AIDS2020はバーチャル会議に エイズと社会ウェブ版461

 米西海岸のサンフランシスコとオークランドで7月6~10日に予定されていた第23回国際エイズ会議(AIDS2020)はオンライン上のバーチャル会議になることが27日、発表されました。

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https://www.aids2020.org/ 

  会議公式サイトに掲載された国際エイズ学会(IAS)と地元組織委員会のANNOUCINGによると《この決定は、世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、主要な世界および地元の保健当局、世界各地のHIV陽性者からのアドバイスに基づいてなされました》ということです。COVID-19パンデミックに対する国際的な専門家の認識はこのところかなり厳しくなっている印象ですが、そうですか、ついに国際エイズ会議もオンライン会議になりますか。

《とりわけ、HIVに感染している人がCOVID-19にかかりやすいのかどうか、重篤化する可能性が高いかどうかについては、まだ十分なデータが得られていないということを私たちは厳しくとらえています。私たちには、HIVコミュニティへのあらゆる潜在的なリスクを減らさなければならないという特別な義務があるのです》

会議で発表を予定していた世界の研究者の多くが、いまはそれぞれの国でCOVID-19対策に追われ、とても発表の準備どころではないといった事情もあるようです。

とりあえず、AIDS2020公式サイトのお知らせ(ANNOUCING)の日本語仮訳を作成しました。

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お知らせ:AIDS2020はバーチャル会議に

  健康とコミュニティを守ることは、私たちの最優先事項です。COVID-19のパンデミックを考慮し、2020年7月6~10日に予定されていた第23回国際エイズ会議(AIDS2020)は初のバーチャル会議になります。

参加者はAIDS2020:バーチャルによって、これまでの会議のようにHIVに関する最新の医科学、アドボカシー、知識にアクセスし、関与することが可能になります。展示、ワークショップ、グローバルビレッジ、サテライトセッション、事前会合などが世界中の人たちに届けられ、会議はバーチャルセッションとコミュニティネットワーキングの魅力的な組み合わせになるはずです。

この決定は、世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、主要な世界および地元の保健当局、世界各地のHIV陽性者からのアドバイスに基づいてなされました。とりわけ、HIVに感染している人がCOVID-19にかかりやすいのかどうか、重篤化する可能性が高いかどうかについては、まだ十分なデータが得られていないということを私たちは厳しくとらえています。私たちには、HIVコミュニティへのあらゆる潜在的なリスクを減らさなければならないという特別な義務があるのです。

 さらに、参加を予定していた人たちの多くは現在、世界中のCOVID-19への対応の最前線で取り組んでいます。私たちは、これらの個人や地元コミュニティを危険にさらさないようにする責任があり、パンデミック対応の重要な時期に彼らの努力を妨げないようにする責任もあります。

AIDS2020:バーチャルは引き続きサンフランシスコとオークランドの2都市にスポットライトを当て、ベイエリアにおける健康の公正を実現するための努力を強調しつつ、科学とイノベーションとアクティヴィズムを通じてHIV流行終結に向けたこれら2つの都市の物語を探求していきます。

世界の健康環境の急速な変化に対応し、不確実性に耐えていくという課題はこれまで以上に大きくなっています。今年の会議のテーマはレジリエンス(復元力)です。HIVコミュニティ、および世界的なHIV対策の課題に協力して取り組む能力を説明するうえで、これ以上、ふさわしい言葉はありません。

登録している参加者は、新しく値下げした参加登録費に関する詳細情報を適切な時期に直接、お伝えします。ヴァーチャルプログラムの詳細は、今後数週間のうちに確定します。近く公開予定の詳細情報をお待ちください。

 

 

ANNOUNCING AIDS 2020: VIRTUAL

 

The health and safeguarding of our community is our highest priority. In light of the COVID-19 pandemic, the 23rd International AIDS Conference (AIDS 2020), to be held on 6-10 July 2020, will become the first virtual edition of the International AIDS Conference.

 

AIDS 2020: Virtual will enable delegates to access and engage with the latest HIV science, advocacy and knowledge traditionally presented at the conference. It will be a compelling combination of virtual sessions and community networking, including exhibitions, workshops, the Global Village, satellites and pre-conferences, that will reach audiences around the world.

 

Our decision was informed by advice from the World Health Organization, UNAIDS, leading global and local health authorities, and people living with HIV around the globe. In particular, we are acutely aware that there is not yet sufficient data on whether people living with HIV are more susceptible to COVID-19 or more likely to develop severe disease. Therefore, we have a special obligation to reduce any potential risk to the HIV community.

 

Furthermore, many of those who were planning to attend are now working on the front lines in the response to COVID-19 around the world. We have a responsibility to not put any of these individuals – or their home communities – at risk, nor redirect their efforts at a critical time in the response to the pandemic.

 

AIDS 2020: Virtual will continue to shine a spotlight on our host cities, San Francisco and Oakland, exploring the tale of these two cities through science, innovation and activism, while underscoring the Bay Area’s dedication to health equity in its “Ending the HIV Epidemic” initiatives.

 

Our commitment to meet the challenges of a rapidly changing global health landscape and to persevere in the face of uncertainty is stronger than ever. The theme of this year’s conference is Resilience and there is no better word to describe the HIV community and our ability to come together in a shared commitment to the global HIV response.

 

Registered delegates will be contacted directly in due course with further information on the new, reduced pricing structure. Details about the virtual programme will be shared in the coming weeks. Stay tuned for more information coming soon.

 

Signed,

 

Anton Pozniak, MD

President, International AIDS Society

AIDS 2020 International Chair

United Kingdom

 

Cynthia Carey-Grant

AIDS 2020 Local Co-Chair

United States of America

 

Monica Gandhi MD, MPH

AIDS 2020 Local Co-Chair

United States of America

『他者と距離を取る』って・・・ エイズと社会ウェッブ版460

 メディアを通じて、お医者さんや政治家の皆さんが言っていることばかり情報として入ってくると、自分の感じ方が間違えているのではないかと思ってしまうことがしばしばあります。
 おおむね言えば、提供者側の論理に乗っかってしまうといいますか・・・。政治家はともかく、医師(というか医学の研究者の皆さん)は腹に一物があるわけでもないと思いますが、不幸なマッチアップが成立してしまうことはありえます。
 ・・・で、自説の正当化を試みるつもりは毛頭ありませんが、少し視野を広げてみましょう。公益財団法人日本心理学会のサイトに3月18日付で『もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために』という記事が掲載されています。 

psych.or.jp

 《アメリカ心理学会(American Psychological Association: APA)公式Webサイトに掲載された記事 "Keeping Your Distance to Stay Safe" を,アメリカ心理学会の許諾を得て,日本心理学会広報委員会が日本語に翻訳》したものだそうです。

 アメリカはけっこう無茶をするなあと思うことがある一方で、変にこのあたりのケアがしっかりしている面も同時にあります。

 《新型コロナウイルス感染者が日々増加する現在,あなた自身が「他者と距離を取る」必要が出てくる場合があります。その時に,必要な社会的支援を受けつつ,より良い形で「距離を取る」ために役立つ考え方を,心理学から提案します》

 いま、売り出し中の『social distancing』には『社会的距離の確保』という訳語があてられ、《他者と接触する際に安全な距離(約1.8メートル)をとり,学校,教会,コンサートホール,公共交通機関など人が集まる場所を避けることです》という説明がつけられています。
 『検疫』と『隔離』についても、それぞれ短い説明があります。なるほど、そういうことでしたか。
 さらに《きちんと統制された介入研究は多くありませんが,こうした困難な状況に対処するための心理学的な最善の方法はわかっています》ということで、隔離状況下では次のようなことが起こるそうです。
 ・恐怖と不安
 ・抑うつと倦怠
 ・怒り、フラストレーションやイライラ
 ・スティグマ
 ・社会的弱者
 それぞれに短い補足の説明があるので、そちらはサイトをご覧いただいた方がよさそうですね。
 それでは、この事態にどう対処したらいいのか。サイトでは《社会的な距離の確保,検疫,隔離が実施される前に,前もって計画を立てること》をお勧めしています。こちらも項目だけ列挙しておくので、ご関心があればサイトを見てください。

 ・信頼できる情報を獲得しよう
 ・日々のルーティンを作り,それを守ろう
 ・他者とのヴァーチャルなつながりを保とう
 ・健康的なライフスタイルを維持しよう
 ・ストレスを管理し,前向きでいるために心理的方略を使おう

