せっかく日本語版を作ったので、UNAIDSの『Global AIDS Update 2019』関連スライドを少しピックアップして紹介します。スライド資料集はAPI-Netでご覧ください。
http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20190815
最初に『主な流行推計』から、地図をご覧いただきましょう。
2018年時点のHIV陽性者数を地域別に表示したものです。アフリカは東部・南部、西部・中部、中東・北アフリカの3地域に振り分けられています。
最も流行が深刻なのは、東部・南部アフリカ地域ですね。規模はかなり違いますが次にHIV陽性者数が多いのは、実はアジア・太平洋地域です。年間のHIV新規感染者数やエイズ関連の死亡者数を見ても、この順位は変わりません。
治療や予防手段の画期的な進歩を踏まえ、2030年までに公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行を終結させるという野心的な目標は、あくまで目標であり、しかも、はったりとまでは言いたくありませんが、極めて野心的です。このまま予定調和的に達成が約束されているものではありません。
もう一度、世界の現状を推計値で確認してみましょう。
「公衆衛生上の脅威としての」という条件付きではあっても、ここから流行の終結を目指すには、相当な努力が必要です。
ただし、2018年の世界のHIV/エイズ対策費は前の年と比べると、ほぼ10億ドル減っていたそうです。やるぞ、やるぞと掛け声は勇ましくても、資金貢献意欲は後退しているというか、他にもお金のかかることがいろいろあるし・・・ということで、本音のところでは「エイズはもういいだろう」気分なのかもしれません。
この気分が世界中の政治指導者の間になし崩し的に広がっていけば、あるいはそれを冷笑的に歓迎する人がいれば(どうも最近は、いそうな感じです)、世界が約束を反故にするくらいのことは、いとも簡単にできるでしょう。とにかく話題にしなければいいのだから。