話すことで見える現実 第26回AIDS文化フォーラムin横浜開幕 エイズと社会ウェッブ版403

 さすがに横浜は裏切りません。今年もたっぷり汗をかきました。ベイスターズじゃありませんよ。恒例の猛暑の中、第26AIDS文化フォーラムin横浜が開幕しました。開会式は82日(金)開始。会場は横浜駅西口徒歩5分の「かながわ県民センター」2階大ホールです。簡単に徒歩5分と書いちゃったけれど、大変な5分間であります。これが毎年のことなんだけどね。もう朝から汗だく。

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 それでも、2階大ホールは満員の盛況です(冷房がきいていたので、汗はすぐにひきました)。

今年のテーマは『<話す><リアル>に!!』です。正直に言って、私には意味不明でした。<話す>という行為と<リアル>という状態が、どうして「and」でつながるの?

すいません、まったく誤解していたようです。開会式における組織委員長の挨拶。

「ひとごとだと思っていたことが、話すことでリアルに認識できるようになる・・・」

あっ、そういうことでしたか!と遅ればせながら納得する。

 参考までに付け加えておくと、今年の世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマも話すことを重視しています。

UPDATE! 話そう、HIV/エイズのとなりで~検査・治療・支援》

こちらのテーマの策定には私も大きく関与していたので、自信をもって言えるのですが、策定過程でAIDS文化フォーラムin横浜のテーマをとくに意識したことはありません。

異なるメンバーが異なる場所で決定した二つのテーマが話すという行為に着目し、ほぼ同趣旨のメッセージを含むに至る。これは偶然ではなく、大げさに言えばおそらく、HIV/エイズをめぐる共通の認識と時代背景を反映したものなのでしょうね。

開会式に続くオープニングセッション『話してリアルになったこと』では、この点がより明確になっていきました。登壇したのは、エイズ予防財団の白阪琢磨理事長、日本HIV陽性者ネットワークJaNP+スピーカーで同性婚訴訟の原告でもある佐藤郁夫さん『神様がくれたHIV』の著者の北山祥子さん、そして司会の岩室紳也医師の4人です。

佐藤さんと北山さんはHIV陽性者、白阪さんはHIV診療の第一人者であり北山さんの主治医でもあります。

最初はHIV診療の最前線からエイズ流行の歴史へと話が移行していきましたが、だんだんと岩室さん特有のシナリオなし(たぶん)司会が調子をあげ、佐藤さん、北山さんのHIV陽性者としての体験や、U=Uというメッセージについて、そして佐藤さんが同性婚訴訟の原告に加わった理由などに話題は広がっていきました。佐藤さんは糖尿病など他の疾病も抱え、患者としてはマルチな体験の持ち主ですが、例えば食事制限などについても、「これを食べてはだめ」と言われると、患者は逆に食べたくなる。「あなたの好きなように食べていいですよ、あなたの体ですからね」と言われた方がかえって自制がきくといった話は、医療従事者にとって新鮮だったようです。

出席者のどなたの発言だったかメモを取り忘れてしまいましたが、話すとリアルになるということは、話さないとリアルにならないということでもあります。HIV/エイズがあたかも存在していないかのような社会的雰囲気の中で、話をすることもなくなっていく。あるいは様々な場面で、性的少数者が社会の中に存在していないかのような前提のもとで会話が続く。こうした状態はHIV/エイズをめぐる差別や偏見、あるいは性的少数者に対する制度上の不当な取り扱いなどが存在しないということと同義ではありません。

もう一度、開会式のあいさつに戻ると、組織委員長は「異質なものを排除する気持ち」が社会の中に広がりつつあるのかもしれないということに危惧の念を示しつつ、「マイノリティの問題はマイノリティを生み出す側の問題である」と指摘していました。

オープニングの3人のゲストのお話は、本当にそうだなあということを納得させる内容でもあります。第26AIDS文化フォーラムin横浜は、4日(日)まで開催予定。プログラムは公式サイトでご覧ください。

abf-yokohama.org