世界の人口はいま何十億人だとか、このままでいくと100億人は軽く突破するぞとかいった話は、テレビや新聞、雑誌でもときどき話題になります。そうした話題のもとになる国連の世界人口推計について、東京・内幸町の日本記者クラブで昨日(7月9日)、記者会見がありました。説明されたのは国立社会保障・人口問題研究所の林玲子・国際関係部長です。
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35433/report
まず、基本的なことから。最新の世界人口推計は今年6月17日にニューヨークの国連本部で発表されました。世界中の国や地域で集められた国勢調査など1690件もの人口集計データ、および2700件の標本調査をもとにして、1950年から2100年までに世界235カ国・地域の人口を国連人口部が計算しています。国連にはひたすらそうした推計を行うセクションがあり、それをもとに様々な分野の様々な方が、ああでもない、こうでもない(失礼!)と世界中で議論を交わしているわけですね。
推計は毎年、出されるわけではなく、何年かに一度、発表されています。最初の推計発表は1948年で、以後2019年までに計26回、発表されているそうです。72年間で26回ということは、つまりぃ・・・、う~ん・・・だいたい・・・3年弱に1回ですね。前回は2017年でした。
その2017年推計と比べると、世界総人口は下方修正され、中位推計では2050年時点で3679万人、2100年には3億1000万人少なくなっているそうです。
と言われても、これだけでは雲をつかむようで話がよく呑み込めませんね。会見資料として配られた2019年版推計の要旨を見ると、2019年、つまり現在の世界人口は77億人で、それが2030年には85億人になり、2050年には97億人、2100年には109億人に増えるそうです。つまり、増えることは増えるのですが、その増え方はこれまで考えられてきたよりは穏やかになっています。人口爆発が危機感を持って語られたのは実は1960年代、70年代のことで、家族計画によりその危機は一応、回避できたものの、増加は続いているというのが現状なのだそうです。
地域別にみると人口が今後、最も大きく増加するのはサハラ以南のアフリカで、2050年には現在のほぼ倍(99%増)になると推計されています。人口大国の順番にも変化が現れます。
2019年の人口上位5カ国は以下の通りです。
1 中国(14億3400万人)
2 インド(13億6600万人)
3 米国(3億2900万人)
4 インドネシア(2億7100万人)
5 パキスタン(2億1700万人)
それが2050年にはこう変わります。
1 インド(16億3900万人)
2 中国(14億0200万人)
3 ナイジェリア(4億0100万人)
4 米国(3億7900万人)
5 パキスタン(3億3800万人)
このほか、2050年時点では、サハラ以南アフリカのエチオピア、コンゴ民主共和国も上位10カ国入りすると推計されています。
アフリカの人口増加は、この時期の生産年齢人口(25~64歳)の割合が増え、「人口ボーナス」と呼ばれる経済成長が期待できるということでもあります。
ただし、実際にそのボーナスを経済成長につなげていくには、保健システムを整え、同時に教育の機会を確保しなければ、若年層の増加が逆に成長の阻害要因になってしまうかもしれません。持続可能な開発目標(SDGs)の中でも、人を大切にする基盤ともいうべき保健や教育の重要性がとくに強調されるのはこのためでしょうね。
日本国内ではいま、生産性の話をすると妙な曲解を招きかねませんが、社会として生産性を高めるとはどういうことなのか。誰も置き去りにしないというSDGsの基本理念を踏まえたうえで、生産性についてはその内実をしっかりと考える必要があるようです。この辺りは、人口の観点から成長期にあるアフリカだけでなく、日本においても、つまり、人口ボーナスをうまく使って経済成長を果たした経験を持ちつつ、それでもいまは成熟期の課題に直面して呻吟する極東の島国においても、知恵のある議論が必要になります。