2015年新規HIV感染者・エイズ患者報告数速報値 計1413件で2年連続減少 エイズと社会ウェブ版219  

 厚生労働省エイズ動向委員会が2月29日に開かれ、昨年(2015年)の年間報告速報値が発表されました。

 新規HIV感染者報告数 990件 (過去9位)
 新規エイズ患者報告数 423件 (過去8位)

  合計       1413件 (過去9位)

 確定値が5月ごろにまとまるので、趨勢はそれを待って考えるべきなのでしょうが、患者・感染者報告数の合計で2年続けて減少ということで速報値段階で判断する限り、年間1500件前後の横ばいの傾向の中で、微減のかたちになっています。減少傾向にフェイズが移ったという即断はできないように思います。ただし、報告ベースとはいえ、国際的にみてかなり低いレベルの中で横ばい状態を維持しているだけでも、一定の対策の成果はあがっていると、ひとまず評価すべきでしょう。そのうえで、今後も増加傾向に転じないようにしつつ、逆に減少への移行を果たすにはどうしたらいいのか。

 ひと言でまとめちゃうと、感染した人への治療や支援の提供を予防対策の成果に結びつけるということになるのですが、ここでいわゆる「予防としての治療」(Treatment as Prevention=T as P)だけでなく、「予防としての支援」や「予防としての理解」といったこれまでにも積み上げられてきた対策も含めて総合的に効果、成果を探っていく必要があるというごくごく当たり前のことも、あえて付け加えておきましょう。

 エイズ動向委員会の委員長コメントはAPI-Netで見ることができます。
 http://api-net.jfap.or.jp/status/index.html

 参考までに『まとめ』の部分を以下、再掲しておきます。

《まとめ》
1.平成27年は速報値ではあるが、新規HIV感染者報告数及び新規AIDS患者報告数は平成26年に引き続き減少した。女性の新規HIV感染者報告数は過去3年間、46件、50件、57件と数は少ないが増加傾向を示した。
 
2.新規HIV感染者及び新規AIDS患者報告の感染経路としては、性的接触によるものが8割以上で、男性同性間性的接触によるものが多い。HIV感染症は予防が可能な感染症である。HIVに感染していない者においては、適切な予防策をとること、HIVに感染した者においては、まずは自分の感染を知ることが、今後の感染拡大を防ぐために重要となる。国民の皆様には、保健所の無料・匿名での相談や検査の機会を積極的に利用頂きたい。

3.速報値ではあるが、献血における10万件当たりの陽性者件数は昨年に比して減少した。血液製剤によるHIV感染を防ぐため、HIV感染症が疑われる場合、国民の皆様には保健所等での無料・匿名検査を積極的に利用頂きたい。
 
4.新規HIV感染者・AIDS患者報告数に占めるAIDS患者報告数の割合は、約3割のまま推移している。早期発見は個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつく。自治体におかれては、エイズ予防指針を踏まえ、引き続き利便性に配慮した検査相談体制を推進していただきたい。