『パリ声明:HIV科学研究の重要性』 エイズと社会ウェブ版276

 7月23日(日)から26日(水)まで、パリで開かれる第9回国際エイズ学会HIV基礎研究・治療・予防会議(IAS2017)の公式サイトにパリ声明『The Paris Statement: HIV Science Matters』が掲載されました。 

 その日本語仮訳です。タイトルは少し意訳気味に『HIV科学研究の重要性』としました。会議の主催者である国際エイズ学会(IAS)と国立エイズ・ウイルス性肝炎研究機関(ANRS)が連名で発表しています。おそらく開会式で報告するのでしょうね。

 隔年開催の国際エイズ会議の間の年に開かれるIAS会議は、医学研究者が集まる会議という印象が強い会議です。声明も当然、科学的な研究はHIV/エイズ対策の根幹をなすものであり、ここにいま投資しなければダメでしょうといった書き出しでした。もちろん医科学研究は重要であることを認めるのにやぶさかではありませんが、例によって医学がすべてだみたいな調子の主張が展開されると最近は「はいはい、またですか」と少々、うんざりした気分になります。でも、読んでみると、なかなかいいことも書いてありました。

 重視すべき研究分野が5つの領域にわたって取り上げられています。その中で太字にして強調されている部分は以下の通りです。

1 基礎医学

2 ワクチン開発

3 治療薬の処方や服薬支援

4 予防への投資と構造的障壁の克服

5 経済、投資効果

 わりと幅広です。最後のまとめ部分の指摘にもけっこう好感が持てます。

 『学際的なアプローチと社会、文化的な側面に対応する研究プログラムをもっと増やしていかなければなりません;参加型でコミュニティに基盤を置いた研究を強化する必要があります;そしてキーポピュレーションとHIV陽性者が研究の優先度の決定に関われるよう意味のあるかたちでの参加を保障することは、依然として揺らぐことのない原則です』

 国際的にはこのあたりが共通認識として定着しているのでしょうね。実はこの辺の領域に関しては、日本国内でもそれなりの実績を上げてきました。その成果をつぶさずに生かしていきたいといったことも頭の片隅に置きつつ、国際的な動向を注視していきましょう。

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 IAS2017 パリ声明

http://www.ias2017.org/The-Paris-Statement-HIV-Science-Matters

 

パリ声明:HIV科学研究の重要性

 科学的知識はHIV対策の根幹です。過去30年以上にわたり、科学研究がHIVおよびその管理に関する私たちの理解を形成し、考え方に影響を与え、HIV関連の疾病を減らし、防ぎ、HIV陽性者の生活を改善し、新規感染を予防するためのよりよい方法をさぐる道を示してきました。科学がHIV対策を推進してきたのです。私たちはHIVとの闘いにおいて並々ならぬ科学的成果をあげ、いまなお待ち受けているあらゆる課題の解決に向けた高い能力も有しています。それなのにHIVの科学研究に対し、十分な資金が確保できないという脅威に直面しています。

 研究に打ち込めることが約束されなければ、生涯にわたる治療を世界中の3700万人のHIV陽性者に提供し、流行を縮小に導くという野心的な目標は実現できません。HIV研究の進歩は、公衆衛生や他の疾病対策にも極めて広範な相乗効果を生み出してきました。最大限の科学的成果をあげ、その成果が失われないようにするには、以下のHIV研究の各分野で、持続的な研究への投資を保証する政治の意思が必要です。

 

1      最も基礎的なレベルにおけるHIVの理解、および宿主との相互作用の理解には、基礎医学への継続的な投資が必要です。HIV持続感染の分子細胞学的メカニズムの分析、ウイルスの制御などが最近の研究の優先課題です。HIVの治癒に向けた研究の充実には、動物モデルと有望な新技術への資金確保が必要です。がんや慢性疾患、感染症分野の共同研究も進めなければなりません。

2      地球規模の流行を制御するにはワクチンが必要です。予防、治療両方の目的でワクチン開発に向けた新たなアプローチをさぐる必要があります。予防ワクチンと免疫療法の開発に備え、細胞性免疫と液性免疫のそれぞれの特徴を調べることも、そうした研究に含まれます。

3      治療薬の処方や服薬支援の研究を必要とする何百万もの人たちのためにHIV治療薬の組み合わせを改善し、その成果を確認する。長期の服薬継続を助け、薬剤耐性の出現を減らせるような抗レトロウイルス薬(ARV)の組み合わせを開発することが優先課題です。ナノ、注射式その他の長期持続型処方、細胞拡散がよく副作用が少ない組み合わせ、小児用の組み合わせなどの開発も優先すべきです。HIV結核、クリプトコッカス症の研究の相互協力も進めていく必要があります。実践適応科学は「検査-治療‐保持」における保持アプローチの理解を広げるために必要です。感染率の高い層が繰り返し検査を受けられるようにする新たな方式、定期的なウイルス量のモニタリング、服薬継続改善戦略、分化型サービス提供モデルの採用なども含まれます。

4      予防の選択肢は、予防を最も必要とする人に使いやすく有用でなければなりません。予防への投資と構造的障壁の克服に焦点を当て、多様な予防ツールを用意してアクセス改善をはかるべきです。その中にはHIVに最も感染しやすい人のための曝露前予防服薬(PrEP)も含まれます。コンビネーション予防の開発と規模拡大を継続して支援する必要があります。とりわけキーポピュレーション(男性とセックスをする男性、注射薬物使用者、セックスワーカートランスジェンダーの人たち)、移住者、ジェンダーに配慮した若い世代へのアプローチなどへの支援は重要です。人文、社会科学研究はスティグマと差別への対応を優先課題とすべきであり、個別の条件にあわせて同性愛差別や性差別、外国人差別など流行の拡大要因の解消に取り組むアプローチを採用する必要があります。

