4345 韓国でもHIVの新規感染報告が増加 エイズと社会ウエブ版155

 

 韓国の通信社聯合ニュースの日本語版サイトに24日、昨年1年間の韓国国内のHIV新規感染者報告数が報じられています。

 

 昨年のHIV新規感染者1114人 前年比16%

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140824-00000008-yonh-kr

 

 《【ソウル聯合ニュース】韓国疾病管理本部が24日までに国会保健福祉委員会に提出した資料によると、韓国で昨年新たにエイズウイルス(HIV)感染が報告された患者数は1114人だった。新規患者報告数は2006年から増減を繰り返してきたが、昨年は前年比16%の大幅増となった》

 

 昨年は日本国内のHIV新規感染者・エイズ患者報告数も1590人と過去最高でした。どちらも報告ベースの数字ですが、その前の数年間は横ばい傾向だったこととともに、同じような推移を示している印象を受けます。韓国の人口は日本の半分以下ですから、人口比で考えれば、日本より流行が広がっていると考えるべきなのかもしれません。

 

 ただし、現時点ではどちらの流行がより大きいかとか深刻なのかといった議論よりもむしろ、日韓両国に加え、中国、台湾、そして情報がほとんど入らない北朝鮮も含め、東アジア地域全体で流行の拡大傾向が顕わになりはじめているのではないかということの方が個人的には気になります。東アジアは世界の中でもHIV/エイズの流行の波が最も遅く到達した地域であり、これまで何とか流行の拡大を抑えてきたとしてもそれは実は時間差に過ぎなかったということになる恐れもなしとはしないからです。

 

 ただし、この時間差は、治療の進歩をもたらし、さらに各国に有効な対策を組み立てるための情報収集と準備のための時間を提供することにもなりました。もちろん、その貴重な時間は、無関心であっさり空費してしまうこともできます。いまが正念場でしょう。

 

 韓国では20118月、第10回アジア太平洋地域国際エイズ会議が釜山で開かれています。私はその前年の12月にソウルで開かれた日韓のNGO関係者の打ち合わせの会合と本番の会議の両方に出席し、韓国のエイズ対策関係者からも多少、お話をうかがう機会がありました。日本と韓国ではもちろん、さまざまな条件の違いがありますが、エイズ関連分野のNGOが財政面などで厳しい環境にありながらも充実した活動を続け、それが日韓両国でエイズの流行を「低流行期」と呼ばれる状態に何とか抑えてきた大きな要因になっていることは理解できました。また、MSMセックスワーカー、薬物使用者など日本のエイズ予防指針で「個別施策層」とされている人たちへの支援の必要性も繰り返し指摘されているのですが、それでも社会的に広く理解を得ることはなかなか難しい。そうした状態は、課題としてある程度、共通しているのではないかという印象も受けました。

 

 この点は実は、流行の拡大が比較的、抑えられている状態の中で効果の高いHIV/エイズ対策を持続的に進めようとする際には、かなり大きな障壁となります。いままで、そんなに流行が広がってこなかったのに、なんでまた・・・といった結果オーライ的な成功体験が、その成功を何とかかんとか、やっとの思いで支えてきた人たちを一段と窮地に追い込んでしまうというジレンマでしょうか。日本で言えば、首都圏のMSMの感染拡大を抑えるうえでこの10年、大きな貢献を果たしてきた新宿二丁目aktaが存続のために懸命の署名活動を続けなければならないような状態です。

 http://www.akta.jp/advocacy/index.html?from=aktaweb

 

 韓国の最近の状況はよく知らないので、無責任な感想になり恐縮ですが、新規感染報告の増加といったニュースから推察すると、コミュニティレベルでは韓国のエイズ対策関係者もまた、同様の苦境に直面しているのではないかと思います。