 個人的には、もうすでに、けっこうやっているなあというものもありますが、こうして列挙していただくと不思議なことに心が落ち着きます。

 《社会的距離の確保や検疫・隔離が,他の人々のためになることを考えると,心理的苦痛も和らぐでしょう。このような措置を取ることで,あなたは新型コロナウイルスを感染させる可能性を減らし,よりリスクの高い人々を保護していることを忘れないでください》

 だんだん和らいでくる感じもしてきた・・・というか、高齢者といたしましては、保護していただき、改めて皆さんに感謝したい気分です。

 

ピーター・ピオット博士に聞く COVID-19に関する100問100答

 「新型」コロナウイルスCOVID-19についてロンドン大学衛生熱帯医学大学院のピーター・ピオット学長が米TEDMED財団の100の質問に答えました。聞き手はTEDMED財団ディレクターのジェイ・ウォーカー氏です。

 ピオット博士はエボラウイルスの発見者の一人として知られる感染症学者であり、1995年には国連合同エイズ計画(UNAIDS)初代事務局長に就任。2008年に退任するまで世界のHIV/エイズ対策の牽引役を務めています。

 この原稿はピオット博士とTEDMED財団の承諾を得て、インタビューのPDF版テキストを日本語に翻訳しました。(インタビューは2020年3月3日に行われています) 

https://static1.squarespace.com/static/5e6b7fc44a6d8215512823b2/t/5e6baa196738445292f02e5b/1584114201695/Q%26A+with+Peter+Piot_15.pdf

TEDMED財団のインタビュー動画はこちら。www.tedmed.com

  

ピーター・ピオットとの一問一答

 TEDMED財団ディレクター、ジェイ・ウォーカーがロンドン大学衛生熱帯医学大学院のピオット学長に100の質問

 

1 TEDMED:基本的な質問から始めましょう。ウイルスとは何ですか。

 ウイルスはRNAまたはDNAの遺伝子をたんぱく質で包んだ非常に小さな粒子です。

 

2 TEDMED:どこにでもあるのですか。

 ウイルスはどこにでもあります。すべてのウイルスを集めて重さを計れば、動植物や細菌を合わせたすべての生物よりも重くなる。これは驚くべきことです。人のゲノムの10%はウイルスのDNAに由来しています。地球はまさに「ウイルスの惑星」なんです。

 

3 TEDMED:ウイルスが広がるのを防ぐのはどうしてこんなに難しいのですか。

 ウイルスの粒子は信じられないほど小さいのです。一回の咳で何百万という小さな飛沫が飛び散ります。

 

4 TEDMED:正確に言うと、どれほど小さいのでしょうか。

 小さいですよ。普通の顕微鏡では見えません。まち針の頭ほどの広さに1億個の新型コロナウイルスがのるほどです。信じられないくらい小さいのです。

 

5 TEDMED:ウイルスの粒子は何をするのですか。

 ウイルス粒子は自らの増殖のために生きた細胞の中に入り込もうとして、他の細胞、他の宿主へと感染するのです。

 

6 TEDMED:どうしてウイルスは生きた細胞に入り込もうとするのですか。

 それがウイルスの「再生産」の方法です。寄生虫のように行動します。生きた細胞に多くのウイルスを作らせるために、細胞をハイジャックするのです。細胞をハイジャックすれば、ウイルスは何十万個という自分のコピーを作らせることができるのです。その結果、ハイジャックされた細胞が死んでしまうこともしばしばあります。

 

7 TEDMED:医学者たちが「SARS-CoV2」と名付けた新型コロナウイルスに感染するとはどういうことですか。

 SARS-CoV2があなたの体の中で再生産を始めるということです。

 

8 TEDMED:SARS-CoV2とCOVID-19の違いは何ですか。

 SARS-CoV2はウイルスで、COVID-19はウイルスが広める病気のことです。

 

9 TEDMED:ウイルスは簡単に生きた細胞に入り込むことができるのですか。

 それはまず、ウイルスに合うレセプターが細胞にあるかどうかによります。例えるなら鍵が鍵穴に合っていなければ開けられないということです。人間には免疫システムがあること、または合う鍵穴が人間の細胞にはないことで、ほとんどのウイルスは防御されます。だから99%のウイルスは人にとって無害なのです。

 

10 TEDMED:ウイルスは何種類ぐらいあるのですか。そのうちどれくらいが人間に有害なのでしょうか。

 何百万というタイプのウイルスのうち、人間に害をなすことが知られているのは数百種類です。ほとんどのウイルスは無害です。

 

11 TEDMED:平均すると、ウイルスの粒子がいくつぐらいあると感染が成立するのですか。

 SARS-CoV2についてはまだ分かりません。一般的には非常に少なくても感染します。

 

12 TEDMED:どんなかたちをしているのですか。

 SARS-CoV2はスパゲティの小さな塊のような感じです。ボール状にからまり、たんぱく質の殻でおおわれています。殻の外側に突起が出ていて、太陽のコロナのように見えます。このウイルスの一族は似たような格好をしています。みなコロナのように見えるのです。

 

13 TEDMED:人間に影響を与えるコロナウイルスは何種類ありますか。

 人から人へと感染するコロナウイルスは7種類あります。4種類は軽い風邪の症状を起こします。しかし、残る3種類に感染すると死に至ることもあります。SARSとMERSの原因となるウイルス、そして新たに登場したコロナウイルスSARS-CoV2です。

 

14 TEDMED:どうして「新型」コロナウイルスと呼ぶのですか。

 新型は人にとって新しいという意味です。このウイルスは私たちがこれまで見たことのないものだったということですね。私たちの免疫システムはこの200万年、進化を続けてきました。しかし、このウイルスに関してはまだ見たことのないものだったので、人体が免疫をつくる機会はなかったのです。免疫がないことが、ウイルスの感染力が強く、致死率もそれなりにあることと相まって、SARS-CoV2の出現とともにこれほどの不安がもたらされたのです。

 

15 TEDMED:私たちが警戒すべき新型のウイルスはどのくらいの頻度で出現するのでしょうか。

 まれではありますが・・・でも、出現します。例をあげれば、HIVSARS、MERSの原因となるウイルスなどがあります。これからもまたあるでしょう。感染しやすく、有害な新しいウイルスの出現は極めて大きな問題です・・・。

 

16 TEDMED:新型コロナウイルスはどれほどたやすく広がるのですか。

 SARS-CoV2は咳や接触によって人から人へとかなりたやすく広がります。「呼吸器感染」ウイルスなのです。

 

17 TEDMED:ほかに感染する方法はあるのですか。

 便や尿を通して感染するという最近の報告もありますが、まだ確認が必要です。

 

18 TEDMED:SARSやMERSを広げたコロナウイルスと比べ、この新しいウイルスはどこが違うのでしょうか。

 SARS-CoV2には4点の大きな違いがあります:第一に感染した人の多くは何日か症状が出ません。このため気づかないうちに他の人に感染させることがあります。誰を隔離すべきなのか分からないのです。SARS-CoV2は感染力が強いのでこの点は非常に心配です。

 第二に80%のCOVID-19は軽症です。ありふれた風邪や咳程度の症状なので、自ら隔離することをしないまま、他の人に感染させてしまうのです。

 第三に症状だけではインフルエンザと混同しやすいので、インフルエンザにかかったのだと思い込み、それ以外の可能性を考えることはしません。

 第四に、そしておそらく最も重要なのは、感染の初期にはこのウイルスが上気道に集中し人から人へと容易に感染することです。のどにたくさんのウイルスがいるので、咳やくしゃみをすると何十億個ものウイルスが飛び散り、他の人に感染します。

 

19 TEDMED:このウイルスは肺炎を起こすと思っていました。のどはどう関係してくるのでしょうか。

 この病気はのどから始まることが多く(検査がしばしば咽頭ぬぐい液で行われるのもこのためです)、それから肺に向かって下りていき下気道感染になるのです。

 

20 TEDMED:「無症状」という言葉をよく聞きます。どんな意味ですか。

 症状がないという意味です。

 

21 TEDMED:新型コロナウイルスに感染しても症状がまったく出ない人もいるということですか。

 残念ながらイエスです。感染した人の多くは初めの数日間、症状が出ないままで、それから弱い咳や微熱が出てきます。SARSの場合は数日で明確な症状が出ますが、感染が起こるのは具合が悪いときだけでした。それとはまったく異なります。

 

22 TEDMED: 症状がなくても他の人への感染が起こるのですか。

 残念ながらイエスです。それが感染の拡大を抑えることを困難にしています。

 