5      臨床検査室や臨床試験の場を超えて、研究の経済、投資効果を高めるには、一貫した対応と革新的な資金確保モデルの創設が不可欠です。ジェネリック薬や生物学的同等薬剤の利用拡大も視野に入れつつ、低・中所得国でも使えるHIV検査薬、治療薬の価格モデルの検討や重感染症治療などの研究を継続しなければなりません。政治学、経済学では現在の資金ギャップへの対応やユニバーサルヘルスカバレッジの普及に向けた研究に取り組む必要があります。

 

 HIVの流行は到底、終わったとは言えません。エビデンスに基づく政策とプログラムの策定は深刻な資金ギャップに対応するための重要な要素です。学際的なアプローチと社会、文化的な側面に対応する研究プログラムをもっと増やしていかなければなりません;参加型でコミュニティに基盤を置いた研究を強化する必要があります;そしてキーポピュレーションとHIV陽性者が研究の優先度の決定に関われるよう意味のあるかたちでの参加を保障することは、依然として揺らぐことのない原則です。

 HIVの科学研究は重要です。流行の終結には、科学研究の継続的な貢献と、それを可能にする投資が必要です。

 

 

 

 

The Paris Statement: HIV Science Matters

Scientific knowledge is the backbone of the HIV response. Over the past 30 years, scientific research has shaped and influenced our understanding and management of HIV and has pointed continually to better ways to reduce or prevent HIV-related illnesses, improve lives for people living with HIV and prevent new infections. Science drives the HIV response. Yet our extraordinary scientific progress against HIV and our ability to address all of the scientific challenges still before us are threatened by a weakening resolve to fund HIV science.

We cannot achieve ambitious global goals, provide life-long treatment to the 37 million people living with HIV and reduce the epidemic without an unfaltering commitment to research. Progress in HIV science has far-reaching synergistic effects across public health, informing and supporting the response to other disease areas. Political commitment to sustained and predictable investment in a robust HIV science agenda must be strengthened in each of these areas to ensure that scientific progress against the epidemic is maximized and that gains are not lost:

 

 

1      Understanding HIV and its interactions with its host at the most fundamental level requires continuing investment in basic science. Current research priorities include the analysis of the molecular and cellular mechanisms of HIV persistence and viral control. To enhance research efforts towards an HIV cure, animal models and promising new technologies must be funded. Synergistic approaches with cancer, chronic and infectious diseases research must be promoted.

2      Controlling the global epidemic requires a vaccine and an ongoing and consistent commitment to investigating new approaches to vaccine development for both prophylactic and therapeutic use. Research efforts must include the characterization of different cellular and humoral immune responses to be harnessed in the development of preventive vaccine and immunotherapeutic strategies.

3      Improving HIV treatment options and outcomes for the millions of people who need it requires research on drug formulations and adherence support. These efforts should prioritize the development of antiretroviral (ARV) formulations that support long-term adherence and reduce the risk of viral resistance. Development efforts must include nano, injectable and other long-acting formulations, as well as optimal formulations with good tissue diffusion and few side effects and adapted to paediatric populations. Cooperation between HIV, TB and cryptococcosis research programmes must be promoted. Implementation science must continue to inform retention approaches across “Test-Treat-Retain”, including new modalities for repeat testing in high-incidence settings, routine viral load monitoring, improved client adherence strategies and the adoption of differentiated service delivery models.

4      Prevention options must be accessible to and useful for the people who need them most. Investment in prevention and overcoming structural barriers should focus on improving access to diversified prevention tools, including pre-exposure prophylaxis (PrEP), for people most vulnerable to HIV infection. Prevention research must continue to support the development and scale up of combination prevention, notably for key populations (men who have sex with men, people who inject drugs, sex workers, transgender people), migrants and the younger generation with a gender-sensitive approach. Research priorities in the humanities and social sciences must address stigma and discrimination and identify tailored approaches to reduce the drivers of the epidemic, including homophobia, sexism and xenophobia.

5      Beyond the laboratory and clinical trial setting, investments that better explore economics and financing are essential to supporting a sustained response and the creation of innovative financing models. Research must continue to inform thinking on pricing models for HIV diagnostics and medicines, as well as treatments for co-infections, that are modified in particular for low- and middle-income countries and take into consideration the expanded role of generics and bio-equivalents. Political and economic sciences must focus on existing financing gaps and work towards models that expand universal health coverage.

 

The HIV epidemic is far from over. Expanding the evidence base to guide policy and programme decisions is a key component in addressing critical research gaps. Multi-disciplinary approaches and research programmes adapted to a range of social and cultural contexts must be allowed to flourish; participatory and community-based research must be strengthened; and the meaningful involvement of key populations and people living with HIV in shaping research priorities must remain an unwavering principle.

HIV science matters. Ending the epidemic requires the continued contribution of and investment in science.

