【主張】サミットと保健 日本の強み生かすときだ

 世の中を憂しとやさしと思えども・・・憂しの方が多いかな、やっぱり、ということで世界中にも、国内にも、あまりにもどっさりと問題課題があふれる中で、保健分野は忘れられがちです。ましてやエイズ対策などは話題になることも少ない。 

 でも、忘れていれば消えるというわけでもありませんね。本日(15日)の産経新聞に掲載された主張です。

 話はちょっと跳びますが、先日の東京レインボープライド2016のパレードでは『AIDS IS NOT OVER』のフロートがでました。様々な課題は単独で存在しているわけではないので、呉越同舟といいますか、毛利元就の三本の矢といいますか、(どちらも近いようでちょっと違うような感じもするけど、とにかく)関連する諸課題とのインテグレーションは大切ですね。シナジー効果といいますか。

 うまく表現できないことはカタカナでごまかす。こういうこともまあ、新しい状況が生まれてきたり、なにかと変化に遭遇することが多くなったり、という時期には、必要(とまでは言わないけれど、許される)かも知れません。

 HIV/エイズ対策には一見すると切り離されたような諸課題を結びつけ、一緒の船に乗せていけるような広がりと深みがあるようにも思います。日本はその点で意外に好位置をキープしてきた(あるいは好位置をキープする構想力を持った人が育ちつつある)ような感じを受けることもあるのですが、いかがでしょうか。


 【主張】サミットと保健 日本の強み生かすときだ
 http://www.sankei.com/column/news/160515/clm1605150002-n1.html

 世界が多くの困難な課題を抱える中で目立たない印象もあるが、日本は国際保健分野で大きな貢献を果たしてきた。
 また、今まさに熊本地震で経験しているように、国内で災害などの危機に直面したときには、真っ先に被災した人たちの安全と健康を守らなければならない。
 その大きな責務を考えれば、5月26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、保健分野が主要議題の一つになるのは当然だろう。
 2000年の九州沖縄サミットでは、地球規模の感染症対策に新たな追加的資金が必要なことを議長国の日本が訴え、2年後に世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)が生まれるきっかけを作った。
 官民協力に基づく21世紀型の組織として注目されている基金である。先進国、途上国の政府だけでなく、非政府組織(NGO)、民間財団などが対等な立場で理事会を構成している。その革新的な資金メカニズムが、エイズなど世界の三大感染症の流行を拡大から縮小に転じさせようとしている。
 途上国の疾病負荷を大きく低減し、内戦や紛争、テロなどの発生を防ぐ成果でもある。
 ただし、エイズ結核など個別の疾病対策に取り組むだけでは限界があることも、この15年の経験で明らかになった。保健基盤全体がしっかりしていなければ、予防や治療を本当に必要とする人に届けることはできないからだ。
 伊勢志摩サミットでは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進が保健分野で最大の課題となる。「すべての人が生涯を通じ必要なときに基礎的な保健サービスを負担可能な費用で受けられる仕組み」を指す。
 なじみの薄い用語だが、わが国の健康保険もその一つと考えれば少し分かりやすくなる。保健環境が整い、安心して医療を受けられることが、社会の安定や経済を支える。このことは日本の戦後を振り返るだけでも明らかだ。
 過去15年間、国際社会の共通目標だったミレニアム開発目標(MDGs)に代わり、今年から持続可能な開発目標(SDGs)がスタートした。伊勢志摩サミットはそのSDGs体制のもとで初のサミットでもある。保健分野ではとくに、日本の実績を生かし、次につながる成果を期待したい。