不平等がエイズ・パンデミックの終結を阻んでいる UNAIDS エイズと社会ウェブ版633

 世界エイズデーを前に国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新しい報告書『Dangerous Inequalities不平等の危険』を発表しました。UNAIDSは7月に年次報告書(Global AIDS Update 2022)を発表しています。そのタイトルが『In Danger(危機的状況)』。つまり今回は二番煎じ・・・じゃなかったその続編でしょう。

 

 とりあえず11月28日に発表されたプレスリリースを日本語に訳しました。ちょっと大急ぎでしたが、エイズデーに間に合ってよかった。
《このままでは世界が合意しているエイズターゲットの達成はできません。しかし、UNAIDSの新しい報告書『不平等の危険』は、いま不平等の解消に向けて緊急行動をとれば、エイズ対策を流行終結の軌道に乗せられることを示しています》
 まず警告、ただし、今からでも遅くはない・・・年次報告と同じようなことを繰り返しているという印象はぬぐえません。ま、半年で言っていることが、ころころと変わるようでは、それもまた困るのかもしれませんね。
 状況は楽観を許さない。それは確かだと思います。以下プレスリリース仮訳です。UNAIDS公式サイトのエイズデー特設ページには、報告書発表の動画も載っています。

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不平等がエイズパンデミック終結を阻んでいる UNAIDSプレスリリース
https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2022/november/20221129_dangerous-inequalities

