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五輪とエイズ対策2 ロンドンからのレポート『性の健康に関する計画とレガシープログラム 総括報告』

 困った話題が次から次へと登場し、2020年東京五輪はいまだに課題がありすぎるほどある印象ですね。こんな時期におずおずと「五輪とエイズ対策」について言及しても、ほとんど相手にしてもらえないかもしれません。たぶん、してもらえないでしょう。でも、じゃあ黙っていればいいやというわけにもいきませんね。

 先行事例として2012年五輪のロンドンではどうだったか。英国保健省、ロンドン市、およびHIV/エイズ対策やセクシャルヘルス分野の民間団体が中心になって委員会を作り、対応に乗り出したのは五輪開催の年前でした。東京で言えばまさに「いまでしょ」という時期ですね。

 その運営にあたったMBARCという組織が2014年1月に『2012年オリンピック・パラリンピック 性の健康に関する計画とレガシープログラム』という報告書をまとめています。全体の要約部分にあたる総括報告の日本語仮訳を紹介しましょう。

 

 MBARCについては、ほとんどバックグラウンドの知識がないので、よく分かりませんが、総括報告の中には『ロンドン性の健康計画が五輪期間中の性の健康計画と遺産プログラムのために設立した。具体的にはコンドームを用意し、大会期間中にロンドンで2つの保健福祉イベントを開くためだ』という説明があります。

 また、公式サイト(英文)によると、組織マネージメントに関するコンサルタント業務および社会調査を行う組織であり、社会から疎外されがちな人たちとの絆を深め、社会的な排外主義と闘うことを目指しているということです。どんな組織なのか詳しくご存じの方がいらしたら教えて下さい。

 以下、総括報告の日本語仮訳です(報告書の英文はこちらでご覧下さい)。

   ◇

2012年オリンピック・パラリンピック

 性の健康に関する計画とレガシープログラム 総括報告

  MBARC 2014年1月

 

はじめに

 ロンドンが2012年オリンピック・パラリンピックの開催都市に決まった2005年夏の大きな興奮は多くの人が覚えているはずだ。その後、数カ月で2012年五輪招致に向けた様々な課題が明らかになっていった。その中で、五輪遺産のための市民参加と保健改革の野心的な計画が五輪成功の大きな要因のひとつとして認識されたことはとりわけ重要だった。

 2008年にはロンドン性の健康計画、およびバロネス・グールドを委員長とする独立のセクシャルヘルス諮問委員会が、五輪遺産として、首都における性の健康サービスに関するロンドン市民のニーズにこたえ、同時に五輪開催に伴う多数の訪問者にも対応するための野心的な計画を示した。

 2012年五輪は、性の健康サービスを将来への遺産とするために公共機関が特別な予算を確保した初のオリンピック・パラリンピック大会である。私たちは計画実現のために3つの戦略目標を策定した。

  • 弾力性  性の健康サービスが首都の住民にも訪問者にも利用できるようにする
  • 変換力  大会を通し、サービスの改革とそのための関係者間の関係改善を促す
  • 社会参加 積極的参加を社会とりわけ若者に呼びかけ、性の健康への認識を高める

 一連の報告書はこれらの点について述べている。どのようにして弾力的なサービス提供を実現し、新たな協力関係で何が変わり、性の健康に人々の関心をひきつける新たな魅力的手法はどんなものだったのか。報告書が将来、ロンドンおよび他都市の巨大イベントを計画する人たちの役に立つことを願っている。

報告書の策定には保健省の助成を受けた。また、バロネス・グールド委員長の尽力、運営委員会の舵取りにあたったマイク・アドラーと委員会メンバー、性の健康サービス提供者ら関係者、実務分野のパートナーとしてのMBARC、および多数のボランティア、プログラムに参加した若者たちに感謝したい。

国保健省(NHS)ロンドン地区保健制度委員長

前ロンドン性の健康対策部長、

          ホン・タン

 

 1 報告1:計画策定の背景と主な教訓

計画策定と実施過程およびその教訓に関する報告書は、2012年オリンピック・パラリンピック大会の遺産プログラムのうち、「性の健康計画」関連5報告書の1つである。

 報告1:プログラム策定の背景と主な教訓

 報告2:サービス提供のための大会オンデマンドの影響力

 報告3:性の健康促進活動

 報告4:セックス・ファクター・アイデア2012

 

