東京都エイズ通信115号

 メルマガ東京都エイズ通信の第115号(2017年3月)が発行されました。 

archives.mag2.com

 

 今年の東京都内の感染者報告数(3月28日まで)は以下のようになっています。
   ※()は昨年同時期の報告数

 HIV感染者  82件 (86件)
   エイズ患者 20件 (23件)
  合計        102件(109件)

 HIV感染者数、エイズ患者数ともに昨年同時期と同程度のペースで報告されています。

 

2016年速報値 エイズ動向委員会報告

 厚生労働省エイズ動向委員会が3月29日(水)に開かれ、昨年(2016年)の新規HIV感染者・エイズ患者報告の速報値が委員会終了後の記者会見で発表されました。私は記者会見に出られなかったのでAPI-Net(エイズ予防情報ネット)のエイズ動向委員会報告欄から概要を紹介しましょう。
 http://api-net.jfap.or.jp/status/index.html 

 HIV感染者報告 1003件(過去9位)
   エイズ患者報告   437件(過去6位)
     計           1440件(過去9位)

 速報値なので確定値よりはやや少なくなっている(つまり確定値はもう少し増える)と思います。これまでなら速報値が2月の動向委員会で確認され、確定値は5月ごろ発表されるという段取りでした。

 今年は2月28日に予定されていた動向委員会がなぜか延期になり、結果として速報値の発表も1カ月ほど遅れています。何があったんでしょうね。まあ、いいか。これまでの報告の推移グラフにも速報値を加えたので改めて紹介しておきましょう。あくまでつなぎです。増加や減少の傾向を云々するのは確定値が出てからですね。

 

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 委員長コメントのまとめは以下の通りです。
1.平成28年は速報値ではあるが、新規HIV感染者報告数が平成27年よりやや減少し、新規AIDS患者報告数は平成27年より増加した。
2.新規HIV感染者及び新規AIDS患者報告の感染経路としては、性的接触によるものが8割以上で、男性同性間性的接触によるものが多い。HIV感染症は予防が可能な感染症である。HIVに感染していない者においては、適切な予防策をとること、HIVに感染した者においては、まずは自分の感染を知ることが、今後の感染拡大を防ぐために重要となる。国民の皆様には、保健所の無料・匿名での相談や検査の機会を積極的に利用頂きたい。
3.速報値ではあるが、献血における10万件当たりの陽性者件数は昨年に比して減少した。血液製剤によるHIV感染を防ぐため、献血時の問診には適切に回答して頂きたい。また、HIV感染症が疑われる場合は、国民の皆様には保健所等での無料・匿名検査を積極的に利用頂きたい。
4.新規HIV感染者・AIDS患者報告数に占めるAIDS患者報告数の割合は、約3割のまま推移している。早期発見は個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつく。自治体におかれては、エイズ予 防指針を踏まえ、引き続き利便性に配慮した検査相談体制を推進していただきたい。

推計通りなら日本の現状は80-90-90 エイズと社会ウェブ版 264

 国内でHIVに感染している人のうち、自らの感染を知らないでいる人は約5800人。厚労省研究班のこんな推計が昨日、NHKニュースで紹介されました。

www3.nhk.or.jp

厚生労働省によりますと、保健所や医療機関などでHIVの感染が確認された日本人は、去年までにおよそ2万2971人に上っています。
 これに対し研究班は、感染の広がり方や過去のデータなどを詳しく分析して、実際に感染している日本人は、去年末の時点でおよそ2万8300人に上るという初めての推計をまとめました》

