『COVID-19を最後のパンデミックに』(WHO独立委員会報告) エイズと社会ウェブ版567

 いまはコロナパンデミックの真最中ですね。したがって、「予想された事態だったのに、なんで準備しておかなかったのだ」などと言って、混乱に拍車をかけても仕方がないのかもしれません。当面の対応に最善を尽くすことが先決です。

 それでも、こういう時じゃないと・・・ということでしょうか、世界保健機関(WHO)の独立専門家委員会が5月12日、報告書『COVID-19を最後のパンデミックに』を発表しました。

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 確かに、いまさら遅いのかもしれないけれど、転ばぬ先の杖といいますか、新興感染症の流行は十分に想定内の事態であり、そのpreparedness(備え)の必要性は前々から指摘されていました。

 個人的には、現在進行形のパンデミックであるHIV/エイズの流行に対応することが、次のパンデミックへの備えにもなるといったことを折に触れて言ったり、書いたりしてきたつもりです。ただし、ま、それも大切だね、がんばってね、と突き放すように声をかけてくださればまだ、ありがたい方で、たいがいは黙殺です。「エイズはもういいだろう」ということでしょうか。危機は緊急だから危機なのであって、時間がたてば危機ではなくなってしまうといいますか・・・。

 これは日本に限った現象ではなく、独立専門家委員会の議長の一人であるリベリアエレン・ジョンソン・サーリーフ元大統領は、新たな報告書の発表に際し、次のように語っています。

 「国連および各国の首都にある保管室の棚には、かつて経験した保健危機に関する報告と検証が山ほど残されています。その警告に注意を払っていれば、今日の大惨事は避けられたはずです」

 そうだよなあ、と思いつつ、それでも「だから言ったじゃないの」とは言いたくない。その気持ちが、医学や公衆衛生の専門家でも何でもない一介の物書きがエイズ対策に関わり続けてきた原動力でもあったと思うからです。

 ま、自分のことはどうでもいいや。

 昨年5月の世界保健総会の決議に基づいて設置された世界保健機関(WHO)の『パンデミックへの備えと対応のための独立委員会』(独立委員会)は8カ月にわたる調査と検討を経て『COVID-19を最後のパンデミックに』を発表しています。

 すでにジュネーブ発の報道で伝えられてもいますが、個人的にはこの委員会についてはほとんどフォローしていなかったので、基本的なことから知っておきたいと思い、当日のプレスリリースを日本語に訳してみました。訳文は末尾に付けておきます。、あくまで私家版の仮訳なので、詳しくは独立委員会のサイトで原文をご確認ください。

http://News - The Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response

 公式サイトのニュース欄には5月12日付で英、仏、スペイン語版のリリースが載っています。日本語版はないけれど、毎度のことだし、仕方がないか。

 委員会はサーリーフ元大統領とニュージーランドヘレン・クラーク元首相の2人が議長となり、このお2人を含む計13人の委員で構成されています。そうそうたるメンバーですね・・・といっても、私が直接、お会いしたことがあるのは、ヘレン・クラーク共同議長と世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の先代と先々代の事務局長だったマーク・ダイブル氏、ミシェル・カザツキン氏ぐらいだと思うのですが、エコノミストフェミニスト、国連機関の事務局長経験者、国境なき医師団元代表など略歴を拝見しただけでも、そうそうたる感じがします。

 報告書は、当面のCOVID-19パンデミック対策への提言と、まだ来ていない(ただし、発生の恐れは常にある)新たな保健危機への対応に関する提言の大きく二つに分かれています。

 COVID-19対策では、ワクチン分野でCOVAX Gavi事前買取制度(AMC)を活用して低・中所得国向けに10億回分の供給を今年9月までに約束すること、G7はACTアクセラレーター(COVID-19の検査や診断、治療、ワクチンなどの開発、生産、公平な提供と保健システムの強化に向けた国際的枠組み)で必要とされる190億ドルの60%を2021年中に提供することなどが含まれています。国際公共財の確保という観点から医療分野の支援を位置づけることが考え方の基本といえるでしょう。

 将来のパンデミックへの備えも、国際公共財としての支援の原則を重視し、グローバルヘルス脅威対策協議会の設立など7項目の提言を行っています。

 プレスリリースとはいえ、けっこう長めなので、詳しくは以下の日本語仮訳を参考にしてください(あくまで参考です)。 

 

パンデミックの予防、対応システムを緊急に改革するよう要請 WHO独立専門家委員会

 パンデミックへの準備と対策に向けた独立委員会は本日、COVID-19パンデミック終結と次の危機を防ぐための大胆かつ不可欠な改革を世界に呼びかけた

theindependentpanel.org

 

2021年5月12ジュネーブ

世界的な専門家で構成する委員会が本日、COVID-19ワクチンの配布と資金提供体制を見直し、入手可能性と生産能力を大きく向上させること、効果が証明されている公衆衛生対策を採用することなど一連の大胆な勧告を行いました。すべての国で直ちに、そして継続的にこの勧告を実行に移し、COVID-19パンデミックを終わらせることを求めています。

委員会はまた、各国政府と国際社会が将来のパンデミックを防ぐための改革のパッケージを直ちに採用し、パンデミックへの備えと対応のシステムの変革に緊急に取り組むことも勧告しています。

パンデミックへの備えと対応のための独立委員会(独立委員会)は、現在のパンデミックから得られた経験と教訓を独立の立場で公平かつ包括的に検証することを求めた世界保健総会決議に基づき、世界保健機関(WHO)の事務局長が委員を任命しました。また、その検証には、パンデミックの予防と準備、対応能力の向上に必要な勧告を行うことも含まれています。委員会が本日、発表した報告書『COVID-19を最後のパンデミックに』はその調査結果と勧告をまとめたものです。

ニュージーランドヘレン・クラーク元首相とリベリアエレン・ジョンソン・サーリーフ元大統領が共同議長を務める委員会は過去8カ月にわたり、パンデミックの発生と拡大の経緯、世界および各国の国内対応についてエビデンスを詳細に検討してきました。

現在のシステムが各国の国内でも、国際的にも、COVID-19から人びとを守るのに適切なものではなかったと報告書は指摘しています。2019年12月の中旬から下旬にかけて原因不明の肺炎の集団発生が報告されてから「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言されるまでの期間が長過ぎました。2020年2月は、多くの国でSARS-CoV-2の拡大を抑え、世界的な保健、社会、経済上の大惨事を防ぐ措置を講じることができたはずでしたが、失われた月になってしまいました。委員会によると、COVID-19以外にも感染性の高い新たな病原体が出現する可能性は常にあり、その病原体がパンデミックに発展することを防ぐのに現行システムは明らかに適していません。

COVID-19パンデミックが世界中でコミュニティを荒廃させ続けていることから、独立委員会はその拡大を止めるために、直ちに実行すべき以下のような勧告を行っています。

 

  • ワクチン供給網が適切に確保されている高所得国は自国の供給拡大と合わせ、92の低・中所得国に対しても、2021年9月までにCOVAX Gavi事前買取制度(AMC)を活用して少なくとも10億回分のワクチン供給を約束しなければならない。
  • 主要なワクチン製造国および製造業者は、WHOと世界貿易機関WTO)の後援のもとで、自主的特許許諾と技術移転に同意すべきである。3カ月以内にこうした行動をとらなければ、知的所有権の貿易関連側面に関する協定(TRIPS協定)に基づく知的財産権の放棄を直ちに発効すべきである。
  • G7は2021年中に、ACTアクセラレーター(COVID-19の検査や診断、ワクチンの保健システムの強化に向けた国際的枠組み)で必要とされる190億ドルの60%を提供することを直ちに約束し、こうした支援を国際公共財に対する分担の原則として継続させなければならない。

 

すべての国は、パンデミックの抑制に向けて、効果が証明されている公共衛生的手段を必要な規模で採用すべきです。それには国の指導者のリーダーシップが極めて重要です。

 

世界はまた、将来的に発生の恐れがあるパンデミックを防ぐための準備を緊急に進めなければなりません。独立委員会はこのため、各国の国家元首並びに政府首脳に対し、既存のシステムの変革を先頭に立って進めることを求めています。委員会が求めるのは以下のような大胆で前向きな改革です。

