セクションの冒頭に書かれているように第7部では対象年齢別のカリキュラムが紹介されています。最初の囲み記事のすぐあとには、指導にあたるコーチ、トレーナーに対しても以下のようなアドバイスが載っています。
《HIVとエイズは誰にとっても難しい話題です。セクシャリティやジェンダーの不平等、男性同士のセックス、薬物使用などの話題は論争を引き起こし、さらに詳しい情報が必要となります。コーチやトレーナーとして、あなたが最初にやらなければならないことは、自らのセクシャリティを受け入れることです。男あるいは女であるとはどういうことなのか、あなた自身の性行動はどんなものなのか、異なるセクシャリティの人をどのように見ているのか、自分自身に飲酒や薬物使用はあるのか、男性および女性をどのように扱っているのか、禁欲や貞節、コンドーム使用をどう考えるのか、自分の宗教的背景はどんなものか、セックスワーカーについてどう考えるか、あなたはセックスワーカーか、HIV陽性者をどう思うか、といったことを考え、それらの課題に対応する必要があります》
教えることは教わることといいますか、こうした視点を忘れないことも大切ですね。伝えるとか、指導するとかいったことの関係性を考えるときに、誰が当事者なのか、そして限界を抱えているのは誰かという課題もまた改めて浮上します。十分に検討を重ねたツールキットという印象を受けます。
《このことは数多くの自己反省を含み、さまざまな疑問を提起することになります。他の人と話し合ってください。いったん氷を破ることができれば、他の人たちもいかにセクシャリティについて話したいと思っていたかが分かり、驚くでしょう。他のコーチや友人や仲間と話し合ってください。あなたが正直に腹を割って対応しなければ、好奇心の強い若者のグループを惹きつけることはできません》
紹介しておいてこういうことを書くと、またまた激しくお叱りを受けそうですが、個人的には「これはちょっと荷が重いなあ」とかなり及び腰になってしまう面もあります。すいません。なにせ氷が硬くって・・・。でも、《いったん氷を破ることができれば、他の人たちもいかにセクシャリティについて話したいと思っていたかが分かり、驚くでしょう》ということでもあります。
カリキュラムは想定対象年齢10~12歳、13~15歳、15歳以上に分けて示されています。それぞれの国、それぞれの集団、それぞれの対象(年齢だけでなく)によって条件は異なるでしょうから、何が何でもこの通りにしなければいけないということではなく、条件にあわせて柔軟に取り入れていくということも必要かもしれません。例によって長尺ですが、積極果敢にチャレンジし、参考にしてください。
第7部「コーチ、トレーナー、指導者のHIVとAIDSへの対応」
このページからは、選手たちが自分自身や他の人を感染からどう守るか、HIV陽性者の尊重といったことも含め、HIVについて学ぶ方法を年齢層別に説明します。
囲み7:年齢層別に必要な情報は異なります。
プレティーンズ:9~12歳
この年齢は急速に身体が成長し、変化する時期です。したがって身体や外見、「正常」であることなどに対する関心が高まり、性についての興味も非常に強くなります。思春期が始まっている子供も中にはいます。第2次性徴の発達(胸の膨らみ、陰毛や腋毛、臀部の拡大、声変わりなど)は子供が青年期の入り口に立っていることのあらわれです。少女の性的な成長は少年より早いでしょう。ゲイやレズビアンの人はこの年頃で自らの性的指向に気付くことがよくあり、異性愛を前提とした社会の中で大きな不安と混乱と孤立を感じるかもしれません。ピアグループの存在が非常に重要になります。子供たちは家庭で身につけた価値観をピアグループの中で検証するのです。プレティーンズは服従の強烈なプレッシャーを経験します。
・ プレティーンズは子供から大人への入り口に立っていることを認識してください。
・ プレティーンズは性に関心を持ち、正確な情報を必要とし、HIV感染や妊娠など、性交経験がなにをもたらすのかということも理解できます。
・ 月経やコンドーム(資料4参照)、リプロダクティブヘルス、HIVとSTIs予防、性に関する自認などについて教えてください。
・ コンドーム使用と注射針使用の安全性について明確に教えることを考えてください。そのことで若者のセックスや薬物使用が促されるわけではありません。むしろ、健康を守り、安全を確保することになるでしょう。プレティーンズはHIV感染と予防について十分に理解できます。