ダルエスサラームジュネーブ 2022年11月29日 世界エイズデーを前に、不平等がエイズ終結を妨げていることが国連の分析で明らかになりました。このままでは世界が合意しているエイズターゲットの達成はできません。しかし、UNAIDSの新しい報告書『不平等の危険』は、いま不平等の解消に向けて緊急行動をとれば、エイズ対策を流行終結の軌道に乗せられることを示しています。
UNAIDSは今年7月に発表した報告書で、エイズ対策の危機を明らかにしました。世界の多くの地域で新規HIV感染が増加し、エイズ関連の死亡が続いているのです。新しい報告書はその原因が不平等にあることを示しています。報告書はまた、世界の指導者がその不平等と闘うにはどうすべきかを示し、エビデンスが明らかにされていることに勇気を持って取り組むよう呼びかけています。
『不平等の危険』は、ジェンダーにおける不平等、キーポピュレーションが直面している不平等、子供と大人の間の不平等がエイズ対策に及ぼす影響を明らかにし、財政の悪化が不平等への対処をより困難にしていることを示しています。
またジェンダーの不平等と有害なジェンダー規範が、エイズパンデミック終結をいかに遅らせているかを報告書は示しています。
「家父長制を温存したままでエイズを克服することはできません」とUNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長は語っています。「女性が直面している不平等の交差に対処する必要があります。HIV感染率が高い地域では、親密なパートナーから暴力を受けた女性の感染の可能性が50%近く高くなっています。33カ国の調査では、2015年から2021年にかけて、自らの意思で性の健康について決定できる15-24歳の既婚女性は41%でした。エイズ終結と持続可能な開発目標の達成、健康・権利・繁栄の共有に向けた唯一の効果的ルートマップは、フェミニストのルートマップです。女性の権利を擁護する団体や運動はすでに最前線で果敢に活動しています。指導者はその活動を支援し、学ぶ必要があります」
ジェンダーの不平等が女性のHIVリスクにもたらす影響は、サハラ以南のアフリカで特に顕著であり、2021年の新規HIV感染の63%が女性でした。
サハラ以南のアフリカで思春期の少女と若い女性(15-24歳)がHIVに感染する可能性は、同年代の男性より3倍も高くなっています。力関係がその要因です。女子が中等教育を修了するまで学校に通えれば、HIV感染に対する脆弱性は50%減ることを示す研究もあります。さらに女性の地位向上に向けた一連の支援により、少女のリスクはさらに低下するのです。指導者は、すべての少女が学校に通えるようにすること、若すぎる結婚によって当たり前になりがちな暴力被害から女性をまもること、希望に満ちた未来を約束する経済的手段を確保することを保障しなければなりません。
権力構造を変えれば、HIVに対する少女の脆弱性を政策的に減らすことができます。
男らしさに関する有害な思い込みは、男性が医療やケアを受けることを妨げています。2021年にはHIV陽性の女性の80%が治療を受けているのに対し、男性は70%でした。パンデミックを抑えるには、世界各地でジェンダーに対する受け止め方を変革するプログラムの普及が必要です。ジェンダーの平等を推進することはすべての人の利益になります。
成人と小児の治療アクセスが不平等なのでエイズ対策が妨げられていることも、報告書は示しています。HIV陽性の成人の4分の3以上が抗レトロウイルス治療を受けている一方で、HIV陽性の子供では半数を少し上回る程度にとどまっているのです。このことが致命的な結果をもたらしています。2021年には、HIV陽性の子供は陽性者全体の4%なのに、エイズ関連の死亡者の15%を占めていました。治療のギャップを埋めることが子供の命を救うのです。
キーポピュレーションに対する差別とスティグマ、犯罪化が多くの命を奪い、世界が合意したエイズターゲットの達成を妨げています。
新たな分析によると、西部・中部アフリカ、東部・南部アフリカの両地域で、ゲイ男性など男性とセックスをする男性の新規感染は大幅に減少しているわけではありません。エイズ対策全体がうまくいっていかなかったことは、感染性ウイルスに対するキーポピュレーションの予防対策に進展が見られなかったことで説明できます。
世界で68カ国以上が依然、同性間の性的関係を犯罪としています。報告書が強調した別の分析によると、最も抑圧的な法律のあるアフリカ諸国で自らのHIV感染を知るゲイ男性など男性とセックスを男性の割合は、対策の進展が速い他の国より3倍以上低くなっています。また、セックスワークを犯罪とみなす国のセックスワーカーは、合法または部分的に合法化されている国よりもHIVに感染している可能性が7倍も高いのです。
報告書は、不平等に対する闘いが前進可能なことを示し、エイズ対策が目覚ましい成果をあげている地域を取り上げています。たとえば、キーポピュレーションのサービス普及率が低いことは、キーポピュレーションを対象とした調査でしばしば強調されてきましたが、ケニアの3つの郡では、女性セックスワーカーHIV治療普及率が女性の一般人口(15~49歳)より高くなっています。コミュニティ主導のサービスを含め、長年にわたってHIVプログラムの充実をはかってきたことが支えになりました。
「不平等に終止符を打つには何をすべきか、私たちにはすでに分かっています」とビャニマ事務局長は述べています。「すべての少女が安全を保障され元気に学校に通えるようにすることです。ジェンダーに基づく暴力と闘うことです。 女性団体を支援することです。健全なかたちの男らしさを促し、すべての人のリスクを高める有害行動に取って代わるようにすることです。HIV陽性の子供たちに向けたサービスが確実に届くようにして子供たちのニーズを満たし、治療のギャップを解消して小児エイズを永遠の終結に導くことです。同性間の性的関係、セックス ワーカー、薬物使用者を非犯罪化し、社会的に包摂できるようにするコミュニティ主導のサービスに投資を行うことです。そうすればサービスへの障壁を打ち破り、何百万という人にケアを提供することができるようになります」
ドナーによる資金提供が国内資金の増加を促す触媒になることを報告書は示しています。2018年から2021年にかけて、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)と世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)による各国へのHIV援助資金の増加は、大多数の国で政府による国内資金の拡大と相関していました。HIV関連の不平等に対処する新たな投資が緊急に必要です。それなのに、国際的な連帯と資金の拡大が最も必要とされているいま、あまりにも多くの高所得国がグローバルヘルスへの援助を削減しているのです。2021年には、HIV プログラムに利用可能な低・中所得国の資金は、必要額より80億ドル不足していました。エイズ対策を軌道に乗せるには、ドナーからの支援の増額が不可欠です。
予算はすべての人びと、とりわけHIV関連の不平等に最も大きな影響を受けている弱い立場の人たちの健康と福祉を優先する必要があります。低・中所得国に対しては、債務の大幅な免除や累進課税などを通じて、医療投資の財政的余地を広げていくべきです。エイズ終結は、終結させないでいることよりもはるかに費用がかかりません。
2021年には、年間65万人がエイズで亡くなり、150万人が新たにHIVに感染しました。
「世界の指導者は何をなすべきか。はっきりしています」とビャニマ事務局長は述べています。「一言でいえば平等化です。平等な権利を有し、サービスを平等に利用でき、最高の科学的成果と医療へのアクセスを平等に保障する。平等化の実現は、疎外された人たちだけを助けるのではありません。すべての人を助けることになるのです」