 

  • グローバルヘルス脅威対策協議会の設立。この協議会により、パンデミックへの備えと対応について政治の関与を維持し、関係者が説明責任を果たせるよう認識を高め、調査を促す。また、各国は今後6カ月以内にパンデミック対策枠組み条約を採択する必要がある。
  • 世界規模で、透明性の高い監視システムを確立する。このシステムに与えられた権限により、WHOは承認を求めることなく、即座にパンデミックの可能性のあるアウトブレイク情報を公開し、最短の通知で専門家を派遣して調査を行えるようになる。
  • 国レベルで今すぐパンデミック対策への投資を行う。次の危機が発生してからでは手遅れになる。すべての政府は準備計画を見直し、次の保健危機に備えて必要な資金と人員の配置を行う必要がある。
  • ACTアクセラレーターを真のグローバルプラットフォームに変える。ACTアクセラレーターは、ワクチンや診断薬、治療薬、医療用品などを国際公共財として、世界中に迅速かつ公平に提供できるようにすることを目的としている。市場モデルからグローバルな公共財の提供を目的としたモデルへの移行が必要になる。
  • WHOの権限と資金調達能力の強化をはかる。使途指定の資金供与を控え、加盟国の拠出金を引き上げるなど、新たな資金調達モデルを開発することも含む。
  • 国際パンデミック資金調達ファシリティの創設。継続的な準備資金の確保に向け、年間約50億-100億ドルの長期資金(10-15年)を動員できる。また、パンデミックの宣言時には、将来のコミットメントを前倒しすることにより、直ちに500-1000億ドルの支出が可能になる。パンデミックへの準備、対応能力の開発を支援する機関に対しては、グローバルヘルス脅威対策協議会が資金配分を決定し、監視にあたる。
  • 各国元首および政府の長は、グローバルサミットに参加し、政治宣言を採択する。国連総会における宣言を通し改革への関与を続ける。

 

委員会報告書はまた、国家元首と政府首脳の責任で、パンデミックへの備えと対応に向けて政府全体の調整にあたるパンデミック調整官を任命するなど、個々の国に対する勧告も行っています。

報告書の発表に際し、委員会共同議長のリベリア元大統領、エレン・ジョンソン・サーリーフは大胆な改革の必要性を強調し、次のように述べています。

「メッセージは簡潔かつ明快なものです。現行システムは、COVID-19パンデミックから私たちを守ることができなかった。そして、私たちがいまこの状態を変えなければ、いつ襲ってくるかもしれない次のパンデミックの脅威からも、守られることはないでしょう」

「国連および各国の首都にある保管室の棚には、かつて経験した保健危機に関する報告と検証が山ほど残されています。その警告に注意を払っていれば、今日の大惨事は避けられたはずです。今度こそ本気で変えなければなりません」

もう一人の共同議長であるニューシーランドヘレン・クラーク元首相は次のように語りました。

「今回のパンデミックがもたらした被害の大きさ、および世界中の人たちが今後も受け続ける影響を考え、委員会は、何が起こったのか、そして、どうして起こったのかをきちんと文書に残し、変化に向けた大胆な勧告を行うことを決議しました」

「COVID-19がもたらす厳しい病状と死、そして社会経済的損失を終わらせるためにこのツールを利用してほしい。指導者たちはいま行動し、そして次に同じようなことが起こるのを止める以外に選択肢はありません」

委員会は報告書および勧告とともに、何が起こったかを記録した年表など一連のバックグラウンドペーパーも発表しています。数多くの文献を読み、独自の調査を行い、専門家を囲んで話し合い、詳細なインタビューやタウンホール形式の会議により最前線で働く人びと、および女性や若者との対話を行った成果の集大成です。 また、オンラインによる意見も受けています。

現在のパンデミックがもたらす負担のかかり方が均一ではないことに、委員会は一貫して深い懸念を示してきました。すでに不利な立場に置かれている人たちに対する社会的、経済的な影響は壊滅的です。推定で最大1億2500万人が極度の貧困に追いやられ、学校が閉鎖されることで7200万人の小学生が本を読んだり理解したりできなくなるリスクにさらされています。女性には不釣り合いな負担がかかっています。ジェンダーに基づく暴力は記録的に増え、児童婚も増加しています。2020年には世界のGDPの損失が7兆ドルで、アフリカ大陸全体の2019年のGDP(6.7兆ドル)を上回っています。今回のパンデミックは、第二次世界大戦以来、最も深刻な衝撃を世界経済に与えています。

 

編集者のための背景説明

独立委員会は2020年5月の世界保健総会決議73.1に基づき、世界保健機関(WHO)の事務局長が設立しました。ニュージーランドヘレン・クラーク元首相、リベリアエレン・ジョンソン・サーリーフ元大統領が共同議長を務めています。

委員会メンバーは13人で、共同議長が選考しました。感染症、グローバルヘルスおよび国の保健政策と資金調達、流行発生と緊急事態、経済、若者の立場、女性と少女の福祉などの分野で実質的な経験と専門知識を持つ人たちで構成されています。また、WHOを含む国際機関に関する知識、および国際的なプロセスについての経験も共有しています。

 独立委員会の使命は、過去および現在の教訓を踏まえ、各国およびWHOをはじめとする国際機関が保健分野の脅威に効果的に対応できるようにするため、エビデンスに基づいて今後の進路を示すことです。委員会は過去8カ月の間、COVID-19のパンデミックの流行と対応に関するエビデンスを独立の立場で公平かつ厳密に検証してきました。委員に関する情報はこちらで。 

theindependentpanel.org

 

 委員会は数多くの文献を検証し、独自調査を行い、円卓会議や詳細なインタビューで数十人の専門家から話を聞いています。タウンホール形式の会合を開きパンデミックの最前線で働く人たちと話す機会も設けてきました。また、希望者からの意見も受けています。

 報告書本文と勧告に加え、以下の付属文書も含まれています。

  • Learning from The Past
  • The Chronology Including Literature Review
  • From Science to Policy
  • National and Sub-National Responses
  • Impact on Essential Health Services
  • Access to Essential Supplies
  • Access to Vaccines, Diagnostics, And Therapeutics
  • Understanding Communication
  • Community Involvement
  • International Treaties and Conventions
  • WHO – An Institutional Review
  • The Economic Impact
  • The Social Impact
  • Human Rights

これらの文書は独立委員会のウェブサイトで公表します。

 

 

Expert independent panel calls for urgent reform of pandemic prevention and response systems

The Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response is today calling on the global community to end the COVID-19 pandemic and adopt a series of bold and essential reforms to prevent the next crisis

 

GENEVA –12 May 2021  

A panel of leading experts is today calling on the global community to end the COVID-19 pandemic by immediately implementing a series of bold recommendations to redistribute, fund, and increase the availability of and manufacturing capacity for vaccines, and to apply proven public health measures urgently and consistently in every country.

The Panel is also recommending that national governments and the international community immediately adopt a package of reforms to transform the global pandemic preparedness and response system and prevent a future pandemic. 

The Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response (The Independent Panel) was appointed by the World Health Organization (WHO) Director-General in response to a World Health Assembly resolution calling for an independent, impartial, and comprehensive review of experiences gained and lessons to be learned from the current pandemic. The review was also asked to provide recommendations to improve capacity for global pandemic prevention, preparedness, and response. The Panel released its findings and recommendations today in its main report: COVID-19: Make it the Last Pandemic.

The Panel, co-chaired by the Rt Hon. Helen Clark, former Prime Minister of New Zealand, and Her Excellency Ellen Johnson Sirleaf, former President of Liberia, has spent the past eight months rigorously reviewing the evidence on how a disease outbreak became a pandemic, and on global and national responses.

The report demonstrates that the current system—at both national and international levels— was not adequate to protect people from COVID-19. The time it took from the reporting of a cluster of cases of pneumonia of unknown origin in mid-late December 2019 to a Public Health Emergency of International Concern being declared was too long. February 2020 was also a lost month when many more countries could have taken steps to contain the spread of SARS-CoV-2 and forestall the global health, social, and economic catastrophe that continues its grip. The Panel finds that the system as it stands now is clearly unfit to prevent another novel and highly infectious pathogen, which could emerge at any time, from developing into a pandemic.