UNAIDS報告書『エイズ終結を目指す:90-90-90目標への前進』 エイズと社会ウェブ版275

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が7月20日、HIV/エイズに関する最新の推計を基にした報告書『エイズ終結を目指す:90-90-90目標への前進』を発表しました。そのプレスリリースの日本語仮訳です。

 あくまで推計値ですが、世界中で抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者が1950万人に達したと報告しています。

 また、これも推計値ですが、2016年末の世界のHIV陽性者数は3670万人なので、治療を受けている人が陽性者全体の53%を占めていることになり、初めて半数を超えました。

 プレスリリースでは(たぶん報告書でも)、この点を強調して、『 for the first time the scales have tipped』と表現しています。tipというのは、とがったものの先端だとか、山の頂上に達したといった意味でしょうか。

 とりあえず、『治療の普及が初めて頂点を越えたことを明らかにした』と訳しましたが、いまいち、しっくりきません。確かに半分だから、「折り返し点を回った」だとか、「頂点越えした」だとか言えないこともないのですが、個人的にはちょっとどうかなあという気持ちもあるからです。

 少なくとも、これからは下り坂というわけではなく、むしろこれから胸突き八丁なのではないでしょうか。

 ただし、「ここまで来たんだ」という成果を強調したい。その気持ちはわかります。したがって、あまり嫌味なことは言わないようにしましょう(と言いつつ、やっぱり言っている? このあたりが老いてなお、不徳の致すところでしょうね)。

 2016年の年間新規HIV感染者数は180万人です。昨年11月に発表されているファクトシートでみると、2015年は年間210万人だったので、少し減ってきた印象でしょうか。

これまでは、過去5年間成人の新規感染はほぼ横ばいのままだということで、治療の普及が新規感染の減少に結びつかず、UNAIDSも嘆いていた印象がありましたが、何とかしなければ・・・と言い出すと何とかなってくるものですね。うがった見方をすれば、何とかしなければと言い出すのは、何とかなりそうな見通しが立ちそうだったからかもしれません。これは単なる私の想像です。根拠はありません。

 数字はあくまで科学的な推計に基づく集計であり、印象操作の余地などはないのだと思います。もちろん、そうです。そうに違いありません。それでも、90-90-90目標遂行への天の配剤といいますか、うまく平仄があってくるものだなあと改めて感心します。

 毎年この時期は、隔年開催の「国際エイズ会議」または「国際エイズ学会HIV基礎研究・治療・予防会議」が開かれるので、その会議の議論に向けた資料としても、最新推計を盛り込んだ報告書は活用されています。記事も書きやすいしね。報道関係者としては助かります。今年は7月23日に第9回国際エイズ学会HIV基礎研究・治療・予防会議(IAS2017)が開幕するので、報告書発表の会見もパリで行われたようです。

 

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治療の普及さらに拡大 1950万人が生命を救う治療を受け、エイズ関連の死者数は2005年当時から半減 UNAIDS報告書   UNAIDSプレスリリース

 90-90-90目標は世界の対策を活性化させ、多数の生命を救っている。新規感染の減少は東部、南部アフリカの成果が大きく、2010年比で30%近く減少。中でもマラウイモザンビークウガンダジンバブエは40%以上の減。それでも子供、思春期の若者、男性、キーポピュレーション、および特定の地域の予防対策に協力して取り組む必要がある。

 

www.unaids.org

 

 ジュネーブ・パリ 2017年7月20日 ― 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新報告書を発表し、治療の普及が初めて頂点を越えたことを明らかにした。世界のHIV陽性者の半数以上(53%)がHIV治療を受け、エイズ関連の死者は2005年当時190万人だったのが2016年には100万人に減少している。この成果が今後も拡大していけば、世界は2020年までに3000万人に治療を提供する目標の実現に向けてさらに前進を続けるだろう。

 「我々は1500万人に治療を提供するという2015年目標を達成しました。さらにその目標を倍増させ、3000万人に治療を提供する2020年目標を実現させなければなりません」とUNAIDSのミシェル・シィデベ事務局長は語る。「誰も置き去りにしないことを重視し、必要な人すべてに治療が届くよう普及拡大をはかっていきます」

 最も成果が大きかったのは、流行の打撃が最も大きく、世界のHIV陽性者の半数以上が暮らす地域でもある東部・南部アフリカだった。2010年と比べるとエイズ関連の死者は42%減少している。新規HIV感染は29%の減で、中でも子供の感染は56%も減っている。HIV治療と予防の普及により、東部・南部アフリカをエイズ流行終結の軌道に乗せる目覚ましい成果となった。

 

 

何が軌道に乗っているか

 

90-90-90に向けた成果

 報告書『エイズ終結を目指す:90-90-90目標への前進』は、90-90-90-目標実現に向けた成果と課題について詳細な分析を行っている。この目標は2014年に掲げられたもので、2020年までにHIV陽性者の90%が自らのHIV感染を知り、そのうちの90%が抗レトロウイルス治療を継続して受け、治療を受けているHIV陽性者の90%が体内のウイルス量の抑制を果たすことを目指している。

 報告書によると、2016年現在、世界のHIV陽性者の3分の2以上(70%)が自らのHIV感染を把握している。そのうちの77%が治療を受け、そのさらにその82%が体内のウイルス量の抑制を果たし、自らの健康を維持するとともに、ウイルスが他の人に感染するのを防ぐことにもなっている。

 東部・南部アフリカ、西欧・中欧、北米・ラテンアメリカは2020年までの90-90-90-目標達成への軌道に乗っている。東部・南部アフリカでは、HIV陽性者の76%が自らのHIV感染を知っている。そのうちの79%は抗レトロウイルス治療を受け、さらに治療を受継続している人の83%はHIV量が検出限界以下になっている。つまり、東部・南部アフリカではHIV陽性者の50%は体内のウイルス量が抑制された状態を保っていることになる。カリブ地域とアジア太平洋地域もさらなるプログラムの充実で90-90-90目標は到達可能になっている。

