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世界結核デーでUNAIDSがプレスリリース エイズと社会ウェブ版263

エイズと社会 国際感染症関係論

3月24日の世界結核デーにあわせ、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が結核HIV/エイズのプログラムの一層の強化と統合を求めるプレスリリースを発表しました。その日本語仮訳です。

結核HIV陽性者にとって、最大の入院および死亡原因となっている。2015年のエイズ関連の年間死者数は110万人で、このうち約40万人は結核で死亡している。子どもも4万人含まれている》

エイズ関連の年間の死者の3人に1人は結核によって亡くなっているということです。結核対策とHIV/エイズ対策は別個に成立するものではなく、統合できる部分は統合し、相互に補完しつつ効果を高める必要があることは以前から指摘されていましたが、それぞれの治療法の進歩を踏まえ、その必要性はますます高まっていると受け止めるべきでしょう。

昨日のブログでも紹介しましたが、23日のメディアセミナーで、多剤耐性結核の長い闘病生活を経験したエロイザ・セペダ=テンさんの「結核は単に医療の問題ではない。社会的な問題である」という発言はエイズ対策にも結核対策にも共通する重要な課題です。

    ◇

 緊急に対応しなければ、HIV関連の結核の死者を2020年までに75%減らすことはできない UNAIDSが警告 プレスリリース

 http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2017/march/world-tb-day

 

ジュネーブ 2017年3月24日】 世界結核デーの3月24日、UNAIDSは各国に対し、HIV陽性者の結核(TB)による死亡を減らすため一層の努力を要請した。結核HIV陽性者にとって、最大の入院および死亡原因となっている。2015年のエイズ関連の年間死者数は110万人で、このうち約40万人は結核で死亡している。子どもも4万人含まれている。

 「これほど多くのHIV陽性者が結核で死亡し、しかもそのほとんどが診断も治療も受けていない。これは受け入れがたいことです」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長は語る。「HIV結核のプログラムの協力をより強化しなければ、HIVおよび結核分野の目標を達成することはできません」

 世界のHIV陽性者の結核による死亡の70%は、コンゴ民主共和国、インド、インドネシアモザンビーク、ナイジェリア、南アフリカタンザニアザンビアの8カ国で占められている。2020年までにHIV陽性者の結核による死亡を75%減らすというエイズ流行終結に関する2016年政治宣言で約束した野心的な目標の実現には、この8カ国の対策の規模拡大が必要になる。

 保健システムが弱いことから、HIV陽性者が結核診断の機会を失う状態が続いている。2015年には結核にかかっているHIV陽性者の57%が結核治療を受けていない。診断してもケアにつなげられないこと、追跡が十分でないこと、フォローアップがないこと、結核感染のもっとも高いリスクにさらされている人たち―とりわけ、薬物注射使用者、受刑者、移住労働者といった排除されがちな人たち―とうまく接触できないこと、そして治療成績の悪さなどが、成果があがらない原因となっている。2014年には、HIV陽性の結核患者の約11%が死亡している。HIV陰性の結核患者は3%であることと比べ、かなり高い。HIV陽性者の結核による死亡を防ぐには、早期検査と効果的な治療がとりわけ重要になる。

2015年には推計48万件の多剤耐性結核の新規症例があり、薬剤耐性の問題も非常に懸念されている。この点では最近、結核治療の2つの新薬が承認され、60年ぶりに薬剤耐性結核の患者の治療改善に展望が開けるようになった。

UNAIDSはHIV陽性者の結核による死亡をなくすこと、保健システムを強化すること、HIV結核のプログラムのさらなる普及に向けてサービスの統合を進めることを呼びかけている。定期的なスクリーニング検査、予防療法、早期治療といった結核対策は利用しやすく、価格も手頃で、結核による死亡を防ぐ効果が高いことから、各国はこうした対策を含めたHIV予防・治療プログラムの拡充を進める必要がある。

 2016年の政治宣言に基づき、2020年までの高速対応ターゲットの達成に努力している各国に対し、UNAIDSは支援を継続していく。その一環として、優先順位の高い35カ国に対しては、エイズ流行終結に向けて高い効果の期待できるプログラムに焦点を当て、対策を一段と強化するよう求めている。

 

 

UNAIDS warns that countries will miss the 2020 target of reducing HIV-associated TB deaths by 75% unless urgent action is taken

 

GENEVA, 24 March 2017—On World Tuberculosis Day, 24 March, UNAIDS is urging countries to do much more to reduce the number of tuberculosis (TB) deaths among people living with HIV. TB is the most common cause of hospital admission and death among people living with HIV. In 2015, 1.1 million people died from an AIDS-related illness—around 400 000 of whom died from TB, including 40 000 children.