 

As the COVID-19 pandemic continues to devastate communities across the world, the Independent Panel is making a series of immediate recommendations to halt its spread. It recommends that:

 

  • High income countries with a vaccine pipeline for adequate coverage should, alongside their scale up, commit to provide to the 92 low and middle-income countries in the COVAX Gavi Advance Market Commitment with at least one billion vaccine doses by September 2021.
  • Major vaccine-producing countries and manufacturers should convene, under the joint auspices of the WHO and the World Trade Organization (WTO) to agree to voluntary licensing and technology transfer. If actions on this don’t occur within three months, a waiver of intellectual property rights under the Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights should come into force immediately.
  • The G7 should immediately commit to provide 60% of the US$19 billion required for the Access to COVID-19 Tools Accelerator (ACT-A) in 2021 for vaccines, diagnostics, therapeutics, and strengthening of health systems, and a burden-sharing formula should be adopted to fund such global public goods on an ongoing basis.

 

Every country should apply proven public health measures at the scale required to curb the pandemic. Leadership from heads of state and government to achieve this is crucial.

 

The world must also urgently prepare to prevent a future outbreak from becoming a pandemic. To this end, the Independent Panel calls for the engagement of heads of state and government to lead on efforts to transform the existing system. The Panel calls for a series of bold and forward-looking reforms, including: 

  • Establishing a Global Health Threats Council that will maintain political commitment to pandemic preparedness and response and hold actors accountable, including through peer recognition and scrutiny. Countries should also adopt a Pandemic Framework Convention within the next six months.
  • Establish a new global system for surveillance based on full transparency. This system would provide the WHO with the authority to publish information about outbreaks with pandemic potential on an immediate basis without needing to seek approval and to dispatch experts to investigate at the shortest possible notice.
  • Invest in national preparedness now as it will be too late when the next crisis hits. All governments should review their preparedness plans and allocate the necessary funds and people required to be prepared for another health crisis.
  • Transform the current ACT-A into a truly global platform aimed at delivering global public goods including vaccines, diagnostics, therapeutics, and supplies that can be distributed swiftly and equitably worldwide—shifting from a market model to one aimed at delivering global public goods.
  • Focus and strengthen the authority and financing of the WHO, including by developing a new funding model to end earmarked funds and to increase Member State fees.
  • Create an International Pandemic Financing Facility, which would have the capacity to mobilize long term (10-15 year) contributions of approximately US$5-10B per year to finance ongoing readiness. It would also be ready to disburse from US$50-100B at short notice by front-loading future commitments in the event of a pandemic declaration. The Global Health Threats Council would allocate and monitor the funding to institutions which have the capacity to support the development of preparedness and response capacities.
  • Heads of state and government should at a global summit adopt a political declaration under the auspices of the UN General Assembly to commit to these transformative reforms.

 

The Panel’s report also shared recommendations for individual countries, including that heads of state and government should appoint national pandemic coordinators who are accountable to them, and who have a mandate to drive whole-of-government coordination for pandemic preparedness and response.

In the presentation of the report and its findings, Panel Co-Chair and former President Ellen Johnson Sirleaf stressed the need for bold reform:

“Our message is simple and clear: the current system failed to protect us from the COVID-19 pandemic. And if we do not act to change it now, it will not protect us from the next pandemic threat, which could happen at any time.”

“The shelves of storage rooms in the UN and national capitals are full of reports and reviews of previous health crises. Had their warnings been heeded, we would have avoided the catastrophe we are in today. This time must be different.”

 

Panel Co-Chair Rt Hon. Helen Clark, said:

“Given the scale of devastation from this pandemic and its continuing impact on people across the globe, the Panel resolved to document fully what happened and why, and to make bold recommendations for change.”

“The tools are available to put an end to the severe illnesses, deaths, and socio-economic damage caused by COVID-19. Leaders have no choice but to act and stop this happening again.” 

The Panel is releasing the report and recommendations together, with a range of background papers which include the authoritative chronology of what happened. This is the culmination of multiple literature reviews, original research, discussions with experts in roundtables and in-depth interviews, and dialogue with those working on the front-line, with women and youth in town hall-style meetings. It also received online contributions to its work.

 

The Panel has consistently raised its deep concern that the burden of the current pandemic is being unevenly shared. It has had devastating social and financial consequences for those already disadvantaged. Up to 125 million more people are estimated to have been pushed into extreme poverty, while 72 million more primary school-age children are now at risk of being unable to read or understand a simple text because of school closures. Women have borne a disproportionate burden. Gender-based violence is at record levels, and child marriages have increased. In addition, the world lost US$7 trillion in GDP in 2020 – more than the 2019 GDP of the entire African continent (US$6.7 trillion). The pandemic has caused the deepest shock to the global economy since World War II.

 

Background for Editors

The Independent Panel was established by the World Health Organization (WHO) Director-General in response to the World Health Assembly resolution 73.1 issued in May 2020. The Panel’s Co-Chairs are the Rt Hon. Helen Clark, former Prime Minister of New Zealand, and Her Excellency Ellen Johnson Sirleaf, former President of Liberia.

The Independent Panel has a total of 13 members, selected by the Co-Chairs. The Panelists have a substantial mix of skills and expertise in infectious disease, global and national health policy and financing, outbreaks and emergencies, economics, youth advocacy, and in the wellbeing of women and girls. They also share knowledge of the international system, including of WHO, and experience from similar international processes.

The mission of the Independent Panel is to provide an evidence-based path for the future, grounded in lessons of the present and the past to ensure countries and global institutions, including specifically WHO, effectively address health threats. They have spent the last eight months independently, impartially, and rigorously reviewing evidence of the spread, actions, and responses to the COVID-19 pandemic. Information on the panel members can be found here.

 

They have conducted numerous literature reviews, original research and have learned from dozens of experts in roundtable discussions and in-depth interviews. The Panel has also heard directly from people working on the front-line of the pandemic in town-hall style meetings and has invited contributions from anyone wishing to make one.

Accompanying the main report and recommendations will be a series of background papers:

 

  • Learning from The Past
  • The Chronology Including Literature Review
  • From Science to Policy
  • National and Sub-National Responses
  • Impact on Essential Health Services
  • Access to Essential Supplies
  • Access to Vaccines, Diagnostics, And Therapeutics
  • Understanding Communication
  • Community Involvement
  • International Treaties and Conventions
  • WHO – An Institutional Review
  • The Economic Impact
  • The Social Impact
  • Human Rights

These will be made available publicly through the Independent Panel website.

 

 

「キーポピュレーションの重視を」 国連ハイレベル会合に向けアジア太平洋地域から提言 エイズと社会ウェブ版566

 6月8-10日の「エイズに関する国連総会ハイレベル会合」に向けて、アジア太平洋地域のキーポピュレーションによる6つの域内ネットワークと各国のHIV/エイズ関連NGOが共同声明を発表しました。12項目の提言を中心とする声明の内容は、取りまとめの中心となった域内ネットワークの一つ、APCOMの公式サイトで見ることができます。

 https://www.apcom.org/unga-hlm-2021/

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 提言は英文ですが、日本から賛同団体に加わった特定非営利活動法人akta、特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が、国内でも広く認識を共有してもらうために日本語仮訳を作成しました。こちらはコミュニティアクションのサイトでPDF版をダウンロードできます。参考にしてください。

 アジア太平洋地域のキーポピュレーションにとって優先すべきニーズと課題の統合を意味のあるかたちで求める エイズ終結に関する2021年政治宣言に向けた提言』 

 http://www.ca-aids.jp/features/284_keypopulation.pdf

 

 APCOMサイトの紹介文によると、提言は策定プロセスの最終段階である4月28、29日に開かれた2つのウェビナーの参加者66人とオンライン調査の対象となった59人の意見を踏まえたうえでまとめられています。