報告書発表の動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=9edEmkNm0-s

UNAIDS世界エイズデー2022キャンペーン『平等に』 エイズと社会ウェブ版632

 うかうかしていると12月1日を過ぎてしまいますね。TOP-HAT News 第171号(2022年11月)の巻頭は前回に続き世界エイズデーの話題です。掲載を急がねば。

 《国連合同エイズ計画(UNAIDS)は11月7日、世界エイズデー2022キャンペーンの特設ページを公式サイトにアップしました。今年のテーマは『Equalize(平等に)』です》

 どうしてこのテーマなのかということは特設ページの趣旨説明に書かれています。API-Netに日本語仮訳で紹介しました。合わせてご覧ください・・・ということで、少し強引かもしれませんが、国内キャンペーンのテーマ『このまちで暮らしている。私もあなたも』と根っこの部分でつながっているのではないかとも思います。

 HATプロジェクトのブログが引っ越しました。消滅を免れ、ふー、やれやれ。今後ともよろしくお願いします。

 

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   TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

       第171 号(2022年11月)

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 TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 『平等に』 UNAIDSの世界エイズデー2022キャンペーン

2 キャンペーンのポスターから

3 HATプロジェクトが引っ越し

4 東京と大阪でエイズウィークス

◇◆◇◆◇◆

1 はじめに 『平等に』 UNAIDSの世界エイズデー2022キャンペーン

 前号に続き世界エイズデー(12月1日)について書きます。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は11月7日、世界エイズデー2022キャンペーンの特設ページを公式サイトにアップしました。今年のテーマは『Equalize(平等に)』です。

https://www.unaids.org/en/2022-world-aids-day

 特設ページは英語、フランス語、ロシア語、スペイン語で見ることができます。また、ソーシャルメディア用のビジュアル素材にはポルトガル語バージョンもあります。

日本語のページはないので、エイズソサエティ研究会議が趣旨説明要旨の仮訳を作成し、HATプロジェクトのブログに掲載しました。参考にしていただければ幸いです。

https://hatproject.seesaa.net/article/493371036.html

《「Equalize(平等に)」のスローガンは行動を促すものです。不平等に終止符を打ち、エイズ終結を実現するために、効果が実証されている具体的なアクションを私たちすべてに求めています》

 英語の「Equalize」は動詞です。行動を促す以上、メッセージもまた動詞でなければならない。用語選択には、そうした意志が込められているのかもしれませんね。ただし、日本語の場合、「平等にする」「等しくする」などと訳すより、「平等に」の方がより簡潔に動的なメッセージ性を伝えることができるのではないか。そう考えて動詞にはこだわらずに訳しました。

 エイズ対策にもコロナ対策にも共通して言えることですが、重大な感染症の流行に直面して対応するには、まず医療や予防サービスへのアクセスを誰に対しても平等かつ公平に確保できるようにすることが大切です。UNAIDSの特設ページでも真っ先に『HIVの治療・検査・予防のサービスを誰もが受けられるようにするため、サービスの利用可能性も質も適合性も高めていきましょう』と呼びかけています。

 ただし、医療の進歩や普及は対策の根幹をなす極めて重要な要素ではありますが、それだけでパンデミック終結に導くことはできません。医療の進歩に支えられたサービスを社会の中でどう位置付け、広げていくかという大きな課題が残っています。

 感染症の流行から受ける影響を一段と厳しいものにしている社会的な差別やスティグマを解消すること、対策の障壁となっている法律の撤廃や政策の変更を促すこと、そして対策の重要な担い手であるキーポピュレーション(流行に大きな影響を受けている人たち)のコミュニティを支えることへと行動の枠は広がっていきます。