 厚労省では一昨日、エイズ動向委員会が開催されているので、そこでデータが共有されたのかもしれませんね。動向委員会関係の方がいらしたら教えてください。

 西浦先生の研究班は研究者が一人という極めて小ぶりの研究体制ですが、山椒は小粒)でぴりり辛いといいますか。研究班の目的は、厚労省エイズ動向委員会のこれまでの報告数の推移など、現時点で利用可能なデータをもとに実際の感染動向(報告でなく)を把握するための数学的な推計モデルを作ることであり、推計値はその副産物ととらえた方がいいかもしれません。
 したがって、この数字はあくまでもそうした研究の中で示された推計であるという前提条件付きで受け止める必要があります。それでも、具体的に何人という数字が出てくると一人歩きを始める。とくにマスメディアではその可能性が高くなります。
 そうしたことを踏まえ、私も(柄にもなく)慎重になっていますが、まあ、だいたい現実に近い推計なのではないかとは思っています。
 数学的なモデルの当否といったことは分かりません。推計のプロセスもさっぱり、あるいはきっぱりと言っていいほど理解できていません。それでもなお、妥当かなあと思うのは以下の理由からです。
 1 これまで国内のHIV/エイズの流行を取材して得た感触との乖離が小さい。
 2 国内のHIV感染推計に関しては、他にも別の手法で研究、分析を重ねてきた研究班があり、その結論もほぼ同じ推計数になっている。
 3 拠点病院の研究班の調査データからも同じような推計数と考えられる。

 私自身が自分で根拠を示せるわけではまったくないのですが、現状について言及するときには推定で5800人前後といったかたちでちゃっかり研究成果を拝借したいと思っています。
 この推計については昨日、感想としてFacebookにも書きました。内容は似たり寄ったりですが、現在およびこれからのHIV/エイズ対策の何を重視すべきかといったことにも少し言及しています。FB上だと「前に書いたけどあれ、どこだったのかなあ・・・」と探すときに大変なので、以下、当ブログにも再掲しておきます。

 HIV感染に気づいていない人が国内でどのくらい暮らしているのか。最近は複数の研究者がそれぞれの手法で推計を行い、おおむね似たような推計値になっている印象を個人的には受けています。
 緻密な分析の当否について、私にはまったく分からないのですが、国内でHIVに感染している人の2割くらいが自らの感染に気づいていないといったところでしょうか。
 逆に言えば感染している人の8割は検査を受けているということですから、UNAIDSの90-90-90ターゲットに関していえば、日本はすでに 80-90-90 の域にまで達しているということになります。検査や治療、支援に携わる多くの人たちの努力の成果というべきでしょう。
 この状態が維持できれば、HIVの新規感染は少しずつ減少に向かうことになるのでしょうね。
 ただし、現状を見ると、この状態の継続というのは社会的にかなり困難というか厳しい環境であるようにも感じられます。
 もう一度、支援の重要性を認識し、それが安心して検査や治療を受けられる社会的な環境を形成し、持続させる大きな力になることを強調していく必要があるのではないでしょうか。

 

♪ハートのエースが出てこな~い

 何とか寒波も切り抜けましたか。朝の江ノ電も通勤客、観光客を取り混ぜ、たくさんの人。鎌倉駅の脇にある花壇にも日が降り注いでいました。

 

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 ちょっと前までここは「えの田」という田んぼでしたが・・・。

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 ね。2014年6月の写真です。いつのまにか変わって、小便小僧もいなくなってしまいましたね。エース不在の印象ですが、さすがにハートの花壇にションベンはしにくいか・・・。

 

日本語仮訳だけ通しで読みたい方はこちらで IAS書簡2017

 国際エイズ学会(IAS)の公式サイトに掲載された2017年の年次書簡については、当ブログで5回に分けて日本語仮訳を掲載しました。

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 毎回の冒頭には、その都度、私の独断と偏見・・・とまでは言いたくないけれど、思い込みの強い感想が付いているので、煩わしく思い、かつ「これがなければなあ」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
 そうかあ、残念だなあと思いつつ、当ブログの基本ポリシーである読者本意(嘘つけ!)も考慮して、感想部分はカットし、日本語仮訳部分のみを一括してHATプロジェクトに掲載しました。手っ取り早く全部、読みたいという方はこちらをご覧下さい。

asajp.at.webry.info

 

 

 

『力強い科学、果敢なアクティビズム』 IAS2017年次書簡その5

 IAS書簡2017の最後のまとめの部分です。書簡全体のタイトルもここから取ったのですね。IASが今年取り組む優先事項を「科学」「人」「前進」の3点にくくって示しています。

