GNP+の事務局長にリコ・グスタフ氏 スプレイグ前事務局長はいま・・・ エイズと社会ウェブ版365

 

世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)の新事務局長がインドネシア出身のリコ・グスタフさんに決まりました。19日付けでGNP+公式サイトに発表文が掲載されています。 

www.gnpplus.net

 

 前任のローレル・スプレイグさんが昨年5月に退任し、その後、空席となっていたので、ようやく決まりましたかという印象ですね。就任は2月上旬のようです。

お手数ですが、詳しくはGNP+のサイトで発表文(英文)をお読みいただくとして、ここではごく一部だけ、日本語仮訳を紹介しておきましょう。

 

『グスタフ氏は世界のエイズ対策と保健、開発分野の激動期にGNP+の舵取りを担うことになります。世界中のHIV陽性者、キーポピュレーションがネットワークの持続と強化に関し、様々な政治上、財政上の試練に直面している時期です。シビルソサエティへの支援、とりわけHIV陽性者が主導するHIV陽性者のためのアドボカシーやネットワークへの支援は低下しています。中所得国からの国際援助の引き上げ、社会から排除されがちな人たちに対する人権侵害、対策拡大を目指そうとしない各国政府の姿勢により、HIV陽性者は様々なリスクに直面し、過去10年の成果さえもが水泡に帰そうとしているのです』

Mr. Gustav will be taking the helm of GNP+ through a turbulent yet transformational time in the global AIDS, health and development sectors with multifaceted political and financial challenges affecting the strength and sustainability of networks of people living with HIV and key populations around the world. Support for civil society, particularly for advocacy and for networks led by and for people living with HIV, is waning. Donor transition from middle-income countries, continuing human rights barriers for the most marginalised, and the lack of political willingness to scale up national responses has left far too many people living with HIV exposed to multiple risks and has jeopardized the hard fought gains made over the last decade. 

 

 かなり厳しい認識ですが、最近は日本にいても『エイズはもういいだろう』といった社会的、政策的な雰囲気をひしひしと感じることがあるので、その通りだなあと改めて思います。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)は111日付で、GNP+の新事務局長任命を歓迎するプレス声明を発表しました。定番の内容ですが、当ブログ末尾に日本語仮訳を紹介しておきますので、「英文を読むのはちょっと・・・」という方はそちらをご覧ください。www.unaids.org

 

 グスタフさんはUNAIDSの元職員でもあり、在職当時は『インドネシア事務所、およびタイのバンコクにあるUNAIDSアジア太平洋地域支援チームで、コミュニティのネットワークと域内関係者の連携強化』の任にあったようです。

 そういえばスプレイグ前事務局長はどこに行ったのかなあと思いネットで検索したら、何とUNAIDSのスタッフになっていました。Community MobilizationSpecial Adviserという役職のようです。GNP+の事務局長時代から論客として知られ、当ブログでも『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか』という演説を紹介したことがあります。


miyatak.hatenablog.com

 

 UNAIDSはいま大変な時期にあります。ミシェル・シディベ事務局長は任期より半年ほど早く、今年6月に退任することを発表しています。シディベ体制は死に体といっていいでしょう。しかし、UNAIDSが死に体になってしまうようでは困ります。

 こうした危機の中でこそ、HIV陽性者の声を政策に反映させること、そしてHIV/エイズの流行に対応する努力を後退させないことがますます重要になります。UNAIDS解体などという話も飛び出しかねない国連諸機関の政治的思惑もからみ、事態は深刻ではないでしょうか。コミュニティの声が反映されるようスプレイグさんにも存在感を発揮してほしいですね。

 もう一度、GNP+新事務局長を歓迎するUNAIDSのプレス声明に戻りましょう。シディベ事務局長はリコ・グスタフ氏について『HIV陽性者とHIVに影響を受けている人にとって素晴らしいアドボケートであり、社会から排除されがちなすべての集団の声を伝えてきました』と述べています。定番の歓迎コメントとはいえ、時期が時期だけにシディベさんもそういうことを言っている場合ではないだろうとついつい思ってしまいます。中ぶらりんの体制が6月まで続くのは世界のエイズ対策にとっても少々つらいのではないでしょうか。

 

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GNP+のリコ・グスタフ事務局長任命を歓迎 UNAIDSプレス声明

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2019/january/20190111_EXD_GNPplus

 

ジュネーブ2019.1.11 UNAIDSは世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)がリコ・グスタフ氏を新事務局長に任命したことを心から歓迎します。HIVに最も大きく影響を受けている人びとの声が対策に確実に反映されるよう、GNP+30年以上活動してきました。極めて大切なパートナーであり、その活動はエイズ終結の成否を決定づけるものです。

 「リコ・グスタフはHIV陽性者とHIVに影響を受けている人にとって素晴らしいアドボケートであり、社会から排除されがちなすべての集団の声を伝えてきました」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はいう。「信頼のあつい活動家であり、練達の指導者であり、思いやり深い人でもあります」

 グスタフ氏は保健、開発分野のアクティビストとして長く活動し、コミュニティを代表してHIV対策への意見を述べてきました。UNAIDSの元スタッフでもあり、UNAIDSインドネシア事務所、およびタイのバンコクにあるUNAIDSアジア太平洋地域支援チームで、コミュニティのネットワークと域内関係者の連携強化のために働いてきました。

 UNAIDSHIV陽性者、HIVに影響を受けている人たちがHIV予防、治療、ケア、支援のサービスを平等に受けられるようグスタフ氏およびGNP+と協力して取り組む所存であります。

 

 

Press statement

UNAIDS welcomes appointment of Rico Gustav as Executive Director of GNP+

GENEVA, 11 January 2019—UNAIDS warmly welcomes the appointment of Rico Gustav as the Executive Director of the Global Network of People Living with HIV (GNP+). GNP+ has been working for more than 30 years to ensure that the people most affected by HIV are heard and listened to as an integral part of the response to HIV. GNP+ is a much-valued partner of UNAIDS and its work is critical to ending AIDS.  

Rico Gustav is an excellent advocate for people living with and affected by HIV and a strong voice for all populations that have been marginalized,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “He is a trusted activist, a skilled leader and a compassionate human being.”

Mr Gustav is a longstanding health and development activist and a leading voice in the community response to HIV. He is also a former staff member of UNAIDS, having worked for the UNAIDS Country Office in Indonesia and for the UNAIDS Regional Support Team for Asia and the Pacific in Bangkok, Thailand, building and strengthening links between community networks and regional stakeholders.

UNAIDS looks forward to working closely with Mr Gustav and GNP+ in advocating for, and supporting fair and equal access to, HIV prevention, treatment, care and support services for people living with and affected by HIV.