 治療は進歩しました。予防の方法もあります。エイズ対策40年の経験を重ね、それでもなお、エイズの流行は危機の状態を脱していません。それはどうしてなのでしょうか。

 少々、我田引水気味になるのを承知であえて言えば、前回紹介した国内キャンペーンのテーマ『このまちで暮らしている。私もあなたも』と根っこの部分でつながっているように思います。コミュニティアクションのサイトに掲載されている国内啓発キャンペーンテーマの趣旨説明も改めてご覧ください。

http://www.ca-aids.jp/theme/

《対策の選択肢は病気によって異なります。その選択肢を生かしつつ、感染している「私」も、していない「私」も、ともにこのまちで、この社会の中で暮らしている。そのことをもう一度、伝えていきましょう》

 感染症対策の鍵は排除ではなく、信頼である。コロナウイルス感染症COVID-19の流行という新たな試練を経験し、国内、および国際的に採用されたメッセージのこの共通性に注目しつつ世界エイズデーを迎えていただければ幸いです。

 

 

  

2 UNAIDSのポスターから

 UNAIDSの特設ページで紹介されているSNS向けのビジュアル素材をみると、様々な人がそれぞれのメッセージを書いたボードを掲げているポスターがあります。試みにそのメッセージを日本語にしてみましょう。

  • 非犯罪化で命を救う
  • すべての人の人権をまもろう
  • すべての少女と少年が学校に通えるように
  • 愛は愛です
  • コミュニティ主導で
  • 医療費の自己負担をなくし、すべての人に健康を
  • 利益よりも人を優先:医療技術の成果を共有しよう
  • 人種差別と闘おう
  • すべての人に治療を
  • 子供を誰一人、置き去りにしない

ポスターのダウンロードはこちらから

https://trello.com/c/VxGpnduZ/11-posters

 

3 HATプロジェクトが引っ越し

 報告が後先になりましたが、HATプロジェクトのブログが引っ越しました。新ブログはこちらです。

https://hatproject.seesaa.net/

 2004年7月にバンコクで開かれた第15回国際エイズ会議の講演『資金メカニズム検証』に関する報告(掲載日2005年1月13日)以来、すべての投稿が引き継がれています。18年にわたって蓄積された投稿数があまりにも多いため(本数を数えようとしましたが、断念しました)、初期の投稿の検索には少々、時間と手間がかかるかもしれませんが、少しずつアーカイブ検索の機能充実もはかっていきます。

 

4 東京と大阪でエイズウィークス

 12月1日を中心にした数週間のHIV/エイズ関連イベントやキャンペーンを紹介するTOKYO AIDS WEEKS(東京エイズウィークス)2022とOSAKA AIDS WEEKs(大阪エイズウィークス)2022が今年も展開中です。エイズデーの1日だけでなく、1週間の限定でもなく、もう少し幅を持たせています。

 そもそも世界エイズデーは1988年1月にロンドンで開催された世界エイズ対策保健大臣会議で設定が正式決定し、その年の12月1日が第1回となりました。

つまり政治主導で生まれた記念日ではありますが、それが世界に広がったのは、HIV陽性者やエイズで亡くなった人の家族・友人といった人たちを含む様々な立場の人が、それぞれの思いを託して幅広くイベントを企画し、参加してきたからにほかなりません。

 2つのエイズウィークスは東京、大阪という大都市を起点にしていますが、紹介されているイベントは2つの都市で開催するものに限定されているわけではありません。期間も参加する人たちも、幅広い包摂性によって成り立っている。あえて最大の特徴をあげるとすれば、そうした点にあります。詳しい情報はそれぞれの公式サイトをご覧ください。

TOKYO AIDS WEEKS 2022

https://aidsweeks.tokyo/

OSAKA AIDS WEEKs 2022

https://osaka.aids-week.com/

 

 

『社会的イネーブラー』 エイズと社会ウェブ版631

 新しいコンセプトを打ち出し、それをより的確に表現したい。そうした熱意の表れなのでしょうが、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の発表文書を日本語で紹介しようとすると、なじみのない言葉が次々に登場し、どう訳したらいいのか当惑することがしばしばあります。