・ 身体やホルモンや情緒が大きく変化する過程で、彼らに特別のプレッシャーをかけるような文化が数多くあることを覚えておきましょう。性をめぐる関係性や薬物使用、その他の課題について双方向の議論により、あなたの価値観を確認するいい機会でもあります。こうした課題をあなたがどう思っているのかを語るだけでなく、彼らが語ることにも耳を傾けましょう。
・ 若者にアルコールや薬物使用を避けるよう勧め、あなた自身がロールモデルになってください。
「私は犠牲者ではなく、メッセンジャーです」
アーサー・アッシュ、HIV陽性、テニスチャンピオン
若者:13~18歳
陰部の成長とともに、射精が始まり、ホルモンの活動も変化します。そのことで性と生殖の機能が成熟していくのです。どこで若者から大人になるかは、社会的、法的な規範、および個人の肉体的、精神的な成長によって異なります。若者はセックスやドラッグを試してみるかもしれません。また、若者は親密な関係を求めています。「私を本当に愛してくれるのは赤ちゃんしかいない」と思って、親密な人を求める欲求を満たすために妊娠したいと思う少女もいるかもしれません。仕事を持つことで、大人としての役割と任務を果たせるようになると思うかもしれません。
・ 15~24歳の若者はHIV感染の最も高いリスクにさらされています。身体はなお成長過程にあり、生物学的にもHIVに感染しやすい状態になっています。とくに青春期の少女と若い成人女性はそうです。
・ 若者が安心して話せるよう、耳を傾けることを忘れないでください。
・ セクシャリティ、HIV感染と予防、安全な性行為について、若者たちに包括的で正確な情報を伝えてください。十代の少年少女は大人から幅広くHIVとエイズについて情報を学び、理解する必要があるし、それができる力もあります。
・ 何か間違ったことをしたときにそれを批判するよりも、正しいことをしたときにそれを評価することの方により心がけましょう。
・ アルコールや薬物使用を避けるよう若者に勧め、あなた自身がロールモデルになってください。
HIVとエイズは誰にとっても難しい話題です。セクシャリティやジェンダーの不平等、男性同士のセックス、薬物使用などの話題は論争を引き起こし、さらに詳しい情報が必要となります。コーチやトレーナーとして、あなたが最初にやらなければならないことは、自らのセクシャリティを受け入れることです。男あるいは女であるとはどういうことなのか、あなた自身の性行動はどんなものなのか、異なるセクシャリティの人をどのように見ているのか、自分自身に飲酒や薬物使用はあるのか、男性および女性をどのように扱っているのか、禁欲や貞節、コンドーム使用をどう考えるのか、自分の宗教的背景はどんなものか、セックスワーカーについてどう考えるか、あなたはセックスワーカーか、HIV陽性者をどう思うか、といったことを考え、それらの課題に対応する必要があります。
このことは数多くの自己反省を含み、さまざまな疑問を提起することになります。他の人と話し合ってください。いったん氷を破ることができれば、他の人たちもいかにセクシャリティについて話したいと思っていたかが分かり、驚くでしょう。他のコーチや友人や仲間と話し合ってください。あなたが正直に腹を割って対応しなければ、好奇心の強い若者のグループを惹きつけることはできません。
HIVとエイズに関する法律、国内オリンピック委員会とあなたが所属するスポーツ組織のHIVとエイズに関する方針、国内オリンピック委員会が提供する情報、方針、活動などは、事前に知っておくべきです。こうしたことはHIVとエイズについて教える際の参考となり、影響力もあります。活動やメッセージを調整するために国家エイズ協議会と連携をとっておくことも大切です。
スポーツは直接、健康や生活に関係するので、冊子の配布棚にはHIV情報も含めた保健関連情報の冊子も提供できるようにしてください。コミュニティ教育の手法としては受け身のものですが、質の高い教育のために必要な事実に基づく素材が提供できるので、結果として、HIV陽性のアスリートの存在が公になったときにコミュニティからのひどい反応を最小限に抑える効果があります。HIV陽性のアスリートに対する否定的な反応を心配する人は、コミュニティベースの教育や研修を考える必要があります。
HIVとエイズの教育を行うときには、保護者の許可を得ておく方がいいでしょう。あなた自身とあなたが所属する組織にとっての望まざる事態を防ぐことになります。話し合いを行ったうえで保護者が望むのなら、選手がHIV関連の活動から外れることもできるようにしてください。