 ボツワナカンボジアデンマークアイスランドシンガポールスウェーデン、イギリスの7か国が90-90-90目標をすでに達成し、他の多くの国も目標達成に近づいている。

 「エイズ終結は可能です。国際社会が協力して取り組み、熱望する目標です。都市が主導的な役割を果たし、すべての人が安心して暮らせる社会を実現するための目標でもあります」とパリのアンヌ・イダルゴ市長は語っている。

 90-90-90目標に向けた規模拡大の最も重要な成果は、エイズ関連の死者が過去10年でほぼ半減したことだ。この結果、流行に深刻な影響を受けてきた国々の平均寿命は大幅に伸びている。東部・南部アフリカでは2006年から16年の間に平均寿命が10歳も伸びているのだ。

 「エイズを抑えることで、コミュニティも家族も元気になります」とシディベ事務局長は述べる。「流行を制圧すれば、健康状態は改善され、国力も強くなっていきます」

 

90-90-90:さらに必要な努力

 中東・北アフリカ、東欧・中央アジアでは、90-90-90目標に向けた成果は芳しくない。エイズ関連の死者は中東・北アフリカで48%、東欧・中央アジアでは38%、増加している。しかし、これらの地域でも、協力して取り組めば、例外的に成果が上がることがわかる。たとえば、アルジェリアでは、2010年のHIV治療へのアクセスが24%だったのが、2016年には76%に拡大している。モロッコは16%から48%、ベラルーシは29%から45%へと改善している。

 世界全体で見れば、成果は極めて大きいのだが、まだまだ努力する必要がある。HIV陽性者の約30%は依然として自らの感染を知らず、1710万人が抗レトロウイルス治療へのアクセスを得られず、全陽性者の半数以上がウイルス量を抑制できずにいるのだ。

 

子供のHIV感染をなくす

 子供のHIV新規感染予防には世界が連帯して取り組み、大きな成果をもたらしている。2016年時点で、HIV陽性の妊婦の約76%が抗レトロウイルス治療を受けている。2010年には47%だった。子供の新規HIV感染は世界全体でみると半減している。2010年には30万人[23万~37万人]だったのが、2016年には16万人[10万~22万人]に減少した。最も大きな打撃を受けていた5か国 ― ボツワナナミビア南アフリカスワジランドウガンダ ― ではすでに、HIV陽性の妊婦および子供を母乳で育てているHIV陽性の母親の95%がHIV感染の診断を受け、生命を救うための抗レトロウイルス治療を受けている。画期的な成果である。

 

新規HIV感染は減少しているが、十分ではない

 報告書はまた、世界全体でみると新規HIV感染は減少しているが、目標実現に必要なペースには達していないことも指摘している。2016年と2010年を比べると、世界の新規HIV感染は16%減少し、年間180万人[160万~210万人]となっている。69か国で推定値が減少しており、その大多数の国では治療が拡大し、同時にコンビネーションHIV予防サービスも利用しやすくなっている。コンドームが使いやすくなった国もある。しかし、東欧・中央アジアでは、新規HIV感染の増加は警戒すべき状態である。

 

結核

 結核HIVへの重感染対策に力を入れた結果、HIV陽性者の結核による死亡は33%も減少した。2015年現在、世界の結核症例1040万人にHIV陽性者が占める割合は11%にとどまっている。だが、HIV陽性者の結核症例の60%近くは診断、治療を受けていない。

 

コミュニティヘルスワーカーの必要性

 エイズ終結報告書は、人々の生活や就労の場に近いところでサービスを提供できるかどうかがエイズ終結の大きな要因になると指摘している。地域全体で保健医療サービス提供が可能になるよう保健システムを強化するために200万人のコミュニティヘルスワーカーを採用し、養成するというアフリカ連合の計画をUNAIDSは支持する。

 「保健サービスが各家庭の戸口に届けば、家族とコミュニティの健康は大きく改善されます」とシディベ事務局長はいう。「コミュニティヘルスワーカーはアフリカに強靭で活発な保健システムを生み出す屋台骨になるでしょう」

 コミュニティヘルスワーカーであり、Association Espoir pour Demain創設者でもあるクリスティン・カファンドさんは「HIV陽性だからといって私は孤立して生きているわけではありません。何百万もの陽性者がいて、エイズ終結を目指しているのです」とは話す。「私たちはそうしたいと思っているし、協力して続けなければなりません」

 

 

何が軌道を外れているのか

 

HIV陽性の子供の治療

 抗レトロウイルス治療を受けられるHIV陽性の子供は43%にとどまっている。成人陽性者の54%より低い。エイズ終結報告書は、2歳以下の子供の場合、診断が遅れ、免疫不全が進んでから治療を開始するケースが3分の2に達し、その結果、死亡率が高いことを明らかにしている。HIV陽性の子供の診断と治療にはもっと力を入れる必要がある。

 

取り残される若者

 若者(15~24歳)は、HIVの知識、HIV検査、治療、予防など様々な面で取り残されている。依然としてHIV感染の大きなリスクにさらされているのだ。とりわけサハラ以南のアフリカの若い女性は、同じ地域の同年代の男性と比べ44%もの新規HIV感染が多い。年間61万人の15~24歳の若者が、新たにHIVに感染している;その59%が女性で占められているのだ。

 マラウイザンビアジンバブエでは、若者の半数は自らの感染を知らず、半分以上が治療を受けていない。サハラ以南のアフリカで、HIV感染予防の基礎的な知識を持っている若者は男性で36%、女性では30%だった。米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)の支援を受けマラウイザンビアジンバブエで行われた集団ベースのHIV影響評価(PHIAs)によると、自らの感染を知っているHIV陽性者は、35~59歳では78%に達していたが、若年層では50%以下だった。

