「Tシャツじゃないんだから」では少々、要約が過ぎますが・・・differentiated care エイズと社会ウェブ版318

国際エイズ学会(IAS)が『differentiated service』のベストプラクティスの事例報告を募集しています。英文のままで恐縮ですが、IASの特設サイトも設けられているので、ご覧ください。提出締め切りは2018124日となっています。

http://www.differentiatedcare.org/Resources/RequestForDSDBestPracticeModels

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 う~ん? そもそも『differentiated』をどう訳したらいいのか。そこからして敷居が高い。何のこっちゃ分かりませんという印象です。特設サイトのトップページの下の方に短くまとめた用語説明があるので、日本語仮訳を付けて紹介しておきましょう。

 

『だれにでも同じHIVサービスを提供できるようにするフリーサイズ(画一型)モデルが、世界の3700万人のHIV陽性者全員に機能するなどということはあり得ません。対象に応じた(分化型)ケアは、カスケードの全般にわたり、HIVサービスを簡素化して提供できるようにすることで、サービスを受ける人それぞれのニーズに対応し、保健医療システムに過剰な負担をかけることなく迅速なサービス提供を可能にするクライアント本位のアプローチです。多くの国がサービス提供モデルの見直しを行い、提供の仕方を変える必要があることを認識するようになっています』

A one-size-fits-all model of HIV services does not work for all 37 million people living with HIV today. Differentiated care is a responsive, client-centred approach that simplifies and adapts HIV services across the cascade to better serve individual needs and reduce unnecessary burdens on the health system. More countries are revising their service delivery models and recognizing that it is time to deliver differently.

 

英文冒頭の『one-size-fits-all model』は辞書を引くと、フリーサイズという訳語が出てきます。Tシャツなどで、Lサイズの人でもSサイズの人でも着られます、誰にでも合いますよという、あのフリーサイズですね。作る方は手間が省けるのでしょうが、保健医療となると、ちょっとそれはうまくいかないでしょうとまず直感的に思います。

じゃあ、どうすればいいのか・・・というところから生まれたのが「differentiated service」ということでしょうか。

この対比を受けて一応、『one-size-fits-all model』に「画一型」、『differentiated service』には「分化型」の訳語を付けてみましたが、そもそもこうした説明が必要だということは、しっくりと来ていない証拠でもあります。より適切な訳語があれば教えてください。

考え方は示されているものの、概念先行で、どうも具体的な中身がいまいちはっきりしないのではないか。まったくの私の憶測ですが、今回のベストプラクティス事例の募集の背景には、そうした事情もあるのかもしれませんね。

個人的な印象としては主にアフリカのHIV陽性者を対象にした抗レトロウイルス治療の普及をどう推し進めていくかというところが焦点になっているようですが、保健医療サービスの効率化をはかりつつ、サービスの質を下げずに安定的な供給を持続させていけるのかという観点に立てば、つい先日まで東京で国際会議が開かれていたユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)や高齢化社会に突入している日本の医療体制にも共通する課題やヒントがあるかもしれません。

サイトを見ると『differentiated service』あるいは『differentiated care』といったものの必要性が、どういう経緯で、いつ頃から強調されるようになったのか、といったことも説明されているようです。

長くなりそうなので、そちらはいずれまた、翻訳して紹介できれば・・・ということにして、とりあえず、こうした呼びかけもありますということをお知らせしておきましょう。