『COVID-19: 各国は危機対応策の乱用で人権を抑圧してはならない』 国連専門家グループ

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行について、国連の人権専門家グループが『各国は危機対応策の乱用で人権を抑圧してはならない』と求めています。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の公式サイトに3月16日付でニュースとして紹介されているので、その日本語仮訳を大急ぎで作成しました。あくまで私家版ですが、参考になるようでしたらご覧ください。

 英文はこちらです。専門家グループのメンバーも載っています。

https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25722&LangID=E

 《このアピールは国連人権高等弁務官が先日、行った『コロナウイルス:最前線で人権を尊重し、対策の中心に据える必要がある』という呼びかけに対応するものである》

 ということで、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官による3月6日付の呼びかけも日本語仮訳を当ブログに載せてあるので、よかったらそちらもどうぞ。

 http://miyatak.hatenablog.com/entry/2020/03/09/123402

 

 ということで、専門家グループの要請に戻りましょう。

 《手っ取り早い方法として非常時権限に魅力を感じる国や安全保障機関もあるかもしれません、と専門家グループは言う。「法律や政治システムの中に過剰な権力行使が組み込まれないようにするには、規制範囲を狭め、公衆衛生を守るための侵入的手段を最小限に抑えるようにすべきです」》

 その通りだと思います。ただし、OHCHRの公式サイトにこのニュースが載ってから、わずか1日しかたっていないのに、世界中が逆の方向に動き出しているような印象も受けます。したがって、絶妙のタイミングで出された要請であるといえないこともないのですが、個人的には「なんで武漢封鎖の時には何も言わなかったのに、いまになって」という違和感もかなりあります。国連が中国に遠慮しているなどと、陰謀論めいたことは考えたくないのですが、WHOの対応も含め、どうも今回は釈然としません。ヨーロッパは浮足立つし、トランプさんは火に油を注いでしまうし・・・。

 

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COVID-19: 各国は危機対応策の乱用で人権を抑圧してはならない 国連専門家グループ

https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25722&LangID=E

 

ジュネーブ(2020年3月16日) 国連の人権専門家グループ(注:メンバーは英文参照)は本日、各国に対し、コロナウイルスの流行に対応するための安全保障策のいたずらな拡大を慎み、反対意見の抑圧に非常時権限を使わないよう自覚を求めた。

 「いま直面している健康危機の厳しさを考え、重大な脅威に直面した際の非常事態策の導入が国際法上は認められているとしても、コロナウイルスへの緊急対応策は均衡がとれ、必要かつ差別のないものでなければなりません。各国にはこのことを改めて要請します」と専門家グループは言う。

 このアピールは国連人権高等弁務官が先日、行った『コロナウイルス:最前線で人権を尊重し、対策の中心に据える必要がある』という呼びかけに対応するものである。

 #HumanRights #CoronavirusOutbreak

 保健に関しても、安全保障に関しても、非常事態宣言には国際法上の明確なガイダンス(手引き)があります、と国連専門家グループは言う。「非常時権限の適用は公式に宣言しなければならず、移動、家庭生活、集会などの基本的権利が大きく制限される時には、関連する人権条約機関に通知すべきです」

 「それに加え、COVID-19のアウトブレークに基づいて非常事態を宣言する際には、特定の集団や少数者、個人をターゲットにするかたちでその宣言が使われるようなことがあってはなりません。また、健康を守るという名目で抑圧的な行動を正当化したり、人権を擁護活動に取り組む者を黙らせたりするための方策として使われてはならないのです」

 「ウイルスに対応するための規制は、正当な公衆衛生上の目的に基づくべきものであり、反対意見を封じ込めるために使われてはなりません」

 手っ取り早い方法として非常時権限に魅力を感じる国や安全保障機関もあるかもしれません、と専門家グループは言う。「法律や政治システムの中に過剰な権力行使が組み込まれないようにするには、規制範囲を狭め、公衆衛生を守るための侵入的手段を最小限に抑えるようにすべきです」

 最後に、ウイルスの感染が収まりつつある国に対しては、政府が通常の生活に戻すことを目指し、日々の生活を無期限に制限するような非常時権限の過度な行使を避けなければなりません、と専門家グループは指摘する。

 「法の支配と人権の保護に基づく健全な社会の実現をはかるために、各国は人権を基本にしたアプローチでこのパンデミックの制御にしっかりと対応してください」と国連専門家グループは述べている。

 

 

 

COVID-19: States should not abuse emergency measures to suppress human rights – UN experts

 

GENEVA (16 March 2020) – UN human rights experts* today urged States to avoid overreach of security measures in their response to the coronavirus outbreak and reminded them that emergency powers should not be used to quash dissent.

 

 “While we recognize the severity of the current health crisis and acknowledge that the use of emergency powers is allowed by international law in response to significant threats, we urgently remind States that any emergency responses to the coronavirus must be proportionate, necessary and non-discriminatory,” the experts said.

 

Their appeal echoes the recent call by the UN High Commissioner for Human Rights to put #HumanRights at the centre of #CoronavirusOutbreak response.

Declarations of states of emergency, whether for health or security reasons, have clear guidance from international law, the UN experts said. “The use of emergency powers must be publicly declared and should be notified to the relevant treaty bodies when fundamental rights including movement, family life and assembly are being significantly limited.”

 

“Moreover, emergency declarations based on the Covid-19 outbreak should not be used as a basis to target particular groups, minorities, or individuals. It should not function as a cover for repressive action under the guise of protecting health nor should it be used to silence the work of human rights defenders.

 

 “Restrictions taken to respond to the virus must be motivated by legitimate public health goals and should not be used simply to quash dissent.”

 

Some States and security institutions may find the use of emergency powers attractive because it offers shortcuts, the experts said. “To prevent such excessive powers to become hardwired into legal and political systems, restrictions should be narrowly tailored and should be the least intrusive means to protect public health.”

 

Finally, in countries where the virus is waning, authorities must seek to return life to normal and must avoid excessive use of emergency powers to indefinitely regulate day-to-day life, they said.

 

“We encourage States to remain in maintaining a human rights-based approach to regulating this pandemic, in order to facilitate the emergence of healthy societies with rule of law and human rights protections,” the UN experts said.