エイズ運動の歴史はクライアントと保健医療従事者、アクティビストと政策決定者、研究者とコミュニティの間の協力の物語です。協力することこそがスティグマと差別と排除に終止符を打つ唯一の方法です》

 協力と言ったって、なにせ相手が相手だし・・・などとは言いません。協力の努力も惜しみません。日本のHIV/エイズ対策に対しては、個人的に文句や皮肉や嫌みや愚痴をことあるごとにまき散らしてきたような印象があることは自ら否定はしませんが、それも理解しあえる部分が確実に広がっているという手応えがあっての話です。つまり協力の物語が着実に積み重ねられてきているという実感はあります。希望は(とわざわざ書かなければならないほど痛々しくはありますが)失っていません。

 最後の方に出てくる《人権と社会正義の課題に取り組む投資、アドボカシー、行動を強化するための世界声明「犯罪化の科学」》はどんな声明になるのでしょうか。《Co-develop》となっているので、どこかと一緒に発表するのでしょうね。発表時期は7月のパリ会議(IAS2017)の前ぐらいでしょうか。具体的な評価は内容次第なので、発表を待ちましょう。

 

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力強い科学、果敢なアクティビズム

 

 国内の行動は各国それぞれの対応に任せることを理解したうえで、IASは科学、人、前進という基本指針に則し、2017年の主要課題に取り組むための優先事項をまとめました。

 

科学:

 HIVの流行を良い方向に変える科学の成果を支持し、理解を広める必要があります。

画期的な科学的成果は、会議場で議論しているだけでなく、その成果が必要なクリニックやコミュニティで使えるようにしなければなりません。新たな手法と重要な科学的情報を会員やパートナーに伝え、知識を実践や効果的な政策につなげていくのです。

IASは2017年に・・・

・IAS教育基金を利用し、各地域の科学、コミュニティ分野の地元パートナーと協力しながら少なくとも6つの地域サミットを開催します。すでにモロッコ、ブラジル、ケニア、カナダの会議日程が決まっており、他地域の準備も進んでいます。2016年にはウクライナセネガル、トルコ、ナイジェリアで開き、国および地域レベルの政策変更に結びつけるために最新の科学的成果を伝えました。

・IAS2017で、上記重要課題を積極的に取り上げ、学際的な意見交換の必要性を強調します。パリ会議のプログラムはHIV予防、治療薬の価格とアクセス、流行に対応するための資金見通しなどが重要課題となります。また、HIV完治とがん研究、新たなHIVC型肝炎研究の画期的成果といった分野横断的な課題の重要性も強調されています。

・メンバーには科学を行動につなげるために必要なツールを提供します。具体的には、会議で報告される最新の科学的成果をプレゼンテーションパッケージとして使いやすくまとめた知識ツールキットを作成、配布します。AIDS2016でも作成したこの資料集シリーズは、IASメンバー限定で提供し、専門的な発表やそれぞれの地元でブリーフィングを行う際に使用できます。

 

人:

 流行終結に不可欠なHIV分野の労働力、とりわけ次世代のHIV専門家の能力向上をはかるために投資します。

 保健医療従事者は、より健康的な将来を実現する要です。各国政府や国際ドナー、医療の専門家団体、市民社会と協力して、最前線の医療従事者の処遇を改善し、エイズ対策における貢献を認め、設備が整った環境で働けるようにし、成長とキャリアを積む機会を提供しなければなりません。政策やプログラムの策定には、保健医療従事者が初期段階から参加すべきです。生死に関わるサービスを提供するには何が必要なのか、それを最もよく理解しているのは、サービスを受けるコミュニティの人びとと医療従事者なのです。

IASは2017年に・・・

・臨床医や他の保健医療従事者がHIVケアのスキルを向上させるよう奨学生の数を増やします。奨学制度は現在、小児HIV臨床医学では認められています。HIVケアの専門的な技術を身につけられる機会を今後1年で拡大していきます。

