とりあえず『利用者に合わせた分化型のサービス提供』にしておこうか エイズと社会ウェブ版491

 国際エイズ学会(IAS)の公式サイトにCOVID-19時代のdifferentiated service deliveryについて特集したページが開設されています。 

www.differentiatedservicedelivery.org

 以前は differentiated care などとも呼ばれていました。新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックにより、その differentiatedの重要性がますます高まっているということのようですが、どうも日本語にはうまく訳せません。

 辞書をみるとdifferentiated は「区別された」とか、「分化した」といった意味になるようですね。それがHIVに関するサービス提供という文脈の中では何を指し、何が必要とされているのか。とりあえず、「分化型ケア」とか「サービス提供の区別」と訳してみたもののいまいちしっくりきません。

 前にも同じようなことを書いたような気もしますが、その都度、「う~ん、なんだかなあ」と迷ったり、うなったりしています。

 IASの特集ページにはこんな説明がありました。

A one-size-fits-all model of HIV services does not work for all 37 million people living with HIV today. Differentiated service delivery is a responsive, client-centred approach that simplifies and adapts HIV services across the cascade to better serve individual needs and reduce unnecessary burdens on the health system. More countries are revising their HIV service delivery models and recognize that it is time to deliver differently.

『3700万人のHIV陽性者を対象に一律のモデルでHIVサービスを提供しようとしてもうまくいきません。Differentiated service delivery は、簡素化した方法により、クライアントの事情に合わせて対応できるようにするアプローチです。カスケードの各段階を通し、それぞれの人のニーズに応じて保健システムに不必要な負荷をかけずにより良いサービスを提供することが可能になります。HIVサービスの提供モデルを見直し、提供方法を変えていくことが必要だと考える国はいま増えています』

 なるほど。訳語としては『HIVサービスの利用者の事情に合わせた柔軟な提供方法』『利用者本位のHIVサービス提供』といったあたりでしょうか。『簡素化』のニュアンスがちょっと抜け落ちてしまいますね。これは『わざわざ病院に行ってお医者さんに診てもらわなくても、コミュニティヘルスワーカーに任せられるサービスは思い切って任せるようしよう。その方がサービスの利用者にとっても便利になるし』といった感じでとらえれば、『利用者本位』に含まれるニュアンスかもしれませんね。

 ということで、『利用者本位のサービス提供』あたりが妥当でしょうか。ただし、あまりにも紋切型というか凡庸な印象はぬぐえません。実態はともかく、建前としては医療はそもそも利用者本位でなければならないはずです。いろいろな選択肢府が用意されているという意味で「分化型」も加えたうえで、少しくだいて『利用者の事情に合わせた分化型のサービス提供』といったあたりにした方がいいかもしれません。

 ただし、まだしっくりきません。長すぎる感じもします。状況に応じてワーディングを分化型にする工夫も必要になりそうです。COVID-19のパンデミックという新たな環境によってもたらされるる変化も視野におさめ、もっと、ぴたっとはまる訳語をご存じの方は教えてください。