『人間として闘いたい』 エイズと社会ウェッブ版584

 2005年に神戸で開催された第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(神戸会議)の思い出話が続いています。申し訳ありませんがしばらくのご辛抱を。

 現代性教育研究ジャーナルの連載コラムOne Side/No Side(多様な性のゆくえ)第54回『人間として闘いたい』。2021年10月15日号の13ページに載っています。

 https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_202110.pdf 

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 神戸会議開会式の司会は長谷川博史さんと池上千寿子さんにお願いしました。「開会式の予算はありませんよ」という組織委員会からの無情のお達しがあり、苦肉の策の人選・・・というか、懇願してお引き受けいただいたのですが、これがまた大正解。

 『英語と日本語を巧みに使い分け、2時間に及ぶ式典を円滑に進めることは至難の業だと思えたが、長谷川・池上コンビはそれをやすやすとこなしていく。舞台の袖に控えていた私は、ただただその手際に見とれるだけだった』

 アジア・太平洋地域のHIV陽性者やキーポピュレーションの人たちを代表してスピーチを行ったのは、インドネシアのフリッカ・チア・イスカンダールさんでした。

  「私はここに立って、HIVに感染していることを明らかにし、偏見や差別にさらされるようになることを恐れています。それでも私はここにいます。なぜなのか。人間として闘いたいと思うからです」

 その時、フリッカは母国のインドネシアHIVに感染していることを明らかにしてはいませんでした。壇上でスピーチを行えば、どうなるのか。大きな不利益が予想されるかもしれない。それでも・・・。

 「もしも私たちが偏見や差別を避けて通ろうとするなら、それでどうやって偏見や差別と闘うことができるのでしょうか」

 そして、フリッカに続いて壇上に立ったヒロシ(長谷川さん)は次のように語っています。

「世界中が力を合わせてエイズと闘うには、いかなる理由が あろうと、同じ病で倒れる者と生き残る者の格差があってはなりません。治療にアクセス出来る者と出来ない者のギャップを認めてはなりません」

 COVID-19のパンデミックを前にして世界はいまなお、同じ課題と試練に直面しています。