23 TEDMED:感染を防ぐためのワクチン開発の可能性は?

 可能ではないかと考えていますが、保証はありません。失敗の可能性もあります。例えば、HIVワクチンの研究は35年も続けていますが、有効なワクチンはいまだに一つもありません。SARS-CoV2のワクチン開発については希望を持っていますが、有効性と安全性を確認する厳格な試験が必要なので、時間と人手がかかるのです。

 

24 TEDMED:新型コロナウイルスのワクチン開発が可能であり、かつ近い将来に見つかると仮定して、何百万もの人に接種を開始できるようになるのにどのくらいかかりますか。

一カ月か二カ月でワクチンの「候補」は見つかるでしょう。ただし、有効で安全であることを証明するには、厳格な試験を行う必要があります。主要な規制機関の承認を得て、人に投与できるようになるには少なくとも一年はかかります。実際には、何百万人の規模で接種を開始できるようになるには、楽観的にみても18カ月から24カ月はかかるでしょう。

 

25 TEDMED:緊急事態なのに、どうしてそんなに長くかかるのですか。

 ワクチンを発見するのにはそれほど時間はかからなくても、試験に時間がかかるのです。研究室で「候補」のワクチンが見つかったら、一連の臨床試験が必要になります。最初は動物実験、それから人を対象にした治験に入り、その規模を広げていくのです。

 

26 TEDMED:もう始まっているのですか。

 いいニュースとしては、2020年1月にSARS-COV2が発見され、分離されてから何週間もたたないうちにワクチン開発が始まっています。多くの政府や企業が資金を投じ、世界中の医学者が大急ぎで取り組んでいます。

 

27 TEDMED:各国の研究者は協力しているのですか、それとも競争しているのですか。

 両方です。どちらも悪いことではありません。ただし、全体として国際協力はうまく進んでいるようなので、期待が持てますね。

 

28 TEDMED:ワクチン開発をもっと早くすることはできますか。

 残念ですが、近道はありません。人体の免疫システムは複雑で、予測不能です。ウイルスが変異するかもしれません。子供と大人では違います。女性の反応は男性と異なるかもしれません。誰が受けても100%安全であると確認できる必要があります。そのためには、慎重に条件を設定しながら、健康で多様なボランティアに容量を変えてワクチンを試してみる必要があります。

 

29 TEDMED:新型コロナウイルスの致死率はどのくらいなのですか。

 ほとんどの研究者は感染した人の1%から2%とみています。WHOは最近、もう少し高く3%以上だろうと報告していますが、報告されていない症例や軽い症状の人は除かれているので、この推定は下がってくるでしょう。致死率は明らかに高齢者及び基礎疾患のある人で高くなっています。

 

30 TEDMED:平均の致死率に焦点をあてるべきですか。

 そういうわけにはいきません。深さが「平均」10センチの水でも溺れる人はいます。幅広い結果をもとに、特定のグループの人たちには致死率が高く、他のグループにはそれほどでもないということを認識する方が、リスクを理解する助けになります。

 

31 TEDMED:それではどんな数字やチェックポイントに注意したらいいのですか。

 感染した人の80%は軽い症状ですが、20%の人は症状が重く、ひどい場合には高熱が続き呼吸が苦しくなります。このため入院が必要になり、その中には肺炎の症状が重篤で、生死にかかわる数日間、集中治療が必要な人もいます。

 

32 TEDMED:どんなグループの人たちが最も危険な状態になりやすいのですか。

 第一に、私のような高齢者です。私は71歳なので。高齢になればなるほどリスクは高くなります。また、糖尿病や慢性閉塞性肺疾患COPD)および肺疾患、心血管疾患、免疫不全などの基礎疾患がある人もリスクが大きくなります。

 

33 TEDMED:高いリスクの人たちは、どの程度、危険なのですか。

 死亡率が10%あるいは15%に達することもあり得ます。また、健康状態によってはリスクが高くなります。こうした医学的なデータはウエブサイトで定期的にアップデートされています。

 

34 TEDMED:糖尿病など他の疾患があるとリスクはかなり高くなる。どうしてですか。

 感染性のウイルスに対する免疫の機能が弱くなっているからです。とくにこのウイルスにはその影響が大きいのです。

 

35 TEDMED:一般的に子供や若い人たちは症状があっても軽いといわれています。それは本当ですか。

 そのようですね。ただし、他の多くのCOVID-19の課題同様、確証が必要です。

 

36 TEDMED:それが事実だったとして、どうしてSARS-CoV2は子供や若い人たちではなく、高齢者への影響が大きのですか。

 正直言ってまだ分かりません。はっきりするまでには少し時間がかかるでしょう。

 

37 TEDMED:ほかに特徴的なことは。

 症状が全くなく、調子が良くても、他の人に感染させる可能性があります。こういうことは通常ではありません。HIV感染ではありましたが。

 

38 TEDMED:COVID-19を季節性インフルエンザと比較する意見をよく聞きます。正しく比較するにはどうしたらいいのでしょうか。例えば、季節性インフルエンザとCOVID-19の危険度は同じようなものなのでしょうか。

 米国では毎年3000万人近くが季節性インフルエンザにかかっています。感染した人のうち亡くなるのは1%のさらに10分の1以下です。それでも亡くなる人の数は多い。世界全体では、平均的な年でも季節性インフルエンザで亡くなる人は計30万人です。しかし、平均の致死率はコロナウイルスの方が10倍から20倍高く、インフルエンザのようにワクチンで自らを守ることもできません。

 

39 TEDMED:新型コロナウイルスもインフルエンザと同じようにたやすく感染が広がるのですか。

 インフルエンザと同じようにたやすく広がるようです。

 

40 TEDMED:原因について、比較を続けましょう。インフルエンザもウイルスによって起きるのですか。

 はい。インフルエンザの原因はインフルエンザウイルスの感染です。しかし、インフルエンザウイルスとコロナウイルスはかなり違います。インフルエンザの予防接種を受けても、新型コロナウイルスには役立ちませんが、インフルエンザのリスクは大きく減らせます。ワクチンも完治する薬もない普通の風邪は、ライノウイルスと呼ばれる別のタイプの小さなウイルスで起こります。他のコロナウイルスで起こることもあります。

 

41 TEDMED:新型コロナウイルスに感染するとどのように症状が進行するのですか。

 最初は咳が出ることが多いです。それから微熱。さらに微熱が高熱に変わり、息切れするようになります。

 

42 TEDMED:適切な治療を受けないと生死に関わるのは、どのような症状の時ですか。

多くは熱が非常に高くなり、肺に感染が広がって息切れするか、呼吸が苦しくなったときです。

 

43 TEDMED:新型コロナウイルスは、はしかやおたふく風邪水ぼうそうとはどう違うのですか。

SARS-CoV2はいまのところ、はるかに感染力は弱く、危険でもないようですが、私たちにはまだ分からないことがたくさんあります。他の疾病については、すでによく分かっていますが。

 

44 TEDMED:新型コロナウイルスの危険性が他のウイルスより小さいのだとしたら、どうしてこれほど多くの人が恐れるのでしょうか。

 私たちに死や病をもたらしうる新しいものには、ナーバスになるものです。しかし、正確な知識は恐怖を軽減してくれます。米国ならCDC.govのサイトを見てください。他の国の方は、それぞれの国の保健省のサイトやWHOのサイトをご覧ください。

 

45 TEDMED:CDCやWHO、あるいは各国保健省のサイトはどのくらいの頻度でチェックすればいいのですか。

 新型コロナウイルスについて新たに分かったことは常時アップデートしています。頻繁にチェックしてください。

 

46 TEDMED:人類がウイルスを完全に根絶したことはあるのですか。

 はい。かつて何百万もの人を死に追いやった天然痘はなくなっています。ポリオももう少しでなくせます。ゲイツ財団や米国など世界中の多くの国の貢献のおかげです。おそるべき疫病がかつて世界にはあったということを忘れてはなりません。

 

47 TEDMED:新型コロナウイルスはどのようにして世界中に広がるのですか。

 陸路、空路、海路を介してです。最近はウイルスが飛行機で移動します。乗客がSARS-CoV2を運ぶことがあるからです。

 

48 TEDMED:そうすると国際空港は、新型コロナウイルスにとっては歓迎を受けるところというわけすね。

 実際にはすでにSARS-CoV2は、米国を含むほとんどの国に存在しています。国際空港から遠く離れたところにも。

 