 

 サービスが届いていない男性

 報告書によると、HIV感染の予防法を知っている若い男性は50%以下で、女性に比べるとはるかに自らのHIV感染の有無を知らず、治療も受けていない。HIV陽性の男性で抗レトロウイルス治療を受けている人は50%以下だった。HIV陽性の男性の多くは、感染を知る時期がかなり遅く、治療を始めるのは発症してからであり、エイズ関連の病気による死者は女性よりも多い。死者数は女性の方が男性より27%も少なかった。

 

キーポピュレーション

 サハラ以南のアフリカ以外では、2015年の新規HIV感染の80%はキーポピュレーションとその性パートナーで占められていた。サハラ以南のアフリカでも25%はキーポピュレーションだった。報告書はキーポピュレーションに対する統合的なHIVサービスの提供が不可欠であり、ハームリダクションのサービスを含むコンビネーションアプローチ が必要なことも説明している。

 

 

軌道に乗っていない地域

 東欧・中央アジアは世界で唯一、新規HIV感染とエイズ関連の死亡の両方が増えている地域である。新規HIV感染は2010年に12万人[10万~13万人]だったのが、2016年には19万人[16万~22万人]に増えている。この地域の新規HIV感染の42%は注射薬物使用者だった。2016年のロシアの新規HIV感染報告は、2010年当時より75%も増加している。アルバニアアルメニアカザフスタンなど域内の他の数か国でも、急速に流行が拡大している。

 東欧・中央アジアでは、HIV陽性者の3分の2は自らのHIV感染を知り、HIV治療を受ける人が過去6年間で倍に増えたのに、抗レトロウイルス治療へのアクセスはいまなおHIV陽性者全体の28%にとどまっている。エイズ関連の死亡者数はこの間に38%増加している。

 中東・北アフリカでは、自らの感染を知っているHIV陽性者は全体の半分を少し上回る程度であり、治療を受けているのはその人たちのさらに半分以下となっている。ウイルス量が抑制できている人はHIV陽性者の5人に1人に過ぎなかった。

 UNAIDSは国境なき医師団アフリカ連合と協力して、アフリカ大陸の他地域に後れをとっている西部・中部アフリカのキャッチアップ計画に取り組んでいる。この地域のHIV陽性者610万人のうち自ら感染を知っている人はわずか42%であり、治療を受けている人は35%、2016年時点でウイルス量が抑制されている陽性者は全体の4人に1人にとどまっている。

 「UNAIDSが開始し、パートナーの参加を得て継続している西部・中部アフリカのキャッチアップ計画に対する支援を繰り返し強調したい。アフリカ連合の各国首脳がこの計画を採択したことは、計画の資金確保と効果的な実践に不可欠なステップです」とフランスのエイズ担当大使、ミシェル・ボコズ氏は語る。

 

 

エイズ対策への資金は依然、不足

 エイズ対策に対する資金は横ばいのままだ。2016年末時点で、低・中所得国のエイズ対策への支出は年間190億ドルであり、その57%は国内資金で占められている。2020年までに世界のHIV/エイズ対策に必要な資金は年間260億ドルと試算されている。

 「使える資金は1ドル1ドルが最大の効果を発揮できるように努めているが、それでも70億ドルの資金が不足しています」とシディベ事務局長は訴える。「2030年のエイズ流行終結は、国際援助資金を増やし、国内資金も拡大すること、革新的な資金確保策を工夫し、効果的なプログラムを遂行することではじめて可能になります」

 

表  2016年現在の推計値

 1950万人            抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者

 3670万人[3080万~4290万人] 世界のHIV陽性者数

 180万人[160万~210万人]   年間の新規HIV感染者数

 100万人[83万~120万人]     年間のエイズ関連の病気による死者数

 

 

 

Press release

The scales have tipped—UNAIDS announces 19.5 million people on life-saving treatment and AIDS-related deaths halved since 2005

 

The 90–90–90 targets are galvanizing global action and saving lives. Eastern and southern Africa leading the way in reducing new HIV infections by nearly 30% since 2010—Malawi, Mozambique, Uganda and Zimbabwe have reduced new HIV infection by nearly 40% or more since 2010. Concerted efforts still needed for children, adolescents, men and key populations, and in certain regions.

 

GENEVA/PARIS, 20 July 2017—UNAIDS has released a new report showing that for the first time the scales have tipped: more than half of all people living with HIV (53%) now have access to HIV treatment and AIDS-related deaths have almost halved since 2005. In 2016, 19.5 million of the 36.7 million people living with HIV had access to treatment, and AIDS-related deaths have fallen from 1.9 million in 2005 to 1 million in 2016. Provided that scale-up continues, this progress puts the world on track to reach the global target of 30 million people on treatment by 2020.

“We met the 2015 target of 15 million people on treatment and we are on track to double that number to 30 million and meet the 2020 target,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “We will continue to scale up to reach everyone in need and honour our commitment of leaving no one behind.”

The region showing the most progress is eastern and southern Africa, which has been most affected by HIV and which accounts for more than half of all people living with HIV. Since 2010, AIDS-related deaths have declined by 42%. New HIV infections have declined by 29%, including a 56% drop in new HIV infections among children over the same period, a remarkable achievement resulting from HIV treatment and prevention efforts that is putting eastern and southern Africa on track towards ending its AIDS epidemic.

