UNAIDS事務局長が来年6月末退任を表明 任期を半年前倒し エイズと社会ウェブ版360

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ事務局長が1213日のPCB(プログラム調整理事会)で、来年(2019年)6月末に退任する意向を明らかにしました。シディベ氏の任期は2019年末までですが、それより半年早い退陣となります。

 UNAIDSの公式サイトには、1213日付で『UNAIDS理事会が「改革への課題」を直ちに実行するよう要請(UNAIDS Board calls for immediate implementation of UNAIDS agenda for change)』という見出しのプレスリリースが掲載されています。組織としてのUNAIDSはいま、惨憺たる状況のようですが、見出しだけみると、その危機感はあまり伝わってきません。

 英語が不得意なうえ、うかつなことでも定評のある私などは、プレスリリースの以下の英文を読んで、そうか、事務局長は改革という有終の美を飾って任期をまっとうするつもりなのか、しぶといなあ・・・とうっかり感心してしまったほどです。

The Executive Director of UNAIDS also told the PCB that he wanted to have an orderly transition of leadership at UNAIDS in the final year of his term. He informed the UNAIDS Board that its meeting in June 2019 would be his last Board meeting and he would complete his duties at the end of June 2019.

(日本語仮訳:UNAIDS事務局長はPCBに対し、自らの任期の最後の年に秩序ある指導者の交代が進められることを望んでいると述べた。彼はPCBに対し2019年6月が自分にとって最後の理事会になり、6月末で自らの任務を完遂したいと伝えた)

 改めて読み直してみればシディベ氏にとって現状はすでに「死に体」であり、退任の半年前倒しを申し出ることで、何とか「秩序ある指導者の交代」というかたちにしてほしいという交換条件を出し、PCBもそれを了承したということでしょうか。

 経過を簡単に説明しておきましょう。

 UNAIDSは今年春に退任した当時の事務局次長のセクハラ疑惑により、組織の在り方が問われ、独立の専門家委員会が調査を行ってきました。委員会はオーストラリア人権委員会元委員長のジリアン・トリッグス委員長をトップに4人の委員で構成されています。最初は5人でしたが、1人は国連機関の幹部ポストに就任したため途中で外れています。委員会は12月の理事会に報告書を提出しましたが、その内容はシディベ氏に極めて厳しいものでした。 

 11日提出の報告書PDF版はこちら。

 http://www.unaids.org/sites/default/files/media_asset/report-iep_en.pdf

 

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  また、同時に提出された事務局の改革案はこちらです。

 http://www.unaids.org/sites/default/files/media_asset/management-response-to-iep-report_en.pdf

 

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 すいません。英文なので、とても全部は読み切れません。UNAIDSプレスリリースに加え、CNN14日付ニュース

 https://edition.cnn.com/2018/12/14/world/michel-sidibe-unaids-into/index.html

 および、CNNサイトのオピニオン欄に掲載されている米医学ジャーナリスト、ローリー・ギャレットさんの論評

https://edition.cnn.com/2018/12/15/opinions/unaids-sexual-harassment-laurie-garrett/index.html

 英医学誌ランセットのリチャード・ホートン編集長の論評

 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)33164-7/fulltext

 といったところを読んで、おおよその内容にあたりを付けました。

以下はその範囲での感想です。報告書を読んだ方がいらっしゃれば、こんな内容だったよ、そこはちょっと違うんじゃないの、といったご指摘をいただくようお願いします。

 

 報告書は『UNAIDS事務局は危機的状況であり、通常の業務にも支障をきたしている』としています。

 シディベ氏は2009年に事務局長に就任するとただちに人事の大刷新を行い、前任のピオット事務局長が任命した高官の何人かを解雇し、他の職員を重用しました。

 ホートン編集長によると、報告書は『現事務局長におけるUNAIDSが目覚ましい成果を上げてきたこと』は認めつつも、『カリスマ的かつ独裁的な』リーダーシップのスタイルが『個人崇拝』と『えこひいき』の傾向を助長し、内向きで『ハラスメントと権力の乱用に甘い』環境を生み出してきたと指摘しています。

 『えこひいきや隠ぺいや不正の黙認、報復』といった土壌を生み出した責任の多くは事務局長にあり『UNAIDSがこの沈滞状況から脱し、スタッフが自信を取り戻し、適切な手続きのもとに差別のない運営ができる組織に戻るには、行動力があり信頼のおける指導者を任命しなければならない』とも述べています。