49 TEDMED:流行は中国から始まったので、中国から米国への入国者が、コロナウイルスを持ち込む最も大きな危険とみていいのですか。

 2019年に中国で新型コロナウイルスが出現して以来、世界の国々から2000万人が米国を訪れています。米国は4週間前に中国からのほとんどの直行便を止めていますが、それでウイルスが米国内に入るのを防げているわけではありません。中国の流行は当面、収まってきているようなので、中国のCOVID-19症例もいまは他の国から輸入されたものであることがしばしばあります。

 

50 TEDMED:別の言い方をすれば、世界のどの国でも大きな空港があれば、ここ三カ月のうちにこのウイルスは広がっていると考えておかなければならない、ということですか。

 はい。アメリカでは「馬が出た後で納屋を閉める」といいますね。でもそれは、すべての渡航を止める理由にはなりません。

 

51 TEDMED:日本のように学校を全国的に休校にするのはどうしてですか。

 イタリアやフランスなど他の国でもそうしています。ウイルスをもった子供によって感染はさらに拡がるのか、研究者にもいまは分からないことが理由でしょう。日本は拡大を遅らせるために極めて厳しい手段をとりました。たいてい子供は手を洗わないし、自分の衛生行動に無頓着なので、ウイルスを伝えやすい。インフルエンザの場合は、子供が感染拡大に大きな役割を担っています。それが多くの国が流行地域で学校を休校にする理由です。

 

52 TEDMED:感染した場合に、症状を和らげたり、ウイルスを取り除いたりする薬はありますか。

 まだ、効果が実証された薬や医師の言う「治療法」はありません。臨床試験の中では多種類の薬が試されているので、できるだけ早くよい結果がでることを期待したいですね。

 

53 TEDMED:治療薬は見つけられそうですか、どのくらいかかりそうですか。

 二、三カ月中には見つかるのではないかと思います。すでに使われている薬の「適応外」使用が、感染した人の治療の助けになりそうです。つまり、HIVのような他のウイルス感染症の治療で使われている既存薬の新しい使い方を試してみるということです。それでも効果の確認には時間がかかるし、数多く試験をしなければならないでしょう。中国が中心ですが、他の国々でも、新しい治療薬の臨床試験も進められています。期待はできそうです。

 

54 TEDMED:抗生物質はどうでしょうか。危機になるとみんな頼りたくなりますが。

 これは新しいウイルスであって、細菌ではありません。抗生物質は細菌には効きますが、ウイルスには効きません。病院で使えば細菌への二次感染症には有効でしょう。しかし、この新型コロナウイルスに対する効果はありません。

 

55 TEDMED:新しい根治療法やさまざまな治療法はどうでしょうか。インターネットでいろいろ話題になっていますが。

 間違った主張が際限もなく続いていますね。科学的に信じられるのは、信頼できるいくつかのウェブからの情報だけでしょう。ほとんどはごみ情報です。注意してください。そして無責任な噂話を広めないように。

 

56 TEDMED:マスクはどうでしょうか。ブルーのサージカルマスク、あるいはN95フェイスマスクは有効ですか。

 特定の状況以外では、マスクの価値は限られています。例えばN95マスクのタイプによりますが、外から入ってくるウイルスは50%以下しか防げません。ただし、飛沫の拡散は減らすでしょう。

 

57 TEDMED:適切に使用した時のマスクの利点はなんですか。だれがマスクをつけるべきでしょうか。

 サイズの合った良質のマスクを適切に使用すれば、病気の人が咳をしても飛沫の広がるのを抑えることができます。つまり、マスクはあなたを他の人から守るものではないということです。あなたから他の人たちを守るためのものなのです。あなたが風邪をひき、咳がでているとしたら、マスクをつけることは他の人への礼儀です。マスクにはもう一つ、追加的な効果もあります、自分の口を触らなくなるということです。手にウイルスがついていたとしても、そのウイルスが体内に入りにくくなります。マスクは保健医療従事者には利点があるので、医療機関で働いたり、高齢者のケアをしたりする人はマスクを付けなければなりません。

 

58 TEDMED:世界規模のパンデミックの中で、感染を防ぐために個人にできることはありますか。

 こまめに手を洗うこと、顔を触らないこと、咳やくしゃみをするときは肘か紙のハンカチで口を覆うこと、握手やハグをしないこと、これらがすべてリスクを下げます。具合が悪いときには外出せず、医師に電話してどうしたらいいか相談してください。そして他の人と会う時にはマスクをしてください。

 

59 TEDMED:「軽減策(mitigation)」の意味は。医学者からはこの言葉をよく聞きますが。

 「軽減策」とは、ウイルスの拡散を遅らせ、公衆衛生サービスや社会生活、経済への影響を抑えるという意味です。ワクチンができるまでの間でも、流行を遅らせることはできます。非常に重要なことなのです。

 

60 TEDMED:社会としてウイルスの拡散を遅らせる方法はほかにもありますか。

 手洗いなどの適切な衛生行動やエチケットによって拡散を遅らせることができます。そして「社会的距離を広げる手法(social distancing)」ですね。在宅ワーク、飛行機に乗らない、休校、大きな会合の禁止といったことが、SARS-CoV2の拡散を遅らせることになるでしょう。

 

61 TEDMED:ウイルスによってはもっと広がりやすいのもあるのですか。

 はい。はしかのウイルスが最悪です。はしかの場合、感染した人が2時間前にいて、そのあと無人になった部屋に入っただけでも感染することがあります。だから、予防接種率が低下すると、はしかがアウトブレークしてしまうのです。非常に厳しい病気です。普通の風邪も非常にたやすく感染します。HIVは比較的感染しにくいウイルスなのですが、それでもすでに3200万もの人が亡くなっています。

 

  1. TEDMED: このウイルスの拡散を止めるにはどうしたらよいのですか。

確実なことは誰にもわかりませんが、中国は拡散をかなり抑え込むのが可能であることを示しました。SARS-CoV2を完全になくすには、ワクチンが必要でしょう。

 

  1. TEDMED: 新型コロナウイルスが米国規模の人口に拡がるのに、どれくらいかかるでしょう。

適切な衛生行動をしても特別の対策をとらず拡がるままにすれば、SARS-CoV2の感染者数は毎週ほぼ2倍に増えるようです。50人の感染から100万人に拡がるのに14週間ほどということになります、単純計算ですが。もちろん、それを遅らせる対策は可能です。

 

  1. TEDMED: 適切な衛生行動でコロナウイルスの拡散を遅らせる効果はどの程度ですか。人びとがガイドラインに従うなら、感染者の数は大幅に減るのでしょうか。

感染者数は、一人一人がどれだけ注意をするかによって変わります。医療システムにかかる負荷を最低限に抑えるには、どんな小さな努力でも大切です。

 

  1. TEDMED: 私たちのまわりに気付かれていない感染がたくさんあるというのですか。そんなことがどうして起こるのですか。

毎年、何百万件ものインフルエンザ感染が起こっています。今年はその内いくらかは、実はCOVID-19でしょう。さらに、感染した人の多くは無症状かとても軽症かなので、感染したと気付かれることがないのです。

 

  1. TEDMED: 検査で陽性とは正確にはどういうことですか。

人から採取した体液の中にウイルスがいることが感度のよい検査でわかった、ということです。

 

  1. TEDMED: 誰もができるだけ早く検査を受けるべきだということですか。

COVID-19の検査は、もっと広い範囲で受けられるようにする方がよいでしょう。誰が感染しているのか、ウイルスがコミュニティにどれだけ拡がっているのか、まだ十分にはわかっていないからです。もっと検査の数を増やして、重要なデータを集める必要があります。

 

  1. TEDMED: 韓国はなぜ「ドライブスルー」検査の体制を作ったのでしょう。

韓国がドライブスルー検査を行うのは、感染者一人一人をできるだけ速やかに見つけて、流行を遅らせようと苦慮しているからです。

 

  1. TEDMED: 注目すべき主要な症状は何でしょう。

第一に咳です。

 

  1. TEDMED: 発熱は感染者を見わける適切な方法ですか。

高熱は感染を疑う理由になります。診察を受けるのがよいでしょう。ただし、例えば空港や検査所で、熱だけで振り分けるなら、多くの感染者が見逃がされるでしょう。

 

  1. TEDMED: 中国の病院で、熱はなくて陽性と確認された人はどれくらいですか。

中国のコロナウイルス患者の約30%は、来院時に発熱していません。

 