 なじみのない用語とコンセプトに直面し、その都度、Bankは銀行、Democracyは民主主義・・・といった具合に新しい訳語を生み出していった先人の努力には改めて敬服の念を禁じ得ません。

 「新しい酒は新しい革袋に盛れ」とはいうものの、あまりなじみのない用語が仲間内だけで流通し、それで事足れりとするような言語的排他状態もできれば避けたい。なるべくなら、いま日常的に使われている用語をうまく使いまわしていけないものか。

 それができればねえ・・・というわけで、先人たちの偉業には比ぶべくもありませんが、現代性教育研究ジャーナルNo140(2022年11月15日)の連載コラム『多様な性のゆくえ』第67回(社会的イネーブラー)はささやかな苦労話です。

https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/kyoiku_journal.html

 PDF版の12ページに掲載されています。

 

 

 

報告は減ったけど 東京都エイズ通信第183号 お詫びと訂正の追加あり

【お詫びと訂正】

 毎月後半に配信されるメルマガ東京都エイズ通信の配信がなぜか本日(12月7日)ありました。あれ、どうしたんだろうと見てみると、タイトルは 東京都エイズ通信第184号(臨時号)。目次は以下のようになっています。

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東京都エイズ通信第184号(臨時号)のトピック

●視聴申込受付中!「東京都エイズ予防月間オンライン講習会」の開催
(12月12日19時)(再周知)

● 【お詫び】第183号の感染者報告数(東京都)の訂正について

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 統計数字の誤りはいち早く伝える。この鉄則に基づく臨時発行でしょうか。

 ここでは【お詫び】の部分をそのまま紹介します。

   ◇
 東京都エイズ通信第183号の感染者報告数(東京都)が誤っておりました。
正しくは以下のとおりです。大変申し訳ございませんでした。

令和4年1月1日から令和4年11月13日までの感染者報告数(東京都)
  ※( )は昨年同時期の報告数

HIV感染者         197件    (254件)
AIDS患者          45件    ( 60件)
  合計                242件       (314件)

   ◇

 あ痛たたた!実は当ブログも183号の数字をそのまま紹介していました。謹んでお詫びをするとともに報告の数字を上記のように訂正します。

    (2022年12月7日)

 ◆◇◆

 メルマガ東京都エイズ通信第183号が11月18日、配信されました。通常だと月末配信なのですが、今回は少し早めです。11月16日に東京都エイズ予防月間がスタートしたので、それに合わせた感じでしょうか。

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  • 令和4年1月1日から令和4年11月17日までの感染者報告数(東京都)

  ※( )は昨年同時期の報告数

HIV感染者         181件    (254件)

AIDS患者          46件    ( 60件)

合計                224件     (307件)

HIV感染者数及びAIDS患者共に令和3年よりも減少しています。

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報告の減少傾向は依然、続いています。あくまで報告ベースの数字ですが、新規HIV感染者・エイズ患者報告の合計は300人を下回りそうです。新規HIV感染者報告数だけだ200件を下回るかもしれません。微妙なところです。

ただし、実際の感染が減少しているかどうかは、分かりません。判断が難しいですね。コロナの流行による影響で、報告が実際の感染動向を反映しているとは言いえない状態だからです。1年間同じことを言いつのっているうちに、年の瀬は目前というところまで来てしまいました。引き続き注視して・・・これも繰り返しになると、注視していないのと同じですね。

12月12日には、東京都エイズ予防月間オンライン講演会「HIV/エイズの今~あなたの知識と意識をアップデート~」も予定されています。事前予約制です。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/aids/yobo_gekkan/yobo_g_keihatsu.html

 

 東京都エイズ通信の配信登録はこちらから。

www.mag2.com

 

 

 

ロシアの反LGBT法拡大に国連が深い懸念 エイズと社会ウェブ版630

 ロシアで同性愛宣伝禁止法の対象と適用の拡大をはかる反LGBT法案の議会承認手続きが進められていることから、ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官ウィニー・ビヤニマ国連合同エイズ計画(UNAIDS)がそれぞれ深い懸念を表明し、法案への反対と同性愛宣伝禁止法そのものの撤廃を求めています。