 

“It is unacceptable that so many people living with HIV die from tuberculosis, and that most are undiagnosed or untreated,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “Only by stepping up collaboration between HIV and tuberculosis programmes to accelerate joint action can the world reach its critical HIV and tuberculosis targets.”

 

Eight countries—the Democratic Republic of the Congo, India, Indonesia, Mozambique, Nigeria, South Africa, the United Republic of Tanzania and Zambia—account for around 70% of all TB deaths among people living with HIV. Scaling up action in these eight countries would put the world on track to reach the ambitious target in the 2016 United Nations Political Declaration on Ending AIDS of reducing TB-related deaths among people living with HIV by 75% by 2020.

 

Weaknesses in health systems are continuing to result in missed opportunities to diagnose TB among people living with HIV—around 57% of HIV-associated TB cases remained untreated in 2015. Inadequate linkages to care after diagnosis, poor tracking of people and loss to follow-up, failure to reach the people most at risk of disease—particularly marginalized populations, including people who inject drugs, prisoners and migrant workers—and poor treatment outcomes contribute to the lack of progress. In 2014, around 11% of HIV-positive TB patients died, compared with 3% of HIV-negative TB patients. Early detection and effective treatment are essential to prevent TB-associated deaths, especially among people living with HIV.

 

Drug resistance is also a major concern—in 2015, there were an estimated 480 000 new cases of multidrug-resistant TB. The recent approval of two new medicines to treat TB, the first in more than 60 years, is improving the outlook for people with drug-resistant TB.

 

UNAIDS calls for the elimination of TB deaths among people living with HIV and for health systems to be strengthened and services integrated to allow for a more rapid scale-up of HIV and TB programming. Countries must expand HIV prevention and treatment programmes that include regular TB screening, preventive therapy and early treatment, since they are simple, affordable and effective programmes that prevent TB deaths.

 

UNAIDS is continuing to support countries to Fast-Track their efforts to reach the critical 2020 targets of the 2016 Political Declaration. As part of these efforts, UNAIDS is urging countries to intensify action in 35 high-priority countries to accelerate results by implementing focused, high-impact programmes to advance progress in ending the AIDS epidemic.

 

本日は世界結核デー エイズと社会ウェブ版262

エイズと社会 国際感染症関係論

 3月24日(金)、つまり本日は世界結核デーです。といっても、結核にはあまり詳しくないので公益財団法人結核予防会 結核研究所のサイトからの受け売りですが、どうして今日が「世界結核デー」なのかは次のよう説明されています。

http://www.jata.or.jp/tp_detail.php?id=81 

 『細菌学者ロベルト・コッホが1882年に結核菌の発見を発表した日にちなみ、1997年の世界保健総会で制定されました』

 そうか、ロベルト・コッホのことは以前に紹介したこともありました。すっかり忘れてしまって・・・。制定が1997年ということは今年が世界結核デー20周年ですね。

 その前日の23日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで、公益財団法人日本国際交流センター/グローバルファンド日本委員会主催のメディアセミナー『世界における結核感染および流行の現状』が開かれました。

fgfj.jcie.or.jp

 今年は世界結核デーをはさんだ3月22日から25日までの4日間、東京で第6回国際結核肺疾患予防連合アジア太平洋地域学術大会が開かれているので、その会議の参加者である以下の3人が結核対策の現状やなぜいま結核なのかといったことをお話しされました。

 エロイザ・セペダ=テンさん 結核活動家、元結核患者

 スヴァナンド・サフさん ストップ結核パートナーシップ事務局次長

 エルド・ワンドロさん 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)結核担当

 

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(写真は左から司会のグローバルファンド日本委員会、伊藤聡子さん、スヴァナンド・サフさん、エルド・ワンドロさん、エロイザ・セペダ=テンさん)