  1. TEDMED: 流行のピークを過ぎて感染者が大きく減ってから、新型コロナウイルスが再燃することはありますか。

天然痘はなくなり、ポリオもほとんどなくなりましたが、同じような努力をしないかぎり、SARS-CoV2 がなくなることはないでしょう。

 

  1. TEDMED: 長期的に新型コロナウイルスを克服するには、地球規模の広範なワクチン接種しかない、ということですか。

実際のところわかりません。住民が主体となる対策は有効でしょうが、ワクチンは必要かつ適切でしょう、ウイルスが安定し、大きな変異を起こさないかぎりは。

 

  1. TEDMED: 他のウイルスではあるようですが、新型コロナウイルスが「バーン・アウトする」ことはありえますか。

わかりませんが、そうはならないでしょう。SARS-CoV2 はすでに世界中にしっかり根を張っています。もはや中国の問題ではありません、何十万人もすでに感染しているが検査を受けていない、中国だけでなく百近い国で。SARS-CoV2は季節的に流行するインフルエンザと同じく、長期間私たちとともにあり続けるでしょう。

 

  1. TEDMED: 新型コロナウイルスは波のように、あるいは周期的に帰ってくるのですか。そうであればいつですか。

それもわかりませんが、重要な問題です。まだ初期の段階で確かなことは言えません。1918年のスペイン風邪は第三波までありました。新型コロナウイルスは、中国で学校や職場が再開されれば第二波が起こる可能性はありますが、実際に何が起こるか見るまでは、SARSCoV2がどうなるかわかりません。

 

  1. TEDMED: 何カ月かのうちに「幸運な」ブレークが一つ二つあるとすれば、どんなことでしょう。

温かくなれば、拡散はゆっくりになるかもしれません。ただし、そうなるというエビデンスはありません。シンガポールは世界でも優れたCOVID-19対策を行っており、赤道から100キロメールなのですが、それでも120例が確認されています。ですから、少なくともこの場合は、暖かい気候で拡散が抑えられてはいません。2009年のH1N1インフルエンザのように、SARS-CoV2 がそれほど危険ではない形で常に変異し、死亡例が少なくなっているのかもしれません。しかし、それに期待しようとは思いません。早くに有効な治療薬、あるいはその組み合わせが見つかれば朗報です。それが幸運でしょう。

 

  1. TEDMED: COVID-19にハイリスクな人はどこでも同じように、死亡する可能性がありますか。

残念ながら、死亡のリスクは世界のどこにいるかに大きく左右されます。設備の整った近代的な病院で必要な治療を受けられるなら、多くの人が受けられるとよいのですが、そうすれば死亡率は大きく低下します。人工呼吸器による集中治療を受け、二次感染を防ぐことができれば。

 

  1. TEDMED: 自分は軽症のグループなのか、入院が必要なのか、どう判断するのですか。

断言はできませんが、70歳以上か持病があるならば、重症化のリスク、死亡のリスクすらあります。おおむねそうだとしか言えません、COVID-19についてはまだ十分にわかってはいません。

 

  1. TEDMED: COVID-19は、明日は我が身と思ったほうがいいですか。ピーターは心配ですか。

ハイリスクでなければ、余計な心配をすることはないでしょう。しかし、なんであれ感染を予防できるなら、するに越したことはないでしょう、何がどうなるかわかりませんから。今後二、三年は、誰にでも感染のリスクはあります。一生風邪やインフルエンザにかからずに過ごせないのと同じです。そして誰もが、兆候があったら家に留まるようにすべきです。

 

  1. TEDMED: 誰にでも感染のリスクはある、とはどういうことでしょう。

人はみな、他の人と生きており、みなが繋がっているということです。冷徹な生物学的事実です。私は慎重に予防しますが、同時に、過剰な心配はしません。無用です。

 

  1. TEDMED: 誰もが新型コロナウイルスに感染するのなら、なぜ感染を防ごうとするのですか。感染したらそれで一件落着、先に進めるのではないですか。

私たちが求めるのは、感染を遅らせること、つまり新しい感染と感染者数を抑えることです。そうすれば医療機関は業務に圧倒されることなく、緊急に対応すべき他の疾患の患者を後回しにすることなく、重症の感染者を治療することができます。

 

  1. TEDMED: 回復した患者でも感染させることがあるようですが、本当ですか。

わかりませんが、回復から間もない症例ではあるようです、確実ではありませんが。もっと研究を進める必要があります。

 

  1. TEDMED: 一度感染すれば、再び感染することのない免疫がずっと得られるのですか。はしかやおたふく風邪のように。

それもまた重要な問題ですが、答えはまだわかりません

 

  1. TEDMED: COVID-19に感染し回復した人にとって終生免疫が重要なのはよくわかりますが、社会全体にとっても重要なことですか。その理由は。

その質問はワクチン開発にとって、とても重要です。ワクチンの成否は、私たちの体が防御免疫反応を備えることができるのか、ウイルスが安定しているのか、によるからです。そして明らかに、感染しやすい人の数は時とともに減少していくと思われます。

 

  1. TEDMED: 新型コロナウイルスは、インフルエンザのように、季節性でしょうか。

季節によってSARS-CoV2に変異が起こるのか、何百万人に感染することでウイルスはどう変わるのか、まだそれがわかるだけの時間は経過していません。

 

  1. TEDMED: ウイルスは変異して、異なる症状を引き起こすことがある、ということですか。

まったくわかりません。ワクチンができれば、変異したSARS-CoV2の拡散はきっと防げるでしょう。

 

  1. TEDMED: ウイルスが自然に変異するなら、致死性が強まることも、弱まることもありえる、ということですか。

そうです。いずれもありえます。新しいウイルスなのですから、どのような変異になるのかはわかりません。

 

  1. TEDMED: コロナウイルスの脅威はなくならないならば、私は、私の家族は、どうしたらよいのでしょう。

ウイルスとの付き合い方を学び、安全な行動をしっかり身につけることです。高齢の家族のニーズに、とくに配慮すべきです。

 

  1. TEDMED: ウイルスは調理カウンターの上で9日間生きられると聞きました。本当ですか。

SARS-CoV2はおそらく、ある場所では長期間生きていけるでしょうが、どれだけ長いのかはわかりません。

 

  1. TEDMED: 近代で最大のパンデミックは、第一次大戦終末のスペイン風邪でしたが、それは変異したインフルエンザによるもので、新しいウイルスではない。その変異とSARS-CoV2 を比較して言えることは。

SARS-CoV2の感染率はスペイン風邪と同程度で、致死率もほぼ同じと思われますが、やがてわかるでしょう。注意していただきたいのは、1918年当時は、いま先進国 にあるような医療体制はなく、主要な死因である細菌性肺炎を治す抗生物質もなかったということです。

 

  1. TEDMED: いま大騒ぎしていても、夏になって振り返れば、あれは空騒ぎだった、ということになる可能性はありますか。

ありません。COVID-19はすでに100カ国以上に拡散し、強い感染力をもっています。実際に日を追って感染数も、国の数も増えている。これは予行演習ではなく、本番です。

 

  1. TEDMED: 人類が見たことのない、まったく新しいウイルスが突然、何百万もの人に感染する、というのは信じがたいことですが。

SARSやMERSは新しいものでしたが、そこまでは広がりませんでした。HIVは世界にとって新しいもので、7000万人に感染しました。そして、HIVパンデミックによって3200万人が亡くなりました。

 

  1. TEDMED: HIVは豊かな国よりもはるかに貧しい国に影響を与えています。今回の新型コロナウイルスでも同じことが言えるのでしょうか。

まったくその通りです。米国のような豊かな国では、優れた水分補給や呼吸管理、感染症の適切な制御などによって、死亡率がかなり下げられています。しかし、資源に乏しく保健システムが脆弱な国では、同じウイルスが大問題を引き起こす可能性があります。アフリカの多くの国は、膨大なリスクに直面するでしょう。世界の最貧国では壊滅的事態になるでしょう。

 

  1. TEDMED: つまり、あなたはまったく楽天的ではないように思われますが。

私は、根は楽天的なのですが、同時に、やっかいで気懸かりなことがいくつもあります。とくに自分がいずれかのハイリスク・グループに入っている場合は、恐怖を感じて当然です。しかし、よいことも伝えられています。地球規模の協調が、なかでも科学や医学の分野で、すでに進んでいます。政府の透明性も高まっています。中国の感染者数は現在急速に減少しています、今後変わるかも知れませんが。そして治療法の開発も迅速に進められています。

 