 この人のもとでは改革などもはや望めないから、早く変えた方がいいということでしょうね。

 ギャレットさんは《UNAIDS理事会と国連事務総長室は行動を急ぎ、新しい年を迎える前にシディベとその一党の退陣を求め、信頼に足るテクノクラート(専門技術者)を暫定指導者にすべきだ。公式の選任プロセスは2019年のできるだけ早い時期に開始しなければならない》《資金もグローバリゼーションへの関心も低下しつつある中で、HIVとの闘いは危機に直面している。HIV陽性者は自らの闘いのために声を上げ続けなければならない》と書いています。

 もうすぐホリデーシーズンの休暇に入ってしまうので、年内の退陣というシナリオはちょっと考えにくいように思いますが、報告書の事務局長批判は極めて厳しく、それに勢いを得て内外の批判が一気に噴出している感もあるので、この体制のままシディベ氏が「秩序ある交代」のために半年間、持ちこたえるのはかなり苦しいかもしれません。なにより、混乱状態をさらに半年も引き延ばすことになると、ギャレットさんが指摘するように国際的なHIV/エイズ対策への妨げや信頼の喪失も拡大しそうです。

 CNNニュースは《UNAIDSの最大のドナー国のひとつであるスウェーデン政府は水曜日(12日)にシディベ氏が自ら去るか解任されるまで、すべての財政支援を控えると発表した》と報じています。

 スウェーデン政府はUNAIDSにとって、米国に次ぎ世界第2位の資金拠出国ということです。なぜスウェーデンが・・・という点に関しては、次はだれがUNAIDSを率いていくのかといったことも含め、いろいろと憶測も広がってきそうですが、私は何の根拠も持ち合わせていないので、ここでは触れないでおきましょう。

 他の国はどう対応するのか。UNAIDSは財政的にもすでに苦境に追い込まれつつあり、新しい指導者のもとで再出発を目指すとしても、よりスピード感を持った対応が求められそうです。

 

 ところで、シディベ氏は就任の翌年の201010月と昨年2月の2回、日本を訪れています。個人的にはその2回ともお会いしてお話をうかがう機会がありましたが、昨年の来日時には予定変更が相次ぎ、ずいぶん印象が変わったなと感じたことを思い出します。ひと言で評すれば、長期にわたって組織のトップの座にいることで権力に慣れ、気まぐれな行動が周囲を振り回すようになってしまったといいますか・・・。

 最初の来日時には、日本記者クラブで記者会見を開きました。

https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/15122/report

 二度目の来日の際も222日の午後、日本記者クラブで記者会見をお願いしていたのですが、身内に急用ができたということで会見をドタキャンし、当日の朝、帰国してしまいました。司会をお引き受けしていたので、それはないだろうという釈然としない思いが私には残りましたが、あとで考えると、当時すでに批判の声が上がっていた幹部職員のセクハラ疑惑を追及されるのが嫌でさっさと帰ってしまったのではないかと思います。

 恥をしのんでいえば、こちらはセクハラ疑惑の存在すら当時は知らなかったのですが・・・。まあ、いいか。

 以下、1213日付プレスリリースの日本語仮訳です。

   ◇

国連合同エイズ計画(UNAIDS)理事会が「改革への課題」を直ちに実行するよう要請

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2018/december/pcb43

ジュネーブ 20181213日 UNAIDSプログラム調整理事会(PCB)はUNAIDSに対し、事務局におけるセクシャルハラスメントやいじめ、権力の乱用を含むハラスメント対策に取り組む「マネージメントの対応(UNAIDS改革への課題)」を完全に実施するよう求めた。この改革への課題は1211日に事務局長から理事会に提出されていた。

 この決定はスイスのジュネーブで開かれた第43回理事会で本日、行われた。また、PCBは実施状況を監督するための作業部会を設置すること、20193月までに独立専門委員会の報告について検討する臨時理事会を開くことも決めた。UNAIDS事務局の職員組合の声明、および職場におけるハラスメントにPCBの注意を喚起したことに対しては、歓迎の意を示した。

 「改革に手をこまねいている時間はありません。行動することでUNAIDSをより強く、より良い組織にしていきたい」とミシェル・シディベ事務局長は語った。「多様な人たちが働く場のモデルになるようUNAIDSのすべてのスタッフと協力していきたい」