 フィリピン出身のテンさんは、会見ではルーイと呼ばれていました。建築家志望だった20代のときに治療薬が効かない多剤耐性結核(MDR-TB)にかかって長い闘病生活を続け、その過程で後遺症として視力を失いました。現在は結核活動家として、すべての人びとが結核の治療を受けられるようになることを目指しており、セミナーでは自らの体験を語るとともに「結核は単に医療の問題ではない。社会的な問題である」と強調されました。HIV/エイズとも共通の課題ですね。

 サフさんは世界保健機関(WHO)からストップ結核パートナーシップに転じた専門家で、世界の結核感染の最新動向について報告しました。

 結核は史上最も多くの人の死亡原因となった病気で、現在も世界全体で年間約180万人が亡くなっています。少し前までは年間の死亡者が最も多い感染症エイズでしたが、抗レトロウイルス治療の普及でエイズの死者は大きく減少し、2015年現在では110万人となっています。結核の死者が最多となった背景にはそうした事情もあります。

 HIV/エイズ関連の死者が減少したのは、抗レトロウイルス治療の普及に世界が協力して取り組んできた成果であり、それで「エイズはもういいだろう」などといった気分が広がってしまえば、再び困難な流行の拡大に直面することになります。

 したがって、エイズ対策は「自己満足のリスク」(英国のヘンリー王子)に陥ることなく、引き続き対策を進めていく必要がありますが、それと同時に結核への対策も疎かにはできません。何世紀にもわたる流行であり、その歴史に見合った治療研究の蓄積もありながらなお、年間180万人もの人が亡くなっているのです。まさしくルーイさんが指摘されたように「医療だけでなく、社会が対応しなければならない」流行です。

 ワンドロさんは、結核担当のシニア疾患コーディネーターとして、グローバルファンドの国際的な結核対策支援について報告しました。各国への個別の支援だけでなく、地域全体の課題として数カ国にまたがる支援が必要なこと、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指す大きな枠組みのもとでの対応が重要なことなどを強調されています。

 結核についてはエイズによる死者の最も大きな死亡原因でもあります。HIV/エイズ対策の観点からも軽視はできません。結核対策か、エイズ対策か、ではなく、両方重要です。持続可能な開発目標(SDGs)では、17の目標(ゴール)のうちのゴール3『あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する』には12のターゲットがあり、そのうち3番目に『2030年までに、エイズ結核マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する』(外務省仮訳)というターゲットが掲げられています。

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

 つまり、エイズ結核マラリアはともにSDGsの枠組みのもとで流行終結(あくまで公衆衛生上の脅威としての流行の終結という意味ですが)を目指すという共通目標のもとに対策を進める必要があります。

 結核対策については2018年に国連総会ハイレベル会合の開催が予定されています。国連総会では昨年(2016年)6月、エイズ流行終結に関する国連総会ハイレベル会合が開かれ、世界中の国が2030年のエイズ流行終結に向けて努力を続けていくことが確認されました。 今度は結核です。「またかよ」といわず、同時進行的な目配りを続けていきましょう。

 SDGsでも明らかにされているようにそれぞれの対策が孤立していては相乗効果は望めません。お互いの強みを生かし、弱みを補って成果を積み重ねていく必要があります。

 サフさんによると、結核の場合、現在の対策を続けていたのでは、2015年の結核感染率(人口10万人あたり142人)が、目標とする人口10万人あたり10人にまで抑えられるようになるのは、2185年のことです。しかも、多剤耐性結核(MDR-TB)や超多剤耐性結核(XDR-TB)が広がればますます治療は困難になります。

 これでは困る。いまこそ国際社会の政治の意思として、本気で結核に取り組まなければらない、というのがハイレベル会合開催の理由でしょう。

 最近のHIV/エイズ対策と結核対策の組み立て方にはよく似たところもあります。ストップ結核パートナーシップは結核流行終結に向けた2016~2020年の計画のパラダイムシフトを発表しています。この5年が勝負だということで、HIV/エイズ対策の高速対応に似ていますね。

 しかも、そこには「人間中心のグローバル目標」として90-(90)-90のカスケード目標も掲げられています。真ん中の90は()に入っているなど、少し差異はありますが、基本的な考え方はそっくりです。

