控訴断念はしたけれど・・・ エイズと社会ウェブ版422

 HIV陽性の男性に対する採用内定取り消し訴訟で、被告の社会福祉法人が10月1日、控訴断念の方針を決め、「不本意ではありますが」と公式サイトを通じて自らの考え方を明らかにしました。
 https://ssl.hokushakyo.jp/archives/category/info-detail#list1
 
 原告の訴えを認めた札幌地裁判決に対しては、「あくまでHIV感染者に対する社会的な部分を引用され、虚偽の発言が非難されないのなら、とても今後の議論にはなり得ません」ということで、これまでの主張に変更があるわけではなく、自らも書かかれているように不本意感を強く打ち出した内容になっています。
 したがって、私の個人的な感想を言えば、控訴断念は評価するものの、その理由には疑問符が付きます。

 ただし、ここではその不本意感に対する不本意感の表明に踏み込むことはせず、少しおさらいしておきましょう。そのうえで、皆さんのご意見をうかがえるようでしたら、うかがいたいと思います。


 札幌地裁の判決は9月17日に出されています。その時の感想は同日付の当ブログに掲載してあるので、ご覧ください。

http://miyatak.hatenablog.com/entry/2019/09/17/201101

 判決を待つまでもなく「雇用者にHIV感染を申告する必要性がない」ということは、日本エイズ学会が6月24日付で発表した『HIV感染を理由とした就業差別の廃絶に向けた声明』を見れば明らかだと私は思います。
 この声明では札幌地裁での訴訟という個別の事例を取り上げるのではなく、『職場における差別』に対し日本エイズ学会の立場をはっきりと示すとともに、広く『企業、医療機関』を対象に『サポート体制の構築』が(いまなお)必要なことを(改めて)指摘しています。
 わざわざ()の中で、「いまなお」とか「改めて」とか付け加えるのは、しつこいかなとも思ったのですが、今回の控訴断念に関する被告側の見解は、そのための啓発の努力がますます必要なことを改めて、そして、噛んで含めるように教えてくれているのかもしれません。