東洋一のサナトリウムをしのぶ 茅ヶ崎市「南湖院記念 太陽の郷庭園」訪問記

 今年のこどもの日は立夏でもありました。旧暦と新暦とではずれがあるので、立春は寒さの底にふるえ、立秋は熱帯夜で汗だくといった具合に季節と暦はミスマッチの印象が強いのですが、本日はどんぴしゃりといいますか、しっかりと夏が立ち上がる1日でしたねえ。きっとおそろしい人出になるに違いないと予想して鎌倉を脱出。はるばる来たぜ茅ヶ崎ぃ~市の「南湖院記念 太陽の郷庭園」です。

 

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 この公園にはかつて結核療養施設「南湖院」がありました。1899(明治32)年設立。東洋一のサナトリウムと言われた施設です。写真の建物はその中核施設だった旧第一病舎。

 

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 広大な敷地の多くは現在、公立の中学、高校や優良老人ホームとして活用されていますが、旧第一病舎の建物とその敷地が所有者から茅ヶ崎市に寄付されたことから、周辺敷地を含め市が公園として保存活用することになりました。一般公開は今年4月からだったので、始まったばかりですね。無料です。建物の内部はまだ整備中ということで、中には入れません。ちょっと残念。そんな事情もあって認知度がまだ低いせいか、私たち老夫婦が訪れた時にはほかに誰もいませんでした。あれ、入ってもいいのかなあ・・・とおそるおそる。貸し切り庭園みたいで申し訳ないですね。遠く波の音が聞こえるほど静かであり、かつ、のどかでした。

 

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 庭から西の方角を望むと富士山が見えます。まあ、富士山は鎌倉からでも見えるところがたくさんありますが、セッティングが異なればまた、趣も変わってきます。ちょうどお昼時で光が強すぎたこともあり、くっきりというわけにいかなかったのは少々、残念でした。ただし、写真をよ~くご覧いただけば、雪を抱いた頂上付近がうっすらと浮かび上がってくるはずです。この調子なら、夕方になればもっとはっきり見えたでしょうね、きっと。皆さんも機会があったらどうぞ。

【追加】南湖院についての受け売り
 ネットで調べたら、建物が茅ヶ崎市に寄付されたことを報じる昨年12月23日の毎日新聞地方版の記事には次のように書かれていました。
 http://mainichi.jp/articles/20151223/ddl/k14/040/274000c
 『旧南湖院は1899年、クリスチャンの医師、故高田畊安(こうあん)氏が設立し、最初の入院患者3人の中には勝海舟夫人もいた。その後、作家の国木田独歩坪田譲治中里介山らも療養生活を送った。最盛期とされる1936年には158室あり、1945年に旧日本海軍に接収され、解散されるまでに約1万5000人が入院、約7万人が通院したとされる』

 さすが・・・などと書くとお叱りを受けそうですが、かつて日本の国民にとって結核がいかに大変な病だったかということを再認識させる記述ですね。その当時と比べれば、現在のわが国における結核の疾病負荷は大きく軽減されています。しかし、感染がなくなったわけではありません。治療が進歩したいまも、結核エイズマラリアと並ぶ世界の三大感染症であり、わが国でも依然、きちんと対応しなければならない感染症の一つであるということは再確認しておくべきでしょう。結核療養施設時代の資料が整備され、記念館のような施設になると、建物自体が貴重な歴史の証言者としての価値をさらに高めることになりそうです。茅ヶ崎市の皆さん、よろしくお願いします。