 

 

WHAT’S ON TRACK

90–90–90 progress

The report, Ending AIDS: progress towards the 90–90–90 targets, gives a detailed analysis of progress and challenges towards achieving the 90–90–90 targets. The targets were launched in 2014 to accelerate progress so that, by 2020, 90% of all people living with HIV know their HIV status, 90% of all people with diagnosed HIV are accessing sustained antiretroviral therapy and 90% of all people accessing antiretroviral therapy are virally suppressed.

The report shows that in 2016 more than two thirds (70%) of people living with HIV now know their HIV status. Of the people who know their status, 77% were accessing treatment, and of the people accessing treatment, 82% were virally supressed, protecting their health and helping to prevent transmission of the virus.

Eastern and southern Africa, western and central Europe and North America and Latin America are on track to reach the 90–90–90 targets by 2020. In eastern and southern Africa, 76% of people living with HIV know their HIV status, 79% of people who know their HIV-positive status have access to antiretroviral therapy and 83% of people who are on treatment have undetectable levels of HIV—this equates to 50% of all people living with HIV in eastern and southern Africa with viral suppression. The Caribbean and Asia and the Pacific can also reach the 90–90–90 targets if programmes are further accelerated.

Seven countries have already achieved the 90–90–90 targets—Botswana, Cambodia, Denmark, Iceland, Singapore, Sweden and the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland—and many more are close to achieving it.

 “Ending AIDS is possible - it is a shared engagement and aspiration. One that cities can lead while promoting inclusive societies for all,” said Anne Hidalgo, Mayor of Paris.

The most significant impact of 90–90–90 scale-up has been in reducing AIDS-related deaths, which have been reduced by almost half in the past 10 years. As a result, life expectancy has increased significantly in the most affected countries. In eastern and southern Africa, life expectancy increased by nearly 10 years from 2006 to 2016.

“Communities and families are thriving as AIDS is being pushed back,” said Mr Sidibé. “As we bring the epidemic under control, health outcomes are improving and nations are becoming stronger.”

 

 

90-90-90: more work to do

Progress against the 90–90–90 targets has, however, been poor in the Middle East and North Africa and in eastern Europe and central Asia, where AIDS-related deaths have risen by 48% and 38%, respectively. There are exceptions within these regions showing that when concerted efforts are made, results happen. For example, Algeria has increased HIV treatment access from 24% in 2010 to 76% in 2016, Morocco from 16% in 2010 to 48% in 2016 and Belarus from 29% in 2010 to 45% in 2016.

Globally, progress has been significant, but there is still more work to do. Around 30% of people living with HIV still do not know their HIV status, 17.1 million people living with HIV do not have access to antiretroviral therapy and more than half of all people living with HIV are not virally suppressed.

 

 

Eliminating new HIV infections among children

Global solidarity to stop new HIV infections among children has produced results. Around 76% of pregnant women living with HIV had access to antiretroviral medicines in 2016, up from 47% in 2010. New HIV infections among children globally have halved, from 300 000 [230 000–370 000] in 2010 to 160 000 [100 000–220 000] in 2016. Five-high burden countries—Botswana, Namibia, South Africa, Swaziland and Uganda—have already met the milestone of diagnosing and providing lifelong antiretroviral therapy to 95% of pregnant and breastfeeding women living with HIV.

 

 

New HIV infections are declining, but not fast enough

The report also shows that, globally, new HIV infections are declining, but not at the pace needed to meet global targets. Globally, new HIV infections declined by 16% from 2010 to 2016, to 1.8 million [1.6 million–2.1 million]. Declines were estimated in 69 countries, in the majority of which treatment scale-up has been implemented alongside an increase in the availability of combination HIV prevention services and in some countries condom use. However, alarming increases have been seen in new HIV infections in eastern Europe and central Asia.

 

Tuberculosis

Major gains in the global response to tuberculosis and HIV led to a 33% decline in tuberculosis deaths among people living with HIV. As of 2015, only 11% of the 10.4 million cases of tuberculosis globally were among people living with HIV. However, nearly 60% of tuberculosis cases among people living with HIV were not diagnosed or treated.

 

Community health workers needed

Ending AIDS shows that providing services closer to where people live and work will be a key factor in ending the AIDS epidemic. UNAIDS is championing an initiative recently backed by the African Union to recruit and train 2 million community health workers in Africa to further bolster the capacity of health systems to deliver health-care services across the region.

 “When health services reach the doorsteps, the health of families and communities is transformed,” said Mr Sidibé. “Community health workers will become the backbone of strong and resilient health systems across Africa.”

"I am not alone living with HIV, there are millions of us and we are determined to put an end to AIDS," said Christine Kafando, community health worker and founder of Association Espoir pour Demain. "We have the will to do it and must continue our concerted efforts."

 

 

WHAT’S OFF TRACK?

 

Treatment for children living with HIV

Only 43% of children living with HIV have access to antiretroviral therapy, compared to 54% of adults. Ending AIDS also reveals that as many as two thirds of children under two years old are diagnosed late and start treatment with advanced immunodeficiency, resulting in a high mortality rate for children of this age group. More action is needed to diagnose and treat children living with HIV.

 

Young people are lagging behind

Young people (15–24 years) are lagging behind on multiple fronts—knowledge of HIV, HIV testing, treatment and prevention. Young people continue to be at great risk of HIV infection, especially young women in sub-Saharan Africa. New HIV infections among young women in sub-Saharan Africa are 44% higher than among young men of their age in the region. Around 610 000 new HIV infections occurred among young people aged 15–24 years; 59% of those new infections occurred among young women age 15–24 years.