 また、UNAIDS事務局長はPCBに対し、自らの任期の最後の年に秩序ある指導者の交代が進められることを望んでいると述べた。彼はPCBに対し20196月が自分にとって最後の理事会になり、6月末で自らの任務を完遂したいと伝えた。

 「UNAIDSの成果に誇りを持っています。過去10年にわたり何百万という人の生命を救い、何百万もの新規HIV感染を防ぐ助けになってきました。UNAIDSのスタッフは最も大きな財産であり、ともに働く栄誉にあずかることができました」とシディベ氏は語った。「円滑な移行を確実に果たせるよう努力し、スタッフのことを第一に考え、私たちが奉仕する人たちに最善の成果が届くようにすることを約束します」

 UNAIDSの改革への課題は、UNAIDSのスタッフがこれまでの成功をさらに生かし、HIV陽性者およびHIVに影響を受けている人たちに最大限の成果を提供きるようにするうえで不可欠なものとなる。改革は「スタッフ中心のアプローチ」「compliance and standards」「leadership and governance」「management」「capacity」の5つの行動領域に焦点が当てられ、各領域でUNAIDS事務局によるキーアクションの概要が示されている。

 UNAIDSは、互いを尊重し、透明で、責任を明確に定めた職場環境づくりの先頭に立ち、サービスを必要とする人たちのために職員が最大限の貢献を果たせるよう、あらゆるかたちのハラスメント、いじめ、権力の乱用をなくすことを繰り返し約束している。

 

 

UNAIDS Board calls for immediate implementation of UNAIDS agenda for change

 

GENEVA, 13 December 2018—The UNAIDS Programme Coordinating Board (PCB) has called on UNAIDS to fully implement the management response (UNAIDS agenda for change) to address harassment, including sexual harassment, bullying and abuse of power, at the UNAIDS Secretariat which was presented to Board members by the Executive Director of UNAIDS on Tuesday 11 December.

The decision was agreed by the members of the PCB at the conclusion of the 43rd meeting of the PCB in Geneva, Switzerland, today. The PCB agreed to establish a working group to oversee the immediate implementation of the management response and to discuss the report of the Independent Expert Panel in a special PCB meeting before March 2019. The PCB also welcomed the statement of the UNAIDS Secretariat Staff Association and the critical role they played in bringing to the PCB’s attention the issue of harassment at the workplace.

We don’t have a moment to lose in moving forward our management response. Our actions will make UNAIDS stronger and better,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “I look forward to working with all staff to make UNAIDS a model workplace for staff in all their diversity. I look forward to an inclusive, transparent and open dialogue and collaboration with staff in shaping a new UNAIDS.”

The Executive Director of UNAIDS also told the PCB that he wanted to have an orderly transition of leadership at UNAIDS in the final year of his term. He informed the UNAIDS Board that its meeting in June 2019 would be his last Board meeting and he would complete his duties at the end of June 2019.

I am proud of the successes of UNAIDS. In the past 10 years we have been instrumental in saving millions of lives and averting millions of new HIV infections. The staff of UNAIDS are our greatest asset and I am privileged to serve alongside them,” said Mr Sidibé. “I will work to ensure a smooth transition and pledge to keep my focus on our staff and delivering results for the people we serve."

UNAIDS’ agenda for change will be critical in ensuring that the staff of UNAIDS can continue to build on these successes and deliver maximum results for people living with and affected by HIV. It focuses on five action areas: a staff-centred approach, compliance and standards, leadership and governance, management and capacity. Each area outlines key actions that the UNAIDS Secretariat will undertake.

UNAIDS reiterates its commitment to lead by example in eliminating all forms of harassment, bullying and abuse of power by creating a respectful, transparent and accountable environment that enables all staff to contribute their full potential to deliver for the people they serve.

 

『2020年に何が起きるのか』

 

 現代性教育研究ジャーナルのNo93(2018年12月15日発行)が配信されました。14ページに連載コラム『多様な性のゆくえ One side/No side』の20回目が掲載されています。 

www.jase.faje.or.jp

 

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 2020年は東京オリンピックパラリンピックの年ですが、それだけではなくて・・・。
 ということで、波乱含みですね。今年の漢字は『災』に決まったそうですが、2年後は『再』になるかどうか。
 『再び』『災』が訪れるようだと、それはそれで少々、つらいですね。

 

第1回UHC国際デーに寄せて エイズと社会ウェブ版359

 1212日は第1回ユニバーサル・ヘルス・カバレッジUHC)国際デーでした。20171212日に国連総会がこの日をUHC国際デーにするという決議を採択し、1年の準備期間を経て初の記念日を迎えたということです。