 ウェビナーはAPCOMと国連合同エイズ計画(UNAIDS)アジア太平洋地域事務所とアジア薬物使用者ネットワーク(ANPUD)が共催して開かれたようです。APCOM大使であるJVRプラサダ・ラオ元インド保健相(HIV/エイズ担当大使)、マイケル・カービー元オーストラリア最高裁判事(LGBTQIの人権担当大使)、ラツ・エぺリ・ナイラティカウ元フィジー大統領(パシフィック担当大使)を中心に討議が進められ、APCOM域内顧問グループのデデ・オトモ議長が閉会のあいさつを行いました。

 APCOMのミッドナイト・プーンカセトワタナ事務局長は「アジア太平洋地域のキーポピュレーションが集まり、大きなノイズ(声)を上げることができました。この地域の新規HIV感染の98%がキーポピュレーションとそのパートナーで占められているという恐るべき事実に対処するには、対策資金の32%をキーポピュレーション主導の対策に投資する必要があります」と述べています。

 声明はANPUD、APCOM、APN+(アジア太平洋HIV陽性者ネットワーク)、APNSW(アジア太平洋セックスワーカーネットワーク)、APTN(アジア太平洋トランスジェンダー・ネットワーク)、ユースリードの6つの域内ネットワークを含めた35の域内組織から承認を得ており、国連総会議長や国連事務総長、ハイレベル会合共同ファシリテーターらに提出されます。

 APCOMはゲイ男性など男性とセックスをする男性(MSM)の保健課題に焦点を当てたアジア太平洋地域の域内ネットワーク組織です。HIVに関連する活動を中心に出発し、セクシュアルヘルス、メンタルヘルス、薬物使用などにも活動の枠を広げてきました。また、差別、スティグマ、保健課題の犯罪化といった人権や法的課題にも取り組んでいます。

緊急ウェビナー『米国・バイデン政権がコロナ・ワクチンの特許免除を決断!』(参考情報)

 日本では子供の日であり、連休最終日でもあった5月5日、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ大使(通商代表)による注目すべき発表がありました。新型コロナウイルス感染症COVID-19のワクチンについて、米国政府が世界貿易機関WTO)のTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)に基づく知的財産権保護の適用除外を支持するという内容です。

 経済や貿易に詳しくないので、私にはまだよく理解できていないのですが、平たく言えば、欧米の巨大製薬企業が握っているコロナ・ワクチン特許の独占権を一時的に外すことで、世界のワクチン製造、供給能力を拡大し、途上国などが安価なワクチンを得やすい条件を整えようという試みです。

 ・・・と自分で説明を試みたものの、まだ咀嚼しきれていません。この問題については、アフリカ日本協議会の稲場雅紀さんが以前から積極的に国際的な情報収集と国内における発信を続けてきました。

 2020年10月にインドと南アフリカWTO知的財産権理事会に提案し、100カ国以上の途上国、新興国が賛成していました。ただし、米国や日本、そして欧州の先進諸国は反対の立場をとっており、対立が続いていたということです(ちゃんとフォローしていなくてすいません)。

 米国が今回、支持に転じたことで、国際社会の議論の趨勢は大きく賛同に傾いていくことになりそうです。日本はどうするのか。私のような高齢者で、ワクチンまだなの!?と思いつつ待っている身には、少々、悩ましい課題でもありますが、日本の分を途上国に回せということでなく、世界で広く必要な人にワクチンが届けられるようにする条件を整えるわけですから、実は私が早くワクチン接種の順番が回ってきてほしいと思う気持ちと対立したり、矛盾したりするものでもなさそうです(いまは、おとなしく待っているだけだし)。

 タイ大使の声明には次のような指摘もあります(あくまで私家版の仮訳ですが、最後に声明全文の日本語仮訳も紹介しておきますので参考にしてください)。

 『米国政府の目的は、安全で効果的なワクチンをできるだけ多くの人にできるだけ速く届けることです。アメリカ国民へのワクチン供給は確保されていることから、政府はさらに民間部門、および考えられるすべてのパートナーと協力して、ワクチンの製造と流通を拡大する努力を続けていきます』

 国内でのワクチン普及の努力を国際的にも生かしていくという発想でしょうね。

 

 稲場さんからは明日5月8日13:00~15:00に【緊急ウェビナー】を開催するというメールをいただきました。タイトルはちょっと長いのですが、以下の通りです。

 米国・バイデン政権がコロナ・ワクチンの特許免除を決断!
すべての人への公正な医療アクセスを求めてきた国際市民社会の力
日本政府も今こそ、特許免除の判断を! 

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 残念ながら私は同じ時間帯に身内の四十九日法要があり、参加できません。アフリカ日本協議会のウェブサイトにもお知らせが載っているので、ご関心がおありの方は、こちらをご覧ください。参加無料、要予約です。

 https://ajf.gr.jp/webinar20210508/

 

 参考までに、以下、米通商代表部の5月5日付プレスリリースの日本語仮訳です。あくまで私家版なので、間違いもあるかもしれません。英文で確認してください。 

 

Covid-19のTRIPS免除に関するキャサリン・タイ大使声明

米国通商代表部 プレスリリース 2021年5月5日

 

ワシントン - キャサリンタイ米国通商代表は本日、バイデン-ハリス政権がCOVID-19ワクチンの知的財産権保護の適用除外を支持するとの声明を発表しました。

「いまは世界的な健康危機であり、COVID-19パンデミックという尋常ならざる状況のもとでは尋常ならざる対応が必要になります。政府は知的財産権保護の必要性を固く信じてはいますが、今回はパンデミックの早期終結に向けてCOVID-19ワクチンに対する権利保護の放棄を支持するものです。また、その実現に向けて世界貿易機関WTO)におけるテキストベースの交渉に積極的に参加します。ただし、コンセンサスベース(参加者すべての賛成)を交渉の基本とするWTOの特性、および問題の複雑さを考えると、この交渉には時間がかかるでしょう。

米国政府の目的は、安全で効果的なワクチンをできるだけ多くの人にできるだけ速く届けることです。アメリカ国民へのワクチン供給は確保されていることから、政府はさらに民間部門、および考えられるすべてのパートナーと協力して、ワクチンの製造と流通を拡大する努力を続けていきます。また、ワクチン製造に必要な原材料を増やしていく努力も続けていきます」

 

タイ大使からのツィート

 尋常ならざる状況のもとでは尋常ならざる対応が必要です。 

米国は、パンデミック終結のために、COVID-19ワクチンのIP(知的財産権)保護の放棄を支持しており、その実現に向けて@WTO交渉に積極的に参加します。

 

 

 

Office of the US Trade Representative Press Release

Statement from Ambassador Katherine Tai on the Covid-19 Trips Waiver

05/05/2021

 

WASHINGTON – United States Trade Representative Katherine Tai today released a statement announcing the Biden-Harris Administration’s support for waiving intellectual property protections for COVID-19 vaccines.

 

“This is a global health crisis, and the extraordinary circumstances of the COVID-19 pandemic call for extraordinary measures.  The Administration believes strongly in intellectual property protections, but in service of ending this pandemic, supports the waiver of those protections for COVID-19 vaccines. We will actively participate in text-based negotiations at the World Trade Organization (WTO) needed to make that happen. Those negotiations will take time given the consensus-based nature of the institution and the complexity of the issues involved. 

“The Administration’s aim is to get as many safe and effective vaccines to as many people as fast as possible.  As our vaccine supply for the American people is secured, the Administration will continue to ramp up its efforts – working with the private sector and all possible partners – to expand vaccine manufacturing and distribution.  It will also work to increase the raw materials needed to produce those vaccines.”

 

 

Tweet from @AmbassadorTai:

 

These extraordinary times and circumstances of call for extraordinary measures.

 

The US supports the waiver of IP protections on COVID-19 vaccines to help end the pandemic and we’ll actively participate in @WTO negotiations to make that happen.

