100分de名著の追加です。
第1回放送を見終わりました。「不条理の作家」と言われるカミュ、並びにその作品『ペスト』がまず紹介され、その後、導入部に踏み込んでいきました。
ああ、そうなのかと位置づけを分かりやすく説明していただけたように思います。
テキストには略年譜もついていたので、それを見ると、カミュが『ペスト』の執筆を開始したのは1942年でした。第二次世界大戦中であり、出世作とも言うべき『異邦人』が刊行されたのと同じ年でもあります。
『異邦人』の成功によって、じっくりと次の作品に取り組めるようになったという感じでしょうか。ただし、執筆には時間がかかったようで『ペスト』刊行は戦後の1947年です。
戦時下のレジスタント運動にも加わるなど何かと大変な時期が続いたのでしょうね。
カミュ自身が17歳ぐらいの時に当時、最大の感染症だった(地球規模で見ればいまもそうかもしれないけど)結核を発症し、執筆を開始して間もなくその結核が再発しています。このため、療養生活を余儀なくされる時期もあったようです。
『ペスト』が刊行された1947年当時は欧州も戦後の混乱期をまだ脱しておらず、同時に感染症の流行は世界レベルで人類が遭遇する大きな災厄のひとつでした。日本でも結核が「国民病」と呼ばれるほど広がっていた時期です。♪星の流れに~と菊池章子さんが歌いはじめたものの、まだ大ヒットには至っていなかった年でもあります。蛇足ながら付け加えれば、すでに老境にある私もまだ生まれていませんでした。
その後の医学の進歩で、一時期はお医者さんたちの間で「感染症の時代は終わった」と真顔で語られる時代がありました。
しかし、1980年代初頭に新たなウイルス感染症であるエイズが流行し、世界は混乱と動揺の中で、そうではなかったという現実に直面します。
『ペスト』は、ネズミが死んでいるのを主人公の医師が見つけるところから物語が始まります。静かな語り口、ごくごく小さな、日常的にありふれた出来事のひとつとして埋没してしまうかもしれない異変が導入部に配置されていました。
私が『ペスト』を読んだのはいつごろだったのでしょうか。導入部のネズミのあたりは鮮明に憶えているのですが、その後のストーリーの展開も、重要な記述の数々ももうすっかり忘れています。
古い本棚から新潮文庫の『ペスト』を引っ張り出してみると、初版から何十刷かを経て、平成8年に刷られた分を購入しています。西暦にすると1996年ですね。個人的なことで恐縮ですが、アトランタ五輪の取材を最後に産経新聞のニューヨーク支局勤務を終え、東京に戻った年でした。おそらくエイズ取材の参考にということで、帰国後に購入した本の一冊だったと思います。
だいたい私は本を読んでも、読み終わったら片っ端から忘れてしまうタイプなので、不思議ではないのですが、それにしてもきれいに忘れてしまうものだと我ながら感心してしまいます。
この機会にもう一度、読み直した方がいいかな。でも、最近は、紙ぼこりかインクの粉末か分かりませんが、何かのアレルギーで、古い本を読もうとすると、鼻とのどが痛くなり、目もむずむずしてきます。
電車の中で隣に座ったおじさんが漫画雑誌をぱらぱらとめくると、それだけでもう鼻とのどがおかしくなるほどです。「おじさん、ぱらぱら止めてよ」などと注文を付けると、とんでもないトラブルに巻き込まれかねないので、そういう時は、しょうがない我慢するか・・・と、ささやかな不条理を受け入れています。
したがって、古い本はとても読めません。文庫で新しい本を買ってもう一回読むかなあ。どうしようかなあ・・・。
おっと、脱線しました。テキストも一気に読まず、回を追いながら小出しに読んでいるので、第2回以降の展開が楽しみです。