エボラ流行と米国の対応について米・生命倫理委員会が報告書

 西アフリカのエボラの流行に対する米国の対応について、生命倫理問題研究に関する米大統領諮問委員会(生命倫理委員会)が2月26日、オバマ大統領宛の報告書『エボラと倫理的課題:保健計画の策定および対応』をまとめ、発表しました。90ページもある報告書はとても読み切れませんが、とりあえず生命倫理委員会のプレスリリース、および委員長、副委員長による大統領宛ての手紙、そして7項目の勧告の部分だけ、日本語仮訳をHATプロジェクトのブログに掲載しました。

 公衆衛生対策には倫理面の準備が必要なことをエボラは教えている 米・生命倫理委員会が大統領に報告(プレスリリース)
 http://asajp.at.webry.info/201503/article_4.html

 『エボラと倫理的課題:保健計画の策定および対応』から1 大統領宛書簡
 http://asajp.at.webry.info/201503/article_5.html

 『エボラと倫理的課題:保健計画の策定および対応』から 7つの勧告
 http://asajp.at.webry.info/201503/article_6.html

 勧告の一部は倫理学がご専門の慶應義塾大学、樽井正義名誉教授の訳を参考にしました。そもそも勧告は、分析的な検討を踏まえ、そのエキスを圧縮したものですが、さらに私の粗雑な主観で圧縮すると以下のような感じでしょうか。

勧告1 道義的にも国益の面からも保健危機に対応する世界の動きに参加すべきである。
勧告2 そのために国内でも国際的にも対応能力を強化する必要がある。
勧告3  公衆衛生対策の必要性を国民に伝える努力をする。
勧告4 保健危機に対応するための意思決定には倫理原則の検討を機敏に進める。
勧告5 検疫、移動制限などの強制手段は必要最小限に抑える。
勧告6 流行期における研究は対象者に利用可能な最良のケアを提供し、成果を還元できるようにする。
勧告7 生体試料の採取は必ず倫理的手順を踏まえる。

 勧告6はプラセボ使用容認論の印象が強く、異論も出てきそうですが、こうしたかたちで議論を提起していくことは大切です。参考までにプレスリリースの日本語仮訳にあわせて掲載した(解説)も以下の再掲しておきます。

(解説) 西アフリカにおけるエボラの流行は、保健分野における様々な倫理的課題への対応を迫る現象でもありました。今回の流行により新たに生まれた課題というよりも、すでにHIV/エイズをはじめとする様々な新興・再興感染症の流行を経験する過程でしばしば指摘、ないしは自覚されながらも、喉もと過ぎれば熱さを忘れる式に放置されてきた問題にまたまた直面せざるを得なくなったといった課題ではないでしょうか。さすがに米国は、エボラに対する社会の反応もひどかったけれど、立ち直りもはやいといいますか、生命倫理問題研究に関する大統領諮問委員会が2月26日、大統領宛の報告書『『エボラと倫理的課題:保健計画の策定および対応』(ETHICS and EBORA Public Health Planning and Response)を発表しました。