囲み8:トレーニングプログラムの指導者、スワジランド
スワジランド・オリンピックおよびコモンウエルズゲーム委員会とコモンウエルズゲーム・カナダの支援を受け、リーダース研修(LIT)プログラムはコミュニティの中でスポーツを通じて若者を力づけ、HIVとエイズと闘うための6つの柱を掲げている。信頼、尊重、責任、公正、思いやり、参加である。
地方の若者にHIVとエイズの情報を提供することがその目標である。スポーツを使って楽しく学べるようにすること、地元の若者指導者を研修し、力づけること、地元にスポーツフォーオール・センターを設けること、コミュニティがスポーツ活動に参加すること、将来のスポーツコーチや役員を育てることなどである。
若者の中からリーダーを選び、リーダーシップやコーチング、ライフスキル、HIV予防について5週間にわたり週末にトレーニングを行う。地元のスポーツフォーオール・センターが設置され、リーダーたちはセンターの基本的な設備と資金確保および資金の活用法などを学ぶ。このことによって若者たちは自らレクリエーションプログラムを運営し、HIV予防のためのネットワーク作りの機会と手段を獲得する。リーダーは地元のロールモデルにもなる。
ポジティブプレイデーというサブプログラムでは、参加者が6つの柱を認識し、ゲームの表彰を行い、「勝者」を再定義し、心のタンクを満たすことで、後ろ向きの気持ちや暴力性などから抜け出していけるようにする。
LITプログラムは試合や混合スポーツで基本的な身体のぶつかり合いを行うためのトレーニングを若者に提供しているので、より上位のリーダーシッププログラムへの自然なステップとして感じられるようになっている。ヤングリーダーは初期LITプログラムによって成長していく。スポーツ分野における管理とコーチングの質の向上をはかるためにトレーニングを行うことが指導者への望ましい道になる。14~15歳の16人が参加する。
2004年末には、40人の新しいリーダーを対象にリーダース研修(LIT)の第2セッションがスタートした。LITには、若いリーダーたちが地方のコミュニティスポーツディを運営する実戦的な活動も加えられた。孤児や恵まれない子供たちが400人以上集まり、保健教育やスポーツ活動に参加した。LIT研修生には非常に価値ある体験であり、参加者には面白くてためになる1日だった。
7.2 準備ができたら、どのようにチームとかかわるか
話し合いを導いていくために、あなたのコーチとしての立場が活用できます。いくつかの基本ルールが役立つでしょう。個人情報はチームメンバーが自ら提供する、グループにとどまる、口汚い言葉は避ける、本人以外の人は誰かのHIV感染について伝えない、質問や反論があるときには手を上げる、個人のセクシャリティを問うのではなく一般化した質問にするといったことだ。これらのルールについて選手の同意を得ておきましょう。
囲み9:基本ルール(注)
(注)HIV陽性者世界ネットワーク(GPA)の「Positive Development:自助グループの設立と変化の擁護 HIV陽性者マニュアル」より
http://www.gnpplus.net/programs.html
HIVはセクシャリティや安全や信頼関係や将来といった極めて個人的な感情の部分に影響を与えます。グループ活動では信頼と行動に関するルールを決めておくことが大切です。グループの中で、個人的な感情や微妙な話題について話をするときには、笑われたり、無視されたり、他の人に分かってしまうことを心配したりせずに話ができるようにする必要があります。グループの中で安心して話せるようにするにはどうしたらいいかメンバーに尋ねてください。提案があったら、それを全体のルールとして採用できるかどうか他の人たちの合意を得る必要があります。合意されたルールは書き出しておきましょう。話が進むにつれて修正や追加もあるでしょう。
考えられるルール例
・ 秘密保持
・ 尊重:誰かが発言しているときにはそれを妨げずに聞く。一度に話すのは一人。
・ 用語:誰もが理解できるように話し、人を傷つけるような言葉は避ける。
・ ノンジャジメンタルな態度:相手の尊重を損なうものでない限り、他の人の感想や見解や行動に対し、ジャジメンタルになることを避ける。
・ 出席できないときはグループリーダーに連絡する。
