エイズ予防指針の改定に取り組む厚生労働省が6月18日午後、厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会で、改定案のたたき台を報告しました。
小委員会の委員の他、参考人として招かれたエイズ分野の専門家やNPOの代表らも意見を述べ、約2時間にわたる議論の結果を反映させた改定案が次回会合で示される見通しです。
エイズ予防指針は我が国のエイズ対策の方向性を示すもので1999年の感染症法施行を受け、半年後に告示されました。5年をめどに改定作業が行われ、今回が4回目の改定になります。
本日(18日)は朝から激しい雨となり、夕方には交通機関への影響も懸念されるとのことでした。東京から鎌倉まで、電車が止まっちゃったら帰れなくなるなあ・・・と不安に怯えつつ、雨中の大遠征を敢行し、私も傍聴しました。
小委員会の資料は厚労省の公式サイトでダウンロードできます。改定の要点と方向性は把握できるので、関心をお持ちの方はご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40400.html
現行予防指針では全7章中の第6章だった「人権の尊重」が予防対策の観点からも最優先されて第1章になり、さらに前文でも、「偏見・差別なく適切かつ必要な医療を受けること」がHIV感染者、エイズ患者の基本的人権として明記されています。
また、U=Uが「治療によりウイルス量を一定基準未満に抑え続けられていれば、他者に感染することはない」として前文に記載され、第3章「発生の予防及びまん延の防止」、第4章「医療の提供」でも取り上げられています。
今回は公開の場である小委員会の開催に先立ち、当事者を含め幅広く意見を聞くために非公開ベースの「エイズ予防指針の見直しに向けた打ち合わせ会」を3回にわたって開き、論点の整理を行ったということです。
こちらも公開だったらよかったのにと個人的には思いますが、参考人として小委員会に参加したNPO関係者に話を聞いたところ、打ち合わせ会で指摘した事項はおおむね論点として取り上げられているということで、改定案に対し比較的、好意的に受け止めている印象を受けました。
もちろん、個別施策層について従来と同じように施策の対象としての位置づけにとどまり、対策の担い手として受け止める姿勢が見られないなど、課題はあります。
また、予防指針の改定時にはいつも、妥当な指針に落ち着いたという印象を受けるものの、次回改定時になると「結局、絵に描いた餅に終わった」という苦い反省が伴います。そうしたことにならないようにするにはどうしたらいいのか。これからの5年間、指針の実施状況をしっかりと見ていく必要もあります。