岐路に立つエイズ対策 エイズと社会ウェブ版692

 UNAIDSの年次報告書Global AIDS UPDATE 2024『今まさに緊急事態:岐路に立つエイズ』の概要版(Executive Summary)の日本語仮訳を作成し、API=Netに掲載しました。 

  

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/sheet2024_GLOBAL_AIDS_UPDATE.html

のページからPDF版がダウンロードできます。

 概要版は本文が20ページ程度。長大な報告書全体からみると、かなりコンパクトにまとめられていますが、それでも翻訳には時間がかかってしまいました。悪しからず。

 概要版は以下7項目についてグラフなどを使いながら説明し、最後に2025年ターゲットに向けた成果の中間まとめ(進捗状況)も一覧表で示しています。

 ・HIVパンデミックの現状

 ・予防ニーズに対する成果

 ・HIV治療へのアクセス

 ・スティグマと差別、社会的不平等、暴力の解消に向けた対応

 ・HIVサービスと他のサービスとの統合

 ・資金不足の拡大

 ・岐路の先を見据える

 最後の『岐路の先を見据える』では、UNAIDSによる将来予測をもとに、こう指摘しています。

HIV対策が現状のまま進むとすれば、2050年の世界のHIV陽性者数は約4600万人となる。世界が2025年ターゲットを達成し、その成果を維持できたとしても、2050年のHIV陽性者数は約3000万人で、その一人ひとりに生涯にわたるHIV治療と支援が必要となる》

 しつこいようですが繰り返せば、シナリオの一つは世界のHIV対策が現状のまま推移した場合、もう一方は対策に力を入れターゲットを達成し、さらにその成果を維持していった場合です。

 《効果的で誰もが利用できるワクチンがなく、HIV感染症の治癒も実現できないとすれば、新たなHIV感染は今後も続くことになる。どちらのシナリオも「エイズ終結」につながるものではなく、世界は依然として公衆衛生上の重大課題と立ち向かわなければならない》

 あらかじめ『公衆衛生上の脅威としての』という「おことわり」は用意していたものの締め切りが近づけば当然、『2030年までのエイズ終結』という看板は下ろさざるを得なくなります。2030年ターゲットに何を設定し、「エイズは続いている」という前提に基づいて「それから」にどう備えるか、エイズ対策はその意味でも岐路に立っています。