グループのメンバーには、そこで話したことが外には漏れないことを期待する権利があります。そうでなければ自由に話せなくなってしまいます。本人の許可がない限り、名前が他の人に伝えられるようなことはないという了解が必要です。コンフィデンシャリティとはどういうことなのか、互いに理解しておく必要があります。
これらのことは書いて会場に貼りだしておくといいでしょう。
・ ここで見たこと
・ ここで聞いたことは
・ すべて外に出さないでください。
あなたが最初に果たすべき仕事は、HIVとSTIs、セックス、ドラッグについて若者たちの知識のレベルや誤解がどんなものなのかを把握することです。会合の初めに下記のアイスブレーカーを活用することで、参加者はリラックスし、あなたは彼らが何を知っていて何を知らないかということをある程度、つかめるようになるでしょう。
このゲームは最初、居心地が悪く、笑われるように思うかもしれませんが、性に関する話題について参加者が気楽に話せるようにするためです。
・ グループに対し「まず、皆さんが知っている性関係のスラングを教えてください」と告げてください。
・ 参加者があげたスラングをフリップチャートに書いていきましょう。「それは初めて聞いた」とか、「その言葉は使ったことがある」といったように正直かつ率直に反応すると雰囲気が和らぎます。
こうし会話はメンバーにある種の感情を生み出すかもしれません。アフリカやカリブ諸国の中には、コミュニティのほとんどがHIV陽性者を誰か知っているという国もあるし、そうではないコミュニティもあるでしょう。少なくともグループの中で誰か一人、HIVに関して個人的な経験を有する人がいるといいですね。セクシャリティについて話せば、近親相姦も含めたレイプや性的虐待の問題を取り上げることになるかもしれません。そうしたこともあり得るという認識を持ち、企画段階や話し合いの中で配慮していくことは大切です。共感、尊重、安全などの雰囲気作りに最適な立場にあるのはあなたです。
自尊感情を育てる。折に触れて若者を褒め、現実的な目標を設定し、彼らの関心に添っていくことは、自尊感情の確立を助ける有効な方法になります。若者が自分自身に肯定的になれば、まだ準備ができていない時期に仲間から性的経験がないことでプレッシャーを受けても、それに負けずにいられるし、薬物使用を拒否することもできるようになるでしょう。つまり、HIVに感染するリスクが高まる行動を取らなくなるのです。
議論を活発にする方法のひとつは質問箱です。若者にとっては大きな声で質問しないでも答えが得られることになります。紙を配り、HIVとエイズ、セクシャリティ、薬物使用などに関する質問を描いてもらってください。用紙を集め、箱の中に入れます。すぐに質問に答えてもいいし、追加の質問を受けられるように、しばらくその場に箱を置いておいてもいいでしょう。その会合か、次の会合で答えるようにしてください。
どのように会合を進め、どのくらいの間隔で開くかといったことは、条件に応じて、あなたが決めてください。要は選手たちがHIVとエイズについて知ることができる機会を増やし、話すことを妨げる障壁を取り去ることです。1週間に1回はHIV、エイズ、セクシャリティ、薬物使用といったことを話し合えるのなら、そうしてください。そんなにしょっちゅうミーティングが開けないようなら、練習の合間に30分程度でもかまいません。
何が必要なのかはそれぞれに異なるでしょうから、予算や参加人数、年齢層などに合わせて情報を活用してください。学ぶことの醍醐味は、参加者が力をあわせて「どうしたらいいのか」という方法を見つけていくことにあります。これまでの経験を参考にし、条件にあわせて工夫していくことができるのです。こうした終わりなき創造的学習プロセスは、コーチやトレーナーにとっても重要です。最も適した方法を探していくことこそが実は、エイズと闘い、究極的にはコミュニティの生活の質を高めていくための鍵なのです。
7.3 セッションの振り返り
グループからのフィードバックは有効です。紙を配り、若者たちに以下のことを書いてもらうのも、そのひとつの方法です。
・ 何を学べたか。
・ 何が楽しかったか。
・ もっとよくするにはどうしたらいいか。
セッションの後で、これからの活動にどう生かせるか、自分自身のスキルはどうなのかということを考えるためにも振り返りは大切です。
・ 何をして、どんな情報が得られたのかということを全員が理解できていたか。
・ 演習が誰かを怒らせたり、傷つけたりしたことはなかったか。