・各国の計画策定者や臨床医、コミュニティメンバーがHIV陽性の患者のケアをしっかりと行えるよう利用者本位の世界的な枠組みを作っていきます。保健医療従事者が様々な人びとや地域の条件を踏まえて働けるよう、IASは2016年に資源を使いやすくする手引きを作成しました。その手引きの充実をはかります。

・コミュニティの成功事例を紹介する「私と私の保健医療提供者」を通して保健医療の最前線で働く人たちの活動を認め、質の高いケア実現の業績をたたえる国際的な基盤を確立します。

 

前進:

 世界的なリーダーシップの継続とエイズ投資の拡大を後押しし、同時に私たちの活動の中心を担うスティグマや差別との闘いを続けていきます。

 エイズ運動の歴史はクライアントと保健医療従事者、アクティビストと政策決定者、研究者とコミュニティの間の協力の物語です。協力することこそがスティグマと差別と排除に終止符を打つ唯一の方法です。IASは2017年に・・・

IASは2017年に・・・

・薬の価格やアクセスに関する課題の解決に向けて、言葉だけでなく行動を起こし、ケアの質を改善できる現実的な解決策を導き出すために、エビデンスに基づき、開かれた会話を進めます。

・人権と社会正義の課題に取り組む投資、アドボカシー、行動を強化するための世界声明「犯罪化の科学」の策定に加わります。

・科学研究の価値、プログラムの実施、コミュニティの参加とアドボカシーなど、HIV投資による世界変革の力を強化します。IASはパートナーと協力し、エイズ資金が世界に与えている影響の大きさを政策決定者が理解するよう働きかけを続けます。

 

 

 

 

STRONG SCIENCE, BOLD ACTIVISM

 

Understanding that “action” starts at home, the IAS has outlined specific priority commitments to address key challenges in 2017 in line with our core guiding principles: Science. People. Progress.

 

 

SCIENCE:

Support scientific advancements that positively alter the course of the HIV epidemic and promote greater understanding of these discoveries.

 

Urgent scientific breakthroughs must move out of plenary halls and into clinics and communities where they are needed most. We will continue to push for new methods to reach our members and partners with vital scientific information to ensure that knowledge is translated into best practice and effective policies.

 

In 2017, the IAS will….

 

 

Host at least six regional summits through the IAS Educational Fund with local scientific and community partners. Already scheduled for this year are meetings in Morocco, Brazil, Kenya and Canada – with other locations to follow. These meetings build on those hosted in Ukraine, Senegal, Turkey and Nigeria in 2016 – educating audiences about the latest science and tying that knowledge to policy change on a national and regional level.

 

Ensure IAS 2017 prioritizes the major challenges outlined above and emphasizes the importance of cross-discipline learning. The programme in Paris will feature essential discussions on HIV prevention, drug pricing and access, and the future of financing the response to the epidemic in addition to showcasing the important intersections between HIV cure and cancer research and new HIV and HCV breakthroughs.

 

Give our members the tools they need to translate science to action. Specifically, we will develop and distribute knowledge toolkits to our members that adapt all of the conference’s best science into an easily shared and adaptable presentation package. This series of resources, which was already developed from AIDS 2016 and is available exclusively to IAS Members, can be used for professional presentations and at-home briefings .

 

 

PEOPLE:

Invest in professionalizing and promoting the HIV workforce – particularly the next generation of HIV professionals – to build the skills and resources that are needed to end the epidemic.

 

Health workers are the linchpins of our hopes for a healthier future. With the collaboration of national governments, international donors, professional medical associations and civil society, we must ensure these frontline workers are adequately compensated, recognized for their contribution to the AIDS response, surrounded by the infrastructure and commodities they need, and provided with opportunities to grow and thrive in their careers. Health workers must be involved from the beginning in setting policy and planning programmes, since they, along with the communities they serve, know how best to link life-saving services with the people who need them.

 

In 2017, the IAS will….

   Support an increasing number of educational fellowships for clinicians and other frontline healthcare workers that help them advance their skills in HIV care. Fellowships are currently available in paediatric HIV clinical science. More opportunities for specializing and professionalizing in HIV care will follow throughout the year.