In Malawi, Zambia and Zimbabwe, half of young people do not know their status and more than half do not have access to HIV treatment. Only 36% of young men and 30% of young women in sub-Saharan Africa had a basic knowledge of how to protect themselves from HIV. Population-based HIV Impact Assessments (PHIAs) conducted in Malawi, Zambia and Zimbabwe, and supported by the United States President’s Emergency Plan for AIDS Relief, found that less than 50% of young people living with HIV were aware of their HIV status, compared to 78% of adults aged 35–59 years.

 

Men not being reached

The report reveals that less than 50% of young men know how to protect themselves from HIV infection, that men are much less likely to know their HIV status or start treatment than women and that less than 50% of men living with HIV are accessing antiretroviral therapy. Many men who are diagnosed with HIV are diagnosed late and start treatment only when they fall ill, making them much more likely to die of AIDS-related illnesses than women. Deaths from AIDS-related illnesses were 27% lower among women than among men.

 

Key populations

Outside of sub-Saharan Africa, key populations and their sexual partners accounted for 80% of new HIV infections in 2015 and even in sub-Saharan Africa key populations account for 25% of new HIV infections. The report outlines that efforts to reach key populations with integrated HIV services are essential and that a combination approach is needed that includes harm reduction services.

 

Regions off track

Eastern Europe and central Asia is the only region in the world where new HIV infections and AIDS-related deaths are both rising. New HIV infections increased from 120 000 [100 000–130 000] in 2010 to 190 000 [160 000–220 000] in 2016. People who inject drugs accounted for 42% of new HIV infections in the region. In the Russian Federation, newly reported cases of HIV increased by 75% from 2010 to 2016. Several other countries in the region—including Albania, Armenia and Kazakhstan—also have rapidly growing epidemics.

Even though access to HIV treatment in eastern Europe and central Asia has more than doubled in the past six years, still only 28% of people living with HIV have access to antiretroviral therapy, despite two out of three people living with HIV knowing their HIV status. AIDS-related deaths have increased by 38%.

In the Middle East and North Africa, just over half of people living with HIV knew their HIV status, with less than half of those on HIV treatment. Only one out of five people living with HIV was virally suppressed.

UNAIDS has been working with Doctors Without Borders and the African Union on a catch-up plan for western and central Africa, which is lagging far behind the rest of the continent. Only 42% of the 6.1 million people living with HIV in the region knew their HIV status, just 35% were accessing HIV treatment and only one in four people living with HIV were virally suppressed in 2016.

“I would like to reiterate our support for the catch-up plan for western and central Africa, launched by UNAIDS and now joined by partners. The adoption of this plan by the heads of state of the African Union is an essential step for mobilization and the efficient implementation of this plan by the countries in the region.” said Michèle Boccoz, French AIDS Ambassador.

 

 

Resources for the AIDS response continue to flatline

Resources for the AIDS response remain flat. At the end of 2016, around US$ 19 billion was available in low- and middle-income countries, with domestic resources accounting for 57% of the global total. An estimated US$ 26 billion will be needed for the global response to HIV by 2020.

“We are maximizing the use of every dollar available, but we are still US$ 7 billion short,” said Mr Sidibé. “With more international assistance, increased domestic funding, innovative financing and effective programming can end the AIDS epidemic by 2030.”

 

In 2016 an estimated:

19.5 million people were accessing antiretroviral therapy

36.7million [30.8 million–42.9 million] people globally were living with HIV

1.8  million [1.6 million–2.1 million] people became newly infected with HIV

1.0  million [830 000–1.2 million] people died from AIDS-related illnesses

HIVによる免疫機能障害の認定基準見直しを求め要望書 JaNP+、ぷれいす東京

 「日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」と「ぷれいす東京」の2つの特定非営利活動法人が7月13日、『ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の認定基準に関する要望書』を連名で厚労省に提出しました。コミュニティアクションでも紹介した原稿に少し手を加えてを再掲します。

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に関する医学研究の進歩を反映して、現在の抗HIV治療は、感染を確認したら直ちに治療を開始すべきだという考え方が世界の趨勢になっています。治療を続けることで、HIVに感染した人の健康状態を長く良好に保つことが期待でき、同時に体内のHIV量が大きく減って他の人に感染するリスクも極めて低くなるからです。
 一方で、わが国では1998年、薬害エイズ裁判の和解に基づく恒久対策の一環として、HIVに感染している人は感染経路を問わず免疫機能障害の認定対象となりました。
 ただし、当時は抗HIV治療について、治療開始時期をなるべく遅らせる考え方がとられていました。認定基準もそうした考えに基づいて策定され、そのまま現在に至っています。したがって、HIV感染が確認されても免疫の状態が良好な間は、自立支援医療(更生医療)による治療費負担の軽減が期待できず、それが治療開始の遅れを促す結果を招いているケースも少なくありません。
 また、予防対策の新たな選択肢である「予防としての治療」も有効に機能しなくなるおそれがあります。
 検査の普及と早期治療開始は国際的なHIV/エイズ対策の中心課題であり、わが国においても最重要ポイントといっていいでしょう。ただし、やみくもに検査をしようと呼びかけても、呼びかけるだけで何かが終わったよな気になってしまったら、それは対策とはいえません。
 検査を受け、感染が分かったときに、じゃあ、どうすればいいのというフォローアップがきちんとできていて、安心して治療を受けられる。そのための支援の仕組みが整っていることが、明示的に示され、検査を受けていない人にも伝わる。
 その意味での啓発・・・というか情報の伝達、つまり2017年度世界エイズデーの国内キャンペーンのテーマにもなっている情報やイメージのUPDATE! が必要です。 

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 そこまで分かっていながら、制度がそれを邪魔しているのでは整合性がとれません。ぷれいす東京とJaNP+という2つのNPOが提出した要望書の指摘は当然の内容というべきでしょうね。