 国連の公式サイトには特設ページがあります。英文ですが、せっかくの機会なので、参考までに紹介しておきましょう。 

International Universal Health Coverage Day 12 December

 第1回のテーマは"Unite for Universal Health Coverage: Now is the Time for Collective Action."  日本語に訳すと「結束してユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現しよう:今こそ、力をあわせて行動する時だ」といったあたりでしょうか。もうちょっと直截にメッセージが伝わるような訳が用意されているかもしれませんね。ご存知の方がいらしたら教えてください。

 

 国連広報センターのサイトには、アントニオ・グテーレス事務総長のUHC国際デーに寄せるメッセージの日本語訳が掲載されています。『私たちがこの日を記念するのは、健康が基本的人権であり、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の達成に欠かせないからです』ということです。全文はこちらでご覧ください。

 

www.unic.or.jp

『すべての人が必要な医療を受けられる』というのは当然のことのようでいて、じゃあ、具体的にどうすればそれが実現できるのかというと、そう簡単なことではありません。

 

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 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトにもミシェル・シディベ事務局長のメッセージがプレス声明として掲載されています。  

www.unaids.org

 たぶんこちらは誰も日本語に訳す人がいないでしょうから、自分で仮訳を作りました。

 『世界の不平等はむしろ増しています。1%の富裕層が、世界の富の半分を独占しているのです。最貧国の平均寿命は、最も豊かな国々よりはるかに低く、貧困のために長く生きられず、未来も失われています。不平等は各国間だけでなく、一つ国のコミュニティの間にもあり、弱い立場に置かれていたり、排除されたり、偏見にさらされたりしている人たちが置き去りにされています』

 最近のニュースを見ていると、さまざまな分野のさまざまな出来事の中で、優秀な経営者は法外な報酬を得て当然みたいな指摘がときどき登場します。どうしてこういう世の中になっちゃったんだろうね・・・と貧しいおじさんは若干のひがみも込めて嘆いたりしたくなる日々ですが、本当に、どうしてこういうことになっちゃったんだろうね。

 今年の121日は世界エイズデー30周年でした。そして1212日が第1UHC国際デーということになると、どうしてもこの30年のエイズ対策の苦闘と成果に焦点を当てたくなります。UNAIDSの皆さんにも同様の気持ちがあるのでしょうね。プレス声明は次のように述べています。

 『世界的なHIVへの対応は、そのための方法を示してきました。しっかりした政治のリーダーシップ、コミュニティの関与、科学的なエビデンスを踏まえた対応によって、世界の流行の軌道を変えることができるのです。HIVの予防と治療のターゲットを締め切り通りに達成することが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成にも大きく貢献することになります。そして、その両方が持続可能な開発目標の実現に向けても大きな成果をもたらすことになります』

 HIV/エイズ対策の経験があったからこそ、UHCが実現すべき目標として語られるようになり、ひいてはSDGsの成否にも関わってくる。少々、強引な論理展開のようにも見えます。ま、SDGsUHCに乗り遅れてしまったら、HIV/エイズ対策も立ち行かない。背に腹はかえられないという事情も一部にはあるのでしょうね。

ただし、エイズ取材を30年以上続けてきた感想からいうと、この辺りは共感できます。苦し紛れの印象にならないように、もう少し、説得力を持って、しかもわかりやすく説明していただけると嬉しいですね。

以下、シディベ事務局長のプレス声明日本語仮訳です。

 

 

 

UNAIDSプレス声明

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジUHC)国際デーに寄せるメッセージ

 

 健康はすべての人にかかわる問題です。世界はアルマアタ宣言ですべての人に健康をと呼びかけて以来、40年以上にわたって、質の高い保健医療サービスへのアクセスを手ごろな価格で確保できるようにするため闘ってきました。

 長い道のりを経て、保健医療へのアクセス改善をはかり、質を高めてきた結果、世界の平均寿命は62歳から72歳にのびています。それでも平等な成果とはいえません。今日でも、世界人口の半数は、必要不可欠な保健医療サービスを十分に得られずにいます。費用が負担できなかったり、不適切だったり、特定の集団には利用できないようになっていたり、そもそも利用できない状態だったりするためです。

