昨日から鎌倉の海水浴場に「キッズ&ファミリービーチ」が開設されています。波の比較的穏やかな一画にノボリが立てられ、子供や家族で楽しめる海辺の空間として利用してほしいということですね。海水浴期間中の毎週土曜、日曜と祝日、そしてお盆の時期に設けられるということです。初日の19日(土)は午前10時から由比ガ浜海岸で開設式が開かれました。
あいにくの小雨まじりの曇り空となりましたが、子供たちはなかなか楽しそうでした。地味めではありますが、いいコンセプトではないかと思います。
鎌倉の海水浴場は昨年、風紀の乱れが指摘され、せっかく海水浴を楽しみにしてやって来ても、子供たちには少々、つらい環境でした。地元の海の家の組合の調査では、海岸での飲酒、とりわけ砂浜にテントやシートを広げ、まるでお花見の時のように(お花見にももちろん節度は必要ですが)酒盛りをしたり、騒いだりというグループがけっこうあって、そのあたりが海浜の雰囲気を悪化させる最大の要因になっていたようです。
お隣の逗子では条例で海水浴場の音楽イベントを禁止するなど、それぞれの自治体で昨年の苦い経験を繰り返すまいとさまざまな対策をとっています。鎌倉の場合は音楽の禁止や排除といったことではなく、鎌倉市が新たに制定したマナーアップ条例による呼びかけと海の家の組合の自主規制ルールとの組み合わせで、何とかみんなが楽しめる海水浴場にしていこうという(私に言わせれば)かなり正統的な対応で臨んでいます。
マナーアップといっても、ただ呼びかけるだけでは意味がありません。それなりの仕掛けというか、全体の雰囲気をよくしていくための工夫が必要になります。
キッズ&ファミリービーチもその工夫の一つでしょうね。由比ガ浜の場合、海水浴場のかなり西の部分にある坂の下海岸の波打ち際から砂浜にかけたあたりの幅にして20メートルくらいの一画に「キッズ&ファミリービーチ」のノボリが立てられています。遠浅で波が穏やかなところなので、あまり泳ぎが得意でない子供たちでものびのびと楽しめる場所です。
開設式では、松尾崇市長や鎌倉の海水浴場のネーミングライツを持つ豊島屋の久保田陽彦社長が挨拶を行いましたが、さすがに子供たちの前ではスピーチも短く簡潔でした。このあたりも(当然とはいえ)、好感が持てます。久保田社長は「キッズ&ファミリービーチ」の発案者と紹介されていたので、後でお話を聞くと「生まれたときからずっと鎌倉に住んでいて海水浴には楽しい思い出がいっぱいあるので」ということでした。
昨年のようなことにならないようにするため鎌倉では今年、海水浴場の関係者による対策の会議が事前に何度も開かれ、そのときに久保田さんが「子供たちが安心して遊べる場所がほしいですね」といった趣旨の発言をしたので、発案者ということになってしまったそうです。海の魅力は開放性にあるので、スペースに囲いを作って・・・といった方策はなじまない。ノボリを立て、ライフガードが重点的に目配りをして安全性を確保する。子供向けの企画も考える。子供たちが遊べるようシャベルやバケツを用意しておいたらいいかもしれない・・・といったアイデアもあるそうですが、何と言っても子供は楽しいことを見つける天才です。どのようにするかは、ユーザーである子供がどう使うかに合わせていくことになりそうです。
開設式の後では、地元・鎌倉警察暑の橋野二郎署長もビーチを訪れ、松尾市長とともに海水浴場の公開パトロールを行いました。「いまのところ大きなトラブルは起きていませんが、予断は許しません」ということです。海水浴場のライフガードの拠点となる監視所には警察官立ち寄り所の看板も掲げられ、制服警察官の砂浜パトロールも行って、目に余る行為や犯罪に対する抑止効果を高めたいということです。
安全で安心して楽しめる砂浜をどう維持していくか。これはたぶん特効薬のようなひとつの解決策があるのではなく、様々な対策の積み重ねと組み合わせで実現するものなのでしょうね。海水浴シーズンの終わりにその組み合わせが「合わせ技一本」ということで成果を認められるようになることを期待したいと思います。
この夏は間に合わないと思うけれど次年度に向けて提案を一つ。神奈川県は鎌倉をはじめ、夏の海水浴場の宝庫というか、王国というか、歴史と伝統を誇り、なおかつ最先端のビーチがずらっと連なっています。警視庁のDJポリスの向こうを張るわけではありませんが、こうした地政学上の特長を生かし、アロハシャツの湘南ビーチポリスが夏場限定で編成できれば、抑止効果も高まるし、パトロールの警察官の皆さんも制服より涼しく、なおかつ市民の生活を守るために日夜奮闘を続ける神奈川県警のイメージアップにもつながりそうです。投資効果はそれなりに高いと思うのですが、いかがでしょうか。