・ グループの中の誰が最もくつろげていたか、それはどうしてか。
・ あなたにとって答えるのが困難な質問はあったか。
レベル1の活動
想定対象年齢:10~12歳
このセクションのカリキュラムは、10活動中5つの活動を実施します。コーチと共に第4部知っておくべきこと、第5部スポーツとHIVを参考にしてください。遠慮せず、コーチに助けを求めてください。
1 仲間と一緒に、以下の話題を含むフリップブックを作りましょう。
・人間の身体
・人から人に感染する量のHIVを含む体液
・人から人へとウイルスが感染するリスクの高い行動
・HIV感染を防ぐ3つの方法
フリップブックはチームで共有し、情報を理解する助けになるよう必要に応じて変えていきましょう。家族やコミュニティのメンバーとも情報を共有してください。
2 HIV陽性者と安全に過ごせる行動について図解ポスターを作りましょう。
・ 他のスポーツ選手とともに行う行動
- 友人と行う行動
- 家庭における行動
あなたのポスターをグループ内や友人、家族にも見せ、必要な情報を付け加えてもらいましょう。
3 世界エイズデー(12月1日)に学校やコミュニティで行われる活動を確認し、参加しましょう。他の人にも何があるのか知らせてください。世界エイズデーの活動報告を所属スポーツクラブに提出しましょう。
4 コミュニティや学校でHIVとエイズの理解を広げるには次のような方法があります。
・ コミュニティの中でHIVとエイズについてより詳しい情報を得ることができる場所のリストを作る。
レッドリボン
レッドリボンはHIV陽性者への支援を示す草の根の運動として始まりました。このため、公式のレッドリボンというものはなく、様々な人がそれぞれのリボンを作っています。今日ではHIVとエイズについての理解を広げる国際的なシンボルとなり、年間を通して多くの人がレッドリボンをつけています。とりわけ世界エイズデー前後にはつける人が増えます。それは希望のシンボルです。エイズの流行を止めるためのワクチンや治療法の研究への希望であり、HIV陽性者の生活がよりよいものになってほしいという希望でもあります。HIV陽性者やHIVとエイズの流行に影響を受けた人への支援を表明するメッセージでもあります。
自分自身のレッドリボンを作るにはまず、1.5センチ幅の赤いリボンを約15センチの長さに切ってください。それを逆V字型に折り曲げ、真ん中を安全ピンなどで止めて服などにつけられるようにします。
5 コミュニティでHIV陽性者をケアする方法のリストを作ろう。HIV陽性者はどこで支援を受けたらいいのでしょうか。
- コミュニティ内に病院や専門のクリニックはありますか。
- HIV陽性者やその家族を助ける協会はコミュニティ内にありますか。
- 誰かがエイズやそのほかの病気にかかったときに家族はケアにどのくらい払うのですか。
あなたが学んだことをチームメートに紹介し、他にどんなサービスがあるのか、知っていたら付け加えてもらいましょう。
6 HIV陽性者が良好な健康状態を保ち、病気になったときにもそれをうまく管理するには、どんなニーズがあるのかを考え、ポスターを作りましょう。その際に以下のことを考えてください。
- あなた自身が健康を保ち、病気になっても状態を改善するためにはどんなことが必要ですか(たとえば、きれいな水、避難所、世話をしてくれる人など)。
- HIV陽性者にはそのほかに何が必要ですか(治療薬、食事、支援してくれる人など)。
グループ内や親戚、先生、友人らにそのポスターを見せてください。
7 エイズはどのような影響を与えるのか、図にしてください。エイズの様々な顔を描きましょう。どんな人がHIVに感染し、エイズを発症するのか、あるいはその人たちと関係があるのか、考えてください。たとえば、男性、女性、子供、若者、老人、皮膚の色の違い、宗教などです。あなたが描いたものをグループ内で見せ、話し合ってください。
8 HIV陽性であることを公表して生きていくとはどんなことなのか想像してください。
グループで話し合ってください。
9 コミュニティ内や国内でHIV陽性者であることを公表している人、HIV陽性者の権利を擁護する人はいますか。こうした困難な役割を担っている人に励ましの手紙を書いてください。手紙は送ってもらうようコーチに頼みましょう。
どうして?
HIVがどのように広がるのかを知ることで、エイズに対する恐怖心を減らすことができます。
どのように?
