

 

 

2017年現在推計:

世界のHIV陽性者数        3690万人 [3110–4390万人]

治療を受けているHIV陽性者    2170万人 [1910–2260万人]

年間の新規HIV感染者        180万人 [140–240万人]

エイズ関連の疾病による年間死者数    94万人 [67–130万人]

 

 

 

 

UNAIDS warns that progress is slowing and time is running out to reach the 2020 HIV targets

 

New HIV infections are rising in around 50 countries, AIDS-related deaths are not falling fast enough and flat resources are threatening success. Half of all new HIV infections are among key populations and their partners, who are still not getting the services they need

 

 

GENEVA, 18 July 2018—UNAIDS is issuing countries with a stark wake-up call. In a new report, launched today in Paris, France, at an event co-hosted with Coalition PLUS, UNAIDS warns that the global response to HIV is at a precarious point. At the halfway point to the 2020 targets, the report, Miles to go—closing gaps, breaking barriers, righting injustices, warns that the pace of progress is not matching global ambition. It calls for immediate action to put the world on course to reach critical 2020 targets.

 We are sounding the alarm,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “Entire regions are falling behind, the huge gains we made for children are not being sustained, women are still most affected, resources are still not matching political commitments and key populations continue to be ignored. All these elements are halting progress and urgently need to be addressed head-on.”

 

HIV prevention crisis

Global new HIV infections have declined by just 18% in the past seven years, from 2.2 million in 2010 to 1.8 million in 2017. Although this is nearly half the number of new infections compared to the peak in 1996 (3.4 million), the decline is not quick enough to reach the target of fewer than 500 000 by 2020.

The reduction in new HIV infections has been strongest in the region most affected by HIV, eastern and southern Africa, where new HIV infections have been reduced by 30% since 2010. However, new HIV infections are rising in around 50 countries. In eastern Europe and central Asia the annual number of new HIV infections has doubled, and new HIV infections have increased by more than a quarter in the Middle East and North Africa over the past 20 years.

 

Treatment scale-up should not be taken for granted

Due to the impact of antiretroviral therapy roll-out, the number of AIDS-related deaths is the lowest this century (940 000), having dropped below 1 million for the first time in 2016. Yet, the current pace of decline is not fast enough to reach the 2020 target of fewer than 500 000 AIDS-related deaths.

In just one year, an additional 2.3 million people were newly accessing treatment. This is the largest annual increase to date, bringing the total number of people on treatment to 21.7 million. Almost 60% of the 36.9 million people living with HIV were on treatment in 2017, an important achievement, but to reach the 30 million target there needs to be an annual increase of 2.8 million people, and there are indications that the rate of scale-up is slowing down.

 

West and central Africa lagging behind

Just 26% of children and 41% of adults living with HIV had access to treatment in western and central Africa in 2017, compared to 59% of children and 66% of adults in eastern and southern Africa. Since 2010, AIDS-related deaths have fallen by 24% in western and central Africa, compared to a 42% decline in eastern and southern Africa.

Nigeria has more than half (51%) of the HIV burden in the region and there has been little progress in reducing new HIV infections in recent years. New HIV infections declined by only 5% (9000) in seven years (from 179 000 to 170 000) and only one in three people living with HIV is on treatment (33%), although HIV treatment coverage has increased from just 24% two years ago.

 

Progress for children has slowed

The report shows that the gains made for children are not being sustained. New HIV infections among children have declined by only 8% in the past two years, only half (52%) of all children living with HIV are getting treatment and 110 000 children died of AIDS-related illnesses in 2017. Although 80% of pregnant women living with HIV had access to antiretroviral medicines to prevent transmission of HIV to their child in 2017, an unacceptable 180 000 children acquired HIV during birth or breastfeeding—far away from the target of fewer than 40 000 by the end of 2018.

One child becoming infected with HIV or one child dying of AIDS is one too many,” said Mr Sidibé. “Ending the AIDS epidemic is not a foregone conclusion and the world needs to heed this wake-up call and kick-start an acceleration plan to reach the targets.”

 

Key populations account for almost half of all new HIV infections worldwide

The report also shows that key populations are not being considered enough in HIV programming. Key populations and their sexual partners account for 47% of new HIV infections worldwide and 97% of new HIV infections in eastern Europe and central Asia, where one third of new HIV infections are among people who inject drugs.

The right to health for all is non-negotiable,” said Mr Sidibé. “Sex workers, gay men and other men who have sex with men, prisoners, migrants, refugees and transgender people are more affected by HIV but are still being left out from HIV programmes. More investments are needed in reaching these key populations.”