 

 

ビジュアル・エイズの創設者、パトリック・オコンネル氏のご冥福を祈ります(UNAIDS) エイズと社会ウェブ版565 

  ビジュアル・エイズの創設者の一人(founding director)で、レッドリボンプロジェクトの中心的人物だったパトリック・オコンネル氏が亡くなり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに《UNAIDS is saddened by the death of Patrick O’Connell, the founding director of Visual AIDS》という追悼文が掲載されました。

 レッドリボンはあまりにも有名ですが、いつ、誰が、何のために始めたのかということはそれほど広く知られているわけではないようです。私も「ニューヨークのビジュアル・エイズが始めたんだよね」という程度のことは知っていましたが、パトリック・オコンネルという方のお名前は存じ上げませんでした。

 そもそも、ビジュアル・エイズが1988年に設立され、レッドリボンは『湾岸戦争に従軍した米国兵士を称えるイエローリボン』にヒントを得て1991年に考案されたという話についても聞いたことはあるものの詳しく知っているわけではありません・・・と思っていたら、2006年のHATプロジェクトのブログにUNAIDSのレッドリボンに関する説明の日本語仮訳が掲載されており、振り返ってみれば、それを訳していたのも実は私でした。

 https://asajp.at.webry.info/200612/article_1.html

 自分で記録に残したものでさえ、最近はどんどん忘れてしまいます。やばいね。

ま、それはともかくとして、故人を偲ぶ機会に不謹慎かもしれませんが、情報を整理する意味もあって、UNAIDSの追悼文を改めて訳してみました。日本語仮訳を後ろに載せておきますので参考にしてください。

 私が知らなかっただけで、パトリック・オコンネル氏は米国のエイズ対策史における重要人物の一人でした。調べてみるとニューヨークタイムズ紙などにも死亡記事が掲載されています。公表は5月に入ってからですが、3月23日にマンハッタンの病院でエイズ関連の原因により亡くなったそうです。67歳でした。40年近く前にエイズを発症し、HIV陽性者として生きてきたということなので、まさにエイズの歴史を歩んできた方ですね。

 オコンネル氏は1991年、ニューヨークでレッドリボン作りの集まりを組織し、多くの人が参加してキャンペーン用に大量のリボンを供給しました。その年のトニー賞の授賞式では出席者全員に手紙とレッドリボンを送り、授賞式のホストの一人であるジェレミー・アイアンズ上着の襟に目立つようにリボンを着けたことから注目率が高まったようです。

 以下、UNAIDSの追悼文の日本語仮訳です。

 

www.unaids.org

 f:id:miyatak:20210505230035j:plain

 

ビジュアル・エイズの創設者、パトリック・オコンネル氏のご冥福を祈ります 国連合同エイズ計画(UNAIDS) 

  UNAIDSは、パトリック・オコンネル氏がエイズで亡くなったことを知り、深い悲しみに沈んでいます。オコンネル氏はビジュアル・エイズの創設者であり、40年近く前からHIV陽性者として生きてきました。

 ビジュアル・エイズは1988年に設立されました。アートのコミュニティがエイズの流行に立ち向かい、芸術家と芸術機関、芸術の鑑賞者といった人たちがHIVに対し直接的な行動をとることを組織化する手段を得るためです。HIV陽性のアーティストの支援も行っています。とりわけ注目される成果は、毎年12月1日の世界エイズデー前後になると、世界中で何百万、何千万という人たちが着用するレッドリボンをデザインし、広めたことです。

 ビジュアル・エイズのアーティストたちは1991年、HIV陽性者およびその介護者への思いやりを示すビジュアルなシンボルを生み出すために集まりました。湾岸戦争に従軍した米国兵士を称えるイエローリボンに触発され、アーティストたちが選んだのは、HIV陽性者への支援と連帯、そしてエイズ関連の病気で亡くなった人たちへの追悼の思いを表すために赤いリボンを作成することでした。プロジェクトの創設者は「血液とのつながり、および情熱-怒りだけでなく、バレンタインのような愛も含む情熱のアイデア」を示すために赤が選ばれたと語っています。このプロジェクトはレッドリボンプロジェクトとして広く世界に知られるようになりました。

オコンネル氏は、自らの出身地であるニューヨーク一帯で何千、何万ものリボンを切断し、折り畳み、配布する指揮を執っています。ニューヨークで開催された1991年のトニー賞授賞式では、すべての参加者にレッドリボンと手紙を配るキャンペーンに加わり、俳優のジェレミー・アイアンズ上着の襟に目立つようにレッドリボンを着けた姿が全米のテレビネットワークで放映されました。

UNAIDSはオコンネル氏の積極果敢な擁護活動を忘れません。いまや米国内だけでなく、国際的にHIVと陽性者への連帯と支援の象徴となったレッドリボンは、オコンネル氏がいなければ存在しなかったでしょう。 

 

 

UNAIDS is saddened by the death of Patrick O’Connell, the founding director of Visual AIDS

04 MAY 2021

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2021/may/20250504_patrick-o-connell

 

 

UNAIDS is saddened by the death from AIDS-related causes of Patrick O’Connell. Mr O’Connell, who lived with HIV for nearly four decades, was the founding director of Visual AIDS.

Visual AIDS was founded in 1988 by arts professionals as a response to the effects of AIDS on the arts community and as a way of organizing artists, arts institutions and arts audiences towards direct action on HIV. The organization also assists artists living with HIV. Perhaps its most high-profile achievement, however, was designing the red ribbon worn by millions of people around the world every World AIDS Day, 1 December.

In 1991, Visual AIDS artists came together to design a visual symbol to demonstrate compassion for people living with HIV and their caregivers. Inspired by the yellow ribbons honouring American soldiers serving in the Gulf War, the artists chose to create a red ribbon to symbolize support and solidarity for people living with HIV and to remember those who had died from AIDS-related illnesses. The colour red was chosen for its, “connection to blood and the idea of passion—not only anger, but love, like a valentine,” the project founders said. The project became known as the Red Ribbon Project.

Mr O’Connell was instrumental in helping to organize the cutting, folding and distribution of thousands of ribbons around his home city, New York. He was part of the campaign to send letters and red ribbons to all the attendees of the 1991 Tony Awards in the United States of America, where actor Jeremy Irons stepped out on national television with a red ribbon pinned prominently on his lapel.

UNAIDS remembers Mr O’Connell for his vital advocacy work. The red ribbon, which today is a symbol of solidarity and support for people living with HIV not only in the United States but internationally, would not have existed without him.

 

 

ハイレベル会合に向けた国連事務総長報告(UNAIDSプレスリリース) エイズと社会ウェブ版563(の続き)

 

 エイズに関する国連総会ハイレベル会合(6月8-10日)に先立ち、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が総会に提出した報告書『不平等の解消に取り組み、2030年のエイズ終結に向けた軌道に戻る』については当ブログでも4月30日付で紹介しました。「こういう報告書もありますよ」ということを一応、お知らせできたので、やれやれと思っていたら、なんとその同じ4月30日付で(ということは時差があるので、半日ほど後になって)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のサイトでプレスリリースが発表されました。そういうことなら早く言ってよ・・・という何というか徒労感のようなものも背負いつつ、そのプレスリリースも日本語に訳しました。

 これまでに紹介してきたUNAIDSの『世界エイズ戦略2021~2026』の要旨や『2025年エイズターゲット』と内容的に重複する部分も多いのですが、10項目の勧告によって課題が整理されています。

UNAIDSはこれまでに2年くらいかけて、2016年の前回ハイレベル会合以降の活動を検証し、なぜ2020年ターゲットは達成できずに終わったのかという反省を踏まえて新ターゲットを打ち出し、それを次の5年間に向けた国際社会の共通認識とするためにハイレベル会合が開かれる。プレスリリースでは、そうした流れがよりはっきりと示されている印象です。

 

www.unaids.org

エイズ終結に向け、不平等に終止符を打つことに対策の焦点を当てるよう要請 国連事務総長  UNAIDS プレスリリース

 世界で初めてエイズの症例が報告されてから40年、そしてエイズに関する国連総会ハイレベル会合をわずか数週間後に控え、世界をエイズ終結の軌道に戻すための勧告とターゲットを盛り込んだ報告書を国連事務総長が発表

 

ニューヨーク 2021年4月30日 一定の地域や人口集団における成果は目覚ましかったものの、他の場所では流行の拡大が続いている。国連のアントニオ・グテーレス事務総長はHIV/エイズ対策についてこう警告し、10項目の重要な勧告(注)を行いました。すべての国がこの勧告に従えば、持続可能な開発目標の一環である「公衆衛生上の脅威としてのエイズパンデミック」は2030年までに終結することになるでしょう。新たな報告書『不平等の解消に取り組み、2030年のエイズ終結に向けた軌道に戻る』の中で、事務総長は対策の進展を妨げる不平等に対処することを世界に求めています。

