4354 安保理とエボラ

 

 スコットランド住民投票と同じ日だったせいか、エボラに関する安保理の緊急会合はあまり、日本国内では注目されませんでしたね。本日の産経新聞主張では一応、取り上げました。

【主張】安保理とエボラ 各国の支援さらに強化を
 
http://www.iza.ne.jp/kiji/column/news/140922/clm14092205020002-n1.html

 西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱に対応するため、国連安全保障理事会が緊急会合を開いた。拡大が止まらないエボラの流行を「国際の平和と安全」を脅かす重大な危機と認識し、各国に対応を呼びかける決議を全会一致で採択した。

 最も深刻なギニア、リベリアシエラレオネの3カ国では政治、経済、治安も重大な打撃を受け、保健対策だけでは解決不能だ。感染症の流行は対応を誤れば一気に地域が不安定化し、影響は地球規模に拡大する。遠くの出来事では決してない。

 国際社会が安全保障課題として取り組むのは当然だろう。世界保健機関(WHO)が8月末に作成した対策ロードマップは、制圧に6~9カ月かかり、感染者は2万人を超えるとしていたが、状況はさらに深刻の度を増している。

 安保理が公衆衛生に関する決議を採択するのは、2000年と11年のエイズに関する決議に次いで3例目となる。エイズの流行では、2000年の九州沖縄サミットにおけるわが国の提案が実を結ぶ形で、02年に世界エイズ結核マラリア対策基金(世界基金)が創設され、世界の感染症対策に大きな貢献を果たしてきた。

 その世界基金も今回はエイズ対策などの資金を、エボラ対策に使えるよう柔軟に対応する方針を示した。そうしなければ他の疾病の対策も成り立たないからだ。

 今回の流行はもともと病院が少なく、保健基盤の弱い国々で拡大した。しかも、その基盤の弱さのために本来なら防げるはずの医療の現場でも感染が広がり、医療従事者が倒れたり感染を恐れ出勤しなかったりしている。エボラの流行で医療基盤が一段と脆弱(ぜいじゃく)化し、マラリアなど他の疾病の治療さえ困難になっているという。

 国連潘基文事務総長は安保理緊急会合で「無策の罪は重い」と述べ、国連エボラ緊急対処ミッション(UNMEER)の創設を明らかにした。安保理決議により、緊急物資の提供や医療人材の派遣など各国の支援が一段と強化されることを期待したい。

 だが、こうした対策が成果をあげるのには少し時間がかかり、その間も多くの人が亡くなることになる。現状は極めて厳しい。感染症対策は日本にとって強みを発揮できる分野でもあるだけに、ここは一層の貢献を果たす姿勢を積極的に示していく必要がある。