メルボルンの第20回国際エイズ会議(AIDS2014)はもう閉幕ですね。他の仕事に追われ、ほとんどフォローできませんでしたが、20日の開会式の重要演説を一つ紹介しましよう。マイケル・カービー元判事のAIDS2014開会式のジョナサン・マン賞受賞記念講演です。日本語仮訳ををHATプロジェクトのブログに2回に分けて掲載しました。
記念講演1
http://asajp.at.webry.info/201407/article_15.html
(解説) オーストラリアで最も重要な法律家として国際的にも著名なマイケル・カービー元判事が7月20日、メルボルンで開かれた第20回国際エイズ会議(AIDS2014)の開会式でジョナサン・マン賞受賞記念講演を行いました。おそらくは今回の会議における最も重要な演説でしょう。
ジョナサン・マンは世界のエイズ対策の牽引役だった研究者で、1998年にニューヨーク発の航空機の墜落事故で亡くなっています。カービー元判事が記念講演を依頼されたのはマレーシア航空17便の撃墜事件の何週間も前ですが、マン氏を偲ぶ賞の受賞記念講演は、同じく航空機の墜落により死亡した6人のAIDS2014参加予定者の追悼の辞にもなりました。
カービー氏は、理不尽な暴力の犠牲になった何人かのエイズアクティビストの名前も挙げ、反同性愛法などHIV対策を妨げる法律や法施行を強く批判しました。また、生前のジョナサン・マンがしばしば指摘していたエイズパラドックス(HIVに感染した人たちを処罰し、排除しても、人々が検査を受け、エイズによる死亡や苦痛が減っていくことはなく、逆にHIV陽性者を守ることで、HIV感染やエイズによる死亡も減っていく)を紹介し「法律と政策は、エイズの流行に対する解決策の一部であり、決して問題の一部であってはならない」と語っています。
記念講演2
http://asajp.at.webry.info/201407/article_16.html
(解説)オーストラリアのマイケル・カービー元判事のジョナサンマン賞受賞記念講演の後半です。
カービー判事はエイズ対策の6つの教訓をあげています。要約すると以下のようになります。前回も紹介しましたが、エイズパラドックスは「HIVに感染した人たちを処罰し、排除しても、HIV感染は減らず、逆にHIV陽性者を守ることがHIV感染の予防にも効果がある」といったところでしょうか。
1 科学的な根拠に基づくものであること
2 当事者の声を聞くこと
3 政治指導者にエイズパラドックスを辛抱強く説明すること
4 エイズパラドックスは政党的立場を超えて実現出来ること
5 感染症対策の伝統的手法を超えて考えること
6 人々の生命を守るために法律や政策を変える勇気を持つこと