 UNAIDSはプレス声明を発表し、国連人権高等弁務官事務所は記者会見で広報官が発表しました。

 ロシアの同性愛宣伝禁止法は2013年に制定され、青少年に対し「非伝統的な性的関係」に関する情報の提供を禁じています。この法律は国際的な批判を受け、翌2014年のソチ冬季五輪で欧米の首脳が相次いで開会式出席を取りやめることになりました。

 いま思えば、ロシアはソチ五輪の閉幕直後にクリミアを併合し、結果として国際的にそれを容認するかたちになってしまったことが、現在のウクライナ侵攻という暴挙につながっています。

 私が把握できるのは日本国内で報道された情報の範囲に限られていますが、修正法案は対象を青少年だけでなく全年齢層に広げ、言論、表現活動全体に規制が及ぶようです。振り返ってみれば、国内における性的少数者への抑圧的姿勢を強めることは、現在の世界的危機を招くマーカーだったというべきでしょう。政治と性に関わる動きを軽視したり、看過したりすることはできません。・・・といっても、私には何もできないのですが、せめて国連関係の発表を日本語仮訳で紹介しておきましょう。

 国連人権高等弁務官事務所の発表は反LGBT法案(anti-LGBT bill)、UNAIDSの声明は「LGBTQプロパガンダ」法('LGBTQ propaganda' law)という呼称を使っています。法案と現行法の違いも含め、用語に若干の差異がありますが、それぞれの英文に沿って訳しました。

  ◇

LGBT法案拡大に反対し、撤廃をロシア議会に要請 ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官

 2022年10月28日、国連人権高等弁務官事務所、ラヴィナ・シャムダサニ広報官会見

https://www.ohchr.org/en/press-briefing-notes/2022/10/turk-calls-russian-legislators-repeal-not-expand-anti-lgbt-bill

ロシア議会(下院)は10月27日(木)、現行の同性愛宣伝禁止法を拡大し、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)の人たち、およびその人権に関するいかなる議論も情報の共有も禁止する改正案を承認しました。

国際的な人権規範と基準に対する侵害が一段と強まることを、ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官は深く懸念しています。

修正法案は2013年に制定された法律の規制拡大をはかるものです。現行法自体が国連の人権専門家による広範な調査の結果、差別的で表現の自由を侵害し、ヘイトスピーチヘイトクライム児童虐待を含む迫害の増加につながると非難されてきました。

法律の適用範囲を拡大し、成人を含むすべての人について、関連するすべての通信を全面的に禁止することになり、状況は一段と悪化します。修正提案ではトランスジェンダーの人たちも対象になります。

ロシア議会には提案検討の機会がさらに2回あることから、高等弁務官はこの修正提案を否決し、既存の法律を廃して、性的指向および性自認に基づく差別と暴力の禁止に向けて積極的に闘うよう緊急手段を取ることを求めています。

高等弁務官はまた、いかなる集団に対しても排除やスティグマ・差別で臨むことは、暴力誘発し、社会全体をむしばむものであると指摘しています。

 

  

ロシアに「LGBTQ プロパガンダ」法撤廃を要請 UNAIDSプレス声明

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2022/october/20221028_russia-LGBTQ-law

ジュネーブ 2022年10月29 いわゆる「LGBTQプロパガンダ」法延長の意向を示したロシア政府声明に対し、UNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長が、国連人権高等弁務官と共に深い懸念を表明した。