それぞれの絵に、何をしているのかを描き込んでください。HIVはこうした行為では感染しないということを知ってください。
図1~12(略)
活動レベル2
想定対象年齢:13~15歳
このカリキュラムでは12種類の活動のうち5つを実施します。第4部 知っておく必要があること、第5部 スポーツとHIV をコーチとともに参考にしてください。
1 仲間と一緒にフリップブックを作る。
(注:フリップブックは特定の話題に関する説明付の一連の図。たとえば、何をしているのかをラベルで説明したリスクの高い行為の図。できあがったフリップブックは選手が友人や家族と話をする際に活用できる)
- 男の身体、女の身体
- 感染している人から他の人へと感染するだけの量のHIVを含む女性の体液
- 感染している人から他の人へと感染するだけの量のHIVを含む男性の体液
- 人から人へとウイルスが感染するリスクの高い行動
- HIV感染を防ぐ方法
2 絵入りのポスターや友だちと一緒に参加したい活動のリストを作る。
- 少年だけの活動
- 少年少女がともに参加する活動
- 少女だけの活動
3 健康的な関係について、グループのリーダーや家族、コミュニティの年長者に話を聞く。人間関係に必要なスキルについて聞いてみましょう。HIV感染の予防に役立つかもしれません。小人数のグループでそのことを話し合ってください。間違っていると思ったり、意に沿わなかったりすることを押しつける人にノーというにはどうしたらいいのか。グループ内でロールプレイをしてみましょう。
4 コミュニティ内の保健施設のリストを作る。HIV感染症の予防に関連した情報やケアを得ることができるところです。こうした機関のひとつで、男性が受けられるサービスについて職員から話を聞いてください。その情報はグループで共有しましょう。また、コミュニティ内で友人とこうした情報について話せる機会を2つ、作りましょう。
5 HIV予防のためのコンドーム使用についてポスターを作る。以下の情報を入れてください。
- コンドームはどのように感染症を防ぐか。
- どこでコンドームを入手できるか。
- コンドームを正しく使う方法。
ポスターは世界エイズデーに活用してください。
6 次のような方法でコミュニティ、もしくは少なくとも学校においてHIVとエイズに関する理解を深めることができる。
- レッドリボンを配り、その意味を説明する。
- コミュニティ内でHIVとエイズに関するポスター展示を行う。
- 若者グループや学校で専門家を招き、HIV予防の話を聞く。
- コミュニティ内で妊娠や性感染症を防ぐための情報とアドバイスを得られる場所のリストを作る。
7 学校やコミュニティが世界エイズデー(12月1日)に何を行うのかを調べ、参加する。他の人にもどんな計画があるのか知らせるようにしてください。コミュニティ内の世界エイズデー活動について、所属スポーツクラブ向けに報告書を作りましょう。
8 コミュニティ内でHIV陽性者がどのようなケアを受けているか、リストを作る。HIV陽性者はどこに行けば支援を得られるのか。以下の質問にできるだけ答えられるようにしておいてください。
- コミュニティ内にHIV陽性者のための病院や専門的な診療所はありますか?
- HIV陽性者やその家族が助けを求められるようになコミュニティの協議会はありますか?
- HIV陽性者や生命にかかわる他の病気の患者のために政府はどんなことをしていますか?
- HIVに特化したサービスがない場合、重大な病気に対するケアはどのようなものがありますか?
- ケアを提供するのは誰ですか? 医師ですか? 看護師ですか? ボランティアですか? 家族ですか?
あなたが学んだことをグループに報告し、他の人にもHIV陽性者や他の病気の患者に対し、どんなサービスがあるか、知っていたら教えてもらってください。
9 親戚や学校の友達が誰かHIV陽性だった場合を想像する。誰かがあなたに自分はHIV陽性だと告げた場合、どうしますか。ストーリーを書いてみましょう。どのようにしてその人たちを支援するのか、友だちでいられるかといったことも書いてください。グループのメンバーにも読んでもらいましょう。
10 HIV陽性者であることを公表するというのがどういうことか考えてみる。
- 公の場で話をするHIV陽性者はいるかどうか調べてください。そういうニュースはありますが。人々の反応はどうでしょうか。
- HIV陽性者であることを知られたくない理由をリストにあげてください。あなたのコミュニティでHIV陽性者であることを明らかにして生きていくことを妨げているものはなんですか。
- あなたのコミュニティ内、あるいは国内にHIV陽性であることを明らかにしている人、あるいはHIV陽性者の権利を擁護する人はいますか。彼または彼女がこの困難な役割を担っていることを励ますために手紙を書いてください。クラブの仲間にその手紙を見せ、署名をしてもらいましょう。コーチにはその手紙を送るのを助けてもらうよう頼みましょう。
11 偏見についてグループ内で話をする。はじめに次の課題について考えましょう。
- 偏見とは何か。
- 誰かがあなたに偏見を持っていると感じたことがありますか。それはどうしてですか。年齢? 宗教? 皮膚の色? あるいはその他の理由? どう感じましたか?
