4313 プロダクトRED(過去の資料から)

 

 プロダクトREDはいま、どのように表記するのでしょうか。なかなか新しい動きについていけないので、ご存じの方がいたら教えてください。かわりに、というのも変ですが、2006年当時の資料の日本語仮訳です。

 私が最初にプロダクトレッドのことを知ったのは、2006年1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで構想が明らかにされたときでした。といっても、世界のHIV/エイズ対策の動きをフォローするためにダボスまで取材に行くことを認めていただけるほどの立場にはなく、インターネットであれこれ関係文献を探しては日本語に訳して、何かよく分からないことが始まっているなと思っていた程度でした。その日本語仮訳は当時、HATプロジェクトに載せておいたので、それを再掲します。

 

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プロダクトRED(2006.1.29)

(解説)スイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムは毎年、世界の政治やビジネスの指導者が集まる大会議です。今年のフォーラム会場で1月26日、Product REDというイニシアティブ(計画、構想)が発表されました。REDはHIV/エイズとの闘いのシンボルとなっているレッド・リボンからの発想でしょう。とは言っても内容がよく分からないので、資料をかき集め、(1)HIV/エイズの観点から世界経済フォーラムを紹介しているUNAIDSの「エイズ:everybody’s business」と(2)1月26日のREDのプレスレリース、(3)同じく世界基金のプレスレリースを日本語にしました。大体の感じはつかめるのではないかと思います。企業の対応にも日本国内と世界標準では、ますます差が激しくなっているようにも思えます。

 

(1)エイズ:everybody’s business (UNAIDSウエブサイトより)
 エイズの流行は世界中で、ビジネスにも従業員にもマーケットにも生産性にも影響を与えている。スイスのダボスで今週、世界経済フォーラムに集まったビジネスリーダーの多くは、仕事の現場でエイズの影響が拡大していることに大きな関心を示している。

 エイズ対策に関する企業の方針を調べたフォーラムの最新の調査によると、企業の経営最高責任者はHIV/エイズの流行が自社に及ぼす影響に懸念を増大させている。職場における予防と治療のプログラムを拡大するために資金を投入する経営者も増えている。世界経済フォーラムの質問に回答した117カ国の1万1000社のほぼ半数が今後5年で企業活動に対するエイズの流行の影響は一段と大きくなると予想している。

 「この数年、経済界は、エイズの脅威を以前より認識し、対策に積極的に取り組むようになっている」とUNAIDSのディレクター、ベン・プラムリー事務局長室長はいう。
 「民間企業の潜在力は大きいので、一層の支援を期待したい。増大しつつあるHIVの脅威に対し、どうすれば企業がより積極的に取り組むようになるのかを理解するうえで報告は大きな助けになる」

 報告書は職場における偏見と差別についても重要課題として取り上げている。差別を解消し、従業員がHIVの治療と予防のサービスを利用できるようにするための職場の方針を打ち出し、実行することで、経済界は非常に大きな役割を担うことができる。世界HIV/エイズ・ビジネス連合などの連合体はベスト・プラクティスの経験を共有する場として各企業を助けてきた。この火曜日(2006年1月26日)に世界経済フォーラムで発表された新しい世界ブランド「プロダクトRED」のように注目を集めるキャンペーンは、マーケティングの発想を通し、経済界がより積極的にエイズ対策に取り組む方法を示している。RED製品の売り上げが直接、世界エイズ結核マラリア対策基金に流れる道を作ることで、プロダクトREDは民間企業がアフリカのエイズとの闘いに関与しようとしている。

 

(2)ボノとボビー・シュライバーが、アフリカのエイズとの闘いに世界の有名ブランドの力を活用する「プロダクトRED」を発進させた 
 世界基金への資金の流れを生み出すため、American Express、Converse、Gap、Giorgio Armani がRED製品第一弾を発表
          (プロダクトRED プレスレリース 2006年1月26日)

http://www.joinred.com/pr.asp?do=read&id=1048491252006

 ボノとボビー・シュライバーは本日、スイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、民間企業から世界エイズ結核マラリア対策基金への持続的な資金の流れを作るためのプロダクトRED計画を発表した。世界的な大企業が特別にデザインされた製品の販売収益の一部を世界基金に継続的に寄付する初の試みで、資金は女性や子供に焦点をあてアフリカのエイズ対策に役立てられる。

 REDは、パートナー企業がブランド創出の専門的能力を活用し、世界基金に資金確保の回路を作り出す利益創出型の新たな貢献策である。American Express (創立パートナー)、 Converse、Gap、Giorgio Armaniの4社が発足時点のパートナー企業となっている。4社はREDマークのついた製品をデザインし、2006年3月1日から発売する予定である。

