『エイズの経験をどう生かすか』 エイズと社会ウェブ版493

 ほとんど無職の一歩手前でとはいえ、フリーランスの物書きとしてささやかな看板を心の中に掲げて以来、原稿の依頼を受けたら締め切りの何日か前に余裕をもって出稿することを肝に銘じています。

つまり、これは、その~、昔は守らなかったということであり、同時に編集者時代には原稿がなかなか出てこない記者に泣かされ続けた記憶があるからなんだけど・・・。

ま、愚痴と言い訳はともかく、3年前に産経新聞社を退職してからは、幸か不幸か原稿依頼が極端に少ないこともあって、締め切りの数日前には確実に送稿を果たし、今日に至っています。

 しかも、今年に入ってからは、新型コロナウイルスの流行が世の中にそこはかとなく不安を広げていきました。重症化リスクが高いとされ、なおかつ小心な高齢層の一人である私のようなおじさんは、病に倒れて2週間も原稿が書けなくなったらどうしようという強迫観念にもとらわれ、ますます原稿の仕上がりが早くなっています。

送稿後に事態が変わってしまうこともあるので、あまり早く書くのも考えものですが、老後の安心感には替えられません(こういうことを書くとますます原稿依頼が減ってきそうですね。貧乏には慣れているから、まあ、いいか)。

 ・・・というわけで、例によって年寄りの話は前置きが長い。要は現代性教育研究ジャーナルNo112(2020年7月15日発行)に掲載された連載コラム One side/ No sideの39回目『エイズの経験をどう生かすか』のお知らせです。HIV/エイズ対策分野のNPOHIV陽性者グループの有志が厚生労働省に提出した新型コロナウイルス感染症COVID-19対策の要望書を取り上げました。12ページに載っています。 

www.jase.faje.or.jp

 

f:id:miyatak:20200717215720j:plain

 5月15日に提出した「ばかり」の要望書なので最新の話題だと思っていたら、いまはもう7月の半ばですね。この間に、いったん減っていた首都圏の新型コロナウイルス感染報告は再び増加に転じています。検査の件数が増えたためだという考え方ももちろんありますが、どうもそれだけでもなさそうな雲行きですね。世の中も再び動揺し始めています。旅に出ようと言われたって・・・、ねえ。

 原稿の内容と現実の進展との間に少々、時差が生じている面は否めません。『政府の専門家会議が指摘するように』などと書いていますが、そもそもその専門家会議自体がもう、なくなっちゃった。無茶するなあ、政治家は・・・とぼやきたい気分です。

 こんなことも書いています。

 『接触者を徹底的に追跡調査し COVID-19 対策に成果を上げてきた韓国では、5月に入って集団感染が発生した際に「ゲイクラブ」で感染が広がったとの報道があり、同性愛者に対するバッシングを引き起こす事態を招いた。韓国だから起きたことというわけではなく、COVID-19 に対する不安が強い社会なら、同じようなことが起こる可能性は十分にある』

 十分にあるどころか、最近じゃもう・・・。

 『いわゆる「夜の街クラスター」に対応する場面が今後、増えるとすれば、HIV/エイズ対策がこれまた苦い経験の蓄積を通して獲得してきた性に関する理解もますます重要性を増してくる。要望④の「当事者参加型による啓発・支援の対策を構築」はこの点からも重視しなければならない』

 ということでありまして、よくよく読んでいただければ、今日の事態を鋭く洞察していたのではないか(実はたまたまなんだけど)、本人はそんな気分にもなっています。長生きするよ。