『コミュニティが変える』 エイズと社会ウェブ版429

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに2019年世界エイズデー(12月1日)に向けたキャンペーンのテーマが掲載されました。

『COMMUNITIES MAKE THE DIFFERENCE』

 日本語では『コミュニティが変える』と訳しました。

 https://www.unaids.org/en/resources/campaigns/WAD_2019

 UNAIDSはこのところ、コミュニティの役割を重視しています。7月に発表された年次報告書のタイトルも『Community at the center(コミュニティを主体に)』でした。今回のキャンペーン紹介文には次のように書かれています。

 『資金が減少し、市民社会によるサービス提供の継続さえ困難になり、アドボカシー活動が危機に瀕している中で、世界エイズデーはコミュニティの役割に光を当てる重要な基盤を提供しています。コミュニティ活動の強化が緊急に必要です』

 重要な指摘ですが、一方で、各国政府の間に『エイズはもういいだろう』気分が広がり、いよいよ困り果ててコミュニティ、コミュニティとしきりに言い出したような側面もあるのではないかと私などは思います。

 ま、それでもUNAIDSが言っていることだし・・・ということで、日本の政府や自治体の担当の皆さんもコミュニティ重視にシフトしてくれるといいのですが、これまでの経験で行くとお題目だけということも往々にしてありました。

 それでも担当者によっては、大きなMake a differenceがみられたこともありました。この点は、歴代担当者の名誉のためにも書いておきましょう。問題は行政機関の場合、担当者が平均2年くらいで変わっちゃうことでしょうか。取材を続けてきた立場からしても、これは結構、疲れます。

 コミュニティが何を指すのかというところも、様々な関係者の間で共通理解が成立しているような感じで、実はそうでもなさそうな感じもします。今回は一応、以下のような定義になっています。

 『コミュニティとはどんな人たちでしょうか。そこにはピアエデュケーターやHIV陽性者のネットワーク、ゲイ男性など男性とセックスをする男性・注射薬物使用者・セックスワーカー・女性・若者といったHIVに影響を受けている人びとのネットワーク、カウンセラー、コミュニティヘルスワーカー、戸別訪問サービス提供者、市民社会組織、草の根アクティビストといった人たちが含まれます』

 メディアや報道に関係する人はきれいさっぱり入っていませんね。まあ、いいけど。

 キャンペーンのサイトには『COMMUNITIES make the difference』と『what is a COMMUNITY-LED ORGANIZATION』というキャンペーン小冊子も紹介されているので、少々、手間がかかるけど、こちらも訳しておく必要があるかな。

 そちらは今後の課題として、とりあえず公式サイトに掲載された短い紹介文の日本語仮訳を参考までに載せておきます。

 

 

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『コミュニティが変える』

World AIDS Day 2019 | UNAIDS

 今年の世界エイズデーのテーマは「コミュニティが変える」です。

 2019年12月1日の世界エイズデーは、国際的にも、各国の国内、地方レベルでも、エイズ対策を持続的に進めるうえでコミュニティが担っている極めて重要な役割を認識する大切な機会です。

 コミュニティは様々なかたちでエイズ対策に貢献しています。コミュニティのリーダーシップとアドボカシー(政策支援活動)があるからこそ、エイズ対策が適切で地に足の着いたものになり、人々を中心にすえ、誰も取り残さないかたちで進めることが可能になるのです。コミュニティとはどんな人たちでしょうか。そこにはピアエデュケーターやHIV陽性者のネットワーク、ゲイ男性など男性とセックスをする男性・注射薬物使用者・セックスワーカー・女性・若者といったHIVに影響を受けている人びとのネットワーク、カウンセラー、コミュニティヘルスワーカー、戸別訪問サービス提供者、市民社会組織、草の根アクティビストといった人たちが含まれます。

 資金が減少し、市民社会によるサービス提供の継続さえ困難になり、アドボカシー活動が危機に瀕している中で、世界エイズデーはコミュニティの役割に光を当てる重要な基盤を提供しています。コミュニティ活動の強化が緊急に必要です。コミュニティによるサービス提供を阻む様々な規制や社会契約上の法的位置付けの欠如といった障壁に取り組まなければなりません。人権を尊重し、政策の決定と遂行にあたる者が責務を果たすことを求め、エイズを引き続き重要な政治課題として位置づけていくために、コミュニティが担ってきた強力なアドボカシー活動がこれまで以上に求められているのです。

 

 

COMMUNITIES MAKE THE DIFFERENCE

The theme of this year's World AIDS Day is "Communities make the difference".

 

The commemoration of World AIDS Day, which will take place on 1 December 2019, is an important opportunity to recognize the essential role that communities have played and continue to play in the AIDS response at the international, national and local levels.

Communities contribute to the AIDS response in many different ways. Their leadership and advocacy ensure that the response remains relevant and grounded, keeping people at the centre and leaving no one behind. Communities include peer educators, networks of people living with or affected by HIV, such as gay men and other men who have sex with men, people who inject drugs and sex workers, women and young people, counsellors, community health workers, door-to-door service providers, civil society organizations and grass-roots activists.

World AIDS Day offers an important platform to highlight the role of communities at a time when reduced funding and a shrinking space for civil society are putting the sustainability of services and advocacy efforts in jeopardy. Greater mobilization of communities is urgently required to address the barriers that stop communities delivering services, including restrictions on registration and an absence of social contracting modalities. The strong advocacy role played by communities is needed more than ever to ensure that AIDS remains on the political agenda, that human rights are respected and that decision-makers and implementers are held accountable.