 プロダクトREDのボビー・シュライバー事務局長は「計画は長期にわたり、持続できるように考えられている。REDパートナーは自らの顧客を拡大し、自社にも世界基金にも持続的に収入がもたらされるようにしていきたいと考えている。パートナー企業は極めて高いマーケティング力を持つ企業ばかりで、エイズの流行という緊急事態にその能力を活用することは信じがたいほど素晴らしいことである」という。

 世界基金の資金需要に対する民間企業の貢献はこれまでのところ1%にも達していない。REDはこの計画が基金に対する新たな資金回路を生み出すものと信じている。
 「REDは21世紀のアイデアです。これらの企業がやろうとしていること-過去600年における最大の保健危機であるアフリカのエイズと闘うために、世界基金に創造力と資金を稼ぐ力を貸すということは、本当にすごい。REDに関わるのは世の中のためにいいことだし、それが結局は個々の企業にもビジネスとしていい結果をもたらすことになると思います」とボノは語っている。

資金集めの仕組み
 RED製品の販売収益の一部は、アフリカでHIV/エイズに影響を受けている女性や子供の生命を救うために世界基金が資金を提供するプログラムに役立てられる。その中には、実績もあり、野心的な目標を掲げるルワンダのような国のプログラムも含まれている。ルワンダでは過去2年間でHIV/エイズ治療を受ける人の数が10倍に増えている。

REDによって取り上げられるプログラムは以下の世界基金の基準によって選ばれる。
Focus:
 ・助成対象はアフリカの女性、子供に焦点を当てたHIV/エイズの治療、ケア、予防に関連する活動。

Performance:
 ・プログラムは中間報告や中間検証により、良好な運営状況が事実に基づいて証明されている必要がある。

Reporting:
 ・プログラムの助成を受ける者は世界基金に対し、指定期間内に中間報告を提出し、支払い請求を行なう。
 ・世界基金事務局は、地元の代理機関(専門のコンサルタント)の助言に基づき、支払請求の承認を行なう。

「プロダクトREDは、今日の最大の危機であるHIV/エイズの世界的流行に対し、企業と消費者が積極的に関与する画期的な試みです。アフリカにどうしても必要な予防、検査、治療、ケアの大幅な規模拡大のために、REDは資金面で大きな貢献をすることができます」と世界基金のリチャード・フィーチャム事務局長は述べた。

 南アフリカネルソン・マンデラ前大統領は「われわれはみな、世界基金を支え、エイズと闘うために協力しなければならない。REDはそのために世界の関心を高めることを約束した。私はREDとそのパートナーに拍手を送りたい」と付け加えた。

RED 製品
 American Expressは年会費無料のクレジットカードを作り、カード使用額の最低1%がカードメンバーから直接、世界基金に支払われるようにする。使用額が年間5000ドルを超えた場合には総額の1.25%になる。カードメンバーが最初の1カ月以内にカードを使って最初の購入をするとさらに5ドルが世界基金に送られる。American Express のREDカードメンバーには、特別の割引制度やエンターティメント、特別セールへの参加資格などさらに多くの特典が付いている。カードは2006年3月から利用可能。

 発足記念のConverse REDコレクションは、英国のデザイナー、ガイルス・ディーコンがデザインしたチャック・テーラーのマッドクロス製オールスター・シューズである。Converseは1950年代のマリ出身の著名なマッドクロス・アーティスト兼物語作家、ナクンテ・ディアラに触発され、マリのバマナの人々の泥染めの布、ボゴランフィニの芸術性と象徴性、および技術を十分に理解してきた。ボゴランフィニは生きたアートであり、常に変化し、新たなインスピレーションを反映するとともに、過去へも敬意を払っている。アーティストは何世代も伝えられてきた技術を使い、有名な幾何学模様をベースにしたモチーフの中に個人的なスタイルや創造性を表現していく。ボゴランフィニはバマナの人々の不可欠な生活の一部である。Converse REDのマッドクロス製シューズは、アフリカの文化と創造性を称え、保護するためにファッションと社会的な自覚との融合が生み出したオリジナルなアート作品である。
 チャック・テーラーのマッドクロス製オールスター・シューズは英国、米国の厳選された専門店および世界のconverse.comで2006年3月から販売される。

Gapはまず、英国と米国で販売する特別な商品コレクションの開発を行なっている。最初に登場するのは最もGAPらしい商品といえるTシャツである。100%アフリカ製のビンテージ・スタイルのTシャツは赤をはじめ、幅広いカラーが用意される。2006年春に英国の店舗で発売される予定である。
 さらに、2006年秋にはコレクションを増やす方針で、GAPの基本的なアイテムをもとにして細部にREDの特長を生かしたものになる予定である。