 最初の90は、少なくとも感染している人の90%が診断を受けられるようにする。次の(90)はこのうちの90%がキーポピュレーションの人びとであること。そして最後の90は診断された人の90%が治療に成功することです。達成時期については2025年までのできるだけ早い時期となっています。

 結核カスケードの場合、真ん中の(90)の対象となるキーポピュレーションはどんな人たちなのか。最初に紹介した結核研究所の「世界結核デー」に関する説明には次のように書かれていました。

 『貧しい人々、移民、難民、少数民族、高齢者、女性や子供たち、HIV感染者・・。結核は、特に社会の中で取り残されている人々、感染の危険性の高い人々の中でまん延し続けています』

 かなりHIV/エイズ対策との相乗効果が大きいことが分かります。

 日本ではどうなのか。この点は、結核研究所のホームページで「シールぼうや」が「結核は過去の病気だと、思っていませんか?」と問いかけ、丁寧に歴史と現状を説明しています。そちらをご覧下さい。

http://www.jata.or.jp/

 つまり、過去の病気ではないということですね。

 

著者と語る『バブル―日本迷走の原点―』 日本記者クラブ会見感想記

大手町夜更かし控

 『バブル―日本迷走の原点―』の著者、永野健二さんが3月15日(水)午後、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見を行いました。「著者と語る」と題し、話題の書籍について著者自身からお話をうかがう会見シリーズです。永野さんは日本経済新聞の証券部記者として市場経済の取材を長く続け、その後は経営陣としても活躍された方です。

 現在も日本記者クラブ会員であり、いわば身内の会見といった印象もありましたが、逆に証券部記者時代のライバルだった他社OBも多く、さしもの「伝説の記者」もかなり緊張している様子でした。

 当ブログでは以前に『バブル』の書評(感想文レベルですが)を書いたこともあり、金融の動きやそのまた裏側で繰り広げられる栄枯盛衰の物語にはもちろん興味はあったものの、理解が及ばず、さすがにその分野の元敏腕記者同士の応酬には着いていけません。こうなると黙って聞き役に回るしかありませんね。

 会見はひと言でいえば、「それでもなお、面白かった」と思います。専門的な丁々発止の部分はおくとしても、私にとっては、同じ高校と同じ大学(学部は違いますが)を同じ年に卒業した記者でもあります。仕事での接点はほとんどなかったとはいえ、同時代に新聞記者を続けてきた身としては、何と言うか、ジャーナリズム論が論として語られる少し手前あたりの新鮮かつ上質な素材が、発言として随所にちりばめられていたという印象を受けました。

 日本語に訳しにくい英単語の一つにempowerというのがあります。その語感の曰く言い難い部分も含め、前期高齢記者にとっては大いにempowerかつencourageされる会見でもありました。

 例えば永野さんは会見の冒頭で、「企業の寿命は30年」という言葉を紹介したうえで、30年前のバブルの話に入ります。

 振り返ってみると、「歴史だなあと思うところとまだジャーナリズムだなあと思うところの接点」というあたりの指摘の的確さ。そして、まさしくその歴史とジャーナリズムの境界領域にこそ、いま書くべき課題が存在していることを納得させたうえで、そこからバブルの原因は何か、それが現在にどんな影響をもたらしているのかという話が始まる。「うまいなあ」と思わず感心してしまう展開であります。

 バブルとその崩壊の原因、あるいは日本経済がそこから長期にわたって立ち直れなかった理由については、私が受け売りの説明を繰り返しても理解不足でボロが出るだけですね。会見の様子が日本記者クラブの公式サイトに掲載されているのでそちらをご覧下さい。司会を担当された日本記者クラブ企画委員、軽部謙介さん(時事通信)の報告のほか、You tubeの会見動画も見ることができます。

www.jnpc.or.jp

 稚拙で恐縮ですが、私も記者席から1枚撮りましたので載せておきます。写真左が永野さん、右は軽部さんですね。

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 著書にも書かれていたと思いますが、会見で改めてお話をうかがうと、バブルの体験をきちんと精算しないまま今に至るという日本社会の現状こそが、永野さんに執筆を促した第一の動機であったことが分かります。第二の動機はおそらく、「バブルとは何だったのか」を知りたいという社会的な需要の存在を記者の感覚としてつかんでいたことではないでしょうか。

