「世界が平和でより健康であるために」 安倍首相がランセット誌に寄稿 エイズと社会ウェブ版209

 英医学誌ランセットに『Japan's vision for a peaceful and healthier world(世界が平和でより健康であるために)』と題する安倍晋三首相の寄稿が掲載されました。厚生労働省の公式サイトには12月11日付で《ランセット誌への安倍総理寄稿 「世界が平和でより健康であるために」について》という報道発表文が掲載されています。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106535.html

 その発表文によると、寄稿の要旨は以下の通りです(和文PDFと英文PDFもリンクで読むことができるようになっているので、関心がお有りの方はそちらもお読みください)。

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 (1)  日本は、「人間の安全保障」を提唱し、それを「積極的平和主義」政策の基礎とするとともに、各国の取組を促進してきた。日本は、「保健」を、その中心的な要素であると考えている。

(2)  本年の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、我が国が交渉のプロセスで重視したUHCが目標に取り上げられた。

(3)  我が国が重視する国際保健分野の課題には以下がある。

 1  公衆衛生危機に対応する国際保健の体制構築
 国際保健体制の再構築とWHOのさらなる改革が必要であるが、WHOは引き続き主導的な役割を果たすべきである。また、WHOの緊急対応基金の設立と世界銀行のパンデミック緊急ファシリティの努力を支持する。両者が相互補完的な役割を果たすよう、WHOと世界銀行の連携を求める。

 2  強靱で持続可能な保健システムの強化による生涯を通じた健康増進
 保健システムの強化は、公衆衛生危機が発生するリスクを軽減し、発生時の被害を最小化する。その中で、感染症対策に加えて、耐性菌(AMR)対策も重要な課題である。世界最速で高齢化が進む我が国は、生涯を通じた健康増進へのアプローチにより、保健システムの持続可能性を維持しつつ、健康寿命の延伸に取り組む。

(4) 我が国は、来年議長国を務める伊勢志摩サミットやG7神戸保健大臣会合等を通じて、国際保健に大きく貢献していく。

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 来年の伊勢志摩サミット(5月26、27日)でも国際保健が重要課題として取り上げられることになります。首相の寄稿でも触れられていますが、日本は2000年の九州沖縄サミットで途上国の感染症対策に新たな追加的資金が必要なことを議長国として強調し、それが2002年の世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の創設につながっています。保健分野での国際的なプレゼンスも信頼度も小さくはありません。日本の強みともいうべき分野です。伊勢志摩サミットの成果も期待したいですね。

 日本国内でHIV/エイズ対策を取材していると、あれがダメ、これも何だか・・・と悲しい気分になることも少なくありませんが、評価できるところは積極的に評価して元気を出したい。国際的な貢献姿勢と国内の対策とのシナジー効果といいますか、あれもこれも、少しはマシになるように流れを作っていけるといいですね。日本には十分、その力はあるはずだし、いい人材もいると思いますよ。

 安倍首相のランセット誌寄稿は2013年に続き、2度目です。