『ノーマル・ハート』の作者、ラリー・クレイマー氏について (過去の資料から)

 

 テレビ映画部門で2014年エミー賞最優秀作品賞を受賞した『ザ・ノーマル・ハート』について特定非営利活動法人ぷれいす東京の生島さんがFacebookで紹介されていました。そういえば原作者のラリー・クレイマー氏については当ブログで、前にも書いたことがあったなということで、古い資料をひっくり返してみると・・・。

 ありました、ありました。2013年8月1日に掲載したものですが、以来、ブログの引っ越しが2回もあったので、ブログではもう見ることができなくなっています。以下、手元に残っていたサルベージ原稿を再掲するのでご覧いただければ幸いです。今年は何とかこの映画を観る機会がつくれるといいですね。

 

 ◎ラリー・クレーマー氏、集中治療室で同性婚 エイズと社会ウエブ版112  (2013.8.1)
 ニューヨークの病院に入院中のラリー・クレーマー氏が7月24日に病床で同性のパートナーと結婚式を挙げたという。米演劇界最高の栄誉であるトニー賞を受賞した劇作家で、ゲイライツの活動家としても知られているが、私の場合はそれ以上に、エイズ対策史上、最も早くHIV陽性者の人権を守るために立ち上がったエイズ・アクティビストとしての印象が強い。

 ラリー・クレーマー氏は1981年夏、マンハッタンのグリニッチビレッジの自宅アパートに友人、知人を集め、米国大都市圏のゲイコミュニティを襲った謎の奇病(後にAIDSと名付けられる)と闘うための寄付を集めている。その会合が数カ月後のゲイメンズヘルスクライシス(GMHC)創設の出発点だった。1987年には激越な演説でACT UP NYの創設を呼びかけている。まさに、ニューヨークのエイズアクティビズムを主導する人物であり、面白いことに(と言ってはしかられそうだが)GMHCともACT UPともしばらくすると喧嘩別れしてしまう。さすがにアーチストというか、相当、アクの強い方ですね。

 しかし、筋は通っている。今回の同性婚は病院の集中治療室で行われた。同性婚に対し懐疑的な意見の持ち主だったということから、どうして宗旨替えしたのだろうか、さすがのラリーも年貢の納め時か・・・などと思われた方も少なくなかったようだが、ニューヨークタイムズのART面の記事を読んだ限りでは印象は全然、違う。腸閉塞の手術を受け、術後の経過は順調で、もうすぐ退院できそうな感じだ。同性婚に対しては、連邦結婚防衛法がある限り、州法レベルで婚姻が認められてもあまり意味がないというのが持論だったようで、その連邦結婚防衛法に対する違憲判決が先月、連邦最高裁で出されたことから、「いまこそ結婚の時だ」と判断したという。この辺の潮目の見極め方はさすがというか、筋が通っている。近くにいるとたぶん、やっかいなおじさんではないかと思うが、太平洋を隔てて仰ぎ見ると、やっぱりすごい。ニューヨークタイムズの記事を日本語で要約してくっつけておきますので参考にしてください。

 英文の記事はこちら。
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2013/07/25/larry-kramer-is-married-in-hospital-ceremony/?smid=tw-share&_r=1

ラリー・クレーマー氏が病院で結婚式

トニー賞に輝く戯曲「ノーマル・ハート」の作者であり、同性愛者の権利を求めて長く闘ってきたアクティビストでもある劇作家ラリー・クレーマー氏が7月24日(水)、入院先のニューヨーク大学ラゴーン医療センター集中治療室で、パートナーのデビッド・ウェブスター氏と結婚した。クレーマー氏は腸閉塞手術を受けた後、集中治療室に入っている。ウェブスター氏は25日(木)、電話インタビューで、結婚式の日取りはクレーマー氏の健康状態が悪化する数週間前に決まっていたと語った。
グリニッチビレッジのアパートのテラスで挙式の予定だったが、集中治療室に変更され、約20人の友人、親戚らが昼の結婚式に出席したという。
ウェブスター氏によると、クレーマー氏の入院時には、ウェブスター氏は旅行中で、「戻って来た時には彼は話せるようになっており、結婚式のため20人を集中治療室に招待したと語った」という。二人は前の週に購入したカルティエの指輪を交換し、誓いの言葉の代わりに心を込めて話をしたという。
クレーマー氏は1980年代初め、政府がエイズの流行に積極的に対応しようとしなかったことに抗議し、いち早く行動を起こした人物の一人であり、ゲイメンズヘルスクライシスやACT UPの設立に中心的役割を担った。また、ゲイ男性とエイズに関する作品を数多く発表し、最も有名な「ノーマル・ハート」は2011年リバイバル演劇部門トニー賞を受賞。クレーマー氏自身も今年6月、トニー賞の人道的奉仕特別賞を受けている。
 クレーマー氏は、同性愛者の結婚を許可する州法に対しては、結婚を異性間のカップルに限定する連邦結婚防衛法がある限り、懐疑的な見解を保持していた。生活上の実質的な利益はあまりもたらさないとの理由から、2011年にはそうした関係を「気分が良くなるだけの結婚」と評したこともある。異性間の結婚によってもたらされる何百という利益が、連邦法のために同性間のカップルには認められていなかったからだ。しかし、ウェブスター氏によると、最高裁が先月、5対4で連邦結婚防衛法を違憲とする判決を出したことから、 クレーマー氏はいまこそ結婚の時だと決断したという。
クレーマー氏は78歳。建築家であるウェブスター氏は67歳。1970 年代にデートをし、 1990年代半ばからパートナーとなっていた。ウェブスター氏によると、クレーマー氏は金曜日に入院し、日曜朝、バイパス手術を受けた。経過は良好で、間もなく一般病室に移れるという。「リバーパークで行われた結婚披露宴には彼は出席できなかったけれど、退院したらもう一回、パーティーを開きます」とウェブスター氏は語った。