  1. TEDMED: 気懸かりなことがたくさんあるとも言っていましたね。最も大きな懸念は何ですか。

制御がうまくできなければ、コロナウイルスの拡散は、国の保健システムにとってたちまち過大な負担となり、真に医療を必要とする人が利用できなくなります。もう一つの気懸かりは、過剰反応と恐怖心が国の経済を萎縮させ、別の難題を引き起こすことです。たいへんにやっかいな二律背反です。

 

  1. TEDMED: どのような心構えでいればよいのでしょう。

米国のあらゆる都市で、検査が進んで「新しい」感染者と死亡者の増加、とくに高齢者のことが報告されています。それを心して聞くことです。それは実は「新しい」ものではない。現にあるものが初めて見えてくるのです。

 

  1. TEDMED: 期待できることは何ですか。

1.現代の生物学は急速に前進していること。

2.WHOはじめ全世界の公衆衛生のコミュニティに加えて、ハイレベルの政治指導者がこの脅威に注目していること。

3.ウイルスをすぐに分離して遺伝子配列を明らかにしたこと。

4.治療法がほどなく開発されると確信できること。

5.いずれワクチンが手に入る希望があること。

6.新しいコミュニケーションの時代に現にいるということ。危険なフェイクニュースを見抜ければ、これは大きな助けになります。

 

  1. TEDMED: 米国の準備はどうでしょう。

米国には、そして他の先進国にも有利なことは、このパンデミックに備える時間的余裕があったということです。中国の前例のない封じ込めにより拡散が遅れたことで、私たちはみな恩恵を受けています。周到な準備により、米国は最初から重症例を適切に抑えられるでしょう。

 

  1. TEDMED: もっとも気懸かりなのは何でしょう。

大きな気懸かりは資源に乏しい国ですが、死はどれも悲劇です。平均では、コロナウイルスに感染した人の1%から2%が亡くなります。たいへんな数です。つまり、百万人の1%なら1万人。特に心配なのは高齢者です。しかし98%から99%の人は、命に関わることはありません。季節性インフルエンザにより米国でも毎年、何万人も亡くなっていますが、パニックは起きていません。現実には、インフルエンザをもっと深刻に受け止め、毎年ワクチンを受けなくてはならないのですが。季節性インフルエンザとともに生きることを学んできたように、COVID-19があっても、有効なワクチンが手に入るまで、どうしたら普通の生活を送れるのかを、私たちは学ぶ必要があると思います。

 

  1. TEDMED: パンデミックは将来も起こりますか。

必ず起こります。これは人間の条件、「ウイルスの惑星」に生きるということの一部なのです。闘いに終わりはありません。準備をさらに進める必要があります。つまり、次に自分たちに火の粉がかかる前に、パンデミックに周到に備え、地球規模の消防隊を組織しなくてはなりません。

 

 

100 Questions of Peter Piot about COVID-19, MARCH 13, 2020 (Recorded at TEDMED 2020 on March 3, 2020) を、Peter PiotとTEDMEDの許可を得て、宮田一雄と樽井正義が翻訳しました。PDFはhttps://www.thetedmedfoundation.org/ 、映像はhttps://www.tedmed.com/talks/show?id=797319  に掲載されています。

TEDMED財団(TEDMED)は、「世界の保健医療分野を対象にした501(c)(3)非政府団体です。より健康な世界の実現を目指し、科学と文化の幅広い英知をコミュニティに提供することをその使命としています」と紹介されています。

 

新型コロナウイルス : 西浦教授からの「お願い」について もっともだと思いつつ、なお

 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で、座長の指名を受けて流行の動向分析と対策の検討をされている北海道大学の西浦博教授が全国の保健医療従事者に向け「助けてください」というメッセージを送っています。

 そのメッセージを寄稿として掲載したヘッドラインニュースの記事です。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00010000-mthree-soci&p=2

 引用のそのまた引用で恐縮ですが、保健医療従事者だけでなく、多くの人に届いてほしいメッセージでもあるので、紹介しておきます。

 西浦教授は、わが国および世界のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の発生データの分析から、我が国の状況が流行の初期段階にあり、感染がクラスターという一定の条件を備えた小集団単位に拡大していることを把握しました。

 私の理解は間違っているかもしれないので、詳しくは西浦さん自身の寄稿を読んでいただいた方がいいと思いますが、せっかくだから自分の知識の整理のためにもう少し、蛇足の説明と感想を続けます。

 3月の初めから続いていたイベントなどの自粛や学校の休校などは、クラスター発生の機会を減らし、発生したとしてもその存在を早期に把握してクラスターからクラスターへと感染の連鎖が広がることを防ごうという戦略に基づくものでした。

 国内の感染をゼロに抑えるのではなく、クラスター発生を限りなくゼロに導こうという対策でしょう。

 つまり、目に見えないウイルスの感染をクラスターというかたちに可視化することで、予防や感染の拡大防止に必要な手が打てるようになる。その努力を続ければ、過剰な不安におびえることなく感染の拡大スピードを抑えることが可能になり、やがて流行は拡大から縮小へと向かう。

 こうしたシナリオの中で、とりあえず2週間、頑張ろうというメッセージが届けられ、日本国内の流行はとりあえず「何とか持ちこたえている」という状態の維持に成功しました。

 これは流行初期としては目覚ましい成果です。そして、その成果を可能にしたのは、老若男女を問わず、あまねくたくさんの人たちに行動変容が行き渡ったからではないか。私はひそかにそう思っています。

世の中の機能が止まったような部分もあり、鎌倉などでも一時期、飲食店はがらがらでした。個人的にも、ついつい外食はもちろん、外出も避けがちになり、それはそれでちょっと切ないねという気分でもありましたが、ひとたび発せられたメッセージに対するこのあたりの忖度の浸透ぶりは、あえて誤解を恐れずに言えば日本社会の腰の強さでもあります。

 でも、さすがに2週間も我慢すると「もう、いいんじゃね?」という気分も生まれてきます。まして、外は春の陽気です。桜の花は開き、虫だって地面から這い出してきます。

 「この2週間が瀬戸際」みたいなメッセージに対する達成感もありました。ただし、これは流行拡大のスイッチが入るのを抑えたという意味では大きな成果ですが、2週間後にもう一度スイッチを入れなおしてしまったのでは意味がありません。流行本格化のスタートが2週間遅れるだけです。

 西浦さんは寄稿の中でこう書いています。

 《日本における国内感染は上記の大規模イベント自粛と行動自粛の実施中に、新規感染者の発生が減少に転じたことが知られています。この感染症は行動変容を伴う努力をもってすれば「制御できる」のです》

 ただし、これはまだ中間評価です。より正確には中間試験の前の実力テストの結果ぐらいでしょうか。実力はそこそこあるね、ということは分かったけれど、期末試験が終わったわけではではありません。西浦さんがいままさに「助けてください」というほどの危惧を抱いているのもそのためです。

 《しかし、3月19日に少しでも良いニュースが伝わり、小中学校などの休校が解除される方針が伝わったことで、市民の間で「解禁ムード」が広がってしまっていることを大変危惧しています。行動がいつも通りに戻ってしまうと、アメリカや欧州各国で見られるような爆発的な感染者数の増大が懸念されるためです》

 じゃあ、どうしたらいいかということになりますね。

 この調子でがんばろうと励ますのも一つの手ですが、鼻面にニンジンをぶら下げられたまま「もうちょっと、もうちょっと」と言われ続けるのもつらい。

 西浦さんはこう書いています。

 《今、頑張って皆で行動を変えることができれば切り抜けられる可能性が高いです。皆さんの力が必要です。お願いします、助けてください》

 ここで呼びかけられている「皆さん」は保健医療従事者です。

 でも、自粛だけでは世の中がもちません。個人的には「勝負は行動を変えること、つまりキーワードは行動変容ではないか」と私は思います。科学的根拠は何もありません。しいていえば、暇を持て余し、春の陽気に誘われてついつい外出してしまうハイリスクな老人のストリートの知恵といいますか・・・。

 人込みは避ける、こまめに手を洗う、買い物はアルコール消毒のできる店に行き入るときと出る前にフカフカと手にかけてこする、具合が悪いときは外出や会合は遠慮する、よく寝る(いわれないでも寝ちゃうけど)、在宅ワークを含め柔軟な働き方を可能にする(ほとんど働いていないけど)などなど。すでに皆さんが始めていることです。これをまず続けよう。

 また、社会的にはこの際、大規模化、大量化のメリットに対する価値観の再考を促したい。イベントがほどほどの規模で成り立つようにするにはどうしたらいいのか、クルーズ船は何人ぐらいの定員なら目が行き届くのか。

