さくら散り 海棠も散り ほととぎす

 

 鎌倉の桜もあらかた散ってしまいましたね。まだ、4月に入ったばかりだけど、こう暑くなったのでは・・・。

 

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 そうですか、そういうことなら、こちらにも考えが・・・もちろん、あるわけではありません。でも、ちょっと目先を変えて。 

 

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 新緑の山に分け入るホトトギス・・・ということで、鳴くまで待つわけではなく、ましてや殺してしまうわけではさらさらなく、ぶらぶらとやってきました。緑が目にしみますね。深山ではなく、鎌倉駅東口から徒歩でもせいぜい56分、妙本寺です。この季節、鎌倉観光有数の穴場というべきでしょう。

 

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 石段を上がると、二天門の向こうには。

 

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  海棠ですね。お目当てはこちらです。そろそろ見ごろかなあ、と思って足を運んだら、あらら、もうすでに散り始めていますね。今年は春の訪れが遅く、訪れたら訪れたで、今度は進行が速い。 

 

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 この海棠は晩年の中原中也小林秀雄と和解した時に見ていた海棠・・・。そのものではなく、同じ場所に咲いている三代目か四代目か五代目くらいになるそうです。でもまあ、二人が観ていたと思ってご覧ください。その場面は、小林秀雄の「中原中也の思い出」というエッセーに出てきます。

 『晩春の暮れ方、二人は石に腰かけて海棠の散るのをじっと見ていた。花びらは死んだような空気の中を、まっすぐに間断なく落ちていた』

 かなり訳ありです。いまだったらワイドショーが追い掛け回して大変な騒ぎでしょうが、当時はそんなこともなく、二人はどこか気まずい思いを抱えながら、死んだような空気の中を引きあげていきました。鶴岡八幡宮境内の茶店でビールを飲んで帰ったそうです。

 

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 そうかあ、暮れ方ではなかったけれど、平成末年の春、引き上げる途中の石段にはシャガがすでに咲き競っていました。やっぱり速いなあ。春よ、そう急ぐなって。おじさんはついていけないよ。