厚生労働省のエイズ動向委員会が11月16日(水)に開催され、今年(2016年)第3四半期(6月27日~9月25日)の新規HIV感染者・エイズ患者報告数がまとまりました。
新規HIV感染者報告 261件 (前回239件、前年同時期236件)
新規エイズ患者報告 113件(前回112件、前年同時期103件)
合計 374件(前回351件、前年同時期339件)
前回と比べても、前年同時期と比べても、報告はかなり増えています。したがって見出しは「増加傾向」としました。
ただし、3カ月ごとの集計だとどうしても増えたり減ったりの波があるので、1回の報告で傾向を判断することはできません。
あくまで仮の集計ですが、1~9月の新規HIV感染者・エイズ患者報告数を合計すると、1077件になります。今年はもう四半期(10~12月)ありますが、この様子だと年間の報告数は1400件から1500件の間になりそうです。
前回の動向委員会報告の際にも紹介した2000年~2015年(昨年)の年間新規報告数(確定値)のグラフを再掲します。2007年以降の年間報告数は1400件から1600件の間で推移しています。年単位で見るとこの横ばいの傾向が依然、継続中ということですね。
今後、横ばいから減少に向かうのか、増加に転じるのか、それはまだ分かりません。「治療の普及」が新たな感染防止要因となっていることは考えられますが、「エイズはもういいだろう」といった感覚で他の予防対策への投資を怠るようなことになれば、それが逆に拡大要因となる恐れもあります。
若い人たちに情報が届かなくなること、そして、HIVに感染している人が実際に社会の中で生活している現実への想像力が失われること、この二点は特に大きな懸念材料というべきでしょう。
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今回の報告の概要はAPI-Net(エイズ情報ネット)に掲載されています。
その中から、岩本愛吉委員長による委員長コメントの《まとめ》の部分を紹介します。
1.新規HIV感染者報告数及び新規AIDS患者報告数は、共に前回及び前年同時期より増加し、合計数で前回より23件、前年同時期より35件増加した。
2.保健所等におけるHIV抗体検査件数及び相談件数は、共に前回及び前年同時期より減少した。
3.新規HIV感染者は20~30代、新規AIDS患者は30~40代で報告数が多く、いずれも20~70代までの幅広い年齢層において報告が認められた。
4.12月1日は世界エイズデーである。治療の進歩により、社会では既に多くのHIV陽性者が、働き、学び、生活している。HIV/AIDSは過去の問題ではなく、一人ひとりが今、具体的な行動を取ることが重要であることから、本年度は「知っていても、分かっていてもAIDS IS NOT OVER」がテーマとして策定された。また、厚生労働省では、エイズデーに合わせて啓発イベントを実施する。ぜひ何ができるのかを考える機会にして頂きたい。