「おしおき」よりも支援 UNAIDSキャンペーンWeek2は「キーポピュレーション」

 手のひらにメッセージを書いて伝える国連合同エイズ計画(UNAIDS)の世界エイズデー・キャンペーン《Hands up for #HIVprevention》、Week2(11月21~27日)のテーマはキーポピュレーションです。

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www.unaids.org

 英語では複数になっていますね。そうしたポピュレーションに属する人たちとして『セックスワーカー、注射薬物使用者、トランスジェンダーの人びと、受刑者、ゲイ男性その他の男性とセックスをする男性、およびこの人たちの性パートナー』が上げられています。2015年には、世界全体の新規HIV感染の45%が、こうしたキーポピュレーションのメンバーの感染で占められていたと推計されています。

 『各国を通じ、キーポピュレーションの人たちは他の人たちと比べて、10倍から50倍も高いHIV感染のリスクにさらされている』ということで、『おしおきよ』などと言っている前にやるべきことはどっさりありますよ、厚労省さん。

 UNAIDSの公式サイトに掲載された簡単な説明文は、もちろんピンポイントで日本を対象にしているわけではありません。国連の有力な資金拠出国の政府に対し、UNAIDSが名指しで嫌みをいうことも当然、ないでしょう。

 ただし、予防を強調するという共通の観点に立つことを前提にするとしても、日本の現状にあてはめれば、そうしたメッセージは容易に読み取れるように私には感じられます。以下、日本語仮訳です。

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キーポピュレーションのHIV予防

   2016年11月21日

 2010年以降、成人(15歳以上)の年間新規HIV感染者数は世界全体で推定190万人のまま横ばいの状態が続いている。2015年には、セックスワーカー、注射薬物使用者、トランスジェンダーの人びと、受刑者、ゲイ男性その他の男性とセックスをする男性およびこの人たちの性パートナーを含むキーポピュレーションのメンバーが、新規感染全体の45%を占めていた。

  国または地域によっては、キーポピュレーションの感染率が極めて高いところがある。南部アフリカの数カ国におけるセックスワーカーHIV陽性率は50%から70%だった。ジンバブエでの調査の一つによると、男性受刑者で27%、女性受刑者で39%、セックスワーカーで60%に達しており、このうちの9.6%は2009年から2014年の間に感染していた。ゲイ男性その他の男性とセックスをする男性の間での新規感染は近年、すべての地域で増加している。各国を通じ、キーポピュレーションの人たちは他の人たちと比べて、10倍から50倍も高いHIV感染のリスクにさらされている。

 同性間の関係やセックスワーク、薬物所有と保持に対し、犯罪として扱ったり、保健部門を含めた社会のスティグマが強かったりすることが、キーポピュレーションをHIV予防サービスの利用から遠ざけている。政府による効果的な支援、および各グループの実情にあわせたサービスを提供しうるコミュニティベースで実効性の高いHIV予防、治療プログラムが現状ではあまりにも少なく、規模も小さい。このことが新規感染を減らせない結果を招いている。

 キーポピュレーションの新規HIV感染を2020年までに75%減らすという目標を達成するには、プログラムの大規模な拡大とそれを可能にする社会的、法的環境の創出が必要となっている。

 

 

HIV prevention among key populations

21 November 2016

Since 2010, the annual global number of new HIV infections among adults (15 years and older) has remained static, at an estimated 1.9 million. Members of key populations, including sex workers, people who inject drugs, transgender people, prisoners and gay men and other men who have sex with men, and their sexual partners accounted for 45% of all new HIV infections in 2015.

In some countries and regions, infection rates among key populations are extremely high—HIV prevalence among sex workers varies between 50% and 70% in several countries in southern Africa. One study from Zimbabwe found HIV prevalence rates of 27% for male inmates, 39% for female inmates and 60% for sex workers, with 9.6% of these getting newly infected between 2009-2014. New infections among gay men and other men who have sex with men have been increasing in all regions in recent years. Across countries, key populations are between 10 and 50 times in greater risk of HIV infection compared to other adults. 

Criminalization and stigmatization of same-sex relationships, sex work and drug possession and use, and discrimination, including in the health sector, are preventing key populations from accessing HIV prevention services. Effective government support and community-based and implemented HIV prevention and treatment programmes that provide tailored services for each group are currently too few and too small to result in a significant reduction in new infections.

In order to achieve the target of reducing new HIV infections among key populations by 75% by 2020, a large-scale increase of programmes and the creation of an enabling social and legal environment are needed.