- 違っているからといって、誰かが虐待されたり、蔑まれたりしていることを聞いたとき、あなたはどう対応することができますか。
グループ内でどう考えるのか、話し合ってください。あなた自身、あるいは他の人が偏見を受けたときにはどうしたらいいのか。協力して戦略を検討しましょう。ロールプレイでその準備をしてください。
12 HIV陽性者への支援や差別の解消を呼びかけるポスターを作る。12月1日が近かったらそれを世界エイズデーのポスターにしてください。あなたのポスターをグループ内で見せてください。スポーツクラブや学校でポスターを貼れる場所も見つけましょう。
「自分を尊重しよう。検査を受けよう。そして正直になろう」
ロイ・シモンズ HIV陽性者、元全米プロフットボールリーグ(NFL)ニューヨークジャイアンツ選手
活動レベル3
想定対象年齢:15歳以上
このセクションのカリキュラムは15項目のうち8つを実施します。第4部 知っておく必要があること、第5部 スポーツとHIV をコーチとともに参考にしてください。
1 フリップブックを作り、仲間にも読んでもらう。以下の話題を含みます。
- 人の身体 男と女。
- 感染している人から他の人へと感染するだけの量のHIVを含む男性、および女性の体液。
・ ウイルスの人から人への感染のリスクが高い行動。
- 注射薬物はどのようにHIV感染を広げるか。
- 性感染症はどのようにしてHIV感染のリスクを高めるか。
- 飲酒が行動に与える影響、およびそれがどのようにHIV感染のリスクを高めるか。
- セックスや薬物使用に関し、HIV感染を防ぐ健康的な選択。
- HIVおよび性感染症の感染を防ぐ効果的なコンドームの使用法。
フリップブックをチームのメンバーにも見せ、他の人がより理解しやすくなるように改訂していきましょう。チームの外の友人や家族にも情報を伝えましょう。
2. 妊娠やHIVを含む性感染症の予防に関連した情報とケアを提供してくれるセクシャルヘルスや家族計画のクリニック、機関はコミュニティ内にありますか。こうした機関に連絡して、若者にどんなサービスを提供できるのか、聞いてください。コーチとも相談して、セッションにカウンセラーを招き、以下のことについて話してもらってください。
・ コンドームはどのようにして妊娠や性感染症を防ぐのか。
- コンドームの適切な使用法のデモンストレーション(資料4参照)
- コンドームへのアクセス、コンドーム使用、性感染症予防、妊娠、人間関係について質問できる機会。
- 家族やコミュニティの男性もこのセッションに参加してもらう。
コーチのためのノート
このセッションの終わりには、将来、コンドームを使うことをどのように思うか、コンドームの使い方を理解したと思うか、コンドームを入手できるか、パートナーはコンドームを使うと思うか、アクセスはあるのかといったことについて、書くか、口頭かで報告させてください。その結果はカウンセラーに見せ、コンドーム使用を高める戦略をさらに検討してください。
- コミュニティの中で、自発的なカウンセリングと検査(VCT)を受けられる場所を探しましょう。地元自治体の公衆衛生担当や政府の保健当局に問い合わせをするといいでしょう。以下の点をチェックしてください。
・ 費用はかかるのか。
- 結果について、どのように秘密を保持するか。検査で陽性と分かった場合、その情報は誰が知るのか。
- 検査前、および検査後のカウンセリングは提供されるのか。
得られた情報をもとに、検査を受けにくくしている点があるかどうか、グループで話し合ってください。
4. 薬物使用や飲酒について問題を抱える人を支援するための機関はコミュニティ内にありますか。そうした機関のリストを作りましょう。そのうちのひとつと連絡を取り、どんなサービスを提供しているのか尋ねてください。情報はグループ内で共有しましょう。その機関から医療提供者をグループミーティングに招き、コミュニティ内における飲酒、薬物使用の問題と、薬物やアルコールの乱用を防ぐ方法について話してもらいましょう。コミュニティ内の他のメンバーもその会合に招きましょう。
5. 性関係についての短いドラマ、またはロールプレイを書きましょう。たとえば、ガールフレンドに対し、セックスしたいと強く要求している友だちがいるとします。セックスをしないのなら分かれると脅しています。でも、彼女は結婚するまで待ってほしいと思っています。
- ロールプレイを展開していきましょう。
・ 彼女が結婚するまで待ってほしいと思っているのなら、それを尊重すべきだと友だちにはっきり言う。
- セックスの時にコンドームを使うよう話し合う。一方が使用を拒んだときにはどうするのか。
- 友人が薬物を勧める。
グループのメンバーにもロールプレイに加わってもらい、世界エイズデーのときにコミュニティで披露できるようにしましょう。