 会見の中で永野さんは知人の書籍編集者とのやりとりを紹介しています。バブルについて少しずつ書き進めていたころ、永野さんはその編集者から「いまさらバブルでもないでしょう」と言われました。出版界で「天才」と呼ばれる編集者からそんなことを言われれば、私ならすぐに諦めてしまうと思います。

 ところが、永野さんは「いや、それは違うぞ」と答えたそうです。バブルにかかわった人たちが、あの現象の検証もしないままにバタバタと死んでいく時期になった。その30年後の現実の中で「いま逃したらもう書けなくなる」と感じ、同時に「いまなら書ける。書くことがいまにつながる」とも思ったのです。

 少し話がそれますが、つい先日まで私はラグビーの上級コーチ向け指導書の翻訳に取り組んでいました。150ページもある英文のコーチングマニュアルを3カ月かけて何とか訳し終えたところなのですが、世界のトップコーチの教科書でもあるその指導書にはこんなことが書かれていました。

 ラグビーはスペースをつくり、そのスペースにボールを動かすゲームである。ではそのスペースはどこにできるのか。

『スペースが生まれるのは他の選手がそこから動こうとしている場所であり、そこに向かおうとする場所ではない』

 このゴールデンルール(黄金則)をもう少し一般化して、ラグビー以外にも当てはめてみると、みんなの関心が集まっているところではなく、関心を持たれない場所にこそスペースは存在する。それを見抜けるか、見抜けないか。

 注意散漫かもしれませんが、会見の途中でそんなことを思いながら、「単行本をメディアとして使う時代が来たのではないか」とか「人は長い年月がたつと脇が甘くなって秘密だったことも、ついつい話したくなってしまう」といった永野仮説や指摘の数々に一人で、そうそうと納得していました。

 いま必要なものは何か。それは実は多くのメディアが取材に殺到しているところにあるとは限らない。もちろんホットなイシューを追求する行動力は大切です。でも、そこだけにジャーナリズムの関心が集中していいわけでもない。

 もしかすると高齢期ジャーナリズムの需要というか、存在の必然性のようなものがあるとすれば、新たなスペースがいま、見えないところに生まれているのかもしれない。

 こうした観点からすれば、バブルそのものはもう、スペースではなくなっているかもしれません。その証拠は書店に行けば一目瞭然。平台はもう、バブル関連書籍でぎっしり埋め尽くされスペースが見つからない。密集状態ですね。

 ただし、あまり多くの人から関心を持たれていない分野なら、他にもいくらでもあるし、それでもしつこく書き続ける記者がいるとすれば、そこに新たなスペースが生まれてくる(可能性もある)のではないか。

 そうか。「バブルとエイズ対策」。これも書いてみたいなあ・・・かなり強引かつ我田引水気味に密集サイドを突いていくような展開ではありますが、ひそかにそんなempowermentも吸収しながら寡黙な記者は会見場を後にしたのでありました。

 

いよいよ明日開催。『エイズ予防指針見直し傍聴報告』

エイズ・感染症

 改めてもう一度、お知らせしておきましょう。明日(3月21日)午後7時からです。ふるってご参加下さい。

 エイズ&ソサエティ研究会議(JASA)第125回フォーラム『エイズ予防指針見直し傍聴報告』

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 《感染症法に基づくエイズ予防指針は1989年に告示されて以来、ほぼ5年をメドに見直しが行われています。医学研究の成果や社会的環境の変化などを踏まえ、流行の現状により即した対策を実施していくための見直しです。これまでに2度にわたる改訂があり、今回が3度目の見直しとなります。
 昨年12月に厚生科学審議会エイズ性感染症小委員会で検証作業がスタートし、今年2月までに3回の会合が開かれました。4回目の会合は4月になる見通しです。
 今回はエイズ性感染症の2つの予防指針の見直しが同時に進められていることが大きな特徴です。また、エイズ予防指針については最近のHIV治療の進歩と研究の成果を踏まえ、予防としての治療(T as P)の考え方をどこまで指針に反映させるか、HIV感染にまつわる社会的な諸課題への対応にそうした発想がどのように影響していくのかが焦点となっています》