Half of all sex workers in Eswatini, Lesotho, Malawi, South Africa and Zimbabwe are living with HIV. The risk of acquiring HIV is 13 times higher for female sex workers, 27 times higher among men who have sex with men, 23 times higher among people who inject drugs and 12 times higher for transgender women.

 Communities are echoing UNAIDS’ call,” said Vincent Pelletier, positive leader and Executive Director of Coalition PLUS. “We need universal access to adapted prevention services, and protection from discrimination. We call upon world leaders to match commitments with funding, in both donor and implementing countries.”

 

Stigma and discrimination persist

Discrimination by health-care workers, law enforcement, teachers, employers, parents, religious leaders and community members is preventing young people, people living with HIV and key populations from accessing HIV prevention, treatment and other sexual and reproductive health services.

Across 19 countries, one in five people living with HIV responding to surveys reported being denied health care and one in five people living with HIV avoided visiting a health facility for fear of stigma or discrimination related to their HIV status. In five of 13 countries with available data, more than 40% of people said they think that children living with HIV should not be able to attend school with children who are HIV-negative.

 

New agenda needed to stop violence against women

In 2017, around 58% of all new HIV infections among adults more than 15 years old were among women and 6600 young women between the ages of 15 and 24 years became infected with HIV every week. Increased vulnerability to HIV has been linked to violence. More than one in three women worldwide have experienced physical or sexual violence, often at the hands of their intimate partners.

Inequality, a lack of empowerment and violence against women are human rights violations and are continuing to fuel new HIV infections,” said Mr Sidibé. “We must not let up in our efforts to address and root out harassment, abuse and violence, whether at home, in the community or in the workplace.”

 

90–90–90 can and must be achieved

There has been progress towards the 90–90–90 targets. Three quarters (75%) of all people living with HIV now know their HIV status; of the people who know their status, 79% were accessing treatment in 2017, and of the people accessing treatment, 81% had supressed viral loads.

Six countries, Botswana, Cambodia, Denmark, Eswatini, Namibia and the Netherlands, have already reached the 90–90–90 targets and seven more countries are on track. The largest gap is in the first 90; in western and central Africa, for example, only 48% of people living with HIV know their status.

 

A big year for the response to tuberculosis

There have been gains in treating and diagnosing HIV among people with tuberculosis (TB)—around nine out of 10 people with TB who are diagnosed with HIV are on treatment. However, TB is still the biggest killer of people living with HIV and three out of five people starting HIV treatment are not screened, tested or treated for TB. The United Nations High-Level Meeting on Tuberculosis in September 2018 is an opportunity to bolster momentum around reaching the TB/HIV targets.

 

The cost of inaction

Around US$ 20.6 billion was available for the AIDS response in 2017—a rise of 8% since 2016 and 80% of the 2020 target set by the United Nations General Assembly. However, there were no significant new commitments and as a result the one-year rise in resources is unlikely to continue. Achieving the 2020 targets will only be possible if investments from both donor and domestic sources increase.

 

Ways forward

From townships in southern Africa to remote villages in the Amazon to mega-cities in Asia, the dozens of innovations contained within the pages of the report show that collaboration between health systems and individual communities can successfully reduce stigma and discrimination and deliver services to the vast majority of the people who need them the most.

These innovative approaches continue to drive the solutions needed to achieve the 2020 targets. When combination HIV prevention—including condoms and voluntary medical male circumcision—is pursued at scale, population-level declines in new HIV infections are achieved. Oral pre-exposure prophylaxis (PrEP) is having an impact, particularly among key populations. Offering HIV testing and counselling to family members and the sexual partners of people diagnosed with HIV has significantly improved testing access.

Eastern and southern Africa has seen significant domestic and international investments coupled with strong political commitment and community engagement and is showing significant progress in achieving the 2020 targets.

 For every challenge there is a solution,” said Mr Sidibé. “It is the responsibility of political leaders, national governments and the international community to make sufficient financial investments and establish the legal and policy environments needed to bring the work of innovators to the global scale. Doing so will create the momentum needed to reach the targets by 2020.”

 

 

In 2017, an estimated:

36.9 million [31.1 million–43.9 million] people globally were living with HIV

21.7 million [19.1 million–22.6 million] people were accessing treatment

1.8 million [1.4 million–2.4 million] people became newly infected with HIV

940 000 [670 000–1.3 million] people died from AIDS-related illnesses