U=Uキャンペーン(Undetectable=Untransmittable、検出限界以下なら感染はしない)について、2月の後半になって、国際エイズ学会(IAS)、およびタイ保健省・UNAIDS・WHOが相次いで声明を発表しています。後者は3者連名の共同声明です。
2つの声明の日本語仮訳をAPI-Netに掲載しました。英文の声明原文もみることができます。
IASの声明によると、HIV陽性者を中心とするコミュニティとHIV診療の専門家が協力してU=Uキャンペーンに取り組んでいるタイ国内で、このキャンペーンを主導する研究者が最近、SNSなどを通じて強いバッシングを受けているということです。
《しかし、明白な科学的エビデンスが示されているにも関わらず、タイでは最近、U=U の 支持を公的に表明し、この科学的成果を実行に移そうとする人たちは、過激な反対行動にさ らされています。真実を広げようとし、長く信じられてきた HIV 予防に関する神話に対し、 科学的な根拠に基づいて挑戦しようとするだけで、流行終結に向けた努力が脅かされてし まうのです》
(U=U に関するIAS声明:科学の成果を行動に移そう から)
ただし、そのバッシングの中身については、声明を読んでも具体的には書かれていません。タイ国内ではかなり話題になっているのかもしれませんね。
確認の取れない情報で恐縮ですが、タイを代表するHIV臨床医と研究者がテレビインタビューに答え、U=U推奨の意見を表明したところ、ネット上で『殺す』といった脅迫を受けたり、医療関係者からも医師免許をはく奪すべきだといった脅しを受けたりしているようです。
U=Uについて、私はかなり重要なメッセージだとは思うのですが、疑問に感じる点もいくつかあり、全面的に推奨する立場にはありません。ただし、いたずらかもしれませんが殺害の脅迫があったり、推奨者の信頼性を失墜させたりするような攻撃があるとすれば、これは看過できません。
背景にはコンドームなしのセックスをめぐる議論があるようですが、どなたか事情をご存じの方がいらっしゃったら教えてください。
さらにその背景を考えると、タイ国内では(日本国内でも同じだと思いますが)、U=Uのメッセージはまだ多くの人に伝わっておらず、性がからむイシューだけに誤解が広がりやすいといった事情もありそうです。UNAIDSなどの共同声明は以下のメッセージで声明を締めくくっています。
《保健医療施設やコミュニティ、HIV 陽性者、その他 HIV 対策分野のパートナーの間で U=U に対する関心を高め、知識の普及をはかる必要があります》
あまりトラブルに深入りしたくないというような感じも受けますが、地道な努力を積み重ね、反対するにしても賛成するにしても、とにかく知ってもらうことが大切ということでしょうね。
ここで、受け狙いに走ってCOVID-19に話を結び付けるようないつもの手口は、今回は慎んでおきましょう。