国境なき医師団日本から「エボラ出血熱の流行地域から帰還したスタッフのためのプロトコル」というプレスレリースを送っていただきました。NYでギニアから戻った国境なき医師団の医師がエボラを発症したことが報じられている時期だけに、こうした説明は非常に重要です。ああ、そうなのかと分かることで、落ち着いて情報を受け止められるようにもなります。セッティングを日本にしてあるので、「もし、日本で患者が確認されたらどうする」という想定をする際にも大いに参考にできそうです。
私が重要だと思ったのは、この点です。
《エボラは発症しない限りは感染せず、通常の生活が可能です。エボラの疑いがない場合にまで隔離することは適切な対応ではなく、MSFでは推奨していません》
報道で得られた情報で判断する限り、NYの医師の行動は妥当なものだったのではないかと思います。
《環境の変化から、かぜ、気管支炎、インフルエンザなど感染症にかかる可能性もあります。こうした病気はエボラと似た症状を示すため、当人や周囲の人に無用の不安を与える恐れがあります》
訓練を受け、専門的な知識と技術を身につけた専門家でも、今回の流行に対する現地での医療支援はかなり困難であり、勇気もいる任務ではないかということは、国内でおろおろしている情けない新聞記者にも十分、推察できるところであります。その勇者の帰還に対しては敬意を持って対応したい。エボラ症例が確認されることが問題なのではなく、重要なことはそのときにどのように対応できるのかであるということは、報道関係者もあらかじめ肝に銘じておきたいですね。以下、送っていただいたプレスレリースを紹介します。
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国境なき医師団(MSF)では、エボラ出血熱の流行地域で活動したスタッフが帰国した際に、健康状態を観察するための行動指針を設け、厳格に運用しています。適用期間は、エボラウイルスの潜伏期間である21日間です。
<MSFが定めているエボラの潜伏期間中の行動指針(概要)>
1. 帰国後、1日に2回体温を測り報告する ※厚生労働省の指導に準じます
2. マラリアの予防・治療を完了する ※マラリアとエボラの症状が似ているためです
3. 自身に発熱などの症状がないか注意する
4. エボラに対応できる隔離施設のある指定病院を4時間以内に受診できる場所に滞在する
5. 注意すべき症状が現れた場合は速やかに MSF日本事務局に連絡する
スタッフの居住地から4時間以内の場所にエボラ対応が可能な指定医療施設がない場合は、MSFが行動指針に適した滞在地を手配し、スタッフに提供しています。
潜伏期間中にエボラを示唆する症状が現れた場合は、速やかにMSF日本事務局および関係当局に連絡した上で、公共交通機関の利用を控えるように指導しています。
エボラは発症しない限りは感染せず、通常の生活が可能です。エボラの疑いがない場合にまで隔離することは適切な対応ではなく、MSFでは推奨していません。
ただし、潜伏期間中のスタッフには復職・再就職を推奨していません。活動地での任務は心身の負担が極めて大きく、休息が求められるためです。また、環境の変化から、かぜ、気管支炎、インフルエンザなど感染症にかかる可能性もあります。こうした病気はエボラと似た症状を示すため、当人や周囲の人に無用の不安を与える恐れがあります。復職・再就職を推奨しない代わりに、MSFでは潜伏期間にあたる21日間についても給与を支払っています。
なお、潜伏期間中に発熱した場合でもエボラとは限りません。初期症状が似ているインフルエンザやマラリアなどの可能性もあります。一方、潜伏期間が過ぎた後に発熱などの症状が出た場合は、エボラが原因ではないと判断できます。