 Giorgio Armaniの最初のRED製品はEmporio Armaniのサングラスになる。メタルフレームのサングラスはシングルレンズで、グリーン、ローズ、ブルー、スモーク・グレイ、グレイ、ブラウンがあり、Emporio Armani REDのロゴが付いている。 フォークド・アームはリチニウム、ガンメタル、ライト・ゴールドのシェイドがあり、未来派感覚でレンズに重ねることができる。Emporio Armani REDサングラスは4月に全世界の Emporio Armaniストア、特定のアイウエア専門店、デパートなどで発売される。
 Giorgio Armaniは衣服、アクセサリー、香水、時計、アイウエア、宝石などを含む女性用および男性用のEmporio Armani REDカプセル・コレクションを2006年後半に発表する予定である。

 

(3)世界基金はプロダクトREDを歓迎  プレスレリース(2006年1月26日)
 民間セクターの画期的な計画が世界基金の資金を増やし、基金に関する消費者の理解を深めることになるだろう

http://www.theglobalfund.org/en/media_center/press/pr_060126.asp

 【ダボス】世界エイズ結核マラリア対策基金は本日、持続的に利益を生み出すことができるブランド「プロダクトRED」が企業による新たな貢献策として発表されたことを心から歓迎する。このブランドは資金確保に貢献するとともに、世界基金およびアフリカにおけるHIV/エイズとの闘いに対する社会の関心を高めるだろう。

 年間300万人もの生命を奪っているHIV/エイズの世界的流行との闘いを支援する目的で、世界の主導的な企業が人気の高い製品の販売利益の一定の割合を確保する約束をした。これは初の試みである。RED製品の販売で得られた資金は、アフリカでHIV/エイズの流行の影響を受けている女性や子供の生命を救うために世界基金が財政的な支援を行なうプログラムに役立てられる。

 「消費者に対し、社会的な責任を果たせる消費行動を呼びかけ、企業に利益をもたらすことで、REDは病と貧困との闘いに企業が関与する持続的なモデルを開拓しようとしている」と世界基金のリチャード・フィーチャム事務局長は語る。
 「REDは慈善や公的な資金確保キャンペーンではない。互いの利益になる関係を生み出すことを明確に意図し、パートナー企業がビジネスの立場から行う提案である。企業は顧客を拡大し、ブランドは少なくとも、文化的な重要性や思いやりと結びついてイメージの向上をはかれる。一方、世界基金と助成を受ける受益者は大きな資金源を獲得するだけでなく、活動を広く知ってもらい、理解を呼びかける機会も得ることになる。結果として、REDはこれまでの企業による資金確保計画よりも規模が大きく、持続的な活動になる潜在力を持っている」

 「世界基金の大きな特長のひとつは、ユニークな官民のパートナーシップにある。RED計画はこのパートナーシップの具体例であり、企業にとっては世界基金のビジョンと活動を実現させる利害関係者としての関与を確実にするものだ」と世界基金理事会のキャロル・ジェイコブズ議長はいう。
 「私たちはこの計画を高く評価したい。また、ボノとDATAのボビー・シュライバー、計画を可能にしたパートナー企業のCEOやスタッフのチームの努力を認めたい。理事会は企業セクターから選出した理事であるリタ・グプタ、企業セクター代表団の中心メンバー、世界HIV/エイズ・ビジネス連合、マッキンゼー&カンパニーらにも感謝している」

 世界基金はRED製品の販売から、ルワンダなどHIV/エイズの予防、治療対策の劇的な規模拡大が進められている助成先の選定まで、協力していくだろう。REDは世界中の消費者の関心を引き付け、ルワンダのような国における人々の生死に関わる活動に対して消費者が関与できるようにし、HIV/エイズとの闘いに幅広い影響を与えることになるだろう。 

 REDおよびそのパートナー企業との合意は、世界基金や受益者に大きな事務の仕事を負わせるものではなく、世界基金が最も必要と考えるところに資金を投入することができるようになっている。
 世界基金はこれまでに、サハラ以南のアフリカのHIV/エイズ・プログラムに対し14億ドルの助成を約束している。これらのプログラムは、すでに資金を使用し、27万人のHIV陽性者に延命効果のある抗レトロウイルス薬を提供するとともに、何百万もの人にHIVの感染を予防するための効果的なメッセージと手段を届けてきた。また、50万人のエイズ遺児が食糧やケア、教育などを受けている。

 世界基金はこうしたプログラムの成果をさらに広げ、新たな助成を行なうために追加的な資金を必要としている。予防、治療のユニバーサルアクセスを2010年までに目指すにはこうした規模の拡大が不可欠である。世界基金は既存のプログラムおよび新たなプログラムへの資金供与を完全に実現させるには、2006-2007年に30億ドルの追加的資金が必要だとしている。

 2002年の世界基金創設以来、民間セクターは基金の運営および管理の面で不可欠な役割を果たしてきた。民間の企業および財団は定数24の理事会にそれぞれ1議席を持ち、投票権を確保している。各国レベルでは、企業は世界基金の資金の受取人や地方政府のパートナーとなるほか、自社工場を超えて地域コミュニティにも病気と闘うプログラムを広げ、周囲のコミュニティに影響を与える役割を果たしてきた。