米CDC(疾病管理予防センター)のVital SignsのサイトにHIVの曝露前感染予防投薬(PrEP)の特集が掲載されました。その本文部分を抜き出し、日本語仮訳にしました。エイズ&ソサエティ研究会議のHATプロジェクトに載せたので、ご覧下さい。
http://asajp.at.webry.info/201512/article_2.html
Vital Signsの当該ページには図表も豊富に掲載されています。英文ですが参考までに紹介しておくので、こちらもあわせてご覧下さい。
http://www.cdc.gov/vitalsigns/hivprep/index.html
もうひとつ、CDCは2014年5月にPrEPの実施を推奨するガイドラインを発表しています。そのガイドライン発表時の発表文も当時、日本語仮訳でHATプロジェクトのブログに掲載しました。urlを紹介しておきます。
http://asajp.at.webry.info/201406/article_3.html
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ということで、振り返ってみると、昨年5月のガイドライン発表時から1年半を経て、かなりCDCのPrEP推進色が強まっている印象です。昨日はWHOの抗レトロウイルス治療拡大の声明を紹介しました。HIV陽性者は早く検査を受けて、感染状態を早期に確認し、全員、直ちに治療を始めようという内容でしたね。
PrEPの方はHIVに感染していない人が対象です。もちろん、感染していない人は誰でも、というわけではなく、「HIVに感染していないけれど、性行為や注射薬物使用により感染の高いリスクにさらされている人」が対象です。具体的にはどんな人なのかということも示されています。
『性的にアクティブなゲイまたはバイセクシャル男性(*)の4人に1人、注射薬物使用者の5人に1人、そして性的にアクティブな異性愛の成人の200人に1人がPrEPの提供を受けるべき高リスク者です。毎日服用すれば、PrEPは安全で効果の高いHIV感染予防策になります』
*印の注によると、性的アクティブの説明は以下のようになっています。
『このファクトシートでは、男性とセックスをする男性はすべて、ゲイまたはバイセクシャル男性としています。性的にアクティブとは、過去1年以内にセックスをした人を指します』
えっ、過去1年以内。これだとかなりアクティブの対象は広そうですね。PrEPは、ゲイまたはバイセクシャル男性、および薬物使用者を対象にした予防策だと思っていましたが、異性愛者も対象になっています。
200人に1人ということは、日本の人口に置き換えて考えても、10万人とか20万人のオーダーで対象になりそうな感じがします。たとえば、最近1年間にセックスをした成人がかりに2000万人だとすると、その200人に1人は10万人になります(ん? 計算、間違っていないかな)。まあ、とにかく。その人たちがすべて、毎日1錠の抗レトロウイルス薬を服用するとしたら、「ありゃあ、これはかなり巨大なマーケットかもしれませんね」という印象も受けます。
このあたりはどう考えたらいいのか。機会があれば、医療や製薬の分野に詳しい方にお話をうかがってみたいと思います。
それはそれとして、昨年5月の発表と比べると、米国政府の印象はかなりPrEPに前のめりの印象です。こうなると、日本国内でも止まらなくなってくるでしょうね。
ただでさえ、1日1錠の予防服用でHIV感染が防げるんだって・・・といった情報が伝われば、何とか手に入れて試してみたいという人も出てくるかもしれません。
伝聞の伝聞で恐縮ですが、すでに日本国内でも秘かに治療薬をゲットして自主的に(というか勝手に)PrEPをやってみようというような方もいるといった話を小耳にはさんだことがあります(はさんだ程度で、確証はありません)。情報が流れれば、不測の動きが出てくるのではないかという推測はつきます。
PrEPなんてもってのほかと言っている時期はもう過ぎてしまったのかもしれない。そうだとしたら、どうすればいいのか。アメリカがもう推進に舵を切っちゃった以上、好むと好まざるとにかかわらず、国内でも議論が始まるかもしれませんね。