 報告書の中でグテーレス事務総長は「HIV対策が成果を上げるには、コストが増大することで持続が困難になるという悪循環から抜け出す必要がありますが、それだけでは最終的にパンデミック終結に導くことはできません」と述べています。「2020年ターゲット(高速対応目標)が達成できずに終わった主な要因は不平等です。HIV陽性者にとっても、コミュニティにとっても、国にとっても、大きな変化をもたらすためには、不平等に終止符を打たなければならないのです」

 国連総会のエイズ終結に関する2016年政治宣言で示された世界的なターゲットは、達成には遠く及ばず、多くの地域や国で流行の拡大を許す結果になりました。2019年の新規HIV感染者数は170万人で、2020年ターゲットの50万人未満と比べると3倍以上となっています。また、2019年のエイズ関連の死者数は69万人で、年間50万人未満に減らすという2020年ターゲットに達してはいません。

 「いまからでも、公衆衛生上の脅威としてのエイズ終結を2030年までに達成することは可能です。エビデンスに配慮した戦略と人権に基づくアプローチを採用できれば、HIV対策に大きな成果があがることは、多くの国で示されてきました」とUNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長は語っています。「しかし、そのためには、特定の集団やコミュニティの全体を、HIV感染に対して非常に脆弱な状態に追い込んできた社会的不公正や不平等と闘うための断固とした政治的リーダーシップが必要です」

 報告書は、COVID-19がさらなる対策の後退をもたらしていることも指摘しました。国連事務総長によると、COVID-19はエイズ対策のターゲットを達成できなかったことの言い訳にはならず、逆にパンデミックへの備えと対応への投資が不十分であることを各国に厳しく警告しています。

 一方で、COVID-19パンデミックは、HIVへの投資が保健と開発分野に多くの波及効果をもたらしてきたことを強調するかたちにもなりました。HIV対策が切り開いてきたコミュニティ主導のサービス提供は、COVID-19がもたらした異常なまでの困難を克服するために大きな力を発揮しています。

 世界をエイズ終結の軌道に戻すための10項目の勧告には、たとえば次のようなものが入っています:不平等の解消に取り組み、HIV陽性者、およびHIV感染のリスクがあるすべての人に手を差し伸べることで、2025年までに年間の新規HIV感染者数を37万人未満、エイズ関連の死者数を25万人未満に減らす;HIV予防を重視し、2025年までにHIV感染のリスクのある人の95%が効果の高いHIV予防策を選択できるようにする;子供の新規HIV感染をなくす。

 報告書は、不平等を永続させる社会的、構造的要因に取り組むことの重要性を強調しています。たとえば、有害なジェンダー規範に支えられたジェンダーの不平等によって、女性のHIVおよび性と生殖に関する医療サービスの利用がいかに妨げられているかということを強く指摘しています。不平等はジェンダーに基づく暴力を永続させ、望まないセックスを拒否すること、セーファーセックスを求めること、HIV感染のリスクを減らすことなどを含めた女性と少女が望まないことを拒否するための意思決定能力を大きく制限することになるからです。

 また、ゲイ男性など男性とセックスをする男性、薬物使用者、セックスワーカートランスジェンダーの人たち、受刑者、移民など、脆弱な立場に追いやられ、社会から疎外され、犯罪者として扱われているコミュニティのHIV感染のリスクは依然として一般層よりも高いことを示しています。情報を得ることができず、必要不可欠なHIVの治療・予防・ケアのサービスも受けられないでいるからなのです。

 国連事務総長は、HIV陽性者やHIVの高いリスクに曝されている人たち、HIVに影響を受けている人たちのコミュニティが、どれほどHIV対策を支えてきたのかについても力説しています。HIV陽性者、女性、キーポピュレーション、若者、およびその他の影響を受けているコミュニティが主導するイニシアチブは、主な不平等とサービスの格差を把握して対処し、対象となる人たちの権利を擁護し、医療サービスの提供範囲と規模を拡大し、質の向上を果たしてきました。

 報告書の中で、グテーレス事務総長は、UNAIDSが最近採択した『世界エイズ戦略2021〜2026:不平等に終止符を、そしてエイズ終結を』を高く評価しています。「過去5年間、HIV対策の高速対応に成果をあげた国と都市とコミュニティから得られた教訓がUNAIDSの世界エイズ戦略2021〜2026の中心となりました」と事務総長は述べています。「グローバルなエイズコミュニティとUNAIDSは、新たな、そして大胆な戦略を打ち出すために、不平等に焦点を当てました。新ターゲットは、必要な支援から最も遠ざけられてきた人たちに、その支援が真っ先に届けられるようにするため、野心的であると同時に、きめ細かなものになっています」 

 報告書はUNAIDSの創設から25年を経て発表され、COVID-19が明らかにした社会の不平等と医療制度の弱点についても説明しています。国連事務総長は、エイズというパンデミックに対応してきた経験を生かして世界の保健システムを強化し、新たなパンデミックへの備えを充実させていかなければならないと述べています。事務総長はまた、HIV対策の資金ギャップを埋め、2025年までに低・中所得国へのHIV投資を年間290億ドルに増やすために、世界的な連帯の強化を呼びかけています。

 

(注)国連事務総長報告の10項目の勧告

  1. エイズ終結に向けた成果の達成を妨げる深刻かつ複合的な不平等の解消に取り組む。
  2. 予防を重視し、HIV感染のリスクがある人の95%が2025年までに、適切で優先性が高く、人を中心に考えた効果的なコンビネーション予防の選択肢を利用できるようにする。
  3. HIV検査・治療・ウイルス抑制のギャップがHIV対策の成果を阻んでいることから、そのギャップを埋め、2025年までにHIV陽性の子供を含むすべての人口集団や年齢層、地域において検査と治療の95-95-95ターゲットを達成する。
  4. HIV母子感染をなくし、子供のエイズ終結を目指す。
  5. HIVのリスクと影響を軽減するため、ジェンダーの平等および多様な女性と女児の人権の尊重を対策の中心に据える。
  6. GIPA(HIV陽性者のより積極的な参加)原則を遂行し、HIV陽性者、女性、思春期の若者、青年層およびキーポピュレーションのコミュニティがHIV対策で重要な役割を果たせるよう支援する。
  7. HIV 陽性者やHIV感染のリスクに曝されている人たち、HIVの影響を受けている人たちの人権を尊重・保護・充足し、2025年までにHIV陽性者とキーポピュレーションの間でスティグマと差別を経験する人の割合を10%未満にする。
  8. HIV対策の資金ギャップを埋めるために世界がさらに連帯し、低・中所得国でのHIVに対する投資を2025年には年間290億ドルに増やす。
  9. ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と強靭なプライマリ・ヘルスケア・システムの構築を加速し、COVID-19と人道的な危機に適切かつ公平に対応することで、世界の健康安全保障と将来のパンデミックへの備えを強化する。
  10. エイズ終結の実現、およびすべての人に対する国際公共財としての健康の保障に向け、25年に及ぶ国連合同エイズ計画(UNAIDS)の経験と専門知識と使命を活用することで、多くの部門から様々な利害関係者が参加し、人権を重視した共同行動を構築する。

 

 

 

United Nations Secretary-General calls for a greater focus on ending inequalities to end AIDS

Forty years since the first AIDS cases were reported and just weeks before the United Nations General Assembly High-Level Meeting on AIDS, the United Nations Secretary-General has released a new report with recommendations and targets to get the world back on track to end AIDS

 

NEW YORK, 30 April 2021—The United Nations Secretary-General, António Guterres, has warned that despite intensive action and progress made against HIV in some places and population groups, HIV epidemics continue to expand in others and issued a set of 10 key recommendations.* If followed by all countries, this will end the AIDS pandemic as a public health threat by 2030 as part of the Sustainable Development Goals. In a new report, Addressing inequalities and getting back on track to end AIDS by 2030, the United Nations Secretary-General urges the world to address the inequalities that are slowing progress.