 世界の不平等はむしろ増しています。1%の富裕層が、世界の富の半分を独占しているのです。最貧国の平均寿命は、最も豊かな国々よりはるかに低く、貧困のために長く生きられず、未来も失われています。不平等は各国間だけでなく、一つ国のコミュニティの間にもあり、弱い立場に置かれていたり、排除されたり、偏見にさらされたりしている人たちが置き去りにされています。

 真にユニバーサルという意味でのユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するには、平等で、包摂性が高く、社会正義を実現できるような成果が必要です。人を中心に考え、人権に基づくアプローチとコミュニティ主導のサービス提供が必要だということです。同時に法改正や政策変更、スティグマと差別、ジェンダー不平等の解消など健康状態に大きな影響を及ぼす社会的要因に取り組むことも必要です。

 世界的なHIVへの対応は、そのための方法を示してきました。しっかりした政治のリーダーシップ、コミュニティの関与、科学的なエビデンスを踏まえた対応によって、世界の流行の軌道を変えることができるのです。HIVの予防と治療のターゲットを締め切り通りに達成することが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成にも大きく貢献することになります。そして、その両方が持続可能な開発目標の実現に向けても大きな成果をもたらすことになります。

 今年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジUHC)国際デーのテーマ『結束してユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現しよう:今こそ、力をあわせて行動する時だ』を踏まえ、すべての人にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ運動に加わることを呼びかけます。結束があれば、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジをすべての人に確保することは現実になるのです。

 20181212日 UNAIDS事務局長、ミシェル・シディベ

 

 

 

Message on the occasion of Universal Health Coverage Day

Health is everyone’s concern. The world has been striving for access to quality and affordable health services since the Declaration of Alma-Ata, which called for health for all more than 40 years ago.

We have come a long way since then—improvements in access to, and the quality of, health-care services have increased life expectancy globally from 62 to 72 years. Yet progress is far from equal. Today, more than half of the world’s population do not have full access to essential health services, because they are unaffordable, inadequate, inaccessible for certain groups or simply unavailable.

There is increasing inequity around the world, with the richest 1% of the population now owning half of the world’s wealth. Life expectancy in the poorest countries of the world is appreciably lower than in the wealthiest, and living in areas blighted by poverty can mean a shorter life span and a lost future. The disparity is observed between countries and between different communities within countries, with the most vulnerable, marginalized and stigmatized being left behind.

Making progress towards universal health coverage that is truly universal means making progress towards equity, inclusion and social justice. It means a people-centred, human rights-based approach and community-led service delivery, as well as a recognition of the need to address the social determinants of health, including necessary reforms of laws and policies and removing stigma and discrimination and gender inequity.

The global response to HIV has illustrated the critical measures—decisive political leadership and commitment, community engagement and a response informed by scientific evidence—that can change the course of a global epidemic.

Reaching time-bound HIV prevention and treatment targets will make an important contribution to achieving the universal health coverage targets, and together will significantly accelerate progress towards realizing the Sustainable Development Goals.

In recognition of the theme of this year’s Universal Health Coverage Day, “Unite for universal health coverage: now is the time for collective action”, I call on everyone to embrace and contribute to the universal health coverage movement. United, we can make universal health coverage a reality for all.

12 December 2018

Michel Sidibé

Executive Director of UNAIDS

 

http://www.un.org/en/events/universal-health-coverage/

HIV関連のスティグマと差別をなくす世界パートナーシップが発足

1210日は国連総会が世界人権宣言を採択して70周年の記念日ということで、ジュネーブでは記念行事が開かれ、その席上で『あらゆるかたちのHIV関連スティグマ・差別を解消するための世界パートナーシップ』が発足しました。このことを伝えるUNAIDSFeature storyの日本語仮訳です。

 訳してみたら、このFeature story自体は中身が薄く、こういうことがありましたということが分かる程度ですね。翻訳もおざなりになってしまいました。

 UNAIDSのサイトにはあわせて16ページの冊子も紹介されており、こちらはもう少し内容的に期待ができそうです。時間があれば訳してみたいけれど、年の瀬は何かと忙しくて・・・。いずれ、また(と言っているうちにどんどん時間が過ぎていきますね)。

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 HIV関連のスティグマと差別をなくす世界パートナーシップが発足

 20181210日 UNAIDS Feature storywww.unaids.org

 

 人権尊重の責務と約束があるにもかかわらず、HIV関連のスティグマと差別は依然、

世界中のすべての社会に広がっている。

 スティグマと差別への対応をより強化することを求め、市民社会2017年に呼びかけたことを受け、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、UN Women、国連開発計画(UNDP)および世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)はあらゆるかたちのHIV関連スティグマ・差別を解消するための世界パートナーシップの招集に同意した。

