三大感染症対策 保健外交の財産生かそう

 本日(21日)付 産経新聞の主張(社説)です。

 

三大感染症対策 保健外交の財産生かそう

 http://www.sankei.com/column/news/151221/clm1512210002-n1.html

 世界の三大感染症といわれるエイズ結核マラリアの流行制圧を目指すグローバルファンド(世界エイズ結核マラリア対策基金)の第5次増資準備会合が東京で開かれた。
 2000年の九州沖縄サミットで、途上国の感染症対策に新たな追加的資金が必要なことを議長国の日本が各国に呼びかけた。それが契機となり、02年に発足した革新的な基金である。
 従来の保健予算とは別に巨額の資金が投じられるようになり、三大感染症の流行の拡大に歯止めをかける成果をあげてきた。予防対策と治療法の開発、普及によって、すでに1700万人の生命が救われているという。
 きっかけを作った日本の貢献も高く評価されている。
 ただし、昨年末までの資金拠出額で見ると、日本は米国のほぼ5分の1、フランス、英国、ドイツよりも少なく5位に甘んじている。生みの親にふさわしい資金貢献をしてきたとはいえない。
 増資準備会合は、17年から19年まで3年間のファンドに対する拠出額を決める最初の会議で、事務局からは3年間の必要額として130億ドル(約1兆6千億円)という金額が示された。
 三大感染症対策全体では970億ドルが必要だが、途上国自身の国内予算の増額や2国間の援助資金で負担できる分を除く不足額の80%に相当する。
 拡大に歯止めをかけることができた三大感染症の流行を、今度は縮小に転じさせなければならない。そのために最低限必要な金額でもあるという。
 各国はこの目標額を念頭にほぼ1年がかりでそれぞれの分担額を検討し、来年後半の増資会合で具体的拠出額を誓約する。
 「人間の安全保障」を掲げる日本がその長いプロセスの出発点となる会議を招致したこと自体、外交戦略上の意味は大きい。
 安倍晋三首相はつい先日、英国の医学誌ランセットに「世界が平和でより健康であるために」と題する寄稿を行った。保健は日本の強みとなる分野でもある。
 来年は伊勢志摩サミットが開催されることもあり、日本に保健分野のリーダーシップを再び期待する声は国際的に高まっている。九州沖縄サミット以来の「財産」を生かして外交の発信力を高め、国際貢献の実をあげてほしい。