「法律の延長は、人びとの自立と尊厳、平等の権利の侵害を続けるものです」とビヤニマ事務局長はいう。「LGBTQの人たちの安全と福祉を損なうだけでなく、人びとの健康状態に深刻な影響を及ぼします。言論の自由を制限するなど懲罰的かつ制限的な法律が、HIV感染のリスクを高め、サービスへのアクセスを減らすことは、エビデンスとしてすでに明らかになっています。ピアネットワークを含む保健サービスの提供者が性と生殖に関する健康情報とサービスを提供する能力がこうした法律によって妨げられ、性的指向に関連するスティグマの拡大につながり、人びとが自分自身およびコミュニティの健康を守ることを困難にしてきました。こんな状態では2030年のエイズ終結に向けたロシアの努力も台無しです。ロシア議会およびロシア政府には、このような有害な提案は撤回し、既存の法律を廃止することを求めます。スティグマの拡大につながるアプローチは、公衆衛生を損ない、パンデミックを永続させ、すべての人に害を与えます。 社会的連帯と包摂、そして人権をまもることがエイズ終結の鍵であり、すべての人の健康を確保することにもなります」

 

 

『 同時進行するパンデミックの中で』 TOP-HAT News第170号(2022年10月) エイズと社会ウェブ版629

 7月に発表されているので、少し遅くなりましたが、TOP-HAT News第170号(2022年10月)の巻頭は、今年の世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマの紹介です。

 全国各地の自治体やNPOの準備にテーマを反映させていただこうと思えば、7月には公表する必要があり、そうかといってあまり早く取り上げてもキャンペーンの時期には「何だったかな」と忘れられてしまう。ということで、時期を見計らって10月になりました。

 今年のテーマは《このまちで暮らしている。私もあなたも。12月1日は世界エイズー》です。しつこいようですが、趣旨説明の一部も再掲しておきます。

 《対策の選択肢は病気によって異なります。その選択肢を生かしつつ、感染している「私」も、していない「私」も、ともにこのまちで、この社会の中で暮らしている。そのことをもう一度、伝えていきましょう》

 皆さん、よろしく。

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第170号(2022年10月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 同時進行するパンデミックの中で

2 国際保健戦略官を新設 外務省

3 ハイブリッド開催に変更 第36回日本エイズ学会学術集会・総会

4  150セッションをオンラインで公開 第24回国際エイズ会議

◇◆◇◆◇◆

1 はじめに 同時進行するパンデミックの中で

 秋も深まり12月1日の世界エイズデーが近づいてきました。1988年に第1回世界エイズデーが創設されてから今年で35回目となります。

 国内啓発キャンペーンの主唱者である厚労省と公益財団法人エイズ予防財団は毎年のテーマを決め、7月に発表しています。

12月なのに発表がかなり早いですね。まだ気分が盛り上がらない。そう思われがちですが、全国の自治体や保健所、HIV/エイズ対策に取り組むNPOの人たちに活用を呼びかけ、実際にポスターやチラシなどを作成する際にメッセージとして使ってもらえるようにしておくには、このくらいの時間的余裕が必要になります。したがって、すでにご存じの方も当然いるでしょうが、改めて今年のテーマを紹介しておきましょう。

《このまちで暮らしている。私もあなたも。12月1日は世界エイズデー

HIV/エイズ分野の3つのNPOエイズ予防財団が中心となって運営する情報共有型キャンペーン『コミュニティアクション』(Community Action on AIDS)の公式サイトには、今年のテーマの趣旨が次のように説明されています。

http://www.ca-aids.jp/theme

《コロナの流行はエイズ対策にも影響を与えています。社会的距離が時には人を孤立に追い込む。そのこともまた、深刻な影響です。どうすれば分断を克服できるのでしょうか》

 エイズの流行は40年も続いているせいか、最近は緊急事態としての新型コロナ感染症COVID-19の影に隠れ、あまり目立たない印象があります。

 ただし、流行は終わったわけではなく、コロナとエイズという2つのパンデミックが同時進行している事態がもう3年も続いています。

 国際的にはこの同時進行をColliding Pandemics(衝突するパンデミック)と表現することもあります。

 しかし、この衝突によって、どちらかの感染症の流行が力負けして消えていくというわけではどうもなさそうです。2つのパンデミックは、「衝突」よりも「同時進行」としてとらえるべきでしょう。同時に進行することでそれぞれの対策の成立基盤が崩され、流行の拡大を招く恐れすらあります。

