『サル痘に関する用語がスティグマを強め、公衆衛生の危機をもたらす UNAIDSが警告』

 欧米各国で、天然痘によく似たサル痘の症例報告が相次いでいます。これまでの発生はアフリカ中心でしたが、今回はいままで感染症例が報告されていなかった国で報告されているので、どこまで感染が拡大するのか・・・。日本国内での感染報告はまだありませんが、国際的にはすでに懸念すべき感染症として浮上しています。

 警戒はもちろん必要ですが、新たな感染症のアウトブレーク時には情報も錯綜し、社会的にも不安が広がって混乱や誤った対策の引き金になることもあります。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、これまでのエイズ対策の経験を踏まえ、そうした観点から5月22日付けでプレスリリースを発表しました。

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2022/may/20220522_PR_Monkeypox

 『サル痘に関する報告および解説の一部で、LGBTIの人たちやアフリカの人たちへのスティグマを強める用語や画像が使われていることにUNAIDSは懸念を表明する。こうした描写は、ホモフォビア(同性愛嫌悪)や人種差別的なステレオタイプの固定化促しスティグマを悪化させる。エイズ対策の教訓は、特定の人口集団に対するスティグマや非難が感染症のアウトブレーク対応を大きく妨げる恐れがあることを示してきた』

 とりあえず、アウトブレークの状況について、リリースの一部を紹介すると、『世界保健機関(WHO)は5月21日現在、これまでサル痘の流行がなかった12カ国から、検査による確認例92件と疑い例28件の症例報告を受けている』ということです。

 参考までに23日のBBCニュースでは報告国が12カ国から15カ国に増えています。情報をもとに検査体制を整える国もあるでしょうから、報告はもう少し広がりそうですね。

 以下、UNAIDSのプレスリリースの日本語仮訳です。あくまで私家版ですが、よかったら読んでください。

 

サル痘に関する用語がスティグマを強め、公衆衛生の危機をもたらす UNAIDSが警告

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2022/may/20220522_PR_Monkeypox

 

ジュネーブ 2022年5月22日 サル痘に関する報告および解説の一部で、LGBTIの人たちやアフリカの人たちへのスティグマを強める用語や画像が使われていることにUNAIDSは懸念を表明する。こうした描写は、ホモフォビア(同性愛嫌悪)や人種差別的なステレオタイプの固定化促しスティグマを悪化させる。エイズ対策の教訓は、特定の人口集団に対するスティグマや非難が感染症のアウトブレーク対応を大きく妨げる恐れがあることを示してきた。

 複数の国連加盟国で2022年5月13日以降、サル痘のアウトブレークが報告されている。その多くはこれまで症例報告がなかった国からのものだ。世界保健機関(WHO)は5月21日現在、これまでサル痘の流行がなかった12カ国から、検査による確認例92件と疑い例28件の症例報告を受けている。症例のかなりの部分は、ゲイ男性・バイセクシュアル男性など男性とセックスをする男性で占められ、一部症例はセクシュアルヘルスのクリニックで特定されていた。さらに詳しい調査が現在、進められている。入手可能なエビデンスによると感染の最も高いリスクに曝されているのは、サル痘のある人と身体的に濃厚接触した人であると示唆され、そのリスクは男性とセックスする男性に限定されるものではないとWHOは述べている。

UNAIDSは各国のメディア、政府、コミュニティに対し、人権とエビデンスを踏まえたアプローチによってスティグマを回避するよう呼びかけている。

スティグマと非難が強まると、今回のようなアウトブレークに効果的に対応するための信頼と能力が損なわれてしまいます」とUNAIDSのマシュー・カバナ副事務局長はいう。「スティグマのレトリックにより、エビデンスに基づく対応が取れなくなってしまう。このことは過去にも経験があります。人びとは医療サービスを利用しなくなり、症例の特定が妨げられ、効果のない懲罰的な措置が奨励される。こうして恐怖と不安のサイクルが増幅されていくのです。LGBTIコミュニティが意識向上の道を切り開いてくれました。私たちはこのことに感謝します。そして、この病気が誰にでもかかり得ることを改めて強調したい」

サル痘の発生は、様々なコミュニティがこれからもウイルスの脅威に直面し続けること、そして世界全体が対応しなければウイルスを克服することはできず、国際的な連帯と協力が公衆衛生に不可欠なことを示している。

「今回のアウトブレークは指導者に対し、効果的でスティグマのない対策を支えるより強力なコミュニティ主導の対応力と人権インフラストラクチャの構築を含むパンデミック予防策の強化が緊急に必要なことを示しています」とカバナ副事務局長は述べる。「スティグマはすべての人を傷つけます。科学的成果の共有と社会の連帯がすべての人を助けるのです」

 UNAIDSはサル痘報道にあたるすべてのメディアに対し、WHOが定期的に発表するアップデートをフォローするよう要請します。

 

 

 

 

UNAIDS warns that stigmatizing language on Monkeypox jeopardises public health

 

GENEVA, 22 May 2022—UNAIDS has expressed concern that some public reporting and commentary on Monkeypox has used language and imagery, particularly portrayals of LGBTI and African people, that reinforce homophobic and racist stereotypes and exacerbate stigma. Lessons from the AIDS response show that stigma and blame directed at certain groups of people can rapidly undermine outbreak response.

Since May 13, 2022, an outbreak of Monkeypox has been reported in multiple UN member states where cases are not usually reported. As of May 21, the World Health Organization received reports of 92 laboratory-confirmed cases and 28 suspected cases from 12 Member States not endemic for the disease. A significant portion of the cases have been identified among gay, bisexual, and other men who have sex with men, with some cases identified through sexual health clinics. Investigations are ongoing.  WHO notes that available evidence suggests that those who are most at risk are those who have had close physical contact with someone with monkeypox, and that risk is not limited to men who have sex with men.

UNAIDS urges media, governments, and communities to respond with a rights-based, evidence-based approach that avoids stigma.

“Stigma and blame undermine trust and capacity to respond effectively during outbreaks like this one,” said Matthew Kavanagh, UNAIDS Deputy Executive Director a.i. “Experience shows that stigmatizing rhetoric can quickly disable evidence-based response by stoking cycles of fear, driving people away from health services, impeding efforts to identify cases, and encouraging ineffective, punitive measures. We appreciate the LGBTI community for having led the way on raising awareness – and we reiterate that this disease can affect anyone.”

The Monkeypox outbreak illustrates that communities will continue to face threats from viruses, and that international coordination and solidarity is essential for public health as viruses can only be overcome globally.

“This outbreak highlights the urgent need for leaders to strengthen pandemic prevention, including building stronger community-led capacity and human rights infrastructure to support effective and non-stigmatizing responses to outbreaks,” noted Dr. Kavanagh. “Stigma hurts everyone. Shared science and social solidarity help everyone.”

UNAIDS urges all media covering Monkeypox to follow the regular updates being issued by WHO.