遅くなりましたが、先週土曜日のSANKEI EXPRESS紙に掲載された連載【湘南の風 古都の波】です。今回は光明寺の夕暮れと江ノ電土木遺産スタンプラリーです。渡辺照明記者の写真は下記サイトでご覧下さい。
http://www.sankeibiz.jp/express/news/151021/exg1510211500003-n1.htm
【湘南の風 古都の波】大屋根包む孤高の秋
夏が過ぎ、秋になっても「どうしてこんなに」と思うほどたくさんの人が鎌倉にやってくる。
そして、日が暮れるとまた「どうしてこんなに」と思うほど速く、人の波は引いていく。秋の日はつるべ落とし。駅前を少し離れると市街地は隠里のような静けさを取り戻す。
活気と沈静との鮮やかな対照。地元の人たちが「この雰囲気がね、いいんですよ」といいながら上着を1枚余分にはおり、夕暮れの街に繰り出す。
その散歩の楽しみを奪うようで恐縮だが、観光で鎌倉を訪れた人も少しだけ帰る時間を遅らせ、夜になる直前の奇跡のような時間を味わってほしい。
できれば夕食も鎌倉で。たぶん、お昼のようには込んでいない(と思う)。
ただし、最近は口コミ的ネット情報のせいか、地元の人しか知らないはずの小さな居酒屋にまで、外国からの観光客が次々に訪れることも時折はある。先の読めない世の中ですね。
9月の5連休も鎌倉は好天に恵まれ、たくさんの人でにぎわった。それでも日が暮れると…。
材木座の海に近接した浄土宗大本山光明寺では、本堂の大屋根にサギが1羽。群れをなすトンビやカラスとは異なり、この鳥は1羽でいることが多い。じっとしている姿は孤高の趣だが時折、見せる動きは一転してユーモラスになる。
光明寺では10月12日から15日までお十夜法要が営まれ、露店が並ぶ境内は夜もお参りの人でにぎわった。その境内からの帰り道、吹き抜ける夜風に秋の深まりを感じる。これもまた、定番ではあるが、大切にしたい季節の感覚だ。
「素晴らしい」と江ノ電利用者としては思う。自分が選ばれたわけでもないのにどこか晴れがましい。ただし、土木学会の皆さんには大変、申し訳ないが、土木遺産の一般的知名度はあまり高くない。平たく言えば地味と言いますか…。
江ノ電の女性社員の間にも似たような思いがあったのか、社内ではこんな会話が交わされたという。
「せっかく土木遺産に認定してもらったのに、あまり知られていないよね」
「何とかお客さんに知ってもらえる機会はないものかねえ~」
8月22日に始まり、11月1日まで続けられている土木遺産認定記念の「歴史散歩スタンプラリー」も、そんな会話がきっかけになって企画された。発案ならびに推進役は「どぼじょ(土木女子の略称)」と呼ばれる3人の女性社員。普段の仕事は土木分野と直接、関係があるわけではなく、土木知識に特別くわしいわけでもない。「くわしくなくても楽しめる。そんな目線で企画しました」と、どぼじょの一人はいう。
江ノ電の1日乗車券「のりおりくん」を購入すると手書き風の路線地図や江ノ電土木遺産の説明、4問のクイズなどが入ったスタンプの台紙がもらえる。
クイズは沿線4カ所の認定銘板を読めば誰でも答えられる問題だが、銘板の説明を読まないと難しいかもしれないという。スタンプは江ノ島駅で2カ所分、極楽寺駅で2カ所分を押すことができる。4問のクイズに正解し、4カ所のスタンプを押せば、藤沢駅か鎌倉駅で記念品がもらえる。
つまり、1日乗車券で乗ったり降りたりして、江ノ電の魅力を味わってもらおうという狙いだ。担当者は「地味な企画ですから」と話す。確かにスタンプ台紙が駅頭に平置きされているわけでもなく、あまり目立たない。それでも、休日と平日の波が小さく、コンスタントに参加者がいるのが特徴だという。