【エイズ対策と偏見】ゴシップ糧に立て直そう  エイズと社会ウェブ版202

 チャーリー・シーン氏のHIV感染公表に対する当惑についてはエイズと社会ウェブ版でもつい先日、少し書きました。どう受け止めたらいいのか、いろいろなとらえ方ができる・・・ということは、いろいろな側面があって、なかなか「これだ!」ということができない。

 12月1日は世界エイズデー、そして、東京・文京区の東京ドームホテルでは、その前日の11月30日と12月1日の2日間、第29回日本エイズ学会学術集会・総会が開かれます。

 また、そのさらに直前の週末(つまり今週末)の11月28日、29日にはTOKYO AIDS WEEKSの中心行事でもあるエイズ学会プレイベントが開催されます。エイズ学会やそのプレイベントで、チャーリー・シーン氏のHIV感染公表は話題になるのか、ならないのか。スキャンダラスな取り上げられ方が先行しているので、微妙なところですね。

 しかし、スキャンダラスな取り上げられ方が先行しているからこそ踏み込んで語る必要があるのかもしれません。繰り返しになりますが、微妙なところです。

 その辺のコントラバーシャルから一時避難するようで恐縮ですが、プレイベントに関する実務的情報を少し・・・。

 

 11月30日と12月1日の学会参加には基本的に登録料が必要ですが、11月28、29日のプレイベントは入場無料です。学会参加のご予定がない方も、もちろん、ある方もどしどしご参加下さい。

 http://www.ca-aids.jp/taw/event/151128-1129-aids_event29.html

 おっと、大急ぎで付け加えておかなければなりませんが、こちらは会場が東京・新宿区の国立国際医療研究センターです。第29回エイズ学会とは会場が異なりますので、行ってみようかなと思っている方、いま急にそう思ってしまった方(大歓迎です)はもう一度、上記URLでご確認ください。

 
 シーン氏の話題に少し戻りましょう。振り返ってみれば、HIV/エイズの流行とその社会的対応、つまり対策自体が、さまざまな当惑に取り巻かれてきた側面があります。

 そのさまざまな当惑を、これもまたさまざまな立場の方が、あるときは立場を超え、あるときは立場にこだわりつつ抱えてきた。そして、ときには対立し、ときには予想もしなかった理解や共感が成立し、当惑を糧とするような場面にも立ち会いつつ、継続への意思を失わずに続けてきた。そうした経験を持つたくさんの方たちがいたからこそ、わが国の経験に照らしても、さらに世界中のいたるところでもおそらく、HIV/エイズ対策はなんとか、かろうじて支えられてきたという側面もあったのではないでしょうか。
 側面ばかりで、正面も、ど真ん中も、後ろの正面もなく申し訳ありません。本日は常にも増して腰が引け気味ですが、こちらも参考までに紹介しておきます。
 本日付産経新聞に掲載されている主張(社説)です。

エイズ対策と偏見】 ゴシップ糧に立て直そう
 http://www.sankei.com/column/news/151124/clm1511240002-n1.html
 米国の人気俳優、チャーリー・シーン氏が米NBCのテレビ番組に出演し、エイズの原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していることを公表した。
 「事実を公表されたくなければ金を払え」とゆすられ、計12億円以上を数人に払ったという。
 テレビ出演に踏み切ったのもこれ以上、ゆすられるのを防ぐためだったようだ。12億円とはとんでもない金額である。
 シーン氏の受難には同情を禁じ得ないが、著名俳優の奔放な私生活にまつわるスキャンダルとしてある程度、興味本位に扱われることは避けられなかったのだろう。日本のテレビでも、かなり取り上げられた。
 だが、ことは芸能人のゴシップにとどまるものではない。
 HIV感染者は世界で3690万人、米国だけでも120万人と推計されている。ウイルスに感染していることが恐喝のネタにされることは異常である。そうした偏見の中では、感染者は安心して社会生活を送ることができない。
 12月1日は、世界エイズデーである。いたずらに不安や偏見をあおるゴシップは打ち止めにして、HIVエイズに関する正確な情報を広める必要がある。
 最近では早期に感染を把握し、HIVの増殖を抑える抗レトロウイルス治療を続けていくことができれば、長期にわたってエイズ発症を抑え、平均寿命近くまで生きることも期待できる。HIV感染は「死の病」を意味するわけではないのだ。
 また、治療を続けていると体内のHIV量が大幅に減り、性行為などで他の人に感染するリスクもほとんどなくなる。
 このため、最近は「予防としての治療」の効果に注目し、検査の普及による感染の早期把握と治療開始を推進する政策が世界的にとられている。コンドーム使用など他の予防対策と組み合わせ、流行を終結に導こうというのだ。
 だが、HIVに感染した人を忌避するような社会では、こうした対策も成り立たない。感染を心配する人が受難をおそれ、検査を受けようとしなくなるからだ。
 シーン氏にまつわるゴシップは少なくともエイズに対する関心を高めた。その関心を糧に、差別と偏見の現状を再認識し、対策を立て直していくような戦略的視点もいまは必要だろう。