 6万人の競技スタジアムに大観衆を集める球技の試合は魅力的だけど、スタンドからは選手の動きが豆粒ほどにしか見えず、結局、巨大スクリーンの映像しかみていないなどということもあります。

 中継やスポンサー収入などで、スタンドは小観衆でもイベントが成り立ちうる新たなビジネスモデルの構築もスポーツ界には必要になるでしょう。

 自粛はまだ当面の間、必要かもしれませんが、徐々に自粛や閉鎖から行動変容への移行をはかっていきたい。

 また、その際に国が要請ではなく、きちんと禁止を命令して、その基準を示すべきだといった意見もあります。でも、私は個人的には「そんなことまでイチイチ、お上に指図されたくないね」と感じています。経済でも文化でも、政府にゆだねたらろくなことはないよ。

 禁止よりも要請レベルで、判断はこちらにまかしてくれ。それで最適解をさぐるから・・・。そういうことを言っているとまた、困った人たちが出てくるかもしれませんがそれでもこちらの在り方の方に大いなる魅力を感じます。あくまで個人的な見解ですが・・・。

 

COVID-19対策にコミュニティを中心にした人権アプローチを要請  UNAIDS エイズと社会ウェブ版459

 新型コロナウイルス感染症COVID-19について、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が3月20日、プレスリリースを発表しました。ほぼ40年に及ぶHIV/エイズの流行というパンデミックに対峙することで得られた教訓を踏まえ、新型コロナ対策のガイダンス(手引書)『COVID-19時代の人権:コミュニティ主導の効果的対策に向けたHIV流行の教訓』を作成しましたという発表です。

 リリースによると、ガイダンスでは各国に対し、人権尊重を基本にしたアプローチでコミュニティの参加を促進し、持続可能で効果の高い対策を実現するよう呼びかけています。

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www.unaids.org

『このガイダンスは国際的な人権関連法や取り決めを踏まえ、感染症対策の課題は公衆衛生と人権のバランスをどうとるかではなく、人権の原則に基づかない限り対策の成果は期待できないということを明確に示している。ガイダンスはコミュニティ、公衆衛生分野、学者、国連関係者からなる国際専門家グループによってまとめられた』

 ここは重要な論点です。流行が欧米に拡大したとたん、どういうわけか先進諸国の動揺が激しく、極端な排外的政策が強め強めに打ち出される。まるでそれを競い合っているような印象すらあります。

 「日本では、人権の問題があるから中国のような思い切った対策が取れない」などとさも残念そうに言われ、思わず、本気で言っているの?と相手の顔を観たくなるようなこともありました。

 でも、いまや世界の名だたる大都市で、外出が禁止され、買い物は一日一回、しかも許可証がないとダメ・・・。こんなことがいつまでも続けられるわけはないので、どこかで長期戦を覚悟し、我に返る転換点がくるのではないでしょうか。

 重症化リスクの高い高齢者としては、みんなで年寄りを守ろうという戦略は極めてありがたく、感謝の念にたえない。その気持ちは大いに強調しておきたいのですが、ついつい、これはないぞという思いにかられるニュースも少なくありません。お医者さんも医療崩壊を防ぐためなら、社会が崩壊することも辞せずなどと思っているわけではないでしょう。どちらも崩壊しないように努力しなければならない。

 個人的には努力と縁遠い人生を送ってきてしまいましたが、努力というのはたぶん、そういうときに辛抱強く使う単語なんでしょうね。

 各国の指導者に少し頭を冷やそうと呼びかけても、いまはあまり聞く耳を持たないかもしれません。でもね、それでもアピールしておく必要はありそうです。

 ただし、UNAIDSのプレスリリースを読んだだけでは、どうも建前的な原則論の印象は免れません。HIV/エイズ対策の貴重な経験の質量が反映しきれていないというか・・・。

 少し時間はかかるかもしれないけれど、ガイダンスそのものも訳しておいた方がいいかなあ。とりあえず以下、リリースの日本語仮訳です。

    ◇

COVID-19アウトブレークに対し、コミュニティを中心にした人権アプローチを UNAIDSが要請 プレスリリース

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2020/march/20200320_human-rights-approach-covid-19

 

ジュネーブ 2020年3月20日 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は各国に対し、人権を基本にしたアプローチでCOVID-19の世界的アウトブレークに臨むよう求めている。このアプローチは、コミュニティを中心に据え、すべての人の人権と尊厳を尊重することを強調している。各国政府やコミュニティ、その他のステークホルダーが、パンデミックを封じ込めるための対策を策定し、実施するうえで助けになるよう、UNAIDSはHIV対策の経験に基づく新たなガイダンス(手引き)『COVID-19時代の人権:コミュニティ主導の効果的対策に向けたHIV流行の教訓』を作成した。 

 このガイダンスは国際的な人権関連法や取り決めを踏まえ、感染症対策の課題は公衆衛生と人権のバランスをどうとるかではなく、人権の原則に基づかない限り対策の成果は期待できないということを明確に示している。ガイダンスはコミュニティ、公衆衛生分野、学者、国連関係者からなる国際専門家グループによってまとめられた。

 「人権とコミュニティのリーダーシップに基づくものでなければ、地球規模の感染症対策は成功しません」とUNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長は言う。「HIV対策に最も大きな成果を上げてきた国々は、コミュニティを力づけ、検査の普及、および必要な場合には治療の提供を進め、自分自身と他の人たちがウイルスに感染することを防いできました」

 ガイダンスは、エイズ対策から得られた教訓を紹介し、公衆衛生上の緊急事態に効果的に対応するには人権に基づくアプローチが不可欠であることを示している。社会的に弱い立場の人たちへの対応を重視し、流行の影響を受けている個人やコミュニティが直面するスティグマや差別と闘うこと、人権を侵害する障壁を取り除くこと、コミュニティと公衆衛生当局との信頼関係を築くこと、医療の最前線のスタッフを守ることなどがそうしたアプローチには含まれている。

 ガイダンスが認めているように、感染症の流行は、すでに存在している社会的な不平等をあからさまにし、激化させる傾向があり、その影響は社会から疎外され、弱い立場に置かれている集団の人びとが大きく受けることが多い。人びとが医療支援とアドバイスを最も必要としているときにその提供を妨げる財政上およびその他の障壁は、その人たち自身のためにも、より広範な公衆衛生上の成果を求めるうえでも、取り除かなければならない。

 ガイダンスはまた、COVID-19の流行に影響を受けている人たちに対する全面的な移動制限や処罰にも反対している。そうした対策は最も弱い立場の人たちに対し、極端に影響が大きく、健康面でさらに重大な障壁を生み出す傾向があるからだ。規制については人権を尊重し、必要かつ均衡のとれたものであり、エビデンスに配慮して実施期間も最小限に抑えなければならない。人びとが自分自身と他の人を自発的に守るよう行動することを奨励する対策の方が、より大きな効果を期待することができる。

 「すべての人にとって、深刻かつ困難な状況です」とビヤニマ事務局長はいう。「この困難を切り抜けるためには、HIVの流行のような他の世界的パンデミック対策からの貴重な経験を生かさなければなりません:人権に基づき、コミュニティが積極的に参加し、誰も取り残さないようにする対策です」

 

 

 

PRESS RELEASE

UNAIDS calls for a human rights approach to the COVID-19 outbreak that puts communities at the centre

 

GENEVA, 20 March 2020—UNAIDS is calling on countries to adopt a human rights-based approach in responding to the global outbreak of COVID-19 that puts communities at the centre and respects the rights and dignity of all. To help guide governments, communities and other stakeholders in planning and implementing measures to contain the pandemic, UNAIDS has produced a new guidance document that draws on key lessons from the response to the HIV epidemic: Rights in the time of COVID-19: lessons from HIV for an effective, community-led response.  

 

The new guidance from UNAIDS is grounded in international human rights law and obligations and makes it clear that responding to an epidemic is not a question of balancing public health and human rights but rather that a successful and effective response requires us to adhere to human rights principles. The guidance has been developed by a group of international experts from communities, the public health arena, academia and the United Nations.   

 

“Successful responses to global epidemics are always grounded in a respect for human rights and community leadership,” said Winnie Byanyima, UNAIDS Executive Director. “Countries that have made the biggest inroads in reducing the impact of HIV have done so by adopting approaches that empower communities to screen, test and seek treatment if necessary and to protect themselves and others from acquiring the virus.”