 世界パートナーシップは国連人権宣言採択70周年の1210日、スイスのジュネーブで開かれた記念イベントの席で発足した。イベントには、タイ国連ジュネーブ代表部のファンポブ・プラングプレヨーン次席大使、マラウィのダン・ナマリカ保健長官、ポルトガルラクエル・デュアルテ保健副大臣UNAIDS調整理事会(PCB)コミュニティ代表のシムラン・シャイク氏らがスピーチを行った。

 パネリストらは、世界パートナーシップが焦点を当てるべき分野-保健、教育、職場、家庭、司法制度、人道危機状態-で、HIV関連のスティグマと差別の解消に効果があることが証明されているプログラムを示した。

 「このパートナーシップは加盟国が約束したことを実現に移し、すべての人がHIV関連の権利を享受できるようにするために、有効性が証明され、資金が裏付けられたプログラムを進めていくことです」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長は述べた。

 「世界HIV陽性者ネットワークは、この画期的なパネルの共催者となったことをうれしく思います。このパネルはHIV関連のスティグマと差別に対応するコミュニティの最善の戦略を世界全体が責任をもって実行していける目標へと変えていくことができます」とGNP+のハビエル・ウリケイド・ベロク理事長はいう。

 HIV陽性者や若者、キーポピュレーションの人たちは、ジェンダー性自認、人種、民族、年齢、薬物使用、性的指向、移住などを理由にした差別を経験している。こうした幾重にも重なるスティグマと差別がHIVに対する脆弱性を増し、健康や就労や教育などの権利を損なっているのだ。

 イベントの最後には、UNAIDSPCBの非政府組織代表団が、共同スポンサー機関や加盟国政府、市民社会、キーポピュレーション、コミュニティ、パートナーに対し、世界パートナーシップに加わり、HIV関連のスティグマと差別を解消するための各国の具体的な行動をリードし、支援するよう呼びかけた。

 

 

 

 

Feature story

Launch of a global partnership to eliminate HIV-related stigma and discrimination

10 December 2018

Despite the existence of human rights obligations and policy commitments, HIV-related stigma and discrimination continues to be widespread around the world and in all sectors of society.

Following a call from civil society in 2017 to accelerate and scale up action to address stigma and discrimination, UNAIDS, UN Women, the United Nations Development Programme and the Global Network of People Living with HIV (GNP+) agreed to co-convene the Global Partnership to Eliminate All Forms of HIV-Related Stigma and Discrimination.

The global partnership was launched on 10 December on the 70th anniversary of the adoption of the Universal Declaration of Human Rights, during an event in Geneva, Switzerland. The panel of people speaking at the event included Phanpob Plangprayoon, the Deputy Permanent Representative of Thailand to the United Nations Office and Other International Organizations in Geneva, Dan Namarika, the Secretary for Health of Malawi, Raquel Duarte, the Deputy Minister of Health of Portugal, and Simran Shaikh, a community representative to the UNAIDS Programme Coordinating Board (PCB).

The panellists presented programmes that have proved to be effective in reducing HIV-related stigma and discrimination in the areas in which the global partnership will focus—health care, schools, the workplace, the family, justice systems and emergency and humanitarian settings.

This partnership aims to translate Member States’ commitments into well-resourced programmes that are proved to work and that can result in the enjoyment of HIV-related rights for all,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS.

The Global Network of People Living with HIV is pleased to be a co-convenor of this critical and ground-breaking global partnership that seeks to transform our communities’ best strategies for addressing and measuring HIV-related stigma and discrimination into actionable and accountable global targets and goals,” said Javier Hourcade Bellocq, GNP+ Board Chair.

People living with HIV, adolescents, young people and key populations experience discrimination, including discrimination based on their gender and gender identity, race, ethnicity, age, drug use, sexual orientation and migration status. These added layers of stigma and discrimination increase their vulnerability to HIV and undermine their rights, including the right to health, work and education.

At the end of the event, the UNAIDS PCB nongovernmental organization delegation called on Cosponsors, Member States, civil society, key populations, communities and partners to join the global partnership and lead and support concrete country actions and investments to end HIV-related stigma and discrimination.