“It is imperative to break out of an increasingly costly and unsustainable cycle of achieving some progress against HIV but ultimately not enough to bring about an end to the pandemic,” said Mr Guterres in the report. “Inequalities are the key reason why the 2020 global targets were missed. By ending inequalities, transformative outcomes can be achieved for people living with HIV, communities and countries.”

The global targets set out in the General Assembly’s 2016 Political Declaration on Ending AIDS were missed by a long way, allowing the AIDS pandemic to grow in many regions and countries. The staggering 1.7 million new HIV infections that occurred in 2019 are more than three times higher than the 2020 target of less than 500 000 new infections. In addition, the 690 000 AIDS-related deaths in 2019 far exceed the 2020 target of reducing deaths to fewer than 500 000 a year.

“Ending AIDS as a public health threat by 2030 is still within reach—many countries are showing that rapid progress against HIV is possible when evidence-informed strategies and human rights-based approaches are adopted,” said UNAIDS Executive Director Winnie Byanyima. “But it requires bold political leadership to challenge and address the social injustices and inequalities that continue to make certain groups of people and entire communities highly vulnerable to HIV infection.”

The report notes that COVID-19 has caused additional setbacks. The United Nations Secretary-General warned that COVID-19 is not an excuse for missing AIDS targets, but rather a stark warning to the countries that they can no longer afford to underinvest in pandemic preparedness and responses.

At the same time, the COVID-19 pandemic has underscored the many spill-over benefits of HIV investments in health and development. Community-led service delivery pioneered by the HIV response is helping to overcome the extraordinary impediments created by COVID-19.

The set of 10 recommendations to get the world back on track include: addressing inequalities and reaching all people living with or at risk of HIV infection to reduce the annual new HIV infections to under 370 000 and annual AIDS-related deaths to under 250 000 by 2025; prioritizing HIV prevention to ensure that 95% of people at risk of HIV infection have access to effective HIV prevention options by 2025; and eliminating new HIV infections among children.

The report underscores that addressing social and structural factors that perpetuate inequalities is key. It highlights, for example, how gender inequality, underpinned by harmful gender norms, restricts women’s use of HIV and sexual and reproductive health services by perpetuating gender-based violence and limiting decision-making power, including the ability of women and girls to refuse unwanted sex, negotiate safer sex and mitigate HIV risk.

It also shows how vulnerable, marginalized and criminalized communities, such as gay men and other men who have sex with men, people who use drugs, sex workers, transgender people, prisoners and migrants, also remain at higher risk of HIV infection than the general population because they are not receiving essential information and HIV treatment, prevention and care services.

The United Nations Secretary-General describes how communities of people living with, at risk of and affected by HIV are the backbone of the HIV response. Initiatives led by people living with HIV, women, key populations, young people and other affected communities have identified and addressed key inequalities and service gaps, advocated for the rights of their constituents and expanded the reach, scale and quality of health services.

In the report, Mr Guterres applauds UNAIDS’ recently adopted Global AIDS Strategy 2021–2026: End Inequalities, End AIDS. “The lessons from the countries, cities and communities that successfully fast-tracked their HIV responses over the last five years are at the heart of the UNAIDS Global AIDS Strategy 2021–2026,” said Mr Guterres. “The global AIDS community and UNAIDS have used an inequalities lens to develop the strategy, with new targets that are ambitious, granular and tailored to reach the furthest behind first.”

The report comes 25 years after the creation of UNAIDS and describes how COVID-19 has exposed social inequalities and health system weaknesses. The United Nations Secretary-General says that the world should leverage the experience from responding to the AIDS pandemic to strengthen health systems across the world and improve pandemic preparedness. He also calls for enhanced global solidarity to close the HIV resource gap and increase annual HIV investments in low- and middle-income countries to US$ 29 billion by 2025.

 

*The 10 recommendations in the United Nations Secretary-General’s report:

 

     Reduce and end the acute and intersecting inequalities that are obstructing progress to end AIDS.

     Prioritize HIV prevention and ensure that 95% of people at risk of HIV infection have access to and use appropriate, prioritized, person-centred and effective combination prevention options by 2025.

     Close gaps in HIV testing, treatment and viral suppression that are limiting the impact of HIV responses and achieve by 2025 the 95–95–95 testing and treatment targets within all subpopulations, age groups and geographic settings, including children living with HIV.

     Eliminate vertical HIV transmission and end paediatric AIDS.

     Put gender equality and the human rights of women and girls in all their diversity at the forefront of efforts to mitigate the risk and impact of HIV.

     Implement the GIPA (Greater Involvement of People Living with HIV/AIDS) principle and empower communities of people living with HIV, women, adolescents and young people and key populations to play their critical HIV response roles.

     Respect, protect and fulfil the human rights of people living with, at risk of and affected by HIV and ensure by 2025 that less than 10% of people living with HIV and key populations experience stigma and discrimination.

     Enhance global solidarity to close the HIV response resource gap and increase annual HIV investments in low- and middle-income countries to US$29 billion by 2025.

     Accelerate progress towards universal health coverage and strong primary health care systems, build forward better and fairer from COVID-19 and humanitarian crises, and strengthen global health security and future pandemic preparedness.

 Leverage the 25 years of experience, expertise and mandate of the Joint United Nations Programme on HIV/AIDS (UNAIDS) in building multisectoral, multi-stakeholder and rights-based collaborative action to end AIDS and deliver health for all as global public good.

 

 HIV感染報告減少の意味 TOP-HAT News第152号(2021年4月) エイズと社会ウェブ版564

 厚生労働省エイズ動向委員会はかつて、毎月開催でしたが、それが隔月開催、四半期開催(3カ月に1回)と頻度が下がっていき、いまは年2回開催になっています。あまり目先の数字に一喜一憂してもしょうがないので、個人的には四半期開催程度がいいのではないかと思いますが、この一年ほどはコロナの影響で、年2回の開催でも、厚労省の事務局担当部局は対応にいっぱい、いっぱいの状態なのでしょうね。

 ま、それは致し方ないとしても、2021年の第1回動向委員会は3月16日に開催されました。うかつにも私は開催後に気が付いたので、記録でフォローするしかないのですが、オンライン開催だったようです。時節柄、それも致し方ないのでしょうね。年2回開催だと、四半期ごとの報告集計2期分と合わせて、1回目の開催時には前年の報告の速報値、2回目(たぶん8月末か9月上旬)には確定値がそれぞれ公表されます。

 今回は2020年の年間速報値が報告されています。

 

 TOP-HAT News第152号(2021年4月)ではその速報値について少し解説的な内容も含め、巻頭の『はじめに HIV感染報告減少の意味(エイズ動向委員会2020年速報値)』で取り上げています。

 その中でも紹介されていますが、速報値の概要はAPI-Net(エイズ予防情報ネット)の『四半期報告2021年』でご覧ください(2020年第3、第4四半期の委員長コメントの後半部に載っています)。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/index.html

 

 新規HIV感染者報告数 740件(過去20年で17番目)

 新規エイズ患者報告数  336件(過去20年で16番目)

  合計        1076件(過去20年で17番目)

 

 『多い年には年間1500件を超えていた報告の合計数は1000件台にまで減少しています』ということで、この数年ではっきりしてきた報告数の減少傾向は2020年も続いています。ただし、昨年はコロナ流行の影響でHIVの検査や相談体制を取り巻く環境も激変しているので、この傾向をもって、新規HIV感染も『引き続き・・・』とは言いにくくなっています。

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 ただし、報告数の減少の要因についてはまだ、はっきりしたことは分からず、当面は、ああでもない、こうでもないという話になってしまうことは認めざるを得ません。専門家による今後の情報および分析を待つ必要があります。そのあたりを割り引いたうえで、とりあえず露払いとして『はじめに・・・』の文章を参考にしていただけるようでしたら幸いです。

 

 

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第152号(2021年4月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに HIV感染報告減少の意味(エイズ動向委員会2020年速報値)

 

2 予防啓発普及事業の6団体に決定 2021年度エイズ予防財団助成対象事業

 

3 『End inequality(不平等に終止符を)』

 

4 アニメーションビデオ『世界三大感染症?』

 

◇◆◇◆◇◆

 

1 はじめに HIV感染報告減少の意味(エイズ動向委員会2020年速報値)