 

Develop user-friendly global frameworks that support national planners, clinicians and community members to differentiate care for clients living with HIV. These resources will expand upon those created by the IAS in 2016 to ensure health workers have an easy-to-use resource to guide their work across a wider array of populations and geographies.

 

Recognize frontline healthcare workers who represent the gold standard of working with key populations through Me & My Healthcare Provider – a community of best practice providers that establishes an international platform for celebrating their work and recognizing achievements in standard of care.

 

 

 

PROGRESS:

Advocate for sustained global leadership and increased investment on AIDS while keeping the fight against stigma and discrimination at the heart of our work.

 

 

The history of the AIDS movement is a story of the collaboration between clients and healthcare workers, activists and policymakers, and researchers and communities. Working together in the face of seemingly undeniable odds is the only way to end stigma, discrimination and exclusion. In 2017, the IAS will…

 

 In 2017, the IAS will….

 

    Facilitate an open, evidence-based conversation on the linked challenges of drug pricing and access to move beyond rhetoric and describe real solutions that lead to improved quality of care.

    Co-develop a global scientific statement on the “science of criminalization” in order to accelerate investment, advocacy and action on a robust human rights and social justice agenda.

Reinforce the transformational impact of HIV investments across the world including the value of scientific research, programme implementation and community representation and advocacy. The IAS will work with partners to ensure that political decision-makers understand how much AIDS funding has positively impacted the world.

 

世界結核デーでUNAIDSがプレスリリース エイズと社会ウェブ版263

3月24日の世界結核デーにあわせ、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が結核HIV/エイズのプログラムの一層の強化と統合を求めるプレスリリースを発表しました。その日本語仮訳です。

結核HIV陽性者にとって、最大の入院および死亡原因となっている。2015年のエイズ関連の年間死者数は110万人で、このうち約40万人は結核で死亡している。子どもも4万人含まれている》

エイズ関連の年間の死者の3人に1人は結核によって亡くなっているということです。結核対策とHIV/エイズ対策は別個に成立するものではなく、統合できる部分は統合し、相互に補完しつつ効果を高める必要があることは以前から指摘されていましたが、それぞれの治療法の進歩を踏まえ、その必要性はますます高まっていると受け止めるべきでしょう。

昨日のブログでも紹介しましたが、23日のメディアセミナーで、多剤耐性結核の長い闘病生活を経験したエロイザ・セペダ=テンさんの「結核は単に医療の問題ではない。社会的な問題である」という発言はエイズ対策にも結核対策にも共通する重要な課題です。

    ◇

 緊急に対応しなければ、HIV関連の結核の死者を2020年までに75%減らすことはできない UNAIDSが警告 プレスリリース

 http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2017/march/world-tb-day

 

ジュネーブ 2017年3月24日】 世界結核デーの3月24日、UNAIDSは各国に対し、HIV陽性者の結核(TB)による死亡を減らすため一層の努力を要請した。結核HIV陽性者にとって、最大の入院および死亡原因となっている。2015年のエイズ関連の年間死者数は110万人で、このうち約40万人は結核で死亡している。子どもも4万人含まれている。

 「これほど多くのHIV陽性者が結核で死亡し、しかもそのほとんどが診断も治療も受けていない。これは受け入れがたいことです」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長は語る。「HIV結核のプログラムの協力をより強化しなければ、HIVおよび結核分野の目標を達成することはできません」

 世界のHIV陽性者の結核による死亡の70%は、コンゴ民主共和国、インド、インドネシアモザンビーク、ナイジェリア、南アフリカタンザニアザンビアの8カ国で占められている。2020年までにHIV陽性者の結核による死亡を75%減らすというエイズ流行終結に関する2016年政治宣言で約束した野心的な目標の実現には、この8カ国の対策の規模拡大が必要になる。