『日本 UNAIDSの大切なパートナー』

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が日本向けファクトシート『JAPAN A valued Partner of UNAIDS(日本 UNAIDSの大切なパートナー)』を作成しました。裏表2ページのチラシスタイルで、UNAIDSが国際社会の共通目標として掲げる90-90-90ターゲットの達成状況や世界のエイズ対策に果たす日本の資金貢献などが分かりやすくまとめられています。
 公益財団法人エイズ予防財団が翻訳を担当した日本PDF版もあります。こちらでご覧ください。

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世界エイズデー30周年に寄せて TOP-HAT News 第123号(2018年11月)

 エイズ学会が終了し、大阪から昨晩、帰ってきました。疲労困憊の状態です。齢を取ると遠征はきついね。TOP-HAT News 123号、遅ればせながら掲載します。12月1日は世界エイズデー30周年でした。どうして世界エイズデーは12月1日になったのか。巻頭ではそのあたりのことも少し紹介しました。

 結論を先に言っちゃうと「日付自体にあまり深い意味はなかったようです」ということになってしまうのですが、それはそれで理由はありました・・・という分かったような、分からないような説明です。でも、「そうだったのか」と思うでしょ。

 ま、読んでください。

 

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第123号(201811月)

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TOP-HAT News特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに  世界エイズデー30周年に寄せて

 

2 世界エイズデー国内啓発キャンペーンで特設ページ

 

3 20207月で活動を終了へ  Act Against AIDS

 

4 結核HIV』 日本語版を作成

 

◇◆◇◆◇◆

 

1 はじめに 世界エイズデー30周年に寄せて

 121日が世界エイズデーとなったのは1988年のことでした。

その前年の87年秋から世界保健機関WHO)のエイズ特別対策本部(SPA)でエイズ啓発のための記念日創設が検討され、翌881月にロンドンで開かれたエイズ対策世界保健大臣会議で正式に決定しています。

参考までに付け加えておくと、SPA88年にエイズ世界対策本部(GPA)に名称を変更し、さらにその活動は1995年から国連合同エイズ計画(UNAIDS)に引き継がれています。

 世界エイズデーはどうして121日なのでしょうか。調べてみると、日付自体にあまり深い意味はなかったようです。最初に症例が報告された日というわけではなく、HIV/エイズ関連の画期的な発見があった日でも、衝撃的な事件があった日でもありません。

強いて理由を探せば、12月にしないと準備が間に合わなかったということでしょうか。1月に制定が決まったとはいえ、国際的な周知には時間がかかる。できれば年の後半にしたい。1988年は米国の大統領選挙の年でもあったので、選挙投票日(11月の最初の月曜日の次の火曜日)の前や直後は避けたい。そう考えると、12月かなあ、でも年の瀬も押し迫ってくると、これもまた、まずいしなあ・・・と消去法で候補をしぼっていき121日になりました、ということだったのではないでしょうか。

どちらかというと、あまり注目はされていなかった印象ですね。でも、様々な行事の端境期に設定されたことで、次第にキャンペーンとしての注目度が高まり、世界エイズデーは保健分野で最も有名な国際記念日となりました。

1988年は国際エイズ学会(IAS)が発足した年でもあります。

1985年にアトランタで開かれた第1回国際エイズ会議の参加者は2000人でした。医科学分野の専門家による比較的、小規模な学会だったといっていいでしょう。

しかし、流行は拡大を続け、国際エイズ会議の規模も拡大していきました。88年の第4ストックホルム会議は参加者7500人、94年の第10回横浜会議は1万人を超えています。

米国のレーガン政権がHIV/エイズ対策に真剣に取り組まないことに怒りを表すアクティビストたちがACT UPを結成し、ニューヨークを中心に様々な抗議行動を展開するようになったのも1988年からでした。

エイズの最初の症例が米国で報告された1981年からはすでに7年が経過していましたが、延命のための有効な治療法はまだ確立されておらず、エイズの病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した人たちが、一定の期間を経て衰弱し、次々に亡くなっていく時期でもありました。

その現実に対する怒りと悲しみを抱え、世界規模で広がる新興感染症の流行にどう対応したらいいのかを考え、切迫感をもって行動に移す。世界の保健分野の担当大臣が集まって会議を開き、エイズ研究分野の国際的な専門家組織が生まれ、アクティビストが奇襲ともいうべき抗議行動を展開し、そして121日が啓発のための記念日になる。それが1988年でした。