 ロンドンは性の健康に対するニーズが英国内で最も高く、西欧全体でも最も高い都市の一つである。年間4億5000万ポンドが避妊や性感染症(STIs)治療、HIVの治療とケア、妊娠中絶のために予算化されている。英国保健省(NHS)ロンドン戦略保健局の予防戦略でも性の健康は優先5分野の中の1つとなっている。

 ロンドン性の健康計画(LSHP)は2005年、戦略保健局が性の健康改善政策の実施主体を立ち上げ、支援していくために策定された。

 2008年にはオリンピック・パラリンピックに向けた性の健康計画策定がLSHP理事会に委嘱された。当時すでに性の健康に取り組む多数のグループがロンドン五輪に向けた対策を計画していたが、それぞれがバラバラに活動している状態だった。

 重複のムダを避けるため、保健省五輪対策局およびロンドン戦略保健局の局長が主導し、公式組織として2012年性の健康計画策定委員会が設置された。

 2009年には、性感染症(STIs)の影響および性の健康関連の文書レビューが行われた。

 HPAのレビューにより、五輪開催都市として性の健康サービスの拡大をはかる必要があるとの結論が示された。さらに、五輪開催準備期間と開催期間中、および開催後をにらみ、STIsとその予防に関する認識を高め、十分な性の健康サービスを提供することの必要性が指摘された。

 2012オリンピック・パラリンピック性の健康計画と遺産プログラムの目標は保健省ロンドン事務所(NHSL)が設定し、保健省が資金を確保することが、NHSLとロンドン性の健康計画(LSHP)の間で合意された。

 マイク・アドラー教授を議長とする2012年オリンピック・パラリンピック性の健康運営委員会が、この計画の実施に関する助言を行い、プイ-リン・リー博士を議長とするロンドン性の健康委員会に報告を行うことになった。

 MBARCは2012年オリンピック・パラリンピック性の健康計画および遺産プログラムの実施主体としてロンドン性の健康計画(LSHP)のもとに設立された。2012年オリンピック・パラリンピック性の健康計画の進捗状況に関しては、高レベルのモニタリング報告がMBARCから四半期ごとにLSHP とNHSLに提出された。

 2012年オリンピック・パラリンピック性の健康計画および遺産プログラムの主要目的は、地元の人たちへの影響を防ぎ、五輪開催に伴い拡大するニーズに対応できるようサービスの充実をはかり、首都の性の健康計画を2012年五輪が生み出す前向きな遺産として伝えるというLSHPの使命に寄与することである。

 

  • テーマと目的

 2012年オリンピック・パラリンピック性の健康計画と遺産プログラムは課題中心のアプローチを採用し、多様な分野による活動の流れを明確に示すことを目指している。

計画のテーマは次の通りである:

  • 弾力性  費用対効果の高い方法により保健省からの資金を最小限に抑えつつ、大会期間中の性の健康サービスを維持する。
  • 変換力  関係者間の協力によるサービスの改善をはかり、良質かつ革新的、生産的で予防効果の高い対策を目指す(QIPP)原則のもとで、永続的な成果を達成する
  • 社会参加 とりわけ若者の参加を最大限に実現し、性の健康への認識を高める

 

2 報告2 :オンデマンド・サービス提供に対する大会の影響

 

MBARCは2012年2月、オリンピック・パラリンピック開催によりコミュニティの性と健康サービス利用者の人数や構成にどのような変化が起きるかを把握するため、保健省ロンドン事務所の代理としてロンドン性の健康計画が設立した。活動はゲリー・ブルック博士を長とするロンドン北西部公的病院トラストとの協力で進められた。

ロンドン全域のコミュニティにおける性の健康保健サービス担当機関のスタッフには、ロンドン性の健康計画が参加を要請し、オンライン調査のためのクラスタネットワークが作られた。

再三にわたり調査実施を要請したが、調査を開始したのは11人に過ぎず、完了したのはわずか5人だった。あまりにも反応が低く、データから何の意味も引き出せなかった。

 回答の範囲では、大会期間中にコミュニティの性の健康サービス機関を訪れる人の変化はほとんどないか、まったくないだろうと予測していることが示唆された。

 学者およびNHSL(保健省ロンドン事務所)による第二研究班は、性の健康サービスを提供する機関に来訪者質問票を送って、より包括的な調査を実施し、ロンドンとウェイマスのクリニックで、2011年と12年の同じ月の来訪者数とタイプを比較した。研究班によると、五輪期間中、ほとんどの性の健康サービスは需要が減っていた。とりわけGUM(尿生殖器科)サービスではそれが顕著だった。五輪終了時および終了後には、避妊サービス、とりわけ緊急避妊サービスが増加している。五輪後には性の健康関連のアドバイス需要が増加した。セックスワーカーの客は減少し、性的暴力被害に関するサービスの需要には分析可能なほどの変化はなかった。一時的に来訪者が微増した少数のクリニックを除けば、性の健康サービスに対する五輪関係の来訪者による影響は小さかった。この情報は、グラスゴーの2014年コモンウェルス大会など準備中の他の大規模イベントの助けになるだろう。

