混乱の中での同意 強引にエイズ対策と解散総選挙を結びつける視点 エイズと社会ウェブ版296

 先ほどHIV検査に関連して「Informed Consent(インフォームドコンセント)」のことを少し書きました。世界保健機関WHO)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)はHIV検査サービスに関する共同声明の中で、次のように説明しています。

HIV 検査のプロセスとその結果、および結果が出た時に利用できるサービス、そしてどんな状況でも検査を断る権利があることなどについて説明を受け、それを理解したうえで検査を受けることに同意する』

 さらに簡略化すれば「十分な情報を得たうえでの検査同意」といったところでしょうか。情報もないのに判断などできない。これはまあ、HIV検査に限った話ではありません。そういえばConfused Consent(混乱の中での同意)というのもありそうだな、などと考えているうちに時節柄、ついつい・・・。

『民主主義のプロセスとその結果、および結果が出た時に想像される事態、そしてどんな状況でも投票を断る権利があることなどについて説明を受け、それを理解したうえで投票を行うことに同意する』

おじさんのダジャレはどうもタチが悪い。つくづくそう思いはしますが、同時に選挙も基本はインフォームドコンセントに基づく一票の集積であってほしいとも思う。一人一人が投じた一票は同じ重み(制度的にはなかなかうまくいきませんが、少なくとも同一選挙区内では)であり、しかもそれぞれの一票にはインフォームドな判断がなされているという前提がないと民意の数的な把握はできません。

 

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(鎌倉は衆義院議員選挙と鎌倉市長選のW選挙

 

 つまり、選挙にもインフォームドコンセントが必要・・・ということなんだけど、このインフォームド(十分な情報を得たうえでの)という部分が21世紀の高度情報化社会では曲者ですね。

いや、もともとラジオデイズの頃から情報の怪物性は連綿として続き、それを手なずけたり、飼いならしたり、組織的に研究したり、研究したものはついつい使ってみたくなっちゃったりする人たちもまた、常にいました。

したがって、今になって、ことさら驚くにはあたらないことなのかもしれませんが、それにしても!であります、皆さん(なんか演説調になってきちゃったね)。

最近はあふれるような情報がもたらす混乱が激しい。世界中でインフォームドよりもコンフューズドコンセント(どさくさに紛れた同意)ではないかと思えるような現象がしばしば発生します。したがって日本だけではないけれど・・・、どないなっとんのや、責任者出てこい!おっと、人生師匠。だんだん興奮して血圧があがるといけないので、この辺りにしておきましょう。

明日(10日)はいよいよ、エイズソサエティ研究会議の第126回フォーラム『90-90-90ターゲットとHIV郵送検査』が開催されます。奇しくも衆議院解散総選挙の公示日と重なりました。これも何かの縁(ではまったくないと思うけれど)、もともと感染症の流行、とりわけHIV/エイズの流行は、情報やコミュニケーションに深くかかわる現象でもあります。ほら、感染症のことを英語で『Communicable Desease』ということもあるでしょ。

 蛇足ながら、付け加えておくと、HIV/エイズ分野では、インフォームドコンセントを得て検査を実施し、その結果、感染が判明した人の方が、混乱状態のまま検査を受けたケースよりも治療やケアを継続していける割合が高くなる。そうしたこともしばしば指摘されてきました。十分に情報の提供を受け、検査を受ける意味、検査で感染が判明したことの意味を理解したうえで検査を受けることの重要性はこの点からも指摘されています。

 過度な一般化は慎まなければなりませんが、風に吹かれて投票はしたものの、その意味はあまり深く考えず、あとになって苦い思いをするといった事例は世界中、そして日本国内でも、比較的、容易に探せるのではないでしょうか。明日のフォーラムは情報について考える貴重な機会でもあります。情報分野に関心がある方もぜひご参加ください。