 保健システムが弱いことから、HIV陽性者が結核診断の機会を失う状態が続いている。2015年には結核にかかっているHIV陽性者の57%が結核治療を受けていない。診断してもケアにつなげられないこと、追跡が十分でないこと、フォローアップがないこと、結核感染のもっとも高いリスクにさらされている人たち―とりわけ、薬物注射使用者、受刑者、移住労働者といった排除されがちな人たち―とうまく接触できないこと、そして治療成績の悪さなどが、成果があがらない原因となっている。2014年には、HIV陽性の結核患者の約11%が死亡している。HIV陰性の結核患者は3%であることと比べ、かなり高い。HIV陽性者の結核による死亡を防ぐには、早期検査と効果的な治療がとりわけ重要になる。

2015年には推計48万件の多剤耐性結核の新規症例があり、薬剤耐性の問題も非常に懸念されている。この点では最近、結核治療の2つの新薬が承認され、60年ぶりに薬剤耐性結核の患者の治療改善に展望が開けるようになった。

UNAIDSはHIV陽性者の結核による死亡をなくすこと、保健システムを強化すること、HIV結核のプログラムのさらなる普及に向けてサービスの統合を進めることを呼びかけている。定期的なスクリーニング検査、予防療法、早期治療といった結核対策は利用しやすく、価格も手頃で、結核による死亡を防ぐ効果が高いことから、各国はこうした対策を含めたHIV予防・治療プログラムの拡充を進める必要がある。

 2016年の政治宣言に基づき、2020年までの高速対応ターゲットの達成に努力している各国に対し、UNAIDSは支援を継続していく。その一環として、優先順位の高い35カ国に対しては、エイズ流行終結に向けて高い効果の期待できるプログラムに焦点を当て、対策を一段と強化するよう求めている。

 

 

UNAIDS warns that countries will miss the 2020 target of reducing HIV-associated TB deaths by 75% unless urgent action is taken

 

GENEVA, 24 March 2017—On World Tuberculosis Day, 24 March, UNAIDS is urging countries to do much more to reduce the number of tuberculosis (TB) deaths among people living with HIV. TB is the most common cause of hospital admission and death among people living with HIV. In 2015, 1.1 million people died from an AIDS-related illness—around 400 000 of whom died from TB, including 40 000 children.

 

“It is unacceptable that so many people living with HIV die from tuberculosis, and that most are undiagnosed or untreated,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “Only by stepping up collaboration between HIV and tuberculosis programmes to accelerate joint action can the world reach its critical HIV and tuberculosis targets.”

 

Eight countries—the Democratic Republic of the Congo, India, Indonesia, Mozambique, Nigeria, South Africa, the United Republic of Tanzania and Zambia—account for around 70% of all TB deaths among people living with HIV. Scaling up action in these eight countries would put the world on track to reach the ambitious target in the 2016 United Nations Political Declaration on Ending AIDS of reducing TB-related deaths among people living with HIV by 75% by 2020.

 

Weaknesses in health systems are continuing to result in missed opportunities to diagnose TB among people living with HIV—around 57% of HIV-associated TB cases remained untreated in 2015. Inadequate linkages to care after diagnosis, poor tracking of people and loss to follow-up, failure to reach the people most at risk of disease—particularly marginalized populations, including people who inject drugs, prisoners and migrant workers—and poor treatment outcomes contribute to the lack of progress. In 2014, around 11% of HIV-positive TB patients died, compared with 3% of HIV-negative TB patients. Early detection and effective treatment are essential to prevent TB-associated deaths, especially among people living with HIV.

 

Drug resistance is also a major concern—in 2015, there were an estimated 480 000 new cases of multidrug-resistant TB. The recent approval of two new medicines to treat TB, the first in more than 60 years, is improving the outlook for people with drug-resistant TB.

 

UNAIDS calls for the elimination of TB deaths among people living with HIV and for health systems to be strengthened and services integrated to allow for a more rapid scale-up of HIV and TB programming. Countries must expand HIV prevention and treatment programmes that include regular TB screening, preventive therapy and early treatment, since they are simple, affordable and effective programmes that prevent TB deaths.

 

UNAIDS is continuing to support countries to Fast-Track their efforts to reach the critical 2020 targets of the 2016 Political Declaration. As part of these efforts, UNAIDS is urging countries to intensify action in 35 high-priority countries to accelerate results by implementing focused, high-impact programmes to advance progress in ending the AIDS epidemic.