世界エイズデーは今年、創設30周年の節目を迎えます。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は『Know your status』(感染の有無を知ろう)』を2018年のキャンペーンテーマに掲げました。厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する国内啓発キャンペーンのテーマは『『UPDATE! エイズ治療のこと HIV検査のこと』です。

また、世界エイズデーを中心とする東京都のエイズ予防月間(1116日~1215日)のテーマは『みんなで描こうステキなミライ』です。

1世界エイズデー1988年当時と比べると、HIV/エイズをめぐる状況は大きく変わっています。治療の進歩によりHIVに感染している人たちが感染していない人と同じくらい長く生きていくことが期待できるようになりました。治療を続け体の中のウイルスの量を低く抑えることができれば、HIV陽性者から他の人に性行為でHIVが感染するリスクは実質的にゼロになることも明らかになっています。治療の進歩は予防対策にも大きな成果をもたらすことが期待されているのです。

知識にも、行動にもUPDATEが求められています。

しかし、HIV感染の流行はそれでも続いている。その現実を直視する必要もあります。世界的にみても、国内でも、HIVの新規感染は期待されていたほどには減っていません。どうしてなのか。30周年の節目となる今年の世界エイズデーは、もう一度、そのことを考える機会でもあります。

 

 

 

2 世界エイズデー国内啓発キャンペーンで特設ページ

 エイズ情報ネット(API-Net)に平成30年度世界エイズデーキャンペーンの特設ページが開設されました。トップページのバナーをクリックしてください。

 http://api-net.jfap.or.jp/

 東京都のエイズ予防月間については、東京都保健福祉局の公式サイトでご覧ください。『東京都予防月間とは』というページでリーフレットもダウンロードできます。

 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kansen/aids/yobo_gekkan/index.html

 

 

 

3  20207月で活動を終了へ  Act Against AIDS

音楽業界を中心に1993年からエイズ啓発活動を続けてきたAct Against AIDSAAA)が公式サイトに『これからの啓発活動についてのお知らせ ~【AAA 90-90-90 by 2020】』という告知記事を掲載しました。20207月末で活動を終了するということです

 https://www.actagainstaids.com/

毎年121日の世界エイズデーの前後に全国各地で開催される「AAAコンサート」を通じ、エイズについて知ったという方も少なくないでしょう。四半世紀を超える長い期間にわたり、充実した啓発活動を続けてこられたことに深く感謝したいと思います。

 

 

 

4 結核HIV』 日本語版を作成

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の冊子『結核HIV』の日本語PDF版がエイズ予防情報ネット(API-Net)にアップされました。

 http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20181012

 世界全体でみると、2017年の結核による死者は年間160万人で、このうちの30万人はHIV陽性者です。今年926日にはニューヨークで国連総会結核ハイレベル会合が開かれ、2030年の結核終結を目指す政治宣言が採択されました。その宣言の中でも、結核対策とHIV/エイズ対策を統合して進めていくことの重要性が強調されています。

 日本では戦後間もない時期のような蔓延状況は克服されていますが、2017年の罹患率は人口10万あたり13.3で、世界保健機関WHO)の分類では依然、「低蔓延国」(人口10万あたり10.0以下)には達していません。2020年までに低蔓延国となることを目標に対策が進められています。

 

 

大阪は 光ぼちぼち 中ぱっぱ

 第32回日本エイズ学会学術集会・総会、およびその関連の世界エイズデー啓発イベントに参加するため、1130日から大阪に来ています。第32回学会の白阪琢磨会長からブログ編集長にご指名いただき、公式ブログを担当しています。

 https://ameblo.jp/aids2018/entrylist.html

 この間のHIV/エイズ関係の記事は学会ブログにアップしています。実は編集長とは名ばかりの役回りで、やっていることは、あれこれと思い浮かぶよしなしごとをせっせと記事にしてアップしているだけです。タイトルの脇に(宮田一雄)と署名が入っていますので、よろしかったらご覧ください。

 ということでこちらのブログの記事が激減してしまうのも切ないので・・・、

 

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2日夜の懇親会の帰り道。中之島にある大阪市役所脇の歩道のイルミネーション。

 

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市庁舎の正面玄関も光のタペストリーといいますか。大阪万博決定の心理的効果も大きいのでしょうが、歩いていても、ひときわ輝いて感じられます。こういうときも大阪の皆さんは、ぼちぼちでんな~という感じで、さらっとかわしていくのかもしれません。でも、輝きは隠せないよね。この勢いをエイズ対策にもつなげていこう。