COVID-19とHIV予防に関する3つの解説文書 エイズと社会ウェッブ版 480

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の予防対策にHIV/エイズの教訓をどう生かしていくか。国連合同エイズ計画(UNAIDS)が『過去30年以上にわたるHIV対策の経験』を踏まえ、世界HIV予防連合(GPC)と協力して3点の解説文書を発表しました。その日本語仮訳がAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に掲載されています。 

api-net.jfap.or.jp

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 それぞれ2~4ページの短い文書です。一応、タイトルを紹介しておきましょう。

  • 青い表紙→低・中所得国でCOVID-19を防ぐには HIV予防からの教訓(Lessons from HIV prevention for preventing COVID-19 in low- and middle-income countries)
  • オレンジの表紙→COVID-19時代のコンドームと潤滑剤(Condoms and lubricants in the time of COVID-19 — Sustaining supplies and people-centred approaches to meet the need in low- and middle-income countries —
  • 緑の表紙→COVID-19時代における HIV予防サービスの維持と強化(Maintaining and prioritizing HIV prevention services in the time of COVID-19)

  青い表紙のタイトルからも分かるように3文書とも、資金や資材、人材など医療資源(リソース)に限りがある低・中所得国での流行拡大を抑えることを想定して策定されたようです。ただし、COVID-19の流行ではしなくも明らかになってしまったのは、高所得国とされる欧米の国々も医療崩壊と言われる事態に追い詰められて大混乱をきたし、医療基盤も実は意外に心もとかったんだね、ということです。

 グローバル化と経済的な成長を追い求める中で、先進諸国の多くが保健医療分野の基盤強化、とりわけ新興感染症への準備(プリペアードネス)は、立派な議論の果てに手を抜きまくってきた21世紀の政策の失敗として、後世にまで語り継がれていくことでしょう。政策としての優先順位は低下し、強化というよりも、むしろ弱体化を推し進めていた・・・ま、そこまで意地の悪い言い方をしないとしても、少なくとも弱体化することはそれほど、気にしなかった。その瑕疵をウイルスに突かれてしまった。そんな印象も受けます。

 国際的にみると、前の新型インフルエンザのときもそうだったし、今回の新型コロナでも(これまでのところはという条件付きですが)日本はよくやっている、どうしてなんだ!? と欧米諸国から腹立ちまぎれに不思議がられるほどの状態で推移してきました。ただし、その成果も実は、医療を崩壊から守るために、社会の多くの分野の崩壊も辞さないという不安化政策をとって、少なくともこれまでは、なんとか維持できてきたというのが現実でしょう。

 こんなことがいつまでも続けられるわけがない。このことはすでに、多くの人が、うすうすと、あるいはひしひしと感じているはずです。いつまでも、重大局面や正念場や瀬戸際の掛け声に踊らされ、おうちダンスを続けているわけにもいかない・・・。

 じゃあ、どうしたらいいのかと考えたときには、低・中所得国と共通するニーズもまた、直視しないわけにはいきません。一国だけの解決策でなく、どの国も取り残さないようにする支援への認識を深める必要性も自ずと出てきます。

 ・・・ということで、多様性の象徴であるレインボーカラーのブリッジが、12月1日じゃないのにレッドリボン色に染まるという為政者の思惑すら超えた象徴的な場面がクールビズしてしまったいま、様々な立場の方に3点の文書をお読みいただき、できればテレワークの資料などで活用される場面も出てくるようになれば、日本語仮訳作成に多少かかわった立場の者としては、うれしく思います。