 したがって、2つのパンデミックへの対策も、対立したり、衝突したりするのではなく、逆に相乗効果を高めていく工夫が必要です。

 『このまちで暮らしている。私もあなたも』という一見、何でもないフレーズには、HIV/エイズ対策の40年にわたる困難な歴史から、その知恵を引き出そうとする意図がおそらくはあります。でも、あまりにも当然すぎて、これだけでは「だからどうした」と言われ、終わってしまいそうですね。ただし、『12月1日は世界エイズデー』というさらに何の変哲もないフレーズが加わることで相乗効果が生まれてきます。再びコミュニティアクションのキャンペーンテーマ欄から。

《対策の選択肢は病気によって異なります。その選択肢を生かしつつ、感染している「私」も、していない「私」も、ともにこのまちで、この社会の中で暮らしている。そのことをもう一度、伝えていきましょう》

 蛇足ながら付け加えれば、これは20年近く前に生まれ、その後もずっと使われてきた『Living Together』のメッセージでもあります。

 

2 国際保健戦略官を新設 外務省

 グローバルヘルス課題への対応を強化するため、外務省が9月26日付で、国際協力局内に「国際保健戦略官」を新設しました。、これまでの「国際保健政策室」は「国際保健戦略官室」に改組され、江副聡国際保健政策室長が国際保健戦略官となっています。

 外務省の報道発表では《新型コロナウイルスの世界的感染拡大により明らかになったように、国際保健(グローバルヘルス)は、経済・社会・外交・安全保障に直結する重要課題となっています》としたうえで、改組の理由を次のように説明しています。

 《健康安全保障に資するグローバルヘルス・アーキテクチャーを確立し、パンデミックを含む健康危機に対する予防、備え、対応を強化し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けて取り組むことが一層求められています》

 UHCは《すべての人が、効果的で良質な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられること》です。詳しくは外務省の報道発表をご覧ください。

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_001271.html

 

3 ハイブリッド開催に変更 第36回日本エイズ学会学術集会・総会

 11月18日(金)~20日(日)開催予定の第36回日本エイズ学会学術集会・総会がオンラインも含めたハイブリッド開催に変更されました。理由は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が先行き不透明なことをふまえ』ということです。

 現地開催の会場は予定通り、静岡県浜松市アクトシティ浜松ですが、これにライブ配信、オンデマンド配信が加わります。

 ライブ配信は現地開催と同じ11月18日(金)~20日(日)。オンデマンド配信は12月1日(木)~20日(火)です。日程などの都合で、参加しようか、どうしようかと迷っていた人には、選択肢が広がることになりますね。

 開催概要とプログラムは公式サイトでご覧ください。

 http://aids36.umin.jp/

 

4 第24回国際エイズ会議の150のセッションをオンラインで公開

 今年7月29日から8月2日まで、カナダ・モントリオールの会場とオンラインによるハイブリッド開催となった第24回国際エイズ会議(AIDS2022)の主要プログラムが、会議の公式サイトで公開されました。

 https://www.aids2022.org/

 トップページに掲載されている『AIDS 2022 content now available』をご覧ください。

 英語またはフランス語で、なおかつ操作に少々、手間取りますが、150のセッションと2100のアブストラクト、2400のeポスターを見ることができるということです。ただし、全部で何百時間分もあるので、すべてを見る人はたぶん、いないでしょうね。

 

「知って、学んで、行動する」(東京都エイズ予防月間テーマ)

 メルマガ東京都エイズ通信の第182号が10月27日、発行されました。

 

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  • 令和4年1月1日から令和4年10月25日までの感染者報告数(東京都)

  ※( )は昨年同時期の報告数

 

HIV感染者         184件    (252件)

AIDS患者          40件    ( 55件)

合計                224件     (307件)

 

HIV感染者数及びAIDS患者共に令和3年よりも減少しています。

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 減少傾向が続いています。HIV感染者・エイズ患者報告数の合計は年間で200件台に下がりそうです。ただし、あくまで報告ベースの数字なので、実際に感染の減少が続いているのかどうかは分かりません。コロナの影響を考えると、報告の数字と実際の感染動向には乖離がありそうな印象も受けます。

 11月16日から東京都のエイズ予防月間が始まります。今年度のテーマは「知って、学んで、行動する」です。

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www.mag2.com