 昨年1年間の新規HIV感染者・エイズ患者報告数の速報値が3月16日(火)、厚生労働省エイズ動向委員会から発表されました。概要はAPI-Net(エイズ予防情報ネット)の『四半期報告2021年』でご覧ください(2020年第3、第4四半期の委員長コメントの後半部に載っています)。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/index.html

 

 新規HIV感染者報告数 740件(過去20年で17番目)

 新規エイズ患者報告数  336件(過去20年で16番目)

  合計        1076件(過去20年で17番目)

 

 多い年には年間1500件を超えていた報告の合計数は1000件台にまで減少しています。毎年夏の終わりに発表される確定値は、速報値より少し増えるのが通例ですが、それでも昨年の合計数は1100件を下回りそうです。 

 発表の数字をみると、報告数は新規HIV感染者報告と新規エイズ患者報告に別れています。このうちエイズ患者報告数というのは、エイズを発症することで初めてHIVに感染したことが分かった人の数です。

減少の傾向が顕著なのは感染者報告数の方で、新規エイズ患者報告数は前年と比べてもほぼ横ばいの状態です。

年間の報告数全体に占めるエイズ患者報告の割合は、早期の検査と治療の普及がどこまで進んでいるかを把握する目安と考えられています。感染動向を推定するうえで重要な指標の一つです。エイズ患者報告の割合が小さくなれば、それは逆に、HIVに感染した人が早期に自らの感染を把握し、治療につながる機会が増えると考えられるからです。

治療を継続することで、感染した人の体内のHIV量が極めて低い状態に維持されれば、性感染を含め日常の生活でHIV陽性者から他の人にHIVが感染することはなくなります。つまり、エイズ患者報告の割合が下がれば、その分、感染の機会が減っていくと考えられるので、予防対策上も重要な指標です。

これまでの動向委員会報告をみると、その割合は2016年に30.2%だったのが、その後は29.7%→28.6%→26.9%と減少していきました。ところが、2020年は31.2%と大幅にリバウンドしています。

また、2020年は、保健所などでのHIV検査の件数も相談件数も大幅に減少しました。コロナウイルス感染症COVID-19対策に追われ、HIVの検査や相談には対応できないという時期もあったことを考えると、コロナの流行の影響は小さくありません。

 報告数は数字だけ見ると、1500件時代から1000件時代へと移行している印象も受けます。HIV検査と治療の普及で実際の新規HIV感染が減っているのではないか。ここ数年はそうした期待もありました。ただし、昨年はかなり微妙です。

コロナの影響によりHIV検査の提供体制が大きく制限されたのと同時に、検査を受ける側も、コロナに対する不安からHIVの検査にまでは関心が向かなくなり、それが検査や相談件数の減少につながった可能性があります。

変な言い方で恐縮ですが、それでも新規HIV感染件数の減少がこの程度で抑えられた。2020年に限って言えば、これはコロナ流行という逆境の中で、HIV検査やHIV予防の啓発活動を担う現場の努力が何とか持ちこたえてきたことの現れでもあります。

例えば、東京都の場合、保健所の多くがHIV検査に対応できない時期にも、東京都南新宿検査・相談室(3月6日からは移転して東京都新宿東口検査・相談室に)や東京都多摩地域検査・相談室では、継続してHIVと梅毒の検査を受けられるようになっていました。検査が必要な人への扉は開いていたのです。全国のコミュニティセンターなどのNPONGOによる啓発や検査の普及を目指す活動も地道に続けられてきました。

まだ、感染を知らないでいる人だけでなく、感染が判明して治療につながっている人たちへの支援も大切です。体内のHIV量を低く抑えた状態を維持するには治療を続けていく必要があるからです。

コロナの流行で治療が中断してしまうことがないよう、感染が判明したHIV陽性者への支援を続けていくことは、予防対策上も重要な意味を持っています。

ただし、コロナの流行が今後も収まらなければ、検査や治療、支援の継続に向けたそうした努力も支えきれなくなってしまうかもしれません。そうならないように、COVID-19もHIVもともに拡大を抑えていくこと、つまり2つのパンデミックの両方に対応できるよう対策の相乗効果を高める工夫が、今年は昨年以上に求められています。

 

 

2  予防啓発普及事業の6団体に決定 2021年度エイズ予防財団助成対象事業

 公益財団法人エイズ予防財団は毎年、以下の2カテゴリーで、エイズに関するボランティア団体やNGOへの助成事業を実施しています。

(1)エイズ患者・HIV感染者等に対する社会的支援事業

(2)エイズ予防に関する啓発普及事業

 1月からの公募を経て、3月5日に開かれた助成事業選考委員会で2021年度の助成対象が決定しました。(1)については申請団体なし。(2)は6団体です。

 詳細は公益財団法人エイズ予防財団の公式サイトでご覧ください。

 https://www.jfap.or.jp/business/02_josei.html

 

 

3 『End inequality(不平等に終止符を)』

国連合同エイズ計画(UNAIDS)が提唱する2021年「差別ゼロデー」(3月1日)のテーマは『End inequality(不平等に終止符を)』です。キャンペーン素材などはすべて直前に発表されました。つまり、3月1日はキャンペーンのゴールではなく、出発点という位置づけです。

新型コロナウイルス感染症のワクチン対策により、国際的な課題として不平等と格差の存在が改めて浮上しています。アントニオ・グテーレス国連事務総長は今年1月28日、国連総会で行った演説で10項目の優先課題を示し、その4番目に『貧困と不平等のパンデミック』をあげました。

https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/41189/

UNAIDSのキャンペーンもそうした文脈を踏まえて受け止める必要がありそうです。キャンペーン冊子『不平等に終止符を』の日本語仮訳がAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に掲載されているので紹介しておきましょう。こちらでご覧ください。

https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet046.html

エイズ終結には、 不平等に立ち向かい、 差別を解消することが重要になります。世界が2030年のエイズ終結という約束に向けた軌道から大きく外れているのは、必要な知識や能力や手段がないからではなく、HIVの予防と治療に効果が実証されている解決策の実施が構造的な不平等のために妨げられているからなのです』

 

 

4 アニメーションビデオ『世界三大感染症?』

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の活動や成果について分かりやすく説明したアニメーションビデオ『世界三大感染症?』が公開されています。

 http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2021-04-07_gf101video

 基金の国内応援団であるグローバルファンド日本委員会(FGFJ)がグローバルファンドと共同制作したアニメで、3分25秒のフルカット版と30秒版があります。いずれもYouTubeでみることができ、拡散歓迎ということです。

 

新規HIV感染報告が昨年同時期と同数に 東京都エイズ通信第164号

 メルマガ東京都エイズ通信第164号(2021年4月30日発行)が配信されました。今年に入ってから4月25日までの新規HIV感染者・エイズ患者報告数は以下の通りです。
 もう5月1日なので、2021年も3分の1が過ぎちゃったことになりますが・・・。


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● 令和3年1月1日から令和3年4月25日までの感染者報告数(東京都)
  ※( )は昨年同時期の報告数

HIV感染者   94件     (94件)

AIDS患者   22件     (27件)

合計   116件   (121件)

HIV感染者数は昨年度と同数であるが、AIDS患者は昨年度よりも減少している。

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 新規HIV感染者報告は、3月時点では前年より20件近く少なかったのですが、4月の時点では前年と同数になっています。
 そもそも、コロナの影響でHIV感染報告の減少傾向が特に顕著になったのは昨年の4月、5月あたりだったように思います。HIV感染のリスクが高いと思われる人たちの間でも、HIV感染の心配よりも、コロナの心配の方が大きくなってしまった。社会環境の面からもHIV検査を受ける機会が少なくなっていた。その二つの理由からだったのではないかと個人的には想像しています。
 それが、ここにきて新規HIV感染報告件数が前年と同数になるという、新たな傾向に転じました。4月の1か月間だけをみると前年の4月よりも今年の4月の方が報告件数は多いということになります。
 これは何を意味するのか。個人的には「たぶん、こういうことではないのかなあ」という感想はありますが、あまり先走ってもしょうがないので、もう少し報告の推移をみて判断したいと思います。
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 https://www.mag2.com/m/0001002629