 

3 報告3:性の健康促進活動

 MBARCはロンドン性の健康計画が五輪期間中の性の健康計画と遺産プログラムのために設立した。具体的にはコンドームを用意し、大会期間中にロンドンで2つの保健福祉イベントを開くためだ。

 MBARCは汎ロンドンHIV予防計画とともに活動し、既存のコンドーム配布の枠組みとサイトを活用して配布をさらに拡大し、コンドーム使用の促進をはかるための寄付を増やすよう交渉した。これらのコンドームには、供給者の協力を示せるようブランドを入れ、潤滑剤とともにロンドン中の会場で配った。

 NHSロンドンは、オリンピック・ライブ中継会場におけるコンドーム配布資金を追加提供した。

 MBARCは期間中、2つの保健福祉イベントを開催した。いずれもレズビアン、ゲイ、バイセクシャルトランスジェンダーのコミュニティを対象にし、汎ロンドンHIV予防計画の参加組織の協力を得ている。

 加えて、MBARCは運営委員会のメンバーとしてテレンス・ヒギンズ・トラスト(THT)とともに、既存の保健促進キャンペーン(サマー・ラヴィン)の五輪期間中の著作権使用交渉を行った。コンドーム使用に焦点を当てた一般向けキャンペーンで、イングランドの2012五輪全会場で実施された。

 

4 報告4:セックス・ファクター・アイデア2012

4.1  創設

 MBARCはロンドン性の健康計画により、五輪期間中の性の健康に関するサービスの提供とロンドン五輪遺産プログラムを支援するために設立された。ロンドン全域で若者を巻き込む独創的コンペ「セックス・ファクター」も含まれ、性の健康促進のための活動や素材を競い合った。主要な活動目的は、2012年大会を契機に首都の性の健康に関する遺産を生み出そうというロンドン性の健康計画の目標実現に寄与することだった。

 プログラムの目的の一つは、この遺産活動への若者の参加を広げることだ。このため、セックス・ファクター・アイデア2012競技会が2011年春、MBARCによって創設されている。セックス・ファクターはオンライン、およびロンドンの専門学校の地域サービス提供者が加わった一連の性の健康ショーケース・イベントにより推進された。若者たちはYouTubeチャンネルを通じ、オンラインで作品をエントリーすることができ、若者たちの投票で、プロジェクトのショートリストが作られた。

 

4.2  決勝戦と受賞者

 決勝戦はロンドンのシティホールで行われ、ラグビーのワールドカップ優勝メンバーでスタンダップ財団の創設者でもあるベン・コーエンがホスト役を務めた。製薬会社の幹部や製薬およびその他の分野の関係者らによるチーム「ドラゴンズ」が審査員となった。それぞれのドラゴンは所属企業が受賞者のプロジェクト実現を支援することを約束した。各チームがドラゴンズ委員会にアイデアを示し、ドラゴンズは以下の受賞者を決定した。

 (日本語仮訳では受賞者名は略。英文をご覧下さい)

 

4.3 決勝戦後の活動

 2012年4月にセックス・ファクター・アイデア2012ブログが開設され、スポンサー、支援者、性の健康スタッフ、友人、家族、その他一般の人たちも広く受賞アイデアの実施過程を見ることができるようにした。2012年6月にブルガリアで開かれた人権オリンピックでもブログで受賞者の活動が公開された。

 http://sexfactorideas.wordpress.com/

 金メダル賞の一部として、金メダル受賞者は、MBARCスタッフのガレス、ジェニファー、および2人の性の健康親善大使とともにブルガリアの人権オリンピック2012に参加した。HIVスポーツのチャリティ活動のおかげである。会議には約40人の若者がヨーロッパエイドの一員として参加していた。ガレス、ジェニファーは関係の中での「権利」について若者たちにワークショップで話をした。

 

4.4 アイデアの成果物(受賞作紹介)

 (日本語仮訳では略。英文をご覧下さい)