4266 パレード、サプライズ参加の背景 エイズと社会ウエブ版132

 

 FACE BOOKではすでにお伝えしましたが、昨日427日(日)午後、東京レインボープライド2014のパレードが行われました。3番目に登場したLIVING TOGETHER計画のフロートには、安倍昭恵さんが乗り込み、日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの前代表、長谷川博史さんとともに「AIDS IS NOT OVERエイズはまだ終わっていない~」というメッセージを伝えました。渋谷、原宿のパレードコース沿道では「えっ、見てみて」と驚きの声も上がっていましたが、昭恵さんのサプライズ参加はおおむね好意的に受け止められていたように思います。

 

昭恵さんのスーツは白、長谷川さんの服装は黒が基調になっており、さらにその後方上段であでやかな立ち姿を披露されていたホッシーさんは赤いドレスでした。ちなみにフロートのすぐ後でパレードを仕切っていたジャンジーさんは誰かが「セサミストリートビッグバードみたい」と評したイエローコスチューム。初夏の青空と新緑も加わり、カラーコーディネートもなかなかのものです(蛇足ながら付け加えれば、くすんだ茶色の普段着で参加したおじさんも約1名。ま、これはこれで多様性のひとつの表現ということで・・・)。

 

 昭恵さんはエイズ対策と国際保健について検討するUNAIDS/ランセット委員会の委員であり、同時にこの1年、新宿のコミュニティセンターaktaを何度か訪れるなど、国内においてもエイズ対策の現場の人たちと交流を続けてきました。パレードへの参加もそうした積み重ねの延長線上に位置づけるべきでしょうね。UNAIDSの公式サイトには、今年21314日にロンドンで開かれたUNAIDS/ランセット委員会の最終会合で昭恵さんが行ったスピーチがPDF版で紹介されています。

http://www.unaids.org/en/media/unaids/contentassets/documents/speech/2014/02/20140213_SP_A.Abe_Lancet_en.pdf

 

 このスピーチについてはランセット誌上でリチャード・ホートン編集長が「もちろん私たちは安倍夫人の参加を歓迎してはいたが、先週彼女が行ったような自らの言葉による力強いスピーチを期待していたわけではなかった。彼女は国際的なエイズの流行への対応が人間の連帯という価値を反映していることを明らかにし、注目を集めた」と激賞したほどです。英文のままというのもちょっと残念なので、誠に僭越ではありますが、私が日本語仮訳を作成しました。あくまで個人的に訳したものであり、訳し間違えもあるかもしれないので、ちょっと変だぞと思う部分があれば、英文で確認してください。以下、仮訳です。後に英文も付けておきます。

 

 

日本国首相夫人、安倍昭恵さん

日時:2014213

場所:英国ロンドン

 エイズを克服し国際保健の充実をはかるUNAIDSランセット委員会

 

 ありがとうございます。皆さん、ありがとう。

 私は大きな野心のある人間ではありません。

 エイズとの世界的な闘いに加わることになるとは思ってもいませんでした。でも、いまは皆さんと一緒になれて、感謝しています。本当にそう思います。

 これこそがずっと私が待ち望んできたことだと思います。皆さんが私に新しい自分を教えてくれました。本当に感謝しています。

 約10年前、東南アジアのある国を訪れたときのことでした。目を閉じることができませんでした。目の前の信じられない光景に私の目は開いたままでした。

 人の骨を詰めた袋が山積みにされていたのです。

 そう、その病院ではそれほどたくさんの人がエイズで亡くなっていたのです。山のような袋です。泣くこともできませんでした。それでも、患者の皆さんは、具合が悪いのに笑顔で私のところに来て、一人一人が私を抱きしめてくれました。

 そのとき、私は悟りました。一緒に生きていくことを最後に妨げているものは私の心の中にある。HIV陽性者を抱擁するための最後の1メートルも私の心の中にあります。

 大きな成果が達成されてきました。

 しかし、1メートルなのです。それが私たちの心の深い入り江となってHIV陽性者に対し正当化することのできない差別をもたらす結果を招いています。

 少しずつ、アフリカのいくつかの国や日本の東京で、私は長谷川博史さんのようなHIV陽性者と知り合い、一緒に活動するようになりました。HIV陽性者とどのように交流していくのか、あるいは目を背けてしまうのかということは、私たち自身の姿を映し出す鏡のようなものだと考えるようにもなりました。

 社会から疎外され、そのために声なき存在となっている人々のために話をすることができるのかどうかということでもあります。

 私は委員会に何らかの貢献ができるのかどうか、それは分かりません。

 それでも、私はこれからの人生を通し、声なき人の声を伝えるアンプとしての役割を果たし、エイズの終わりという目標に取り組むことを心に決めました。

 私たちはまだ、長いトンネルの中にいます。しかし、決して止まらずに進んでいかなければなりません。

 私を仲間として迎えていただいた皆さんに改めて感謝を申し上げます。

 

 

By: Mrs. Akie ABE, First Lady of Japan

Date: 13 February 2014

Place: London, UK

Occasion: The UNAIDS and Lancet Commission: Defeating AIDS – Advancing global health

 

Thank you, thank you all, so very much.

I am not a person of big ambition.

I have never expected that one day I would be working for the world-wide fight against AIDS. But now, joining you, I feel grateful. ....I really do.

Indeed, I have realized that this is what I have long wanted to do myself. You have shown me my new self, for which I am thankful, very much.

That was in one of the countries in South East Asia, about ten years ago, when I could not close my eyes. My eyes were wide open because what was in front of me was something so unbelievable.

It was a pile of bags full of human bones.

Yes, in that hospital, lost lives due to AIDS were so great in number, there was a mountain of bags. I could not even cry. But then the patients, all very much sick, came to me smiling, and each gave me a hug.

At that time, I realized. The last obstacle, in our way of living together, had lied deep in my heart. The last one meter to embracing people living with HIV, equally, was also in my heart.

Much progress has been made.

However, a mere one meter. That is the gulf so deep that continues to trap us all with unjustifiable discrimination toward people living with HIV.

It is what prevents us from boldly advancing to ending AIDS, and to building a society where all of us, with or without the HIV, could live happily together, helping each other.

Over time, in some of the African countries, and also in Tokyo, Japan, I’ve got acquainted with people living with HIV, like Hiroshi Hasegawa-san, and worked closely with them. I have developed a thought that how we interact with, or close our eyes toward, persons living with HIV, is a reflection of who we are.

It is a reflection of whether we can speak out for the socially marginalized, and therefore, often times, voiceless.

I do not know how I can give any added value to the Commission.

But I have made up my mind that throughout the rest of my life, I should work as a self-appointed, public amplifier, amplifying the voice of the voiceless, and the cause that in our life time we must work to end AIDS.

We are still in a long tunnel. But we must proceed, and never stop.

Thank you all once again for having me as your peer.