国際開発目標 新たな15年の戦略広げよ

 本日の産経新聞に掲載された主張(社説)です。産経、論陣はってるなみたいなことはおそらく、誰も言わないだろうし、言われたいとも思わない(注:主語なし)。

 

国際開発目標 新たな15年の戦略広げよ

 http://www.sankei.com/column/news/151230/clm1512300002-n1.html

 

 21世紀最初の15年間に国際社会が共通目標としてきたミレニアム開発目標(MDGs)が12月末で終わり、年始からは、新たに持続可能な開発目標(SDGs)がスタートする。

 貧困撲滅を掲げたMDGsは、保健分野などで一定の成果をあげたが、それでも世界は難民や大規模テロ、地球温暖化など解決困難な課題に取り巻かれている。

 新たな目標を看板の掛け替えに終わらせず、文字通り持続可能な仕組みを作る。これは、途上国にも先進国にも、共通に課された責務である。

 SDGsは今年9月、国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」に盛り込まれた17項目の目標だ。17項目の下にはさらに、30年までに達成すべき169のターゲットが設定されている。

 MDGsが8項目だったのに対し、SDGsはあれもこれもと課題を盛り込み、総花的になったという批判がある。そうなった理由の一つは、MDGsの成果が予想以上に大きかったことだろう。

 保健分野を中心にMDGsの各目標も最初は、野心的すぎて「できるわけがない」といわれた。だが、世界の首脳が15年の期限を切って行った約束には求心力があり、予想に反して実現した目標も少なくない。

 また地球規模の課題に分野横断的に取り組むことで、課題間の相乗効果も確認できた。たとえば保健分野の成果で感染症の流行が縮小すれば、子供や働き盛りの年齢の死亡率が下がり、地域が安定化するので難民やテロが発生する土壌が消えていく。現実の世界には逆の回転も多く、先進国も難民やテロの発生の影響を受け、社会の不安定化に苦しんでいる。

 一方で環境や水陸の資源開発、エネルギーなどの分野で新たな課題が増え、途上国だけでなく、先進国が抱える問題にも共通で取り組める基盤が広がった。

 このため、国や国際機関だけでなく、民間企業の間でも、SDGsに注目し、社会的な開発課題の解決をビジネスチャンスの拡大につなげようと新たな投資を検討する動きが生まれている。

 来年の伊勢志摩サミットの議長国である日本政府には、こうした民間の意欲にも注目しつつ、新たな15年の国際開発戦略を主導する役割を期待したい。