日時:2017年3月21日(火)午後7時~8時半
 場所:ねぎし内科診療所(地下鉄丸ノ内線四谷三丁目1番出口)
    東京都新宿区四谷三丁目9 光明堂ビル5階
     http://www1.odn.ne.jp/negishi-naika/basho.html
参加費:1000円
問い合わせ:エイズ&ソサエティ研究会議事務局 yz235887@za3.so-net.ne.jp

 まだ、検討の途中段階における外野席からの報告ですが、ちょっと考えを整理しておきましょう。今回のエイズ予防指針見直しの特徴です。
 1 性感染症予防指針と同じ場所で同時に検討が進められている。
 2 HIV/エイズ対策の保健化ないしは医療化といわれる世界的な動きが議論に反映される傾向が強い。
 3 GIPAの原則などまったく考慮されず、委員にはHIV陽性者もキーポピュレーション(日本では個別施策層に想定される人たち)のメンバーも明示的には入っておらず、議論への参加は初回の3人の参考人にとどまっている。
 4 HIV陽性者であることを明らかにして意見陳述を行った参考人3人がともにHIV/エイズ対策における偏見、差別との闘いの重要性、人権重視の必要性を強調した。
 5 委員の一部からは人権に関する言及はあくまで医療の範囲にとどめてほしいといった意味不明の発言もあった。

(蛇足)5番目については、発言をとがめるために項目としてあげたわけではありません。ましてや発言を制限すべきだと主張したいわけでもありません。委員の皆さんにはのびのびと自ら思うところを語っていただきたい。
 ただし、傍聴した範囲でははっきり聞き取れなかったこともあって趣旨がよく理解できず、印象的な判断として、ああ、現状はここまできているのかと感じ、ややぼう然ともしました。
 個人的には、「今回の見直しにおいて」というほど短期ではないにしても、いわゆる「エイズ対策の医療化」が主流を占める現在の国際的な議論の流れが、どこかで変わる局面が出てくるのではないかと秘かに考えています(また、そうした傾向が少しずつ出始めているようにも思います)。
 その場合、流れが変わるということは対策の一段の深化を意味することだと思う一方、それはいま以上に対応が困難になること、いわば世界のエイズ対策がもう一度、大きな壁に突き当たる時期を迎えるということなのかもしれません。私の単なる個人的な感想があくまで杞憂に過ぎないことを願っています。

 

波よけの築港遺跡に水温む

何はともあれ写真編

 暑さ寒さも・・・の言葉通り、お彼岸の3連休中日はようやくの暖かさでしたね。昼過ぎに材木座から小坪方面に遠征。
 

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 干潮で海面上に姿を現わした石群は鎌倉時代の築港遺跡、和賀江嶋です。材木座海岸は当時の国際的物流拠点でありました。遠浅の海岸なので船が着けるように岸壁が作られていたそうですが、長い年月を経て、現在は写真のような状態になっています。漁船が3隻、波よけに使っている程度。満潮時には水面下に沈んでしまいます。遠く稲村ヶ崎江ノ島。これに富士山が加わると黄金の3点セットですが、本日は残念ながら空がかすんでいて見えません。

 

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 水温むという常套句がぴったり。子どもたちも裸足になって・・・。この遠浅感が何とも言えませんね。心がほぐれます。

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 けっこう風があり、波は穏やかということで、ウインドサーフィンびよりでもありました。

《HIV活動を映像に残す》 エイズと社会ウェブ版262

 旧ブログからサルベージした記事の復活シリーズです。2011年11月11日に『One Day on Earth』という世界的なイベントがあり、UNAIDSもそれに参加しているというので、それにあわせて新宿二丁目のコミュニティセンターaktaが毎週金曜日に行っているデリヘル活動を紹介しました。

 

HIV活動を映像に残す One Day on Earthにチーム参加 (2011.11.15)

 ビートルズの曲でA Day in the Lifeというのがあったが、1が6つ並んだ2011年11月11には、世界でこんなイベントも行われていた。国連合同エイズ計画(UNADS)の公式サイトに掲載されていたFeature Storyの日本語仮訳。

 

