パースICAAPは中止に エイズと社会ウェッブ版383

 オーストラリアのパースで9月に予定されていた第13回アジア太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP2019)の開催が急遽、取りやめとなり、次期開催は2021年に延期されることになりました。会議の公式サイトには昨日(411日)、『13th ICAAP to be postponed in challenging funding environment』(資金環境が厳しく第13回アジア太平洋地域エイズ国際会議は延期)というお知らせが掲載されています。
icaap2019.com

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 また、会議準備にあたってきたアジア太平洋エイズ学会(ASAP)のミュン・ハン・チョウ理事長と国連合同エイズ計画(UNAIDS)アジア太平洋地域事務所のイーモン・マーフィー所長はその前日の410日、共同声明のかたちで「第13回アジア太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP2019)は開催を延期する」と発表しています。

 どちらも「延期」となっていますが、共同声明によると、次期会議はオーストラリアではなく、アジアのどこかの国で2年後に開催するということなので、実際には今年の会議を「中止」する決定です。

 その最大の理由は必要な資金が確保できなかったことですが、共同声明は同時に「パースでは遠過ぎて、アジアの多くの国の市民社会やコミュニティのメンバーが参加しにくい」とも述べています。HIV/エイズとの闘いの真の担い手となっている人たちに参加助成ができないという意味では、この点も資金不足の影響ということになります。

 ASAPはこれから2021年の開催都市選定に向けて「アジア地域の国のどこかで、しかも政府が開催に積極的に関与してくれるところ」を探す方針のようです。また、来年はサンフランシスコ・オークランドで国際エイズ会議が開かれる予定なので、時期が重なるのを避け、ICAAPの方は2年後の開催となりました。

う~ん、開催都市の選定から始めなければならないとなると、時間はあるようでないぞという感じもします。2年ぐらいあっという間に過ぎてしまうかもしれません。

それを承知で、あえて手を挙げる国があるかどうか。日本に関していえば、HIV/エイズの流行に対する国内の社会的な関心の低下、およびその原因であり、帰結でもある最近の政府や自治体の冷ややかな態度を考えると、残念ながら政府の積極的な関与を望むのは厳しいのではないか。個人的にはそう思います。

したがって、あらかじめ日本は対象から外したうえで独断に基づく予想として言えば、候補はHIV感染がいまも拡大しているフィリピンやインドネシア、あるいは世界で三番目にHIV陽性者数が多く、90-90-90達成への意欲を示しているインドといったところでしょうか。中国という選択肢もあるかもしれませんが、人権状況などを考えると冒険です。

 とりあえず「延期」という名の「パースICAAP中止」を決めたものの、それは問題解決ではなく、当面の困難を回避しただけの話に過ぎません。「日本じゃ無理だろうなあ」と思ってしまう国内の現実も含め、前途は多難です。ASAPUNAIDS連名の共同声明の日本語仮訳も作ってみました。

 

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アジア太平洋エイズ学会(ASAP)、国連合同エイズ計画( UNAIDS)共同声明

 

親愛なる友人、同僚の皆さん

 まことに残念ですが、20199月に予定されていた第13回アジア太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP2019)は開催を延期すると発表しなければなりません。

 ASAP(アジア太平洋エイズ学会)の管理運営の正常化を目指してきましたが、ICAAPのような大規模イベントを開催する資金を確保することが現状ではできません。パースのような遠隔の地で会議を開く資金を9カ月という短期間で用意することは到底できない状態でした。

 検討の結果、地域内の市民社会メンバーやコミュニティが参加しやすくなるよう会議はアジア地域内の国で開催することを決定しました。

 20207月には米国のサンフランシスコとオークランドで国際エイズ会議が開かれことから、同じ年にICAAPを開催するのは難しいでしょう。したがって、ICAAPの開催は2021年まで延期し、そのための準備を開始することとします。ホスト国政府にも積極的に関与してもらえるアジアの国々の中から開催都市を見つけたいと考えています。

 皆さんと同じように私たちも延期を余儀なくされたことを大いに落胆しています。同時に2021年開催のICAAP成功に向けて、皆さんの協力と支援が引き続き得られることを信じています。

 謹んで

Myung-Hwan Cho

 アジア太平洋エイズ学会理事長

  Eamonn Murphy

 UNAIDSアジア太平洋地域事務所長

 

 

Dear friends and colleagues,

It is with deep regret that we have to announce the postponement of the ICAAP 13 at Perth scheduled for September 2019.

We have been able to put the ASAP management back on track but lack adequate financial resources to support a big event like ICAAP. Mobilisation of resources for the Conference at a far-off place like Perth was not becoming possible within a short span of nine months.

After due consideration we have decided that we need to hold it in a country in Asia which will enable civil society members and communities from the region to participate effectively.

As the International AIDS Conference will be held in San Francisco and Oakland in US in July 2020, it will not be feasible to hold the ICAAP the same year. We have therefore decided to postpone it to 2021 and have initiated preparatory steps for the same. We expect to find a suitable venue in an Asian country with close involvement of the host government as well.

We share your disappointment due to this postponement and trust that you will extend your cooperation and support for a successful ICAAP in 2021.

 

Yours sincerely,

Myung-Hwan Cho

President

AIDS Society of Asia and the Pacific (ASAP)

Eamonn Murphy

Regional Director

Asia and the Pacific, UNAIDS