・ スポーツクラブでレッドリボンキャンペーンを行う。
- エイズ団体から講師を招き、スポーツクラブやコミュニティでイベントを開く。
- 人間関係やセーファーセックスの交渉についてのドラマを学校のコミュニティで上演する。
- セクシャルヘルスや家族計画クリニックへのアクセスが得られる場所について情報を提供する。
- コンドームの正確な使用法(資料4参照)、およびコミュニティ内でコンドームを入手する方法について、情報を提供する。
- 依存問題で悩んでいる人へのサービスリストを提供する。
- 世界エイズデーのときにスポーツクラブやコミュニティでコンドームを展示しましょう。
・ どこでコンドームが入手できるか。
- コンドーム使用に対する肯定的な意見。
- コンドーム使用のデモンストレーション(資料4参照)。
- 展示を見に来た人への体験実習の機会の提供。
- 可能ならコンドームの無料配布。
・ コミュニティ内にHIV陽性者のための病院や専門クリニックはあるか。
あなたが学んだことをグループ内で報告し、他の人にも何か、HIV陽性者、あるいは深刻な病を抱える人に対するサービスについて知っているかどうか尋ねてください。専門的なカウンセラーやコミュニティサービスが近くにあるのなら、何か助けになることができるかどうか連絡を取ってみましょう。訪問する。HIV陽性者のための使い走りをする、コミュニティ組織やクリニックのボランティアになるといったことが考えられるかもしれません(保護者の許可は必ずとってください)。チームでその経験を話し合いましょう。
- コミュニティ内のケア提供者と話をする。病を抱えている人のケアを行っている看護師、カウンセラー、家族などです。どんなケアを提供しているのか、どんな困難があり、何が報酬として得られるのか。あなたはヘルスケアで働きたいと思うか、思わないか。それはどうしてかということについて考えましょう。ケア提供者への贈り物を作りましょう。あなたの経験についてグループ内で話し合いましょう。
・ 自分のHIV陽性やエイズ発症について公の場で語る人がいるかどうか確認する。この点に関するニュースはあるか、他の人はどう反応しているか。
コミュニティ内で誰かエイズを発症していることを明らかにしている人がいたら、その困難な活動を励ますために手紙を書いてください。手紙をグループ内で紹介し、署名をしてもらいましょう。リーダーにはその手紙を送ってもらうよう頼んでください。
- 偏見について話し合い、対応を考えましょう。まず、以下の課題について考えてください。
・ 何が偏見なのか。
- 誰かから偏見の目で見られた経験はあるか。それはどうしてだったのか。年齢、宗教、あるいはその他の理由?そのときにどう感じたか。
HIV陽性者への偏見に反対するポスターを作りましょう。もし、12月1日が近ければ、それを世界エイズデーのポスターにしましょう。グループ内でそのポスターを見てもらってください。スポーツクラブや学校でポスターを貼れる場所を見つけましょう。
- エイズと取り組んでいる地元のコミュニティ組織と話をしましょう。HIV陽性者を助けるためにコミュニティはどう変っていくべきなのかについて陳情の短い手紙を書き、グループ内で署名してもらいましょう。その手紙をコミュニティ組織に託し、政策決定者に送ってもらうようにしてください。
「エイズはゲイや薬物常習者がかかるものだと思っていました。女性が好きで、体力もある私のようなマッチョな男性はエイズにはならないと思っていたのです」
- セックスに対して「ノー」と言ったり、セックス開始年齢を遅らせたりすることが難しいと思えることもあります。以下のガイドラインが助けになるかもしれません。
簡単だと思ったらボックス欄に(E)、難しいと思ったら(D)と書いてください。
- 友だちとパーティその他のイベントに行く。
- 追い込まれる前にどこまで行きたいのか(性に関する限度)を決めておく。
- 追い込まれる前に飲酒の限度を決めておく。
- ロマンチックな話に深入りするのを避ける。
- セックスしたくないのにセクシーな振る舞いをするような紛らわしい行動を避け、明確に限度を示す。
- 自らのフィーリングに注意する。快適な状況ではないと思ったら帰る。
- 活動に参加する(スポーツ、クラブ、趣味など)。
- セックスを強要するような人のところに出入りするのは避ける。
- 最初から正直にセックスを望んではいないという。
- 信頼していない人との外出は避ける。
- 隔離され助けを求めることのできないような場所には行かない。
- 信頼していない人の車には乗らない。
- よく知らない人からの贈り物や現金は受け取らない。
- 他の人がいないときに誰かの部屋にいかない。
- 性交以外に愛情を示す方法を探す。