 《HIV活動を映像に残す UNAIDSがOne Day on Earthにチーム参加》

 http://asajp.at.webry.info/201111/article_3.html

(解説) 2011年11月11日に世界中で何が起きているかを示すために映像を記録するOne Day on EarthというプロジェクトにUNAIDSがチームとして参加しましたというお知らせです。One Day on EarthはHIV/エイズ分野に限らず、さまざまなイベントを対象にしたプログラムで、2010年10月10日に最初の一斉撮影を行ったようです。今回は2回目で、UNAIDSからは世界の現地事務所のスタッフが撮影にあたったようです。

 

    ◇

 

 なるほど。日本ではそもそもUNAIDSの現地オフィスというものがない。日本を資金供給源としてしか見ていないことの表れではないか。ピーター・ピオット氏が事務局長だった当時、取材でそんな嫌み混じりの質問をしたことも何度かあるが、いつもうまくはぐらかされてしまった。相手の方が一枚上。日本は国際的にみれば、かなりHIV陽性率が低い国なので、まあ、自力でがんばってみてよという感じだろうか。それでも、今回のようなイベントに参加するときには事前にひと言、「こんなんもあるんだけど」と言ってくれればNPOレベルで動いてみようかという人もいたかもしれない。aktaの1日みたいなものが伝えられれば、それはそれで、ほう、日本もやるなあ、みたいな発信ができたのではないか。

 

 エイズ予防財団がカウンターパートになって、このあたりのコーディネート機能を果たせるようになればいいと思うけれど、すいません、いま立て直し中。スタッフのモチベーションは高いのだが、小さな所帯なのでいまの業務をこなすのにいっぱい、いっぱいという感じもある。それでも何とかコミュニティアクション2011をHIV/エイズ関係のNPO/CBOと協力して動かせるところまではきた。いっぱい、いっぱいから一歩、一歩へ。なんとかつなげていきたいところだ。

 

 

◎デリヘルの日でもありました (2011.11.15)

One Day on Earthの続きです。念のためにもう一度、カレンダーを確かめてみたら、11月11日は金曜日だった。やっぱり。毎週金曜日はaktaのデリヘル活動の日。aktaのサイトにDelivery Boysの紹介が掲載されています。

 http://www.akta.jp/deliveryboys/concept/index.html

《aktaでは毎週金曜日20時~22時くらいまで、お揃いのツナギとキャップを着て、二丁目のバーやクラブにコンドームを始めとした予防と陽性者支援のさまざまなメッセージを配布しています。DELIVERYの「デリ」とHEALTHの「ヘル」がチーム名の由来です》

 

 これはなかなか地道な活動ですよ。最初はコンドームを置かせてくださいといっても、あまりいい顔はされなかったのではないかとも思う。継続の中で信頼感が生まれてくるのだろう。コンドームパッケージのデザインも多種多彩。オリジナルだという。こうした活動は、国際的に見ても非常に貴重なのでベストプラクティスとして他の国のアクティビストたちにも参考にしてもらえるのではないか。コミュニティセンターaktaという場所ができ、その場所が拠点となって行動が生まれる。現場におけるそうした行動を研究者が理論化して支える。それがまたコミュニティセンターに還元され新たな行動の指針となる。それでもって、また研究が・・・という好循環が続けば、成果が次第に見えてくる。

 

デリヘルの1日。いい記録になっただろうにと思うと、ちょっと残念だ。だから、UNAIDSも日本を資金拠出者としてしかみないような料簡じゃあ、だめなんだって。日本にもフィールドオフィスが必要だと思いませんか。

 

厚労省の職員がジュネーブに出向して経験を積み、認識を深める。それはまあ、よしとしよう。歴代の担当者を思い浮かべても、皆さん、優秀な方ばかりだ。ただし、何年かして戻ってきたら、エイズ対策とはまったく関係ない部署に配置されている。こんなことが何代にもわたって繰り返されていたのでは、官僚のキャリアアップにはいいのかもしれないけれど、わが国のエイズ政策としてはどうなんだろうか。本当に対策を担っているのは誰なのかという疑問が激しく残る。当ブログでささやかながら記録しておこう。

 

 

♪あのころキミは~ エイズと社会ウェブ版 261

エイズと社会 国際感染症関係論

 エイズ対策の観点からすると、2011年は「予防としての治療」や「曝露前予防投薬(PrEP)」などが大きく注目され、話題になった年でした。3年前にブログ移転に伴うサルベージ作業で回収した2011年8月11日の感想文です。最近、自分が書いていることは当時と比べ変わったのか、変わっていないのか。個人的にはあまり変わっていないように思うので、またかよとうんざりされる方もいらっしゃるかもしれませんが、改めてこちらのブログに掲載しておきます。何でもどんどん忘れてしまうもので・・・。