 一方で、要望がないと動けないのが行政というものかもしれません。逆に頼みもしないことを勝手にさっさとやり始めるようになったら、それはそれで困った事態を招くこともありそうです。その中間領域にあって、現場をよく知り、実際に制度を使う立場から現状の矛盾点をきちんと指摘できるNPOの存在は貴重です。
 要望書は「国際基準では治療を開始すべきでありながら、障害認定による治療助成の利用が制限され、抗HIV薬の服薬が遅れている現状」を指摘し、「治療へのアクセスを難しくしている認定基準の見直し」を求めています。
 「JaNP+」および「ぷれいす東京」の公式サイトで要望書のPDF版を見ることができます。

 

 

 

『偏見は恐怖/沈黙は死』 いまもなお・・・

 現代性教育研究ジャーナルの連載コラム『多様な性のゆくえ One side/No side』で、7月はキース・へリングのポスター「IGNORANCE = FEAR / SILENCE = DEATH(偏見は恐怖/沈黙は死)」を取り上げました。ブログでも昨日紹介したばかりですが、改めて。
 『三猿は四猿だった』
 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2017/07/16/001137
 この作品は今年11~12月に開催されるTOKYO AIDS WEEKS 2017(東京エイズウィークス2017)のポスターにもメインビジュアルとして登場しています。
 

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 こちらは私の感想。
 『三猿に想を得たであろうポスターは沈黙の勧めではない。現実をしっかり見ようとせず、情報にも耳を閉ざし、なにもせずに黙っていたのでは死を招くだけだと警告しているのだ。踊る人の姿はピンクトライアングルと同じように、三猿の教えを見事に逆転させ、メッセージのインパクトをより強めることになった』
 TOKYO AIDS WEEKS 2017についてはこちらをご覧ください。 

aidsweeks.tokyo

【メインイベント】
 2017年11月25日(土)~26日(日)、中野区産業振興センター。
 2017年11月24日(金)、26日(日)、なかのZEROホール。
【参加イベント】
 12月1日の世界エイズデー前後に東京都内で開催されるイベント。
 《この時期にHIV/AIDSに関するイベントを予定している方は、ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください》

 
 
 

『三猿は四猿だった』 

 連載コラム『多様な性のゆくえ One side/No side』の4回目です。7月15日発行の現代性教育研究ジャーナルNo76の13ページに掲載されています。
『現実を見ず、情報を閉ざし、何も言わずに黙っている。三猿はそうした態度を批判しているのだと思っていたら、実はその逆で、evil(悪徳)などには目もくれず、耳も貸さず、言及もしないようにという教えのようだ。困ったな』
 時代とともに教訓も変わります。人によっても変わるでしょう。「沈黙は金」というのもありましたね。
 キース・へリングのメッセージは「IGNORANCE = FEAR / SILENCE = DEATH(偏見は恐怖/沈黙は死)」でした。昔の話ではありません。
『今年は11月24~26日に第31回日本エイズ学会 学術集会・総会が東京で開かれるのに合わせ、東京エイズウィークスというキャンペーンが学会前後に展開される。そのメーンビジュアルが踊る3人のポスターに決まった』
 ところで、見ざる、言わざる、聞かざるの三猿は実は四猿でした。四番目の猿が隠していたのは・・・ということで、あとはコラムをお読みください。
 

UPDATE! よろしく

 厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する2017年度世界エイズデー国内キャンペーンのテーマが決まりました。

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  この決定を受け、コミュニティアクション(Community Action on AIDS)のキャンペーンテーマ欄もさっそく、2017年バージョンに「UPDATE!」しました。

 

www.ca-aids.jp

 

 何をいまさら、もう十分、アップデート済みだよ!・・・と言いたくなる方もいらっしゃるでしょうね。気持ちはわかります。わかりますが、そして、大きなお世話になってしまうかもしれませんが、ここはひとつ広い度量で受け止め、アップデートの成果を友人、知人にお伝えいただければ幸いです。

 テーマの策定プロセスについてはAPI-Netにも報告が掲載されていますので、あわせてご覧ください。

api-net.jfap.or.jp

 

 

保健医療の場で差別を解消するための国連機関共同声明 

 世界保健機関(WHO)や国連合同エイズ計画(UNAIDS)など国連12機関が、保健医療の場における差別解消を目指して発表した共同声明のことは、7月3日の当ブログでも紹介しました。その声明本文の日本語仮訳PDF版です。API-Netに掲載されました。

 
《保健医療の場で差別を解消するための国連機関共同声明 》
 http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20170711
 国連エイズ合同計画(UNAIDS)や世界保健機関(WHO)など国連の12機関が2017年6月30日、保健医療の場における差別解消に取り組む声明を発表しました。『差別解消を呼びかけるとともに、加盟国がスティグマと差別のない保健医療サービスを提供できるよう12機関が協力して支援していく』と約束しています。
 国際社会の共通目標である持続可能な開発目標(SDGs)にも言及し、『ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現やエイズ結核の流行終結を含めたSDG3の健康と福祉』だけでなく、SDG4質の高い教育;SDG5ジェンダーの平等と女性の地位向上;SDG8働きがいのある仕事と包摂的な経済成長;SDG10不平等の解消;SDG16平和と公正の実現、の達成にも保健医療の場における差別解消が基盤になると指摘しています。
 声明にはUNAIDS、WHOのほか、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金UNICEF)、世界食糧計画(WFP)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金UNFPA)、UN Women、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際移住機関(IOM)が署名しています。日本語仮訳PDF版はこちら

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