グローバルファンド増資準備会合 今年12月17日に東京で開催 エイズと社会ウエブ版176

 

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の増資準備会合が日本政府主催で今年12月17日に東京で開かれることになりました。安倍首相が今月16日、国連大学で開かれた国連創設70周年記念シンポジウムのスピーチで発表しています。グローバルファンド日本委員会の公式サイトに概要が紹介されているので、ご関心がある方はぜひご覧下さい。

 http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2015-03-16_replenishment

《12月の増資準備会合には、世界各国からドナー国政府代表、実施国(支援を受け入れる国)の政府代表、NGO、企業、民間財団、国際機関などが一堂に会し、感染症対策の資金ニーズや調達の目標、エイズ結核マラリアの流行の終息に向けての戦略などを議論する予定です。2016年の第5次増資に向けて重要な一里塚となることが期待されます》

 

 えっ、増資準備会合ってなに?と思われる方もいるでしょうね。外野席からの付け焼き刃の知識で恐縮ですが、少し補足しておきましょう。

 

 グローバルファンドは2002年1月に途上国がエイズ結核マラリアの三大感染症と闘うことができるよう世界が協力して新たな追加的資金を確保するために創設された組織です。三大感染症分野に焦点をあてた革新的な資金枠組みといえるでしょう。

 

 必要な資金は主に各国政府からの拠出でまかなわれています。また、民間からの資金拠出も創設以来、少しずつ比重を高めています。

 

 しかし、こうした資金を持続的に確保していくことは、そう簡単なことではありません。初心忘るべからずということで、創設後も3年に1度ずつ各国が集まって増資会合が開かれています。10年も20年も先まで資金の約束をしても世の中、どうなっているか分からないし、「いずれ」を駆使して大風呂敷を広げてみても、約束だけで「いずれ」は結局、永遠に来ませんでしたみたいな結果になっても困ります。

 

 そこで3年に1度ずつ、次の3年間の拠出額の約束をしっかり確認しておきましょうというのが増資会合です。この会合はグローバルファンドが開催するのではなく、いずれかの拠出国が主催し、各国に参加を呼びかけます。開催国としては当然、「うちもこれぐらい出すんだから、どうですか、おたくももう少しがんばってみたら」みたいな話ができなければなりません。増資会合を主催するということは、国としてそれなりに腹をくくって臨むということでもあります。前回の第4次増資会合は2013年12月3日に米国の首都ワシントンで開かれ、2014~16の3年間の資金拠出約束が出そろいました。

 

 次の第5次増資会合は、2017~19年の3年間に向けて、2016年に開催される予定です。ただし、具体的な日程や開催国はまだ決まっていません。安倍首相が発表した増資準備会合はその前年である2015年に文字通り翌年の準備のために開く会合です。各国がしっかり次の3年間の貢献策を打ち出せるようにするには1年くらいの検討期間は必要でしょうから、準備とはいえ、極めて重要です。

 

 当ブログでは2013年10月21日付で《2016年の第5回増資会合は日本で開くことをいまのうちから考えておくというのはどうでしょうか。安倍政権は国際保健を日本復権の重要分野に位置づけていることだし、2020年東京オリンピックパラリンピックの4年前というのは国民の目が大きく世界に向いていく時期でもあるでしょうから、開き時という感じがします》と書いたことがあります。

 

《緊急シンポ傍聴記補足(感想編) エイズと社会ウエブ版127》

http://miyatak.hatenablog.com/entry/2013/10/21/235600

 

《「世界基金の生みの親」という評価は実は、ラッキーパンチがあたったというような面もありますが、成果は成果、日本にとっては貴重な外交的財産です。その財産を継続的に実のあるものにしていくことは、わが国が国際社会の名誉ある地位を維持していくうえでも大切です。そのくらいの政治的構想力は期待したいところですね》

 

 無責任な感想ではありますが、HIV/エイズ分野では1994年第10回国際エイズ会議(横浜)、2005年第7回アジア太平洋地域エイズ国際会議(神戸)の後、国内では大きな国際的会議招致の動きすらなく、内向き傾向が気になっていた時期でもあります。ただし、私のブログはあくまで言いっぱなしの個人的感想に過ぎません。そうではなく、何とか準備会合開催を決定するところまでご努力を続けてきた関係者の皆さんには、改めて感謝の意を表したいですね。それと同時に、この機会を国内のHIV/エイズ対策にも生かしていけるような動きにも期待したい。増資準備会合の半月ほど前の11月30、12月1日には第29回日本エイズ学会学術集会・総会が東京で開かれます。できれば、このあたりでどうでしょうか。相乗効果、期待できると思いますよ。