 《2000年以降はようやく世界がエイズ対策に本腰を入れて取り組むようになり、十分とは言えないまでも、それなりに困難な現実に対応するための資金投資もなされてきた。そうした中で、日本国内では、保健分野の国際援助関係者の間ですら、内外のエイズ対策に資金が投じられることを秘かに苦々しく思い、それでも「ま、いまはエイズを取り上げないと資金が確保できないから」といった「しぶしぶエイズ対策」の発言がため息まじりに交わされる。そうした場面にたまたま遭遇して、当惑した記憶が少なくとも個人的にはある》

 こういうことを書いていたら、そりゃ嫌われるわなと改めて納得。騒ぎが大きくなるとどこかからやってきて、さっさといただくものだけいただいたら、いつの間にかいなくなっている人たちにはこの30年の間、波が寄せては引くように、ずいぶんお会いしてきました。ま、これはHIV/エイズに限らない話なのでしょうが・・・。

 ♪あの頃キミはぁ、若かった~といいますか。いまは、どこで、なにをまた、発言されているのかなあと振り返りながら、それもまた懐かしい思い出のように感じられたりして・・・。

 記憶力は衰えても、性格はどうも基本的に変わらないようですね。

 

◎予防としての治療に関する感想  (2011.8.1)

 曝露前予防投薬(PrEP)に関連する私の単なる個人的な感想に過ぎないのだが、保健基盤強化の名のもとにHIV/エイズ対策をマイナーなものとして位置づけようとする発想がここ数年、顕著に見られる。ただし、そのもとになる感情というものは旧来の医療界に根強くあったのではないか。それはエイズ対策がいわゆる性的少数者や薬物使用者、セックスワーカーといったHIV感染の高いリスクにさらされやすく、エイズの流行から重大な影響を受ける人たちへの支援が重要な構成要素になっていることへの拒絶の意識も含めて、流行初期の20年間、HIV/エイズ対策が軽視されてきたことの主要因のひとつだったようにも思う。

 2000年以降はようやく世界がエイズ対策に本腰を入れて取り組むようになり、十分とは言えないまでも、それなりに困難な現実に対応するための資金投資もなされてきた。そうした中で、日本国内では、保健分野の国際援助関係者の間ですら、内外のエイズ対策に資金が投じられることを秘かに苦々しく思い、それでも「ま、いまはエイズを取り上げないと資金が確保できないから」といった「しぶしぶエイズ対策」の発言がため息まじりに交わされる。そうした場面にたまたま遭遇して、当惑した記憶が少なくとも個人的にはある。

 そのような心に秘めた拒絶感情がおそらくあり、また、近い将来におけるワクチン開発の展望がなかなか開けないといった事情も加わって、HIV/エイズ対策に熱心に取り組んできた医療関係者の間では、「エイズ対策ばかりに資金を投じてどうするの」という批判の圧力をひしひしと感じ、目先の成果の強調を迫られる短期成果主義的な発想から、抗レトロウイルス治療が普及すれば流行を終息させることができるといった物語に走ってしまいたくなってしまったのではないだろうか。すぐに解決策を示せるような「魔法の銃弾」はないという現実に耐えつつ、よりましな選択肢を探っていく。いま「予防としての治療」に過剰な期待が盛り上がってしまっているのも、そうした困難な対応の中での揺れの一つではないかと私には感じられる。

 治療の普及に力を入れたこの10年間の努力を通し、国際的なエイズ対策にようやく希望が見え始めてきたことで、長期にわたって持続的な努力が必要なことはむしろよりはっきりしたわけだが、その時期にリーマンショックで国際的な援助資金が縮小するという動きが重なった。さらに有力な資金拠出国の一翼を担ってきた日本が東日本大震災で苦境に陥っているという試練も新たに加わっている。日本要因の影響がどう出てくるのか、それはまだ、はっきりと見えていない。これからじわじわと影響が顕在化してくる可能性もある。日本が立ち直ることは国際保健政策のレベルでも非常に大きな21世紀の課題なのではないだろうか。