 

The guidance presents key lessons from the AIDS response that are crucial for an effective human rights-based approach to public health emergencies. They range from tackling stigma and discrimination faced by affected individuals and communities to prioritizing measures for reaching the most vulnerable, removing human rights barriers, establishing trust between communities and public health authorities and protecting critical frontline medical staff.

 

As the document recognizes, epidemics tend to expose and exacerbate existing inequalities in society, with their impact often felt most among marginalized and vulnerable groups of people. Financial and other barriers that prevent people from seeking medical help and advice when they need to must be removed, both for their own good and for improved broader public health outcomes.

 

The guidance also warns against blanket compulsory travel restrictions and criminal sanctions against people affected by epidemics such as COVID-19. Such measures tend to have a disproportionate effect on the most vulnerable and create more barriers to health. Restrictions that are imposed must respect human rights and be necessary, proportionate, evidence-informed and of limited duration. Empowering people to protect themselves and others through voluntary measures can have a greater effect.

 

 “This is a serious and difficult situation for everyone,” said Ms Byanyima, “To come through, we must draw on our valuable experience from responding to other global epidemics, such as HIV: ground the response in human rights, engage communities and leave no one behind.”

《恐怖と不安の流行にどう対応するか》 ぷれいすコラム

 ぷれいす東京の生島さんから、新型コロナウイルスでコラムを書きませんかとお誘いを受け、テーマの重大性にもめげず、軽い気持ちでお引き受けしたら、なんと【緊急企画】として破格の扱いを受けることになりました。
 時期が時期だけに・・・ということなんでしょうね。

 ささやかながら話題に乗っかっちゃったという意味では、テレビ出演で大忙しの専門家の皆さんを批判してばかりもいられませんね。こちらです。ぜひご覧ください。

 

ptokyo.org


《性行為が主要な感染経路であるHIV/エイズと呼吸器感染症SARSやインフルエンザでは、ウイルスの感染経路も対策も異なる。
 だが、それと同時に、未知の感染症に対し、社会的な恐怖や不安が引き出す反応にはかなり共通した特徴もみられる。私の経験から教訓と思うものを紹介しよう》
 ・Fear is OK
 ・社会の動きを止めない
 ・感染した人を非難しない
 ・自粛から行動変容へ

 

 ま、訳さなければいけない文献もここにきてどっさり出てきたので、感染におびえながら、最近は自宅で忙しくしております。
 

『COVID-19: 各国は危機対応策の乱用で人権を抑圧してはならない』 国連専門家グループ

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行について、国連の人権専門家グループが『各国は危機対応策の乱用で人権を抑圧してはならない』と求めています。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の公式サイトに3月16日付でニュースとして紹介されているので、その日本語仮訳を大急ぎで作成しました。あくまで私家版ですが、参考になるようでしたらご覧ください。

 英文はこちらです。専門家グループのメンバーも載っています。

https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25722&LangID=E

 《このアピールは国連人権高等弁務官が先日、行った『コロナウイルス:最前線で人権を尊重し、対策の中心に据える必要がある』という呼びかけに対応するものである》

 ということで、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官による3月6日付の呼びかけも日本語仮訳を当ブログに載せてあるので、よかったらそちらもどうぞ。

 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2020/03/09/123402

 

 ということで、専門家グループの要請に戻りましょう。

 《手っ取り早い方法として非常時権限に魅力を感じる国や安全保障機関もあるかもしれません、と専門家グループは言う。「法律や政治システムの中に過剰な権力行使が組み込まれないようにするには、規制範囲を狭め、公衆衛生を守るための侵入的手段を最小限に抑えるようにすべきです」》

 その通りだと思います。ただし、OHCHRの公式サイトにこのニュースが載ってから、わずか1日しかたっていないのに、世界中が逆の方向に動き出しているような印象も受けます。したがって、絶妙のタイミングで出された要請であるといえないこともないのですが、個人的には「なんで武漢封鎖の時には何も言わなかったのに、いまになって」という違和感もかなりあります。国連が中国に遠慮しているなどと、陰謀論めいたことは考えたくないのですが、WHOの対応も含め、どうも今回は釈然としません。ヨーロッパは浮足立つし、トランプさんは火に油を注いでしまうし・・・。

 

    ◇

 

COVID-19: 各国は危機対応策の乱用で人権を抑圧してはならない 国連専門家グループ

https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25722&LangID=E

 

ジュネーブ(2020年3月16日) 国連の人権専門家グループ(注:メンバーは英文参照)は本日、各国に対し、コロナウイルスの流行に対応するための安全保障策のいたずらな拡大を慎み、反対意見の抑圧に非常時権限を使わないよう自覚を求めた。

 「いま直面している健康危機の厳しさを考え、重大な脅威に直面した際の非常事態策の導入が国際法上は認められているとしても、コロナウイルスへの緊急対応策は均衡がとれ、必要かつ差別のないものでなければなりません。各国にはこのことを改めて要請します」と専門家グループは言う。

 このアピールは国連人権高等弁務官が先日、行った『コロナウイルス:最前線で人権を尊重し、対策の中心に据える必要がある』という呼びかけに対応するものである。

 #HumanRights #CoronavirusOutbreak

 保健に関しても、安全保障に関しても、非常事態宣言には国際法上の明確なガイダンス(手引き)があります、と国連専門家グループは言う。「非常時権限の適用は公式に宣言しなければならず、移動、家庭生活、集会などの基本的権利が大きく制限される時には、関連する人権条約機関に通知すべきです」

 「それに加え、COVID-19のアウトブレークに基づいて非常事態を宣言する際には、特定の集団や少数者、個人をターゲットにするかたちでその宣言が使われるようなことがあってはなりません。また、健康を守るという名目で抑圧的な行動を正当化したり、人権を擁護活動に取り組む者を黙らせたりするための方策として使われてはならないのです」

 「ウイルスに対応するための規制は、正当な公衆衛生上の目的に基づくべきものであり、反対意見を封じ込めるために使われてはなりません」

 手っ取り早い方法として非常時権限に魅力を感じる国や安全保障機関もあるかもしれません、と専門家グループは言う。「法律や政治システムの中に過剰な権力行使が組み込まれないようにするには、規制範囲を狭め、公衆衛生を守るための侵入的手段を最小限に抑えるようにすべきです」

 最後に、ウイルスの感染が収まりつつある国に対しては、政府が通常の生活に戻すことを目指し、日々の生活を無期限に制限するような非常時権限の過度な行使を避けなければなりません、と専門家グループは指摘する。

 「法の支配と人権の保護に基づく健全な社会の実現をはかるために、各国は人権を基本にしたアプローチでこのパンデミックの制御にしっかりと対応してください」と国連専門家グループは述べている。

 

 

 

COVID-19: States should not abuse emergency measures to suppress human rights – UN experts

 

GENEVA (16 March 2020) – UN human rights experts* today urged States to avoid overreach of security measures in their response to the coronavirus outbreak and reminded them that emergency powers should not be used to quash dissent.

 

 “While we recognize the severity of the current health crisis and acknowledge that the use of emergency powers is allowed by international law in response to significant threats, we urgently remind States that any emergency responses to the coronavirus must be proportionate, necessary and non-discriminatory,” the experts said.

 

Their appeal echoes the recent call by the UN High Commissioner for Human Rights to put #HumanRights at the centre of #CoronavirusOutbreak response.

Declarations of states of emergency, whether for health or security reasons, have clear guidance from international law, the UN experts said. “The use of emergency powers must be publicly declared and should be notified to the relevant treaty bodies when fundamental rights including movement, family life and assembly are being significantly limited.”

 

“Moreover, emergency declarations based on the Covid-19 outbreak should not be used as a basis to target particular groups, minorities, or individuals. It should not function as a cover for repressive action under the guise of protecting health nor should it be used to silence the work of human rights defenders.

 

 “Restrictions taken to respond to the virus must be motivated by legitimate public health goals and should not be used simply to quash dissent.”

 

Some States and security institutions may find the use of emergency powers attractive because it offers shortcuts, the experts said. “To prevent such excessive powers to become hardwired into legal and political systems, restrictions should be narrowly tailored and should be the least intrusive means to protect public health.”

 

Finally, in countries where the virus is waning, authorities must seek to return life to normal and must avoid excessive use of emergency powers to indefinitely regulate day-to-day life, they said.

 

“We encourage States to remain in maintaining a human rights-based approach to regulating this pandemic, in order to facilitate the emergence of healthy societies with rule of law and human rights protections,” the UN experts said.