「2014年を振り返る」 TOP-HAT News第76号から エイズと社会ウェブ版169 

 TOP-HAT Newsの第76号(2014年12月)をエイズソサエティ研究会議のHATプロジェクトのブログに掲載しました。
http://asajp.at.webry.info/201412/article_5.html


   ◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 2014年を振り返る

2 来年は東京開催 日本エイズ学会学術集会・総会

3 横浜、京都のAIDS文化フォーラムも日程が決まっています

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 最初の「2014年を振り返る」では、HIV/エイズ分野の主な出来事を10件、紹介しています。再掲になりますが、以下の通りです。「もっと重要なことがあったよ」というご指摘もあるかもしれませんね。2014年がどんな年だったのかを判断するための叩き台と考え、それぞれの10大ニュースを考えるきっかけにしていただければ幸いです。


1 はじめに 2014年を振り返る
 寒波と総選挙の師走が慌ただしく過ぎていきます。2014年も残りわずかですね。今年の世界エイズデー解散総選挙のあおりを受けた感もぬぐえませんが、こういうときこそ継続的な課題としての情報発信はしっかりと行っていきましょう。厚労省世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマ『AIDS IS NOT OVER~まだ終わっていない』はまさしく、いま必要なメッセージですね。そして、東京都のエイズ予防月間のテーマ『私のコト。』も一段とメッセージの重要度が増した印象です。

 今年はどんな年だったのか。エイズ対策の観点から主な出来事を10項目、ピックアップしてみました。

ウガンダの反同性愛法に憂慮(2月)
 http://asajp.at.webry.info/201402/article_5.html
 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/08/03/144100
 昨年12月のナイジェリアに続き、ウガンダでも2月、同性愛行為を犯罪の対象とし、罰則を厳しくした改正反同性愛法が成立しました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)や世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)はこうした動きに対し、有効なHIV対策をさまたげるものとして繰り返し憂慮を表明しています。ウガンダの場合、同性愛の関係を「援助または扇動」する行為も懲役刑の対象となっていましたが、8月に憲法裁判所から法律を無効とする決定が出されています。

・米国映画『ダラス・バイヤーズクラブ』が第86回アカデミー賞の主演、助演両男優賞を受賞(3月)
 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/03/18/205400
 主演男優賞マシュー・マコノヒー、助演男優賞のジャレッド・レトはいずれもHIV陽性者役でした。レトは受賞スピーチで「これはエイズとの闘いで亡くなった3600万人に捧げられた賞です。そして、自分が何者であり、誰を愛しているかという、そのことのために不当な扱いを受けたあなたたちの賞です。世界が注視する中で私はいま、あなたとともに、そしてあなたのために、ここに立っています」と語りました。

・東京レインボープライド2014のパレードに安倍昭恵さんが参加(4月)
 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/04/28/142400
 「AIDS IS NOT OVER~エイズはまだ終わっていない」をメッセージに掲げたLiving Together計画のフロートに安倍首相夫人、昭恵さんが飛び入り参加。HIV陽性者の長谷川博史さんとともにエイズとの闘い、そしてLiving Together(一緒に生きている)という考え方に理解を呼びかけました。

・2013年の国内における新規HIV感染者・エイズ患者報告数は過去最多1590人(5月)
 http://www.ca-aids.jp/features/105_hiv_1590.html
 わが国の年間新規報告は2007年以降1500件前後で推移しており、「高止まりのまま横ばい」(エイズ動向委員会、岩本愛吉委員長)の傾向が続いていました。その中での過去最多報告です。

・akta存続の危機(通年)
http://www.ca-aids.jp/features/109_akta_dounaru.html
東京・新宿二丁目のコミュニティセンターaktaはHIV/エイズ予防啓発拠点として、首都圏のMSM(男性と性行為をする男性)のHIV感染予防に大きな貢献を果たしてきました。海外から視察に訪れる専門家も多く、エイズ対策分野の迎賓館と呼ばれることもあります。そのaktaをはじめ全国に6カ所ある同様のコミュニティセンターが厚労省エイズ対策予算の削減により存続の危機に追い込まれようとしています。

メルボルンで第20回国際エイズ会議(AIDS2014)開催(7月)
http://asajp.at.webry.info/201407/article_12.html
 会議の開幕2日前の7月18日にはウクライナでマレーシア航空機撃墜事件が起き、亡くなった乗客の中には国際エイズ学会(IAS)のジョープ・ラング元理事長ら会議参加予定者6人が含まれていました。

・西アフリカのギニア、リベリアシエラレオネエボラ出血熱の流行が拡大(3月~)
 http://asajp.at.webry.info/201411/article_2.html
 重大な公衆衛生上の危機となった西アフリカのエボラ流行に対し、UNAIDSの公式サイトにも特設ページが設けられました。ミシェル・シディベ事務局長が緊急対応を呼びかけています。

・UNAIDSが報告書『高速対応:2030年のエイズ終結に向けて』を発表(11月)
 http://www.ca-aids.jp/features/122_unaids.html
 報告書は2030年のエイズ流行終結を目指し、今後5年間の対策強化の重要性を強調。2020年までに90-90-90(HIV陽性者の90%が検査で感染を知り、その90%が治療を受け、その90%が体内のウイルス量を検出限界以下に抑える)を実現する必要があるとしています。その段階での世界の年間新規HIV感染者数は推定50万人ということです。

・米CDCの公式サイト特集ページ『 バイタルサインズ』で、HIV検査、治療の普及の必要性を特集(11月)
 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2014/11/30/000928
 UNAIDSは2020年までに90-90-90を目指していますが、現実はどうなのか。医療基盤の整った米国の状況をCDCが報告しています。米国内の120万人のHIV陽性者のうち86%はすでに検査で感染を知っているけれど、実際に治療を受けている人は40%にとどまり、治療の成果で体内のウイルス量が低く抑えられている人は30%です

世界エイズデーを中心に大阪エイズウィーク開催(11~12月)
 http://osaka.aids-week.com/
 第28回日本エイズ学会学術集会・総会が12月3~5日に大阪で開催されたのに合わせて1日の世界エイズデーを含む前後12日間が大阪エイズウィークとして位置づけられ、イベントや講演会などさまざまなエイズ啓発活動が展開されました。東京都のエイズ予防月間(11月16~12月15日)と並び、今後も継続的に実施されることを期待したいですね。